転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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乱入者

 

 

「あちこちでえれェ覇気が飛び交ってるぜお頭!!」

 

「百獣海賊団にビッグ・マム海賊団、白ひげ海賊団にバギー海賊団と海軍……口にするだけで恐ろしいぜ」

 

「悪いな皆、おれのわがままに付き合わせちまって」

 

 各勢力が凄まじい戦いを繰り広げている中、その戦場に向かう一隻の船があった。マストには三本傷が特徴の海賊旗、五皇の一角赤髪海賊団の船だ。船長はかのロジャーの船に所属していたという経歴を持つ赤髪のシャンクス。今回の戦争の火種となった千両道化のバギーとは兄弟分だ。

 

「別にお頭の無茶振りは今に始まったことじゃねェからいいけどよ……」

 

「にしてもお頭よォ……“千両道化”のこと好きすぎだろ」

 

「バギーとはガキの頃からの付き合いだからな、兄弟みたいなもんさ」

 

 仲間達からの野次に、シャンクスは笑いながら答え酒を口に含んだ。彼の言う通りシャンクスとバギーはロジャー海賊団の見習い時代からの付き合い、独立した後も時に共闘、時に競い合い良きライバルとしての関係を築いてきた。今や二人とも皇帝として海に君臨する程の実力者になったが、その関係に変わりはない。

 

「……!! この気配は……バギーか!!」

 

「どうしたお頭?」

 

 笑みを浮かべていたシャンクスの表情が突然険しくなり、立ち上がると水平線の先を睨むように見つめた。怪訝に思った船員達がその方角を見ると、僅かながらに島が見えた。

 

「……確かに気配を感じるな……ってもこの距離じゃ誰の気配かはわからねェが」

 

 一味の中でも随一の見聞色の覇気の使い手であるヤソップでさえ、そこに気配があると認識するのが精一杯の距離だ。しかしシャンクスはその気配がバギーのものであると確信しているようだ。

 

「すまんベック……おれは少し別行動を取る。構わないか?」

 

「……ダメだと言っても聞かないんだろう? いいさ、こっちは任せておけ」

 

「悪いな、恩に着る」

 

 副船長であり相棒とも言うべき男、ベックマンに声を掛けたシャンクスは六式の一つ月歩で船から飛び出して行ってしまった。その後ろ姿を見据えながらベックマンはやれやれといった様子で溜息を漏らした。

 

「野郎共!! こっちも戦闘用意だ!!」

 

『おう!!!』

 

 不在となった船長に代わり、副船長のベックマンが仲間達に指示を出す。シャンクスの行動の意図を彼は大方理解していた。そして自分達がすべきこともまた理解し、それを果たすべく彼らは船を進めるのだった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 

「ハァ……ハァ……」

 

「ハ〜ハハハハ!! いい加減くたばったらどうだいミズキ!!」

 

 単身ビッグ・マム海賊団を足止めしていたミズキ。戦闘が始まって既に数時間がすぎているが、依然としてビッグ・マム海賊団を誰一人として通すことなく食い止めることに成功していた。しかし状況が良い訳では無い、ビッグ・マムの相手をするだけでも一苦労だというのに、彼女の子供達によるサポートが加わればミズキが劣勢なのは火を見るより明らかだ。

 

「随分と粘るじゃねェか……流石にママと互角に渡り合っただけのことはある」

 

「ああ、だがここまでのようだ」

 

 将星の一人であるクラッカーがミズキの実力を素直に認め、同じくスムージーもそれに同意するがそれも限界だろうと吐き捨てた。10億に近い賞金首である彼らからしても、ミズキの実力は群を抜いておりタイマンの勝負では敵わないと理解している。だがサポートという面においては十分な効果を発揮することが出来る。現にミズキは全身に傷を負い、満身創痍という状態だった。

 

「そろそろトドメを刺すか……!! 行け、ビスケット兵!!」

 

 クラッカーがビスビスの実の能力で生み出したビスケットで作り上げた兵士。その一体がそこらの海賊よりも遥かに強い屈強な戦士だ。並の海賊団であれば本人が手を出さずとも壊滅させられるほどに強力な能力だが、皇帝と呼ばれる者達と同等の実力を持つミズキにはさすがに敵わない。ミズキの覇王色の覇気を纏った斬撃で、一瞬のうちに全ての兵士がバラバラに砕かれた。

 

「ぐッッ……ビスケット兵をゴミみてェに蹴散らしやがって……!! だがおれのビスケット兵は食わない限り無限に再生する!!」

 

「……鬱陶しい!!」

 

