転生男の娘は道化の海賊を王にする   作:マルメロ

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 ──エース公開処刑まで残り6時間、大監獄インペルダウン。

 

 LEVEL6にてジンベエとクロコダイルを解放したルフィ達は、一旦ニューカマーランドに身を隠すとエース公開処刑が迫ったタイミングで一斉に脱獄を試みた。闇雲に外に出ても海軍に追われる時間が長くなるだけだというクロコダイルの提案だ。

 ハンニャバル署長を筆頭にインペルダウン側も必死になって脱獄を阻止しようとするが、上に上がる度に檻から囚人を解放していくルフィ達を止めるのは難しかった。それでも時間稼ぎは出来ただろうが、想定外の敵が彼らの背後から迫ってきた。

 

「ゼハハハハ!! 遠慮すんじゃねェよ、おれは政府側の人間だぜ!?」

 

「王下七武海“黒ひげ”が明らかな敵意を持って侵入!! 目的は不明!!? ⋯⋯うわァァァ⋯⋯!!」

 

 王下七武海の一人であるマーシャル・D・ティーチが正面入口に現れ看守達を襲い始めた。ルフィ達に戦力を割いていたインペルダウンはそれを止めることが出来ず、LEVEL4までの侵攻を許してしまった。

 

「お前が黒ひげ⋯⋯!?」

 

「んん? そういや名乗ったことはなかったな。ゼハハハハ!! こんなとこにいていいのか? 始まっちまうぜ? 兄貴の公開処刑がよ」

 

 LEVEL4にて鉢合わせるルフィ一行と黒ひげ海賊団。黒ひげがエースを海軍に差し出した張本人だと知るとルフィは激高し殴り掛かる。しかしそれをジンベエが諌め、今はエースの救出が最優先だとルフィに諭す。

 そして黒ひげ海賊団はLEVEL6へ、ルフィ達は脱獄を目指しそれぞれ歩みを進めた。

 

「⋯⋯さすがに閑散としてやがるな。まァいい⋯⋯ゼハハハハ!! どうだお前ら!! その檻の中でいっちょ殺し合いをしてみねェか!? 生き残った奴はおれの仲間としてシャバに連れ出してやる!!」

 

 バギー海賊団による襲撃事件、その際にLEVEL6の囚人も逃げ出したことを知っている黒ひげは檻の中に入っている囚人の少なさを承知の上でここにやってきた。あの時逃げ遅れた者、あえて逃げなかった者、その後に捕らえられた者を仲間に引き入れるために。

 

「⋯⋯!! おお⋯⋯Mr.ドフラミンゴ。上でジンベエやクロコダイルと会ったぜ。ゼハハハハ!! どうやら七武海の中でおめェだけ連れて行ってもらえなかったようだな。どうだ? おれの仲間になるならそこから出してやるぜ?」

 

「フッフッフッフッフ!! 奴らは恐れているのさ⋯⋯おれを連れ出せば上からの刺客に命を狙われるからな。“黒ひげ”⋯⋯お前にその覚悟はあるのか?」

 

「ゼハハハハ!! 面白ェじゃねェか!! 海賊は常に命懸けだ!! 今更追われることにビビりやしねェよ!!」

 

 黒ひげがドフラミンゴと会合している頃、正面入口ではルフィ達が軍艦を奪い逃げ出すところだった。

 

「あちしが開けるわ⋯⋯正義の門!!」

 

「オカマ君⋯⋯いや待て、その必要はなさそうじゃ⋯⋯!!」

 

「え?」

 

 ボン・クレーが自分の身を犠牲に正義の門を開けようとしたその時、門がゆっくりと開き始めた。本来正義の門が開かなければルフィ達は逃げることが出来ない。ゆえにインペルダウン側が門を開ける理由などないはずなのだが。

 

「とにかく今がチャンスじゃ!! わしらが軍艦を奪ってくるまで持ちこたえてくれ!!」

 

 離れた場所に避難していた軍艦をジンベエとクロコダイル、そして彼の部下であるMr.1が奪い、ルフィ達はそれに乗り込むことでインペルダウンからの脱獄に成功した。

 海賊麦わらのルフィに鬼姫ヤマト、新旧七武海のジンベエにクロコダイル、革命軍のサボ、イワンコフとイナズマという錚々たる面々を乗せた軍艦はエースの公開処刑が行われるマリンフォードの街をめざして進み出した。

