転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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凪の帯から

 

 

 ローグタウンは巨大な嵐に見舞われ、住民達は皆建物の中に避難した。先程まで大騒ぎだった死刑台の広場も、バギー海賊団が撤退したことで人っ子一人いなくなっていた。ある男を除いて。

 

「おれァ⋯⋯なんというものを見てしまったんだべ⋯⋯⋯⋯」

 

 緑色でニワトリのとさかのような髪をしたガラの悪い男。彼は死刑台の前で膝から崩れ落ち、感動の余り号泣していた。

 

「“麦わらのルフィ”⋯⋯すごい男だべ⋯⋯!! ⋯⋯あのバギー海賊団から逃げきるなんて⋯⋯まさかあの御方は神の加護を受けているんだっペか⋯⋯!?」

 

 彼は地元の150の町を締め上げるゴロツキのボス。しかし今はそんな肩書きは関係ない。奇跡を目撃した彼は感動し、死刑寸前から生き延びた麦わら帽子の男の顔を思い出す。まさに天が彼を生かしたとしか思えない突然の落雷、死の直前に笑うという度胸、覚悟⋯⋯全てが尊敬に値する。

 

「おれァもしかして伝説の瞬間に立ち会ってしまったんじゃないだべか⋯⋯⋯!! こうしちゃいられねェ!! すぐに手配書と新聞の記事を確認しなけりゃァ⋯⋯!!」

 

 手配書と麦わらが起こした事件の記事。それを確認するため、彼は感動を噛みしめながら自分のアジトへと帰っていくのだった。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

『えええ〜〜〜!!? 誰だお前〜〜〜!!?』

 

 麦わらの一味の海賊船、ゴーイング・メリー号は突然現れた密航者の存在にパニックだった。

 

「僕はフリーダ!! 今日からこの船に乗せてもらうことにしたから、どうかよろしくお願い致します」

 

「ああ⋯⋯こりゃご丁寧にどうも⋯⋯⋯⋯じゃねェんだよ!!?」

 

 密航者の少年は意外にも丁寧に頭を下げ、菓子折りらしき小包を渡してくる。それを受け取ったウソップが戸惑いながらも頭を下げるが、状況の異常さに気づきツッコミを入れる。

 

「ねェあなたローグタウンの子? 船を間違えてるみたいだけど、ここは海賊船よ?」

 

「間違えてないよ。ここは麦わらの一味の船でしょ? 僕は世界中を冒険したいから、この船に乗ったんだ!!」

 

 ナミが少し身をかがめてフリーダと目線を合わせて問いかける。彼女は男共には辛辣な言葉を投げることがあるが、子供には優しいのだ。

 

「おい⋯⋯どう思う?」

 

「ここはもう偉大なる航路(グランドライン)のすぐ側だぞ。何が出てきても不思議じゃねェ」

 

 一味の中でも実力者であるゾロとサンジは冷静だった。敵意がないことは見て取れるが演技かもしれないし、ここは偉大なる航路と目と鼻の先。どんな怪物が出てきてもおかしくないと、特にゾロは刀に手を置きいつでも戦闘に入れるように構えていた。

 そんな中ルフィはフリーダの顔を難しそうに表情を歪ませてじっと見ていた。額に指を当て何かを思い出そうと「ん〜」と唸っている。

 

「思い出した! フリーダ! お前フリーダだろ!! 久しぶりだな!!」

 

「覚えててくれたんだ! ⋯⋯って言っても僕は小さかったからあんまり覚えてないんだけどね」

 

 どうやらルフィはフリーダのことを覚えていたようだ。ルフィはまだ子供の頃にエースやウタと共にミズキに連れられ、一度だけカライ・バリ島に訪れたことがある。その時に少し交流があったのだが、フリーダは当時まだ4歳くらい、ルフィも10歳にもなっていなかったのでお互いうろ覚えだ。

 

「おいルフィ、このガキお前の知り合いかよ」

 

「ああ、こいつはミズキの息子だ」

 

「ミズキ? 誰だそりゃ」

 

 ゾロの問いかける答えるルフィ。しかしミズキという名前を聞いても皆ピンと来ないようで、頭に疑問符を浮かべる。今度はウソップが質問をしたので、それにルフィに変わってフリーダが答えた。

 

「僕のパパ上が率いるバギー海賊団の副座長だよ! ちなみに歳は40超えてるけど未だに自分のことを──」

 

「ちょっと待って!? パパ上が率いるって⋯⋯ということはあなたは“千両道化のバギー”の……?」

 

「息子だよ」

 

『は⋯⋯はァァァ!!?』

 