 ただ破壊するだけではクラッカーのビスケット兵は再生を繰り返す。能力者本人を倒すのが一番だが、ミズキは怪物ビッグ・マムの相手で手一杯だ。

 

「威国!!!」

 

「ッッッ!!」

 

 そうしてビスケット兵に気を取られている間にビッグ・マムの強烈な斬撃がミズキ目掛けて放たれた。咄嗟にバリアを展開し防ごうとするも、完成する前に斬撃が到達し派手に吹き飛ばされてしまった。落下するミズキだが海に落ちる前に何とか体勢を立て直す。

 だがその瞬間、巨大な斬撃が別の方向から飛んできた。それを弾き返したミズキは斬撃が飛んできた方向を睨みつける。

 

「将星スムージー……!!」

 

「……やはりまともには当たらんか」

 

 自身の斬撃が避けらせたことに僅かに顔を曇らせるスムージー。彼女の斬撃もまた四皇最高幹部の名に恥じない攻撃力だ。無抵抗な状態でくらえばミズキと言えどダメージは避けられない。故に躱すか武装色の覇気で防御する、もしくはバリアを張る必要があるのだが、ビッグ・マムとやり合っている今それも至難の業だ。

 

「キツいとは思ってたけど……これは予想以上に厳しそうだね……!!」

 

 そしてこの状況にミズキは苦言を呈する。元より厳しい戦いになることは容易に想像出来ていた。しかし実際に戦いに身を投じてみれば考えていた以上に難しい戦いだ。

 

「とりあえず幹部だけでも潰しておかないと……!!」

 

「あいつ……何を!?」

 

 ミズキが海面に向かって急降下し、両腕から衝撃波を放った。その行動の意図がわからないビッグ・マム海賊団の面々だったが、その直後に起こった現象に目を見開くと共にミズキの狙いを理解した。

 

「やべェ……でかい津波だ!!」

 

「あの野郎おれ達ごと船を沈めるつもりか……!!?」

 

 幹部達を一々相手にしていては勝てないと判断したミズキの一手。それは大津波を起こし、船団ごとビッグ・マム海賊団を一網打尽にすることだった。事実能力者の多いビッグ・マム海賊団は船という足場を失えば無力化されたも同然だ。月歩を使用出来る者も多いが全員が全員使用出来る訳でもなく、そもそもこの大海原を移動するのには無理がある。

 

「こっちは能力者が大勢いるんだぞ……!!? 本気でやべェ……!!」

 

「落ち着けお前ら……私がいるんだ、ペロリン♪」

 

「ペロスペロー様……!!」

 

 取り乱す部下達に落ち着くように言い、ペロスペローは能力でありったけのキャンディーを生み出した。それを船団を囲うように配置し、津波の被害を最小限に抑えられるようにする。

 しかしその行動はミズキの未来視によって見抜かれていた。

 

「悪いけどそれ、読めてるから!!」

 

 ミズキが短剣を振りかざし、斬撃をドーム状のキャンディーにお見舞する。ペロスペローのキャンディーの強度は相当なもので、並の海賊では破壊など到底不可能だ。しかしミズキにかかれば簡単に粉砕することが出来る。

 

「な!!?」

 

「ペロスペロー様のキャンディーを一撃で!!?」

 

『うわァァァ〜〜〜!!?』

 

 部下達が迫り来る大波に慌てふためくが時すでに遅く、船団は大量の海水の中へと消えていった。これでビッグ・マム海賊団は全滅、後は船長であるビッグ・マムさえ何とか倒せればとミズキは思ったが、見聞色の覇気で見た未来の光景に舌打ちをした。

 

「チェ……やけにあっさりしてると思ったけどそう簡単にもいかないか……」

 

 ミズキが見たのはシボシボの能力で船に激突する津波を吸い取り巨大化したスムージーの姿だった。全ての水分を吸い取ることは流石に出来なかったようで、船団には所々破損した部分はあるもののほとんど無傷の状態だ。

 

「よそ見してる場合かい!!」

 

「……!!」

 

 しかし作戦失敗を悲観している余裕などない。飛んできたビッグ・マムの斬撃を回避し、ミズキは僅かに崩れた体勢を立て直す。

 

「かかったな……ペロリン♪」

 

「しまッッ……!!?」

 

 その隙をつかれ、ペロスペローのキャンディーで拘束されてしまった。これ自体は特に問題は無い、先程もわけなく破壊することが出来ていた。しかしその一瞬の隙があれば十分だった。

 

「ハ〜ハハハ!! 後は任せたよ息子達!!」

 

「ッッ……!!? 行かせない!!」

 