 

 そしてエース公開処刑まで3時間に迫った時、海軍本部ではセンゴク元帥がこの戦いの意味について話していた。

 

「お前の父親は海賊王ゴールド・ロジャーだ!!」

 

「⋯⋯!!!?」

 

 海賊王の血が生きていたのかと海兵や七武海、そしてそれを映像電伝虫で見ていた民衆達は驚き、海軍が白ひげと全面戦争になろうともこの戦いに踏み切った意味を知る。その話が終わった時、マリンフォードに迫る海賊船の艦隊を見張りの兵が発見する。

 

「現れました!! 総勢四十三隻!! 新世界に名を轟かせる白ひげの傘下達です!!」

 

 白ひげ海賊団傘下の船が現れたことにより海兵達に緊張が走る。全員が身構え、白ひげの登場を警戒した。

 

「グララララ⋯⋯何十年ぶりだセンゴク」

 

 海中から船をコーティングし、三日月型の湾内に現れたのは今なお世界中で語られる伝説の海賊。かつてのあのロジャーと戦い、互角に渡り合ったまさに最強の男。

 

「おれの愛する息子は無事なんだろうな⋯⋯!!」

 

「オヤジィ!!」

 

「ちょっと待ってな⋯⋯エース!!」

 

 エースの無事を確認し、白ひげは大気を殴る。彼にとっては挨拶代わりの一発、されどその拳は大気を揺るがし、津波を呼び込む。世界を滅ぼす力を持つと言われるグラグラの実、その力は白ひげが使用することでより強大になる。

 

「とんでもねェモン呼び寄せたなァ⋯⋯」

 

「何を今更言うちょるんじゃあ」

 

「気味が悪いねェ〜〜」

 

「勢力で上回ろうとタカをくくるなよ!! 最期を迎えるのは我々かもしれんのだ!! あの男は⋯⋯⋯⋯世界を滅ぼす力を持っているんだ!!」

 

 センゴクの声と共に津波が押し寄せる。それはマリンフォードの街を全て覆い尽くすほどの規模であり、直撃すれば全員ひとたまりもないだろう。

 

氷河時代(アイスエイジ)!!!」

 

「青キジィ⋯⋯若僧が⋯⋯!!」

 

 海軍本部最高戦力の一人、大将青キジがヒエヒエの実の能力を行使して迫り来る津波を氷漬けにする。

 

「止まった⋯⋯!!」

 

「砲撃用意!! モビーディックを破壊しろォ!!」

 

「湾内まで氷漬けに⋯⋯!!」

 

「いい足場が出来た⋯⋯!!」

 

「行くぞ野郎共ォ!! おれ達の力を見せてやれェ!!」

 

「隊長達が出てきたぞ!! 砲撃を休めるな!!」

 

 白ひげ海賊団の隊長達、そして海軍側も中将と七武海が動き出した。攻め入るは白ひげ海賊団の海賊艦隊四十七隻。迎え撃つは世界政府の二大勢力、海軍本部と王下七武海。どちらが勝ち、どちらが敗れようとも世界の運命を大きく揺るがす戦争。それが今、始まった。

 

 ──その時だった。

 

「な⋯⋯なんだ!? この揺れは!?」

 

「また白ひげの地震か⋯⋯!!」

 

 海兵達が集まっている処刑台前の広場。そこを正体不明の巨大な揺れが襲った。これも白ひげのグラグラの実の能力かと彼らは警戒するが、白ひげもまたその様子に眉をひそめていた。

 

「⋯⋯!! 地面が崩れて⋯⋯!!?」

 

「た、退避〜〜!! 地中に落下するぞォ!!」

 

「なんだ⋯⋯!!?」

 

 揺れが強くなったかと思うと広場の地盤が突如崩壊、衝撃と共に地面が崩れて大きな穴が空いた。それに落下しそうになる海兵達は必死に地上に逃れようとする。突然の出来事に海兵達だけでなく白ひげ海賊団側も怪訝な顔をして驚く。

 

「⋯⋯一体何が起こって⋯⋯!!」

 

「⋯⋯!! 地面から誰か出てきたぞ!!」

 

「ま⋯⋯まさか⋯⋯!! あいつは⋯⋯!!?」

 

 白ひげ海賊団VS海軍本部。世界を揺るがすかと思われた頂上決戦は、意外にもここで終わることになる。今から始まるのは戦争などではなく⋯⋯祭りだ。

 