 フリーダがバギーの息子だと知り、ルフィ以外の面々は再び声を上げて驚いた。それもまあ当然だろう。ただでさえ正体不明の子供が乗り込んできたというのにそれが大海賊の息子だというのだ。

 

「バギーって名前聞き覚えあるな〜。誰だっけ?」

 

「おめェがさっきまで殺されかけてたピエロ野郎だよアホ」

 

「え!? あいつフリーダの父ちゃんだったのか!? てことはミズキはフリーダの母ちゃん!? ミズキって女だったのか!?」

 

 ルフィにゾロがチョップを入れてツッこむ。他の3人は固まっているがゾロはいまいちピンと来ていないのかある程度は冷静だった。

 

「ううん、ママ上は男だよ。ややこしいから皆間違えるけどね」

 

「ん〜? ミズキが男ってことは⋯⋯⋯⋯あの赤っ鼻がフリーダの母ちゃんなのか?」

 

「いやんなわけないだろ。どうやったらあれが女に見えんだよ」

 

 ミズキが男ならバギーが女なのかと言うルフィに、ウソップがツッこむ。どうやらある程度落ち着いたようで、サンジやナミもフリーダの話に耳を傾けていた。このまま口で説明しても埒が明かないと思ったのか、フリーダは肩からかけていた斜め掛けのカバンから二枚の手配書を取り出した。

 

「えっとね、これが僕の親なんだけど二人共男なの。ママ上⋯⋯ミズキの能力でパパ上とママ上の血を元に作られたのが僕ってこと。あ、ママ上って呼んでるのは二人共パパ上だとややこしいからだよ」

 

「偉大なる航路にはそんな能力者までいるのか!? 人間を作っちまうなんてよ」

 

 ウソップが感心したように頷き、偉大なる航路にいる能力者のぶっ飛び具合に驚く。ルフィやゾロ、ナミも同様の反応だ。だがサンジだけは何か思うところがあるのか顔を曇らせている。説明が終わると雨が降っているのもありフリーダはそそくさと手配書をカバンの中に戻した。

 

「あれ? 突然嵐が止んだぞ」

 

「本当だ。えれェ静かだな」

 

 しかし手配書をカバンに戻した瞬間、嵐が止み周囲は静寂に包まれた。あまりの天候の変わりように一同は困惑するが、航海士であるナミは血の気が引いたのか顔を青くし、この現象の原因を口にする。

 

「しまった⋯⋯凪の帯(カームベルト)に入っちゃった」

 

「カームベルト? なんだそりゃ?」

 

「よくわかんねェけどいい天気になってよかったな! そうだフリーダ、手配書のミズキの写真昔と違くねェか?」

 

「一年くらい前にイメチェンって言って身体を成長させてたよ。ママ上人気だから定期的に手配書の写真が更新されるんだよね」

 

「あんた達!! 呑気なこと言ってないで帆をたたんで船を漕いで!! 嵐の軌道に戻すの!!」

 

「漕ぐってお前⋯⋯これ帆船だぞ」

 

「そもそもなんでわざわざ嵐の中に⋯⋯」

 

 呑気に話を続ける一同にナミが怒りを向け怒鳴る。彼らは凪の帯に入ってしまったことの危険性がわかっていないのでしかたない。埒が明かないと思ったナミは怒りながらも今の状況を説明する。

 

「いい? 偉大なる航路は二本の航路に挟まれてるの!! それがこの無風の海域、凪の帯よ!!」

 

「へ〜⋯⋯じゃあこのまま偉大なる航路に入っちまえばいいんじゃないか?」

 

「それが出来たら苦労しないわよ!! 要するにこの海は──!!?」

 

「なんだ!? 地震か!?」

 

「馬鹿言え海上で地震なんて⋯⋯!?」

 

 ナミの説明の途中で船が大きく揺れだした。海上ゆえ地震などありえない、原因がわからず困惑するが皆がすぐに理解した。地震だと思った揺れは船が海中に潜んでいた巨大生物の頭に持ち上げられたことが原因。見れば周囲には船の何十倍もある巨大な海王類がところ狭しと並んでいた。

 

「⋯⋯ここは海王類の巣なの⋯⋯⋯⋯大型のね」

 

 泣きながらマストにしがみつきナミが言う。ウソップは泡を吹いて倒れ、他四人も海王類の多さと大きさに絶句していた。

 

「大丈夫⋯⋯ここは僕に任せて!!」

 

「フリーダ、何する気!?」

 

 フリーダが船に向けて両手をかざした。するとメリー号はゆっくりと浮き上がり、遂には勢いよく海王類の頭上から嵐の方目掛けて飛び去ってしまった。その速度は海王類が気づかないほどで、みるみるうちに船は嵐に近づいていく。