 ミズキに出来た隙を見てプロメテウスに乗ったビッグ・マムが全速力で駆け抜けていく。当然ミズキは追いかけようとするが、自らを拘束するペロスペローのキャンディーを破壊した直後にダイフクの魔人、そして月歩を使用した多くの幹部達に行く手を阻まれてしまった。更には下からスムージーやクラッカー、その他強者が狙っているためにいくらミズキといえど体力を消耗している今、容易に突破することが出来ない。

 

 ──その時だった。

 

「……!?」

 

「ダイフク様!!?」

 

 ダイフクの魔人、そしてダイフク本人がどこからか銃撃を受け、血反吐を吐いてその場に倒れた。ビッグ・マム海賊団とミズキが銃撃が来た方角に目をやると、そこには一隻の海賊船がいつの間にか現れていた。

 

「あれは……!!?」

 

「赤髪海賊団!?」

 

 その海賊船は誰もが知る海の皇帝の一角、赤髪海賊団の船だった。その船の甲板で指揮を取り、そして銃撃を放った張本人の名をミズキは口にした。

 

「ベックマン!!」

 

「苦戦してるようだな……“宵魔女”」

 

 ミズキの視界に入ったのは副船長のベックマン。その背後にはヤソップやラッキー・ルウといった幹部達が勢揃いしており、各々戦闘準備万端といった様子で待機していた。だが肝心のシャンクスの姿が見えない。そのことを疑問に思ったミズキだが、口に出す前にベックマンが先に言葉を紡いだ。

 

「ここはおれ達が引き受けてやる。お前はさっさとビッグ・マムを追え」

 

「……!! ……わかった、ありがとね!」

 

 ベックマンの言葉に一瞬動揺したミズキだったが、すぐに切り替えて飛び去っていったビッグ・マムを追うように全速力で彼女が向かった方角、すなわちカイドウやバギーがいる島へと戻っていく。それを阻止しようとするビッグ・マム海賊団だが、赤髪海賊団の妨害を受けて思うようにいかない。

 

「悪ィな……少しばかりおれ達に付き合ってもらうぞ……!!」

 

「てめェら……余程死にてェらしいな……!!」

 

 煩わしさからか普段は冷静なペロスペローも眉間に青筋を立て怒りを顕にした。その様子を見たベックマンはニヤリと笑みを浮かべるとペロスペローに向けて銃口を突きつけるのだった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

 

 カイドウとバギー達の激しい戦い。マルコやイゾウが加わったことでより激しさを増した激闘はほぼ互角の展開だった。ヤマトとバギーが前衛で攻撃しイゾウが銃でサポート、マルコが不死鳥の能力で味方を回復しつつカイドウにヒットアンドアウェイの要領で攻撃を加え、さしものカイドウもその連携に手こずっていた。

 

「雷鳴八卦!!!」

 

「グォォォ……!!!」

 

 ヤマトの金棒を腹に受け、カイドウが少しの血を吐き吹き飛ぶ。先程よりも威力が上がっていることを痛感し、しかしカイドウは平然と立ち上がる。

 

「ウォロロロロ……ヤマト……この土壇場で成長しやがったか」

 

 今の攻撃、精度は低いが確かに覇王色の覇気を纏った一撃だった。息子の成長に親としての喜びはあるが、それよりも敵が成長していることに彼はそれ以上の喜びを感じていた。カイドウと戦える者などごくわずかだ。複数人がかりとはいえここまで戦える者の出現は、彼としても嬉しい事だった。

 

「おれ様を忘れてんじゃねェぞカイドウ!!」

 

「……!!!」

 

 カイドウの身体をいくつもの爆弾が襲い、彼の全身を燃やし尽くす。ただの爆弾ならばカイドウの皮膚を傷つけることなど出来ない。しかしバギーの放った特製マギー玉には彼の覇王色の覇気が纏われており、カイドウの鋼鉄のような身体にもかなりのダメージと手痛い火傷を負わすことが出来る。

 

「てめェの戦い方はやりづれェんだよ赤っ鼻ァァ!!」

 

「うッッ……!! 痛ェ!!?」

 

 カイドウの金棒を避けようとするバギーだが、避けきれずにモロにくらってしまった。吐血し痛みに悶えるバギーにカイドウが追撃を加えようとするが、彼の手を銃弾が撃ち抜き金棒をはじき飛ばした。

 

「イゾウ……!!」

 

「今だマルコ!!」

 

「任せろよい!! 鶴爪(オングル)!!!」

 

「……!!!」

 