「センゴク元帥⋯⋯!! あの男は⋯⋯!!」

 

「生きていたのか⋯⋯“鬼の跡目”と呼ばれた男!!」

 

「カハハハハ⋯⋯!! 少し派手にやりすぎたか?」

 

 地面を破壊したのは白ひげの能力などではなく、一人の人間の馬鹿力。それを行った男は自身が作り出した穴から飛び出し、海兵達のど真ん中に着地する。周囲を囲む名だたる海兵達を見回し、それでもなお笑う男に海兵達は驚愕する。元ロジャー海賊団の船員、インペルダウンLEVEL6を脱獄した世界最悪の脱獄囚にして、ガルツバーグの惨劇を引き起こした張本人。

 

「⋯⋯!!」

 

「ガハッッ⋯⋯!!」

 

「え!!?」

 

 浅黒い肌に筋骨隆々な身体。見た目にそぐわぬスピードで加速した男は王下七武海の一人、ゲッコー・モリアに狙いを定めると彼の腹を殴りつける。武装色の覇気で強化された拳にモリアは吹き飛ばされて血反吐を吐き、白目をむいて倒れてしまった。

 

「ゲッコー・モリアが⋯⋯!!?」

 

「七武海が一撃で!!?」

 

 貴重な戦力である七武海が倒され、海兵達の中でどよめきが広がる。それは海賊側も同じであり、突如現れた目的不明の実力者にどう動けばいいか困惑していた。

 

「ダグラス・バレット⋯⋯!! あの野郎何しに⋯⋯!!」

 

「王下七武海ってのもこんなもんか⋯⋯おれの目的は世界最強⋯⋯そのためには」

 

 モリアを倒したバレットが次に目をつけたのは世界最強の男、海賊艦隊の中心にいる白ひげを睨む。その視線の先に恐ろしい脚力で駆け上がると、自身の目的を果たすべく現世界最強に襲いかかる。

 

「やらせないよい!!」

 

「⋯⋯!! カハハ!! 1番隊のマルコか!!」

 

 白ひげに迫るバレットの行く手を阻み、青い炎で彼の攻撃を防いだのは一番隊長の不死鳥マルコ。白ひげの右腕として彼の背中を守る彼は、腕を不死鳥の羽に変え目の前のバレットを睨みつける。

 

「バレット⋯⋯おめェわざわざオヤジの首を取りに来たのかよい!!」

 

「カハハハハ!! 白ひげのジジイだけじゃねェ⋯⋯おれの目的は世界最強だ!!」

 

 氷の大地に降り立ったバレットは乾いた笑いと共に薄い笑みを浮かべる。自身の目的は世界最強。目的は白ひげだけでなく、この場に現れるであろう最強の海賊達だ。

 

熱息(ボロブレス)!!!」

 

「⋯⋯!!? ぎゃあああ〜〜!!?」

 

「今度はなんだ!!?」

 

 突如白ひげ海賊団傘下の海賊船を襲ったのは炎の光線。新世界に名を轟かせる海賊団の船を燃やし尽くし、船に乗っていた海賊達は悲鳴と共に命を落とした。

 

「⋯⋯!!? 空を見ろ⋯⋯!!」

 

「あれは⋯⋯龍!!?」

 

「まさか⋯⋯!!?」

 

 空を見た海兵や海賊達の間に衝撃が走る。雲の隙間から顔をのぞかせているのは巨大な青い龍。歴戦の海兵や白ひげ海賊団はその龍の正体を見破り息を飲む。生きとし生けるものの中でも最強の生物と呼ばれる海賊、五皇百獣のカイドウ。まさかの五皇の登場に大将やセンゴクですら冷や汗を流す。

 

「ウォロロロロ!! 久しぶりだな⋯⋯白ひげのジジイ!!」

 

「カイドウ⋯⋯てめェおれの首でも取りに来たのか?」

 

「ジジイ⋯⋯お前は後で消してやるさ。だが今回の目的はそうじゃねェ」

 

「“百獣のカイドウ”だあァァァ〜〜〜!!?」

 

「新世界の五皇が何故ここに!?」

 

「百獣海賊団に動きはなかったはずでは!?」

 

 空から白ひげを見下すカイドウ。自分の首でも取りに来たのかと警戒を含めた言葉で白ひげが問うが、カイドウはそれを肯定はしなかった。もちろん白ひげの首もいただくが、目的はそれではないと。

