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かつて海賊王ゴールド・ロジャーが生まれ、そして処刑された町。ロジャーの死に際の言葉により大海賊時代が幕を開けた、正しく終わりと始まりの町だ。
故に海賊の出入りも多く、東の海とはいえ海軍も並大抵の実力ではこの町の治安を守ることは出来ない。
「スモーカーさん! すみません、遅くなってしまって!」
「ちっ⋯⋯トロトロしてんじゃねェぞたしぎ」
だがこの二人、葉巻を咥えた男と眼鏡の女は海兵として高い実力を誇っていた。少なくとも東の海の支部の中では抜きん出て実力者であろう。女の方はたしぎ軍曹、そして男の方が配属以来海賊達を一度も逃がしていない凄腕、スモーカー大佐だ。
「聞きましたか? バギー海賊団がこの町にいると」
「ああ⋯⋯下っ端ならたまに出入りしてると聞くが⋯⋯今回はそうじゃねェらしい」
彼らの話題は先程本部から受けた連絡の件。どうやら
「まさか⋯⋯先日のオレンジの町の一件と関係が?」
「恐らくな。仮にあの町を潰した男に報復を与えるつもりだとしたら⋯⋯奴の居場所がわからない以上このローグタウンで待ち構える可能性は十分ある」
彼らが思い浮かべるのは先日バギー海賊団のナワバリであるオレンジの町を落としたとある海賊。その後も破竹の勢いで“百計のクロ”“首領・クリーク”“ノコギリのアーロン”と東の海の大物達を倒したルーキーだ。スモーカーは懐にしまっていたその男の手配書を取り出し、改めて顔を確認する。
“麦わらのルフィ” 懸賞金5000万ベリー
「本当にこいつを潰しに来るならこっちとしては好都合だ。海賊が海賊を潰してくれるんだからな」
「“麦わら”の一味が偉大なる航路に入るつもりなら、既にこの町にいてもおかしくはありませんね」
「ああ⋯⋯バギー海賊団が来ようがそうでなかろうが、こいつはおれが捕まえる」
5000万の首などこの町では珍しい。久々に腕がなるとスモーカーは意気込んだ。
「スモーカー大佐! バギー海賊団が処刑台の広場に現れました!」
「⋯⋯!! 来たか、確認出来る賞金首は?」
「それが、五皇本人が⋯⋯!! “千両道化のバギー”がいるようです⋯⋯!!」
「なんだと!?」
「“千両道化”本人が⋯⋯!!」
部下の報告に、スモーカーとたしぎは顔を青ざめさせる。まさか五皇本人が出てくるなど考えもしていなかった。東の海のルーキーの為に海の皇帝と呼ばれる男が自ら動くなど、ありえない事態だ。
「それと⋯⋯本部から伝令なのですが⋯⋯バギー海賊団には決して手を出すなと」
「考えれば当然か⋯⋯五皇の怒りに触れれば全面戦争は免れない」
もしバギー海賊団に手を出し、怒りを買うようなことになれば海軍本部とバギー海賊団との戦争が起こる。仮にそんな事態になり負ければ海軍本部は壊滅、勝てたとしても多大な損害を被ることになり、その隙を他の五皇に突かれてどの道壊滅。故に本部は何としても五皇との接触を阻止させたいのだ。
「ど、どうしましょうスモーカー大佐!!」
「⋯⋯一等部隊を港に行かせろ。バギー海賊団以外の海賊の出航を阻止して捕縛、特に“麦わら”だ。二等部隊は通りから隠密包囲、残りは広場を囲んで待機。すぐに向かわせろ。本部から応援は?」
「何せ急なことですから、ここから本部は距離がありますしすぐには⋯⋯」
「民間人の避難を急げ、多少なら海賊共相手に反撃しても構わん」
「それは!? 本部の命令を無視するということですか!?」
「一端の海兵なら自分の信念に基づいて行動しろ!! すぐに行け!!」
「は、はい!!」