 

「おお〜〜!! すっげ〜〜!!」

 

「な⋯⋯なんとか助かりそうね」

 

「⋯⋯だけどよ、ちょっとずつ落ちてねェか?」

 

 ルフィが目を輝かせてはしゃぎ、ナミは危機が去ったことに安堵した。しかしそこでサンジが気づく、飛んでいる船がどんどん高度を下げていることに。

 

「実はこの技練習中だから、飛ばすことは出来てもその後の制御は利かないんだ。ママ上ならずっと飛ばせるんだけど」

 

「じゃあ結局ダメじゃねェか!? 落ちる〜〜〜!??」

 

「どこでもいい!! 船にしがみつけ!!」

 

 海王類がかなりの大きさだったので、当然そこから飛んだメリー号の高度も中々のものだ。少なくとも落ちたら人が死ねる高さ。嵐の中へと落下していくメリー号は運良く大破を免れ、なんとか本来の航路へと戻ることに成功した。

 

「⋯⋯し、死ぬかと思った⋯⋯⋯⋯!!」

 

「ごめんね、僕がもっと上手く出来れてば⋯⋯⋯⋯」

 

「いや、海王類のエサになるより百倍マシだ。助かった」

 

 命からがら脱出できたことに安堵し、その場に座り込んだり倒れたりする。中々クレイジーな脱出法だったのでフリーダは責任を感じているようだが、彼がいなければ今頃海王類の胃袋の中だとゾロがフォローを入れ感謝する。

 

「あ、そうだ。僕仲間に入っていい?」

 

「おう、いいぞ」

 

 ルフィが承諾し、フリーダの麦わらの一味加入が決まった。その場は疲労から誰もツッコミを入れることが出来ず、後からウソップが五皇の息子が一味にいたら命を狙われるとごねたのだが、元から殺されかけてただろと反論され言い返せなかったという。

 

 ♦♦♦♦♦

 

 

 

 

「ふざっけんじゃねェぞてめェ!!!」

 

 カライ・バリ島の中央にあるテント内にバギーの怒号が響いたそれを向けられているのはヤマトだが、彼は顔色一つ変えることなくバギーの話を聞いていた。

 

「フリーダをローグタウンに置いてきただと!!? どうりで帰りの道中一度も部屋から出てこないわけだ⋯⋯てめェ一体どういうつもりだ!!!」

 

「フリーダにとってそれが一番いい選択だと思っただけさ。少なくとも、こんな狭い島に閉じ込められてるよりずっといい」

 

「あいつはまだ子供だぞ!! いつ命を狙われてもおかしくねェ!! この島にいる方が安全に決まってらァ!!」

 

 バギーは声を更に張り上げ、ヤマトを責め立てる。こんなに怒りを見せるバギーは初めてなので、周りの部下達は動揺し身を小さくして様子を見ていた。

 

「だけど本人はそれを望んでいなかった。親の考えを押し付けるのがどれだけ残酷か、それは僕が一番わかってる」

 

「カイドウとおれを一緒にすんじゃねェ!! 大体なァ──」

 

「まァまァ、一旦落ち着きなよバギー。可愛い子には旅をさせろって言うでしょ?」

 

 それまで聞く側に回っていたミズキだが、さすがに止めに入りバギーを宥める。彼の姿は数年前と大きく変化し、15歳前後くらいだった見た目は18歳くらいにまで成長していた。ミズキの言葉を借りてわかりやすく言うならば中学生が高校生になった位の変化だろうか。無論元の可愛らしい面影はそのままに、美しく成長しているのは言うまでもない。

 

「旅をさせて死んじゃいましたじゃお終いだろうがよ!! てめェはすっこんでろミズキ!!」

 

「一応フリーダはボクの子供でもあるんだからね? 今までは何も言わなかったけど、そろそろ独り立ちさせてあげてもいいんじゃない?」

 

 ヒートアップするバギーをなんとか落ち着かせようとするが、相当怒っているようで中々収まらない。そんな様子を遠巻きから最高幹部達が眺めていた。

 

「いいじゃねェか⋯⋯好きにさせてやれよ、そっちの方がおもしれェ」

 

「たしかに⋯⋯フリーダ様のわんぱくさに手を焼いていたのは事実⋯⋯発散になるのならいいのかもしれませんね」

 

「だけどフリーダがバギーとミズキの子だと知られれば政府や他の海賊が黙っちゃいないよ。バギーの懸念も理解できる」

 