 そして新世界で目立った動きはないと報告を受けていた海兵達は予想だにしなかった大物の登場に震え上がる。だがこの場に現れたのはカイドウだけではない。

 

「ハ〜ハハハ!! どきなおめェら!! 白ひげの首はおれがもらう!!」

 

「⋯⋯あれは!!?」

 

 海軍の包囲の左側から海兵達をなぎ倒し現れたのは巨大な雲に乗った老婆。巨剣を振りかざし白ひげに迫るその女の名を、海兵達は叫んだ。

 

「び⋯⋯ビッグ・マム⋯⋯!!?」

 

「カイドウだけでなく⋯⋯ビッグ・マムまで!!?」

 

 五皇ビッグ・マム海賊団船長、シャーロット・リンリン。幼き頃に巨人族の村を壊滅に追い込んだ生まれついてのモンスター。自らの能力で生み出した雷雲、ヘラに乗り両手には巨剣ナポレオンと太陽プロメテウス。それらを携えて白ひげに迫る。

 

「ぬゥゥ⋯⋯!!」

 

「おめェは⋯⋯!!」

 

「オヤジには近づけさせねェ!!」

 

 それを止めたのは身体をダイヤモンドに変化させた巨漢の男。3番隊隊長、ダイヤモンドジョズ。ナポレオンの斬撃を抑えた彼にビッグ・マムは多少驚くが、すぐに笑みを浮かべた。

 

「邪魔すんじゃねェよ〜〜!! 宝石風情がァ〜〜!!」

 

「ジョズ隊長ォォ〜〜〜!!?」

 

 プロメテウスの炎で吹っ飛ばされたジョズを心配し声を上げる白ひげ海賊団。しかしそんな声など気にもとめず、ビッグ・マムは白ひげに向かって一直線に突き進む。

 

「モアモア⋯⋯100倍砲(ひゃくばいほう)!!!」

 

「ああ!?」

 

「なんだ⋯⋯!? 馬鹿でかい砲弾!!?」

 

 その刹那、彼らの頭上に巨大な影が現れた。それを見たビッグ・マムは動きを止め、影を生み出している物体に目をやる。周囲にいた白ひげ海賊団もそれを見て驚き、そして影の正体を理解すると更に驚いた。影の正体は通常のものより100倍は大きい巨大な砲弾だ。

 

「あれは⋯⋯バーンディ・ワールド!!?」

 

「“世界の破壊者”⋯⋯!!? 生きていたのか!?」

 

「バロロロロ!! まずは挨拶代わりだ!! 防いでみやがれ!!」

 

 船の上でこれまた巨大な大砲を軽々と持ち上げ、笑う巨漢。世界の破壊者と恐れられた男は高笑いしながら言った、防いでみろと。モアモアの実の能力で巨大化した砲弾は重力にしたがって落下してくる、このままでは白ひげ海賊団も海軍もまとめて全滅だ。

 

「⋯⋯騒がしくなってきたな」

 

「⋯⋯!!!」

 

 しかし次の瞬間、砲弾は真っ二つに割れてしまった。否──斬れてしまったと言った方が正しいだろうか。巨大な斬撃で砲弾は真っ二つに切断され、それぞれ方向を変え海へと落下していった。

 

「“鷹の目”⋯⋯!!」

 

「バロロ⋯⋯やるじゃねェか七武海!!」

 

「⋯⋯⋯⋯」

 

 世界最強の剣士、王下七武海ジュラキュール・ミホーク。小さい島ほどもある巨大な砲弾を斬ったにも関わらず、彼は特に息切れをすることも無く黒刀を背中の鞘に戻した。

 

「どうなっている!? カイドウにビッグ・マムだけでなくバーンディ・ワールドだと……!! 新世界で動きはないという報告はなんだったんだ!?」

 

「せ、センゴク元帥……!! 報告します!! ……たった今監視船が一隻帰還したのですが……乗っていた海兵が全滅しています!!」

 

「なんだと!?」

 

 部下からの報告を受けたセンゴクは顔を青くする。考えたくはないが、つまり新世界の動きをこちらは一切把握出来ていなかったということだ。加えて監視船が全滅している。つまり何者かの企みがあることは明らかだ。

 

「フン……知将とまで呼ばれた男が随分振り回されているようだな。“仏のセンゴク”よ」

 