部下に活を入れる急いで行動させる。本部からの命令は第一だが、時には自分の正義を貫くべき時もある。スモーカーはその考えから、軍の指示を無視することが度々あり、海軍内では狂犬扱いされていた。
「スモーカーさん、私は?」
「お前はおれと来い。“千両道化”が暴れるようならおれとお前で抑える」
「⋯⋯はい!!」
仮に“千両道化”が暴れれば被害は甚大。そうならない為にもこの場の最高戦力である自身とたしぎでバギーを抑える。勝算は薄いだろうが、本部から応援が来るまでは持ち堪えられるかもしれない。覚悟を決め、スモーカーはたしぎと共に広場へと向かった。
♦♦♦♦♦
「うっっっっは〜〜〜!! これが海賊王の見た景色、そして死んだのか!!」
ここはローグタウンの中央、処刑台のある広場だ。海賊王ゴールド・ロジャーはここで死に、そして大海賊時代が始まった。そんな歴史の始まりを感じ取り、ルフィは熱い気持ちを覚えた。そして見ている景色はもちろんロジャーと同じもの、処刑台の上からの景色だ。
『コラ君、すぐにそこから降りなさい!!』
「なんで?」
『そこは世界政府の管理下にある特別死刑台だ! とにかく降りなさい!』
下から拡声器で警察官がルフィに降りるように忠告してくる。ロジャーの死からこの死刑台は世界政府の管理下にあり、一般人は許可なく登ることを許されていない。
「いいじゃないか、ケチくさいねおまわりさん」
「ゴフッッ!!」
すると突然警官が金棒で殴り倒され、顔を歪ませてその場に倒れた。周囲にいた人間は急なことに驚き取り乱すが、警官を殴った女の顔を見て目を奪われた。なんて美しい女性だろうと。その美しさは男だけではなく女すら虜にする程だ。
「会いたかったよルフィ。まさかあたしを忘れてないだろうね」
「あ、お前! あの時の金棒女! 海の果てまでぶっ飛ばしたのにまだおれになんか用か!?」
そしてルフィもその女を覚えている。人の顔を覚えるのが苦手なルフィだが、彼女のことはしっかり記憶していた。何せ以前に敵対した海賊であり、ゾロと二人がかりでも大苦戦した相手なのだから。
「そうさ、アンタのせいであたしの人生はめちゃくちゃだよ。バギー座長に認められ、いずれは名を上げて“海賊女帝”ボア・ハンコックを越える世界一の美女の称号を手に入れるつもりだった。だけどアンタはあたしの敗北という初めてを奪った⋯⋯その責任は取ってもらうよ」
「うるせェ、そんなの知るか! お前がおれの邪魔をしたからだろ!」
ベーと舌を出しアルビダを挑発する。アルビダはそんなルフィを見ても表情を変えることなく、彼を見ている。そしてため息を吐くと、後ろを振り返った。
「だけどアンタの悪運もここまでみたいだ。世の中には絶対に怒らせちゃいけない人間がいるんだよ。アンタはあたしの手で仕留めたかったけど、どうやら無理みたいだね」
「何言ってんだ? ⋯⋯う!?」
直後、何者かから身体を押さえつけられルフィは処刑台の上で倒れた。その上から拘束具を付けられ、彼は身動きを取る事が出来ない。
「よォ“麦わらのルフィ”。ウチの妹分が世話になったみたいだな」
「誰だお前!? 離せこんにゃろ!!」
ルフィを押さえつけたのは長い髪にマフラーをした男。ニヤリとした笑みを浮かべ、あれを見ろと死刑台の下、広場の入口を指差す。
「よくやったカバジ。さァハデに公開処刑と行こうか! 野郎共、広場を制圧しろ!」
『うォォォォォォ!!!』
広場に多くの男達がなだれ込み、あっという間にその場を占拠した。そしてその前に立つ男、赤い鼻が特徴の男を見て住民は顔を青くし冷や汗を流す。新聞で何度も見た、極悪海賊の顔だ。
「あれは⋯⋯まさか⋯⋯」
「“千両道化のバギー”だァァァ!!?」
「新世界の五皇がなんでここに!?」