 シリュウ、ルナリア、ギオン。バギー海賊団の中でも四人しかいないクラスSS傭兵の地位にいる者達だ。彼らにヤマトを加えた四人がバギー海賊団の大幹部であり、全員が懸賞金8億を超える猛者でもある。そんな彼らが今回の件について意見を述べる。シリュウとルナリアはフリーダの独り立ちには概ね賛成、ギオンもそれ自体には賛成だがフリーダが狙われる可能性を危惧して反対側の意見を唱えた。

 

「だから!! こんな島に閉じ込めてたんじゃフリーダのためにもならないでしょ!! 心配なのはわかるけどじゃあどうするの!? 一生ここに閉じ込める気!!?」

 

「そんなこと言ってねェだろうがよ!! あいつが自分の身を守れるようになるまではこの島にいなけりゃ危険っつってんだ!!」

 

「⋯⋯少し熱くなりすぎですね、二人共」

 

 そうやって彼らが話している間にバギーの怒りに乗せられたのか、ミズキも声を荒らげて口論になった。ミズキがバギーにここまで反論するのは珍しいが、彼の意見が間違えていると思えばこうやって言い合うこともある。そもそもミズキの考え方ではフリーダがそれを望むのなら自由を与えてもいいと思っていた。しかし座長であるバギーが言うならばと今までは彼の顔を立てていたが、今回は少し度が過ぎている。

 

「ボクが君の言うことにただ頷くだけだと思ったら大間違いだからね⋯⋯⋯⋯バギー!!」

 

「よく言うぜ、大して聞いてねェじゃねェかおれの言うことなんてよ⋯⋯⋯⋯!!」

 

「ちょっとちょっとアンタら⋯⋯まさかこんなところでおっぱじめようってんじゃないだろうね?」

 

 まさかこんなところで喧嘩する気じゃないだろうねとギオンが口にする。しかしそう懸念した時には遅かった。ミズキは背中の鞘から短剣を引き抜き、バギーも覇王色の覇気を拳に纏わせている。

 

「君がボクに勝てると思う? 出した拳引っ込めるなら今だよ」

 

「上等じゃねェか⋯⋯ハデに座長の威厳ってもんを見せてやらァ!!」

 

 覇王色の覇気をミズキが短剣に、バギーが拳に纏わせてそれらがぶつかり合う。周囲には幹部以外いないので気絶させることは無いが、それでも余波でテント内の建設は破壊され赤い稲妻が巻き起こった。

 

「おいギオン、部下共を避難させねェと死ぬぞ」

 

「わかってるよ!! アンタらも動きな!!」

 

 その激突はシリュウ達でも冷や汗をかく程。このまま暴れられてはやばいと判断して彼らはそれぞれが行動に移った。

 

「ロジャーだって君やシャンクスを縛ったりしなかったでしょ!! 親の行動から少しは学んだらどう!!?」

 

「⋯⋯うぐ⋯⋯!? ⋯⋯今ロジャー船長は関係ねェだろうが!!」

 

 彼らはそれぞれの能力で飛び上がり、テントの頭上に開けた穴から外へ飛び出した。そしてカライ・バリ島の上空で覇王色の覇気をぶつけ合う。部下達は大半は避難しながらも初めて見るバギーとミズキの喧嘩を興味深そうに見ていた。しかしミズキの魔法の流れ弾が降ってくると、さすがに顔を青くして逃げ出した。

 

「んにゃろ⋯⋯いつまでもおれ様がてめェより実力が劣ると思ってんじゃねェぞ!!」

 

 バギーはミズキが放ってくる魔法をバラバラの実の能力で回避しつつ、手のひらに覇王色の覇気を集中させる。そしてそれをミズキを包み込むように放出させた。

 

神封(しんぷう)!!!」

 

「あぐッッ⋯⋯!!?」

 

 バギーの覇王色の覇気がミズキの動きを封じ、その場で固定する。彼の覇王色の覇気の強さは尋常ではなく、ミズキですら容易に脱出することは出来ない。ゆえにミズキは奥の手を使う。ヒトヒトの実幻獣種モデル悪魔の覚醒状態、堕天状態(ロストモード)だ。

 

「⋯⋯んぐ⋯⋯⋯⋯だァァ!!!」

 

「⋯⋯な!?」

 

 ミズキは拘束から脱出すると勢いをつけバギーの腹に蹴りを入れる。拘束を解かれたことで動揺したバギーは一瞬の隙を突かれ、回避が間に合わずその蹴りをモロにくらった。

 

「ぶべェ!!?」

 

 吹っ飛ばされたバギーは近くの空き地に叩きつけられ地面に倒れる。それを追ってミズキも空き地へと降り立った。

 