「……貴様!! レッドフィールドか!?」

 

 いつの間にか処刑台に立っていた老人。赤を基調とした高級な服装に身を包んだ男を見てセンゴクは即座に戦闘態勢をとる。かつてロジャーや白ひげとも渡り合った大物海賊だ。

 

「貴様ら……一体何の目的でここに!? まさか揃って白ひげの首を取りに来たわけではあるまい……!!」

 

「老いたニューゲートの命になど興味はない。我もニューゲートもお前も……随分と衰えたものだ。まァいい、焦らずとも我らの目的はすぐにわかる」

 

 そう言ったレッドフィールドは一瞬センゴクの隣で拘束されているエースに目をやるが、すぐにそこから飛び降り戦場に身を置く。

 

「……おいおい、こりゃあやべェんじゃねェの」

 

「まいったね〜〜。全く想定していない事態だよォ……」

 

「おんどれ海賊共が……何をしに来ちょるんじゃ……!!」

 

 大海賊達をその目で見た大将達ですら背筋を凍らせ冷や汗を流す。もはやエースの処刑どころでない。彼らの目的はわからないが、ここで暴れられたら海軍側の全滅も有り得る。

 

「ウォロロロロ!! これで全員か? あのムカつくジジイがまだ来てねェじゃねェか!!」

 

「マンママンマ!! あいつも確実に殺さなきゃねェ!! 今までどこに姿を隠してたんだか」

 

「⋯⋯?」

 

 カイドウとビッグ・マムの言葉に海兵達は疑問符を浮かべる。まるでこの場にこれだけの大物が集まるのを知っていたかのような言葉だ。だがその意味を彼らはすぐに知ることになる。

 

「⋯⋯? なんだ⋯⋯影?」

 

「あれは⋯⋯? ⋯⋯海賊船!?」

 

「空飛ぶ海賊船だ⋯⋯!!? まさか⋯⋯!!?」

 

 その時、また頭上に影が現れる。龍でもなく砲弾でもなく、今度は海賊船だ。それを見た歴戦の海兵達はありえないと目を疑った。それは二十年以上前に姿を消した伝説の海賊、かつてロジャーや白ひげと渡り合った空飛ぶ海賊の船だったからだ。

 

「ジハハハハ!! 何十年ぶりだおめェら!! お礼参りに来てやったぜ!!」

 

「き、金獅子海賊団だァァ〜!!!!?」

 

「まさか⋯⋯二十年も前に失踪したはずでは⋯⋯!!?」

 

 海賊大艦隊の大親分、金獅子のシキ。フワフワの実の能力で自らの海賊船と島を数個丸々浮かせ、この戦場に乗り込んできた。

 

「ひやホホホ!! まるで地獄⋯⋯しかし老い先短い私の生涯最後の戦いの場にはふさわしい!!」

 

「お、お前は!?」

 

「出直してこい!! ひよっこ共!!」

 

「⋯⋯!!?」

 

 そして広場の右側から現れた巨漢の老人。覇王色の覇気で周囲の海兵を気絶させ、広場の中心まで進軍してくる。彼もまた、伝説の海賊の一人だった。

 

「“頭領”チンジャオ⋯⋯!!」

 

「なんなんだこの面子は⋯⋯!! ここで一体何が始まるんだ!?」

 

 白ひげ海賊団VS海軍本部の戦いの場だったはずのマリンフォードは伝説の海賊達が集う死地と化した。その様子をシャボンディ諸島で映像電伝虫を通して見ていた民衆や記者達はその様子に息を飲んだ。

 

「カイドウにビッグ・マム、“金獅子”にパトリック・レッドフィールド⋯⋯バーンディ・ワールドに“頭領”チンジャオまで⋯⋯!!」

 

「せ、世界は一体どうなっちまうんだ⋯⋯!!」

 

「早く映像電伝虫を切れ!! これ以上の失態は世間に見せられん!!」

 

「そ、それが⋯⋯何者かが映像電伝虫をジャックしているようでして⋯⋯!! 映像が切れません!!」

 

「なんだと⋯⋯!!?」

 

「センゴク元帥!! 大変です⋯⋯!! 沖合より海賊船が接近!! 百獣海賊団にビッグ・マム海賊団、ワールド海賊団に西の海(サウスブルー)の八宝水軍です!!」

 

「な⋯⋯!!?」

 

