転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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箱入り息子

 その無人島には伝説があった。曰く大昔の大海賊が残した大秘宝が眠っていると。故にその宝目当てでその島を訪れる海賊は非常に多いが、未だかつて宝を手にした者は一人もいないという。なんでもその島にはとても珍しく、凶暴な珍獣が数多く生息していて侵入者はその珍獣達の餌食になってしまうというのだ。それともう一つ、宝が見つからない理由がある。それは宝の場所を誰も知らないこと。

 無論その島にあることはわかる。だが島のどこにあるのかを誰も知らない。洞窟の中にあるのか森の中なのかはたまた地中にでも埋められているのか。

 なんにせよそういった経緯があり今まで誰も宝に辿り着いてはいなかったのだがここ半年間で妙な噂が流れるようになった。

 その島に上陸した海賊達が消息を絶つようになったのだ。それ自体は今までもあったことだがその噂ではこう語られている。

 その海賊達は島の守り神の祟りにあったのだ……と。

 

「あれが噂の宝島か……おい野郎共! 上陸の準備だ!」

 

「了解です、お頭!」

 

 その島を目指し、近づいてくる海賊船が1隻。東の海(イーストブルー)では珍しくもないことだがその船の船長にかけられた懸賞金は400万ベリー。他の海の海賊なら鼻で笑うような額だがこの海では平均値以上の高額賞金首だ。

 その船長が総勢300名程度の船員に指示を出す。

 それを聞いて各自上陸の準備を始める部下達を眺めながら彼は目の前に迫る島の噂を思い出す。

 その島に財宝が眠っているのは昔からこの海では言われていたことだ。だからこそいつかはその宝をいただこうと彼は思っていたのだが、ここ最近で妙な噂を聞くようになった。その島を訪れた海賊が守り神によって祟られたというのだ。

 その噂を信じる者は少ないだろう。しかし少なくともその島に足を踏み入れることを躊躇する原因にはなるはずだ。だが彼はそれを逆に面白いと鼻で笑った。

 守り神が本当にいようがいまいが関係ない、自分の邪魔をするならば殺すだけだ。

 

「お頭着きましたぜ」

 

「ああ、見りゃわかる」

 

 船長が船を降りたのを確認し、船員達も続々と島へと上陸していく。パッと見た限りでは何の変哲もない普通の無人島だ。

 

「ん? なんだお前は?」

 

「…………」

 

 上陸してすぐ、船長の前に一人の少女が現れた。ピンクの髪をポニーテールにし水色の瞳、ピンクのパーカーを身につけた可愛らしい少女。彼女は船長の問いには答えずただじっと彼を見つめていた。

 

「もしかして守り神とかいうやつか? ぎゃははははは! 可愛らしいこった!」

 

 船長の笑い声を合図に島が大勢の笑い声に包まれた。いつの間にか少女を囲い、船員達は彼女を見て爆笑する。

 

「噂の守り神様がこんな可愛らし〜い女の子様だったとはな! くくく、おい嬢ちゃんこっちに来ておじさん達と遊ばねぇか? いい思いさせてやっからよ」

 

「おいおいロリコン野郎、守り神様に対して失礼だろ……だはははははは!」

 

 少女はそれでも黙って動こうとしない。ああ可哀想に、恐怖のあまり固まってしまったのだろうと嘆く声が聞こえてくる。もちろん本気で思ってなどいないのだが。

 

「……一つ言いたいんだけど」

 

「ああ?」

 

「ボク……男だよ」

 

「はぁ? 何言ってやが……グゥ……ガハ!?」

 

 その一瞬で島は静寂に包まれる。誰もが何が起こったかわからないという表情でその光景を見ている。少女が背中に背負っていた短剣で船長の胸を突き刺している姿を。口から、胸から血を流しやがて力なく倒れる船長。それを見てもなお船員達は動けない、理解が追いついていないからだ。

 

「ボクが可愛いのはわかるけど……あんまり舐められるとムカつくよ」

 

 少女は──少年は胸から短剣を抜き今度は船員達を睨みつける。その表情に一切変化はない。

 

 

「て……てめぇ何しやがる!?」

 

「船長が……嘘だろ……」

 

 ようやく脳が理解し始めた船員達は怒り、あるいは驚愕する。そして何人かの船員は武器を取り少年に報復を与えようと向かっていくが。

 

「と…飛んだ!?」

 

「どうなってやがんだ!?」

 

 身体を宙に浮かせ、空に飛び上がる少年。その信じられないような光景に誰もが戦慄する。しかし少年はさも当然のように口を開く。

 

「魔法使いが飛ぶのは当然でしょ?」

 