「ハァ⋯⋯まったく、手間かけさせないでよね」

 

「⋯⋯こんなもんでおれ様がやられると思ってんのか?」

 

「⋯⋯!!? ⋯⋯へェ」

 

 立ち上がったバギーを見てミズキは少し驚いた。今までのバギーなら本気のミズキの蹴りで気を失っていただろう。対剣士ならともかく、素の実力ではバギーは未だ五皇の域には到達していない。勿論バギーは純粋な体術で戦うタイプではないので、一概には言えないが。しかしバギーは立ち上がった。ミズキは思わず口元を緩ませた、バギーも強くなっていると。

 

「ちょうどいい機会だ、どっちが強いのかハデに決めようじゃねェか」

 

「⋯⋯わかった、ボクも出し惜しみ無しで行くよ」

 

 ミズキは短剣を投げ捨て、拳に覇王色の覇気を纏わせる。バギーに斬撃は通用しない。覇王色の覇気を纏わせれば一定の効果はあるが、それでもダメージは少ないだろう。ゆえに、拳で決着をつけようとする。バギーもそれに呼応するように全身に覇王色の覇気を纏わせた。そして二人が再び激突しようとするが──

 

「キャンドルロック!!!」

 

 彼らが動き出す少し前、足元にロウソクがまとわりつき動きを封じた。そんなことが出来るのはバギー海賊団でも一人だけだ。バギーはこの場に現れたその男の名を口にする。

 

「ギャルディーノ!! 邪魔すんじゃねェ!!」

 

「落ち着いて周りをよく見たまえ!! お前達がこのまま暴れれば間違いなくこの島は海の底に沈むガネ!!」

 

 バギーとミズキはギャルディーノに言われて周囲の様子に目を配った。ミズキの魔法の流れ弾によって建物は倒壊し、覇王色の覇気で弱い者は皆倒れて運ばれている。頭に血が上っていて周りが見えていなかったらしい。

 

「気持ちはわかるがここは冷静に話し合うガネ!!」

 

「けッ!! 話し合いでどうにかなりゃとっくにそうしてらァ」

 

 バギーがギャルディーノの言葉を吐き捨てるように言うが、彼もこれ以上被害を増やすのはマズいと思ったのかそれ以上抵抗しようとはしなかった。ミズキも同様で、なんとか暴れるのを止められたようだ。そこに急いで追いかけてきたのかヤマトが若干息を切らしながらやってきた。それを視認したミズキはため息を吐きながら彼に問いかける。

 

「ハァ⋯⋯ヤマト、フリーダはローグタウンに置いてきただけ? もしかしてどこかの船に乗ってたりする?」

 

「⋯⋯!! よくわかったね。麦わらの一味の船に乗ったはずだよ」

 

「“麦わら”の船にか!?」

 

「やっぱり⋯⋯まァそうなるよね」

 

 バギーは驚き、ミズキはやっぱりかと自身の考えが正しかったと確信する。フリーダがローグタウンにそのまま留まるとは考えられない。どこかの船に乗っていっただろうというのは見当がついた。そしてどこの船に乗るかだが⋯⋯麦わらの一味しか考えられないだろう、きっとそういう運命なのだ。

 

「バギー、もしフリーダの身に何かあればすぐに僕が助けに行く。だから今だけはフリーダを自由にさせてやってくれないか?」

 

「⋯⋯何かあってからじゃ遅いだろうがよ」

 

 ヤマトは再度、真剣な眼差しでバギーに頼み込む。先程のように怒鳴りはしないが、まだバギーは否定的な意見を持っているようだ。そこにミズキが付け加えた。

 

「ま、ルフィのとこに行ったなら大丈夫でしょ。何よりボクとバギーの子供だよ? 少しは信じてあげない?」

 

「だァァ!! わかったよ!! ただし少しでもやべェことになったらすぐに連れ戻す!! いいな!!?」

 

「ああ! ありがとうバギー!!」

 

 遂にはバギーの方が折れ、フリーダをしばらくの間自由にさせることになった。バギーも本心では彼の意志を尊重させたいと思っているのだ。だが少しでもフリーダの身に危険が訪れればすぐに駆けつけ助ける。そうなればもちろん、今度こそこの島で大人しくしてもらう。

 

「ところでお前達⋯⋯これの後始末、どうする気だガネ?」

 

『へ?』

 

 ギャルディーノに言われ、彼が指さす方を見た。倒壊した建物はざっと百を超える。その後、これらの修復には一週間以上を費やし、その間彼らに休みが与えられることはなかった。

 

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