住民達は慌てふためき、その場から一目散に逃げようとする。しかし多くはバギー海賊団に取り押さえられ、その場でひざまずくのを強制される。制圧が完了したのを確認すると、バギーは死刑台に進みながらルフィに語りかける。
「“麦わらのルフィ”、おれ様がわざわざここに来た理由がわかるか?」
「知るか! 誰だお前!」
「あの野郎、キャプテン・バギーに向かってなんて口の利き方を!?」
「この御方は泣く子も黙るバギー海賊団座長! “千両道化のバギー”様だぞ!!」
バギーを讃える部下達に見送られ、彼は死刑台の上に登る。そしてカバジと交代すると、死刑台からの景色を一望し宣言した。
「これよりこの“麦わらのルフィ”をおれ様に逆らった罪でハデに公開処刑に処す!!」
「へーおれ処刑って初めて見るよ」
「馬鹿野郎おめェが死ぬんだよ!!」
「おれが!? ふざけんな!!!」
バギーに押さえつけられているルフィは緊張感もなく大人しくしていたが、自分が殺される立場にいると知ると流石に取り乱し声を上げた。それを聞いたバギーは声を荒らげてツッコミを入れる。
「お前か!! ナミが言ってた“赤っ恥のバギー”ってのは!!」
「“千両道化のバギー”様だ!! 誰の鼻が赤くて恥だ!! 覚えておけクソゴム野郎!!」
まるで漫才のような緊張感のないやり取りに、バギー海賊団の面々は困り顔で汗を流す。住民達は恐怖でそれどころではないようだが。
「おめェみたいなちっぽけなルーキー一匹、おれ様が直々に手を下すのは初めてだ。どうしてだかわかるか?」
「暇だったのか?」
「違うわボケェ!! ⋯⋯おめェのその帽子、シャンクスから預かってるってのは本当か?」
「シャンクス!? シャンクスを知ってるのか!?」
シャンクスの名を聞き、ルフィは動揺を混じえた声で問う。唯一無二の友人であり、憧れであり、命の恩人でもあるシャンクス。そんな彼を思い出し、目の前の男に問いただす。
「あいつとおれ様は同じ船で見習いをしていた。解散後は別々に活動したが、今は同盟を組んだ兄弟分ってわけだ」
「シャンクスの兄弟分⋯⋯?」
「忘れもしねェ十年前、おれはシャンクスが左腕を失ったと聞いた。実際あってみりゃ麦わら帽子も一緒に消えててよ、話を聞けばおめェを助けるために腕を犠牲にしたらしいじゃねェか」
「⋯⋯⋯⋯」
ルフィはバギーの言葉に当時のことを思い出す。シャンクスはルフィを海王類から守るために腕を犠牲にしてしまった。そして彼から麦わら帽子を預かり、立派な海賊になって必ず返しに来ると誓ったあの日のことを。
「あいつの人生だ、別におめェを恨みやしないが⋯⋯おれは自分の目で確かめてェんだよ。おめェがその麦わら帽子に見合う男かどうか、あいつの腕を犠牲にしてまで生かす価値があったのかどうかをな」
バギーはそう言うと持っていた剣を振り上げる。シャンクスの腕が無くなったのを見たあの日、バギーはやるせない気持ちでいっぱいだった。そして麦わら帽子、今は亡き船長がシャンクスに預けた大事な帽子だ。それを同じようにシャンクスはルフィに預けた。その意味がわからないほどバギーは馬鹿ではない。
「いっちょ賭けといこうじゃねェか!! おめェはここで死ぬか、それとも生きるか!! “海賊王ロジャー”の死んだ、この死刑台でな!!」
ここで死ぬ程度の男なら見込みなどない。シャンクスの仇を殺し、麦わら帽子を彼に返すだけだ。しかしこの状況から生き延びるようなら、時代はルフィを選ぶのだろう。空には暗雲が立ち込め、これから来る嵐を予感しているようだ。今からここで何が起きようと、時代は必ず動き出す。
「折角ギャラリーもいるんだ。何か言い残すことはあるか?」
「⋯⋯⋯⋯」