 

 

狩魔女(かりまじょ)ミズキ” 懸賞金1300万ベリー 動物系(ゾオン)幻獣種ヒトヒトの実モデル“魔女”

 

 

 

炎嵐(ファイアストーム)!!」

 

 少年は飛び上がったまま、剣を空にかざし炎の嵐を作り出す。空に現れたその燃え盛る暴風に船員達は青ざめ、そして逃げ惑う。

 

「ぎゃああああ!?」

 

 しかし遅い、逃げ遅れた船員は炎の嵐に巻き込まれ振り飛ばされ燃え上がる業火に焼かれた。黒焦げになり落下してくるそれを見て船員達は恐怖する。だがそれだけでは終わらない。なんとか嵐から逃げた者達を別の地獄が待っていた。

 

紋舞乱(モンブラン)!!」

 

 少年が空中で剣を突きつける。瞬間、そこから水滴が落ちたかのような波紋が空気中に広がり、衝撃波となり襲いかかる。

 それは受けたものに白目を剥かせ気絶させるには十分すぎる威力だった。衝撃波の余韻が砂浜にクレーターを作り、轟音が轟く。

 

「ば、バケモンだ……逃げろ〜〜!!」

 

 力の差を理解し到底敵わないと判断した者達は真っ先に逃走を選んだ。しかし少年はそれを追うことをしない。ただ空中からその光景を見下ろすだけだった。

 

「おいおいトンズラなんてハデに舐めた野郎共だな! 生きて帰れると思うなよ!」

 

 しかしそう簡単にはいかない。逃げ惑う海賊達の前にもう一人、赤鼻の少年が立ち塞がる。

 

「なんだてめぇは!? アホみてえな赤っ鼻しやがって! どきやがれ!!」

 

「だぁれが真っ赤なお鼻だ!! 許さん、ハデにぶっ殺してやるぜ!!」

 

 

 

道化(どうけ)のバギー” 懸賞金1500万ベリー 超人系(パラミシア)バラバラの実のバラバラ人間

 

 

 

「くらいやがれ! バラバラ砲!!」

 

「なんだぁ!? 身体が切れた!?」

 

 バギーの上半身が分離され、海賊達に迫る。それを見て驚愕し彼らは逃げ惑うが、時すでに遅しだ。

 

「遅せぇんだよ! 切り刻んでやるぜ!」

 

 分離された上半身が高速で飛び回り海賊達をナイフで滅多切りにしていく。悲鳴と血を流し倒れていく海賊達だが、中には反撃を試みた者もいる。バギーのナイフを間一髪かわした一人の海賊が逆にバギーに対して斬撃を入れてみせる。

 

「ぎゃあ〜〜〜〜!! ………なんつってな」

 

「はぁ!? 俺の剣が効かねぇのか!?」

 

「ハデ馬鹿野郎め!! 俺はバラバラの実のバラバラ人間!! 斬撃なんざ俺には無意味なんだよ!! そろそろトドメだ! バラバラフェスティバル!!」

 

 トドメを宣言したバギーの身体がさらに細かく分離し、その全てが海賊達を襲撃する。もはや身を守る体力すら残っていなかった彼らは瞬く間に倒されていき、そして砂浜に多量の死体だけが残った。

 

「ぎゃははははは!! 今回も楽勝だったな!! さぁて……こいつらはどんだけのお宝を持ってやがるのか楽しみだぜ!!」

 

「……でも弱すぎてちょっと張合いがないね」

 

「敵の強さなんてどうだっていいんだよ! それより宝だ宝!」

 

 大笑いで全滅させた海賊達の船を物色しに行くバギー。今回のようなことは別に初めてではない。どうやら彼らがいるこの島は宝島としてそこそこ有名なようで、定期的に海賊が宝を求めてやってくるのだ。最初は修行の一環として戦っていたのだが、倒した海賊達から財宝や金を奪えることに味をしめたバギーは島を訪れた海賊を片っ端から倒して宝を奪った。そうして過ごしているうちに気づけば1年が経過していた訳だが、さすがにミズキはその生活に飽き飽きしてきた。偉大なる航路(グランドライン)ならともかく、この東の海(イーストブルー)に彼らと同等に戦える海賊はほとんどいない。

 

「ねぇ、そろそろ別の島に行こうよ。ボクらやってること海賊じゃなくて盗賊みたいになってきてるよ」

 

「……まぁそうだな、さすがに長居しすぎたか。もう十分金も貯まったしそろそろ出港すっか」

 