 隙をつきマルコの飛び蹴りがカイドウを吹き飛ばす。まともに受けたカイドウはダメージを痛感しながら岩場に叩きつけられた。一瞬のカイドウの離脱、そのタイミングでマルコは仲間達に再生の炎を与え、気休めながらダメージを回復した。

 

「大丈夫かよい、“千両道化”」

 

「大丈夫な訳あるかこんちきしょうめ!! あの化け物野郎どんだけ攻撃したら倒れやがるんだ!!」

 

「優勢なのはこちらの方だ。このままカイドウの体力が尽きるまで攻撃を続ければ……」

 

「だけど……カイドウはまだ本気を出していない」

 

 イゾウの言葉にヤマトが返した。親だからこそ、カイドウの事はこの場の誰よりもわかっている。カイドウはまだ本気、すなわち人獣型を使っていない。そのことを警告したそのタイミングで、カイドウは彼らの前に姿を現した。

 

「おでんの死から十年……あいつ以上におれと渡り合える奴は現れなかった」

 

「ッッ……!! ピンピンしてやがる……!!」

 

 未だ倒れる様子の見えないカイドウにバギーが驚き、思わず声を漏らす。しかしそんなことなど気にせず、カイドウは口を開き続けた。

 

「だがてめェらはおれと対等にやり合ってみせた……面白ェじゃねェか……ウォロロロロ!!!」

 

「……人獣型……!!」

 

 カイドウの姿が人とも竜とも言えぬ姿に変貌を遂げる。あえて言うならば竜の鬼、世界最強生物の正真正銘の奥の手だった。今や自分とやり合えるのはビッグ・マムか白ひげくらいのものだと思っていたが、千両道化、宵魔女、そして赤髪もそうだろう。彼らがロジャー海賊団にいた頃には気にも留めていなかったが、よもやここまで力をつけるとは思っていなかった。それを素直に認め、そして確かに敵として認識した。

 先程よりも覇気の強くなったカイドウを見て、戦闘態勢をより強化した四人は覚悟を持って彼に立ち向かおうとする。

 

 ──その時だ。

 

「ハ〜ハハハハ!!!」

 

「!!!」

 

 カイドウの隣に巨大な何かが落下してきた。落下の衝撃で砂煙が巻き起こり、周囲一帯の視界を奪ってしまった。何が起こったのか理解出来ない一同は落下地点を凝視し砂煙が落ち着くのを固唾を飲んで待つ。そして煙が晴れると、巨大な生物がその姿を見せた。

 

「楽しそうなことをやってるねェ……おれも交ぜてくれよ……!!」

 

「ビ……ビビビビビ……ビッグ・マムゥゥゥ!!?」

 

 海の皇帝の一人、ミズキがくい止めているはずのビッグ・マムの出現にバギーは目を飛び出させて驚きの叫びをあげた。他の三人も冷や汗を流し、思わぬ怪物の出現に驚愕の感情を隠せなかった。

 

「リンリン……何しに来やがった?」

 

「マンマママンマ!! そりゃあおめェ、おれがわざわざこんなところに来る理由は一つだろう?」

 

「ババア……!! おれと戦争でもしに来たのか?」

 

 カイドウが金棒を握る手に力を込め、ビッグ・マムの攻撃に備えようとする。その様子に彼女は不気味な笑みを浮かべると、彼を睨みつけるようにして言葉を発した。

 

「ああ……確かに最初はそうするつもりだったさ。だが、おめェをここまで苦戦させるあいつらを見て考えが変わった」

 

 ビッグ・マムが思い出したのはミズキの姿。たった一人でビッグ・マム海賊団相手に長時間の足止めに成功していた。一対一で戦ったとしたら勝つのは自分だろうが、苦戦は免れないだろう。癪ではあるが、彼女はミズキの実力を認めていた。そしてバギー達だ。今や最強生物とまで呼ばれているカイドウを手こずらせ、人獣型を披露させるまで追い詰めた。そして彼らと同等であろう赤髪海賊団の存在、それらを加味して彼女は船長としてとある合理的で、最悪な判断をしたのだ。

 

「カイドウおめェ……おれと手ェ組めよ」

 

「ああ?」

 

 それは海賊史上でも類を見ない、皇帝同士の同盟話だった。

 




最新話読みました。一言で言うとクロスギルドやばすぎて草。でもこの小説だとクロコダイルとは一度戦って実力はわかってるしミホークはライバルだし資金面もテゾーロがいるから問題なしと割と理にかなってるというか七武海撤廃したらやれそうだよねってなってるのが面白い。後はバラバラの覚醒を描いてくれたらありがたいです。
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