ルフィは俯いているため、バギーの視線から表情はわからない。死の恐怖に覚えているのかと思いバギーはガッカリする。結局は自らの死を悟れば諦め、絶望する程度の男だったのかと。しかし──
「おれは!!! 海賊王になる男だ!!!」
ルフィは言い切った。よりにもよって海賊王が死んだこの場所で。広場から見上げる住民達、バギー海賊団、広場の周りを包囲する海軍。誰もが失笑し、何を言っているんだと呆れ果てる。しかしバギーだけは違った。
「そうか⋯⋯ならせいぜい生き延びて見せろ」
バギーはルフィを笑うことなく、しかし躊躇なく剣を振り落とす。ルフィの命を奪うために。広場では駆けつけたゾロとサンジがルフィを助けるべく死刑台に向かっていた。だがバギー海賊団に止められ、進むことが出来ない。
「バギー座長の邪魔はさせんぞ」
「クソッッ⋯⋯こいつ⋯⋯強ェ⋯⋯!!」
「早く死刑台を蹴り倒さなきゃならねェのに⋯⋯!!」
「残念だったな、ゴム男の死に様を見届けろ」
ゾロの刀を受け止めるカバジ。サンジの足技をいなすモージ。そして頭上には降りてくるギラりと光る刃。その様子を見ていたルフィは自身の死を悟り⋯⋯⋯⋯笑った。
「ゾロ⋯⋯サンジ⋯⋯ウソップ⋯⋯ナミ⋯⋯わりィ、おれ⋯⋯死んだ」
「⋯⋯⋯⋯!!!」
それを見たバギーは目を見開く。瞬間、稲妻が死刑台に降り注ぎ、死刑台を破壊し炎上させた。咄嗟に飛び退いたバギーは地面へと着地し、ルフィの行方を見届ける。彼はゴム人間ゆえに落雷では無傷であり、せいぜい燃えた死刑台で火傷をしたくらいだ。
「なははは!! やっぱ生きてた、もうけ」
しんと静まりかえるその場にルフィの笑い声が響く。誰もが麦わら帽子を被り直すルフィを見て、放心状態になっている。
「お前⋯⋯神を信じるか?」
「馬鹿なこと言ってねェでこの町を出るぞ。今がチャンスだ」
この好機を逃すまいとルフィ達は広場から一目散に逃げ出した。あまりの出来事に未だ動けないバギー海賊団は彼らに逃げられてしまい、カバジとモージが倒れた死刑台の前から動かないバギーに声を掛ける。
「バギー座長、お怪我はありませんか? 申し訳ないです、あいつらはすぐに追いかけて息の根を止めてみせます!!」
「⋯⋯いや、もういい」
「え? ⋯⋯それはどういう⋯⋯?」
「撤退だ!! 船を出すぞ!!」
「それはあいつらを見逃すってことですかい!?」
驚くカバジとモージを無視し、バギーはある男の顔を思い出した。そしてその死に際も。
「あの野郎⋯⋯笑いやがった」
人間誰しも死の直前は恐怖で涙するもの、しかしその状況でも笑った男がいた。バギーがこの世で最も尊敬し慕っていた男と同じ笑顔を、ルフィは死に際に見せたのだ。助かる未来が見えていた訳では無い、自分はここで最後だと自覚して尚笑ったのだ。
海軍はルフィ達を追って行った。しかし捕えられず逃げられるだろう。天候、風向き、状況。全てが彼らに味方する。まるで天があの男を生かすかのように。
「これがお前が選んだ男か⋯⋯シャンクス⋯⋯!!」
シャンクスが選んだ男を、バギーも認めざるを得ない。“麦わらのルフィ”は時代を変える男だと。海賊王ロジャーと同じように。
♦♦♦♦♦
「お前が5000万ベリーだと?」
「うわ!?」
麦わらの一味の海賊船、メリー号を目指していたルフィ達だが途中でスモーカーに阻まれてしまう。海軍本部大佐の腕っ節、そして
「悪運尽きたな⋯⋯⋯⋯⋯⋯!!?」
ルフィが捕まった、そう思われた時スモーカーの身体を凄まじい痛みと衝撃が襲った。彼は数十メートルにも渡り吹っ飛び、口から血を吐く。
「⋯⋯ガハッッ⋯⋯!! ⋯⋯なんだ⋯⋯!?」
スモーカーを襲ったのは拳、文字通り拳だ。バラバラの実の能力で切り離され、覇王色の覇気を纏った拳でスモーカーは吹き飛ばされた。そんな芸当が出来るのは一人しかいない。