 次から次へと想定外の事態が舞い降りてくるこの状況に、さすがのセンゴクも頭を悩ませる。まずは海賊達の目的を断定しなければ、そう考えた時にちょうど答えを教えるかの如く男の声がマリンフォードに響いた。

 

『聞いているか? 海軍本部に裏世界のクズ共、そして平和ボケした民衆達よ。おれはフェスティバル海賊団船長、ブエナ・フェスタ!!』

 

「ブエナ・フェスタだと!?」

 

「海王類の海難事故で死亡したはずでは⋯⋯!? どこから通信を⋯⋯!!」

 

 どこからか電伝虫のスピーカーで語りかけるのはロジャー世代の大物海賊、ブエナ・フェスタ。海軍は海王類の海難事故で死んだと断定していた男だが、生きていたのかと動揺が海兵達の間で広がる。

 

『ロジャーの死から二十年以上⋯⋯奴の一声で大海賊時代が始まり、海は宝を求める海賊達で溢れかえった。ロジャーの解き放ったひとつなぎの大秘宝(ワンピース)という夢は⋯⋯大海賊時代という名の熱狂的な祭りを生み出した!!』

 

 フェスタは言う。ロジャーが作り上げたこの大海賊時代は紛れもなく世界最高の祭りだ。祭り屋として彼は完全に負け、存在意義を失った。しかし彼は出会ったのだ。ロジャーの強さを継ぎ、鬼の跡目と呼ばれた男に。そして考えを改める。ロジャーの大海賊時代は確かに熱狂的だが、しかし同時に物足りないと。

 

『だがこのおれに言わせりゃあ物足りねェ!! 宝探しで海賊王を決めるって? 生ぬりィんだよ!! 海賊なら戦い、殺し合い、奪い合え!! ここに集まっているのはおれが選び抜いた海賊王候補達!! そしてバレットはおれが思う最も最強に近い男だ!! 奴にはおれの持つとっておきの宝を持たせてある!!』

 

「クワハハハ!! 面白い男だ!! ブエナ・フェスタ!!」

 

 フェスタが叫ぶように語るそれを聞いている裏世界の皇帝達、その中でもモルガンズは特に興味を示した。それもそうだろう、あの戦争の場にあれだけの面子が集まること自体が特大のスクープなのだから。しかしそれでもまだ序章に過ぎない。フェスタの口からとんでもない発言が飛び出す。

 

『宝の中身を教えてやろうか? この祭りの場で最後まで生き残った最強の男!! そいつに与えられるのは海賊王の称号だ!! そう、すなわち宝の正体は⋯⋯ラフテルへの永久指針(エターナルポース)だ!!! 

 

「な⋯⋯!!?」

 

「なんだと!?」

 

「そんなものが⋯⋯!?」

 

 海兵や白ひげ海賊団、記者や民衆達の顔が一様に強ばる。予め聞かされていたカイドウやビッグ・マムなどのフェスタに集められた海賊達以外は、モルガンズさえ高笑いをやめて絶句していた。

 歴史上海賊王の一団しかしたどり着いたことの無い最後の島、この世の全てが置かれているという伝説の島への永久指針(エターナルポース)。そんなものが存在するのかと。

 

『さァ始めようか⋯⋯これから始まるのは誰も見た事のない世界一の熱狂!! ロジャーすら手の届かねェ領域におれは到達する!! 大海賊時代は終わり、新たな時代がやってくる!! その時代の名は──』

 

 

 とどめようのない──最強の熱狂(スタンピード)だ!!! 

 

 

 

 

「カハハハハ!! さァかかってこい!! 最強はこのおれだ!!」

 

「ウォロロロロ!! 行くぞ野郎共!! 宝を奪い、海軍や白ひげのジジイ共を滅ぼせ!!」

 

「楽しくなってきたねェ⋯⋯!! マ〜マママ!!」

 

「ジハハハハ!! 海にのさばるミーハー共とは違う⋯⋯本物の海賊ってのを見せてやる!!」

 

「覚悟しろ海兵共⋯⋯!! おれを陥れた落とし前を付けさせてやる!!」

 

「フン⋯⋯精々潰し合え⋯⋯我の計画の実行にはまだ役者が足りていない」

 

「宝はあの男の元か⋯⋯ゆくぞサイ、ブー!!」

 

 フェスタの演説が終わると、伝説の海賊達が動き出した。その顔には自分こそが王になるという絶対的な自身と、野望に満ちた笑みが浮かんでいた。

 