 自分達の船に奪った財宝を運び終え、一息ついたところでミズキがバギーに提案する。この生活を楽しんでいたバギーだったが一応海賊としての自覚はあるのか、あっさりとそれを了承する。

 

「金も食料もたんまりあるし船も奪った。これで当分物資に困ることはないな」

 

「2人だと逆に使い切れないかもね」

 

「ぎゃははははは! そりゃあ心配ねぇぜ、これからどんどん仲間増やしていくからよ!」

 

 海賊団を名乗るからには船員は多いに越したことはない。どんなに少数の海賊団でも数十名、“新世界”に君臨する大海賊ならば傘下も含めれば万という単位になることもある。これから偉大なる航路に入ることも考えるとなるべく優秀な仲間を集めることは必須だ。

 

「ぎゃあ〜〜〜〜!?」

 

「…!? 何だ!? 今の叫び声は」

 

「森の中から聞こえたみたいだね、さっきの海賊の生き残りでもいるのかな?」

 

 森の中から聞こえてきた叫び声にバギーが驚き声を上げる。ミズキはさっきの海賊達の生き残りが森に逃げて珍獣にでも襲われたのだろうと解釈した。今でこそバギーとミズキはこの島の珍獣にも慣れ、ある程度仲良くもなったが海賊達は見つかれば襲われてしまうだろう。

 

「おいミズキ、ちょっと見てこいよ」

 

「……君は行かないの?」

 

「おれァこの財宝を眺めてたいんだよ。ま、気が向いたらな」

 

「はいはい」

 

 ため息混じりに呟くとミズキは森の方へと飛び去った。上空から森を見て回るが特に異変は見つからない。もう珍獣に食われたのだと判断して戻ろうとした時、崖の近くで奇妙な物を見つけた。その地点に降り立ち、それと対峙する。

 目の前にいるのは小柄な男、さっきの海賊の生き残りだろう。別に強そうな訳でもないがミズキはその男から目が離せない。何故ならその男は()()()()()()()()()()()

 

「……箱入り息子?」

 

「ああ、小さい頃からお父さんお母さんにそれはもう大切に育てられ………違うわ!! 

 

 宝箱に詰まった男はミズキの質問に一度肯定し、すぐさま否定した。バギーに勝るとも劣らない完璧なノリツッコミだ、とミズキは感心する。

 

「おいお前、悪いが手伝ってくれ! 宝箱に詰まっちまって抜けねえんだよ、」

 

「……いいけど、なんで箱に詰まってるの? ドM?」

 

「んなわけあるか!! 詳しい話は後だ、とにかく手伝ってくれ」

 

 別に助ける義理はないしめんどくさいがさっきのノリツッコミは面白かった。だから助けてあげるかとミズキは男の頭を持ち、引っ張る。しかし男の身体はいくら引っ張っても箱から抜けようとはせず逆に痛がってしまう始末だ。

 

「ちくしょう、俺の身体はこいつにミラクルフィットしちまったのか……どうすりゃあ……」

 

「海賊辞めて芸人になれば?」

 

「なるか!! 他人事だと思いやがって……」

 

「だって他人事だもん」

 

 海賊よりも芸人の方がむいてる気がしたので提案したがどうやらお気に召さなかったようだ。面白いのになとミズキはやや不満げに思う。そんなやり取りをしていると森の中からバギーが気だるそうに歩いてきた。彼は箱に入った男を見ると鳩が豆鉄砲を食らったような顔をした。

 

「おいミズキ、おめぇこんなとこでちんたら何やって…………箱入り息子か?」

 

「ああ、パパとママにはこんな小さい頃からそりゃあもう丁寧に育てられ……だから違うわ!! 二度もつまんねぇギャグやらせんな!! 

 

「ボクは面白いと思うけどな」

 

「おめぇは顔が笑ってないんだよ……で、なんだこの珍獣は」

 

「誰が珍獣だ!! 俺はガイモンだ! 仲間達と宝を求めてこの島に来たんだがよ。この崖の上からお宝の匂いがしたんで取ろうとしたんだ。そしたら手を滑らせちまってよ、運悪く落ちたのがこの箱の中だったって訳だ」

 

「ぎゃははははは!! ハデに馬鹿な奴だな! ………待てよ、仲間ってもしかしてあれか?」

 

「あれだね」

 

 ガイモンの話を聞いたバギーとミズキは顔を合わせてお互いの考えが正しいか確かめ合う。そしてそれはほぼ確信に変わった。

 

「ぎゃああああ!! 俺の船が…! 仲間が…!」

 

 その可能性を確かめるために一同は砂浜へと戻った。倒れる海賊達と沈没しかかった船を見るなりガイモンは悲痛な叫びを上げた。

 