「スモーカー大佐!!?」
「今援護を!」
スモーカーを殴り飛ばしたのは“千両道化のバギー”。本部からバギーには手を出すなと言われてはいるが、このままではスモーカーが殺されてしまう。そう判断し部下達が援護に入ろうとするが。
「⋯⋯!!!?」
「何が⋯⋯うッッ⋯⋯!!」
黒い稲光にも似た光が海兵達を襲い、意識を刈り取っていく。数百万人に一人が持つと言われる覇王色の覇気、現五皇の中でこの覇気の扱いはバギーがトップレベルに上手い。そこらの海兵に耐えられる代物では当然なく、彼ら全員意識を闇の中に持っていかれた。
「あいつ⋯⋯なんで⋯⋯?」
「行くぞルフィ!! 早く出航しないとヤバそうだ!!」
バギーが自分達が助けた理由が分からず、立ちすくむルフィだがゾロに促されすぐに足を動かした。嵐は一層激しさを増している、モタモタしているとこの町で立ち往生だ。
「シャンクスに免じて今回は見逃してやる⋯⋯ハデに生きてみやがれ、“麦わらのルフィ”!!」
逃げていくルフィの背中に語りかけながら、バギーは部下を待たせている船へと戻っていく。見逃すのは今回限りだと、次会った時は海賊同士本気で潰すと意気込み、彼は新世界にある本拠地へと帰還するのだった。
「我々の出る幕はなかったようだな⋯⋯ふッ、それにしても海賊か⋯⋯それがお前の選んだ道ならそれもまたよかろう」
そんな様子を通りの建物の上から見ていた黒いローブの男達。二人いるうちの一人はルフィを見て、ニヤリと口角を上げた。
「いいんですか? 一言も挨拶しないで」
「ああ、あの海兵に捕まるようなら助けるつもりだったがその必要もなかったからな。それよりも何か思い出したか、サボ」
「⋯⋯いいえ、まだ何も」
黄色い髪の男、サボは逃げていく麦わら帽子の少年を見るが特に思い出すことはない。ガープの話によれば彼がサボの失った記憶を取り戻すきっかけになるそうだが、どれだけ思い出そうとしても出てくるのはあの事故以降の記憶だけだ。
「“麦わらのルフィ”⋯⋯海賊王になる男⋯⋯か」
海賊王になると五皇の前で豪語し、天を味方につけ生き残った。サボの目からしても神か何かから愛されているとしか思えない奇跡だ。ガープの孫、ドラゴンの息子、そう考えれば自然と納得は出来るが。
「嵐が酷くなりそうだ、我々も引き上げるぞ」
「はい、ドラゴンさん」
ドラゴンに言われ、サボもその場から去ろうとする。しかし海賊王という言葉がどうにも頭に引っかかる。海賊王⋯⋯海賊⋯⋯自分は何故あの時一人で海に出ていたのか⋯⋯
『知ってるかお前ら⋯⋯盃を交わすと兄弟になれるんだ』
「⋯⋯!!?」
『海賊になる時同じ船の仲間にはなれねェかもしれねェけど、おれ達の絆は兄弟として繋ぐ!! どこで何をやろうがこの絆は切れねェ⋯⋯!!』
『これでおれ達は今日から⋯⋯兄弟だ!!!』
「ッッ⋯⋯!!? ⋯⋯⋯⋯エース⋯⋯⋯⋯ルフィ⋯⋯⋯⋯!!」
サボの頭の中を駆け巡ってきた記憶。それは紛れもない現実、彼の過去だ。兄弟と海賊を目指し、共に過ごした日々を彼は今確かに思い出した。
♦♦♦♦♦
「すごい⋯⋯すごいよヤマト兄!! パパ上に殺されかけてたのに雷がズバ〜ンって!! パパ上を倒しちゃった!!」
「ああ、流石はエースの弟だ!!」
死刑台から少し離れた建物の上で、ルフィが処刑されるのを見ていたヤマトとフリーダ。本来は船から出るなと言われていたのだが、彼らがそんな言いつけを守るはずがない。こっそり抜け出しここに来たのだが、偶然ルフィが天に生かされる様を見届けることができ、フリーダはテンションが上がっていた。
「いいな〜、僕も海に出てああやって自由に生きたいのに⋯⋯戻ったらまたあの島に⋯⋯」