「すみません、こいつがやりました」

 

「……二人でやったんでしょ。弱かったけど」

 

「余計なこと言うな! ここは一人が罪を被りゃいいんだよ!」

 

「じゃあ君が被りなよ」

 

「いやいいんだ、海賊同士の争いなんだ。別にお前らのことを憎みやしないさ。宝を独り占めできるって考え方もできる」

 

「でもあの崖の上の宝箱の中身空だったよ」

 

「だからてめぇは余計なこと言うんじゃねぇよ!!」

 

 宝箱の中身が空だったと聞いて露骨に落ち込むガイモンを見てさすがに不憫に思ったのかバギーがツッコミを入れる。

 

「まぁそう落ち込むなって、宝箱が空なんて話珍しくもねぇだろ? 俺達の出会いを祝して一杯やろうぜ。酒ならたんまりあるからよ」

 

「ああ、……すまねぇな」

 

 ガイモンの肩を叩きバギーはそう励ましてやる。そして以前この島に来た海賊から奪った船の中に案内してやると、彼らはさっそく酒盛りを始めた。

 

「ぎゃははははは!! おめぇ結構いけるじゃねぇか!! ほら、もっと飲め飲め!! そうだ、おめぇ俺の船に乗れよ!!」

 

「そいつはいい提案だ! 俺もお前が気に入った! こんな楽しい日はないぜ!!」

 

 

 酔いも回ってきて二人は顔を真っ赤にして肩を抱き合う。サラッとガイモンの仲間入りが決まるがそんな大事な話をその場のノリで行うその様子はまさに酔っ払い、飲み会にいたら間違いなくめんどくさいタイプなのだが彼らよりもめんどくさい人間がこの場にいた。二人は目の前の彼を見てため息をついた。

 

「あははははは! お酒おいし〜〜♡ねぇバギー! 森からイチゴ取ってきてよ♡おつまみにするから♡」

 

「……いやこの島にイチゴはねぇよ。船にあったやつはおめぇが全部食っちまったしよ」

 

「……こいつ酔うとこんなにテンション高くなるんだな」

 

「俺も見るのは初めてだ」

 

 酒の入ったグラス片手に騒ぐミズキ。その変わりようにバギーとガイモンは若干引いていた。ガイモンは当然の事ながらバギーもミズキと酒を飲むのは初めてだった。島に来る海賊達から奪った酒は大量にあるが今まではバギー一人で飲んでいた。その度に拒否するミズキにお前も飲めと強要していたのだが、いざ飲ませるとこんなにめんどくさいとは。

 

「え〜〜〜〜!! こんなに可愛いボクのお願いを聞いてくれないの?」

 

「自分で言うな。俺は野郎に興味はないんだよ」

 

「こいつが男だって俺は未だに信じられないぜ」

 

「じゃあ甘いスイーツ持ってきて♡おつまみおつまみ♡」

 

 

 口元に指を当ててあざとくお願いする。バギーはその豹変振りに引き攣った笑みを浮かべた。そしてため息をつく、金輪際こいつに酒は飲ませないと誓いながら。

 

「酒は人間の本性を出させると言うからな。案外これが素のこいつなのかもしれねぇな」

 

「素のこいつか……まぁ色々苦労してきたみてぇだし、中々素の自分を出せなかったのかもしれねぇな」

 

 ガイモンの言葉にバギーはしみじみと答える。ミズキの過去はよく知らないがあんなところに捕まっていたのを考えるとろくな人生を歩んではこなかったのだろうと同情する。──だがそれはそれとして

 

「だがコレが素のこいつだとするとよ、ハデにめんどくせぇな」

 

「ああ、めんどくせぇ」

 

 いつの間にか横になり眠っているミズキの姿を見て、しみじみとした雰囲気を壊すように二人はそう意見を一致させるのだった。

 




というわけでミズキの悪魔の実は動物系幻獣種ヒトヒトの実モデル魔女に決めました。たくさんの方にアンケートにご協力頂いてありがとうございました。思ったより票に差がついて驚いてます。やはり幻獣種はロマン。変更に伴い一部過去に投稿した話も変えますがまぁ大筋に変化はないのであんまり関係ないですね。セリフがちょっと変わるくらいです。ちなみに動物系にするにあたって各形態の姿を考えたんですがとりあえず今のところミズキは人型で魔法を使ってます。ヒトヒトの実を食べたチョッパーがどの形態でも人の特徴を持っていることからミズキもどの形態でも魔女の特徴を持っていてもいいんじゃないかと。人獣型と獣型はとりあえず非公開ということでお楽しみに。
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