ずっとカライ・バリ島にいたフリーダにとって、ルフィの生き方は正しく理想だ。きっと彼らは偉大なる航路に入り、様々な冒険を繰り広げることだろう。そう考えると羨ましくてたまらない。
「⋯⋯僕も昔は同じだったよフリーダ。カイドウに⋯⋯父親に縛り付けられて自由なんてなかった。まァバギーは君のことを本気で心配してるからなんだけど⋯⋯それでも辛いものは辛いよね」
ヤマトにとってフリーダの境遇というのは共感出来るものであるが同時に羨ましいとも思う。バギーはカイドウとは違い、本気で子供の身を案じ守ろうとしている。同じ境遇だろうがその本質は全く別だ。
「なァフリーダ。僕は君と同じくらいの歳の時に家出したんだ、ミズキに連れられてね。君が本気で親の元を離れて冒険したいなら、僕と同じように家出して彼の船に乗るんだ」
「彼って⋯⋯あの麦わらの人?」
「ああ、あの麦わら帽子はロジャーが“赤髪”に、そして“赤髪”が“麦わらのルフィ”に託した。彼になら、君を任せても大丈夫だと僕は思う」
そう言ってフリーダの背中を後押しする。フリーダはバギーのことを嫌っているわけではない。ただ今は親元を離れて自由に生きたい、それだけだ。故に答えは決まっている。
「うん⋯⋯僕行くよ!!」
「その意気だ! またいつか会ったら、冒険の話を聞かせてくれよ!」
フリーダは能力で浮かび上がると、名残惜しそうにヤマトを見る。生まれた時から一緒にいて、遊んだり修行したりした実の兄や姉のような存在だ。彼と別れるのは悲しいが、ここで決断しなければ何も変わらない。
「僕らの船が止めてあるところから西に麦わらの一味の船があるから、気をつけていけよ!」
「ありがとう⋯⋯じゃあね⋯⋯ヤマト兄!」
笑いながら手を振るヤマトを尻目に、フリーダは飛び去って行った。まだ見ぬ世界を冒険する、その希望を胸に抱いて。
♦♦♦♦♦
無事にローグタウンを出た麦わらの一味は、嵐の海の上を進む。まもなく偉大なる航路に入ろうというところでサンジが樽を皆の前に置き進水式を提案した。
「おれはオールブルーを見つけるために」
「おれは海賊王!!!」
「おれァ大剣豪」
「私は世界地図を描くため!!」
「お⋯⋯お⋯⋯おれは勇敢なる海の戦士になるためだ!!!」
「僕は世界中を冒険するため!!!」
六人はそれぞれの野望を語り、ついに偉大なる航路へと足を踏み入れる。
「⋯⋯ん?」
違和感に気づき最後に声がした方を見る。そこには青色のロングヘア、ピンクのグラデーションという髪型をし、歳に見合わない高そうな黒のコートを身にまとった少年がニコニコ顔で樽の上に足を置いていた。身長的にどう考えても足が届かないのだが、その少年は何故か浮いており皆と同じように樽に足を置くことが出来ていた。
彼の存在に皆一瞬固まり、そしてほぼ同時に叫び声を上げる。
『え〜〜〜!!? 誰だお前〜〜〜!!?』
・ルフィ 地味に懸賞金アップ。まァいうて東の海の中だからこんなもん。天を味方につけてるので少なくともここでは死なない。
・スモーカー バギーにぶん殴られて重症。死にはしないけどかなり大ダメージ。ちなみに裏でたしぎとゾロのやり取りもちゃんとやってます。
・ドラゴン バギーに出番取られちゃった。だけど息子の船出を見届けられたので満足。サボも記憶を取り戻して全部思い出した。ヨシ!
・バギー 雷くらいなら避けれる。見聞色ないけど仮にも五皇なんで。ルフィにロジャーやらシャンクスの姿が重なって色々思うところあるけど今回だけは見逃してあげた。ツンデレ。ていうか覇王色纏いでロギア殴れるんかな?
・フリーダ メリー号にこっそり乗船。まァルフィなら二つ返事でOKしてくれるよね