「せ、センゴク元帥!! 船から海賊達が次々と上陸してきます!!」

 

「このままでは⋯⋯“火拳”の処刑どころではありません⋯⋯!!」

 

「し、指示を⋯⋯!! どうすれば⋯⋯!!」

 

「狼狽えるな!!」

 

「⋯⋯元帥殿!?」

 

「誰が相手であろうと我々が容易く滅ぼされる訳にはいかん!! 同じことだ⋯⋯我々は速やかに公開処刑を実行し⋯⋯海賊共を根絶やしにする!!」

 

 センゴク元帥は落ち着きながらも力強く言葉で告げる、逃げることなど出来ないと。幸いなことに同盟を組んでいるはずのカイドウとビッグ・マム以外はそれぞれ敵対関係にあるようだ。ならば海軍にとってそう不利な状況でもない。苦しい戦いになるだろうが、引く訳にはいかないのだ。

 

「オヤジ⋯⋯」

 

「ああ⋯⋯おれ達のやることも変わらねェさ。野郎共ォォ!! 向かってくる敵は返り討ちにし、必ずエースを奪還しろォォ!!」

 

『ウォォォォォォ!!!』

 

 白ひげ海賊団側もまた、覚悟を決める。彼らの目的は元よりエースの奪還。相手が誰であろうとそれは変わらない。白ひげの覇気の篭った声に触発され、誰もが雄叫びを上げる。逃げる者など一人もいない、それが世界最強の海賊達の覚悟だ。

 

 ──そうして世界最高の実力者達による熱狂的な祭りが幕を開けた。誰もが己の目的を果たすため、命をもかなぐり捨てて戦いに身を投じる。その熱狂故に気づかなかったのだろう。本来ならこの場にいるはずの実力者達が⋯⋯まだ来ていないことに。

 

 ──ズズン⋯⋯ドドドドドォォォォォォン!!! 

 

「な、なんだ!?」

 

「爆発!?」

 

 戦いが始まろうとしたまさにその時、影が二つ広場に舞い降り、巨大な爆発が襲った。実力の低い者達はそれだけで意識を失うような巨大な爆発。しかし爆発にしては、倒れた者はまるで無傷でただ泡を吹いて倒れている。そして一部の者は気づいた。これはただの爆発ではなく⋯⋯とんでもないレベルの覇王色の覇気のぶつかり合いだと。

 

「エースの処刑だと思って来てみれば⋯⋯とんでもない状況になっているな。間に合ってよかった」

 

「てめェら⋯⋯!! このおれ様を差し置いて世界一の祭りだァ? ハデに舐めたことしやがって!!」

 

「あ⋯⋯あいつらは!?」

 

 そこに現れた二人の男。彼らを見た者はすぐに正体に気づいた。この場にいる者でそれを知らない者などいないだろう。五人いる新世界の皇帝達、三人は既にこの場にいたが、残り二人⋯⋯それが彼らだ。

 

「ま、また海賊船が⋯⋯!! あれは⋯⋯“赤髪”と“千両道化”の!!?」

 

「あはは♪ ちょっと遅刻だったかな? まァ戦いには間に合ったからいいよね!!」

 

 そして現れた赤髪海賊団の船、レッド・フォース号。そしてバギー海賊団の船、ビッグ・トップ号。そのうちビッグ・トップ号の前に乗り指揮を執る宵魔女の姿を見て彼らは確信した。五皇がこの場に集結したことを。

 

「ラフテルへの永久指針(エターナルポース)か⋯⋯あれは海に捨てたはずだが⋯⋯どうやって回収したんだ?」

 

「さァな、ミズキ君に聞いた時は半信半疑ではあったが⋯⋯こんな状況では信じざるを得ないな」

 

 海兵達は戦慄する。レッド・フォース号の甲板に立っている男達。赤髪海賊団の幹部でも、バギー海賊団の幹部でもないその者達を見て、まさかと目を疑った。

 

「“冥王”シルバーズ・レイリーに⋯⋯スコッパー・ギャバン!! それにその後ろにいるのは⋯⋯!!」

 

 スペンサー、クロッカス、サンベル⋯⋯他にもいるが、その男たちの名を特にロジャー時代からの海兵、そして白ひげ海賊団はよく知っていた。昔とは少し風貌は違うかもしれないが、確かに元ロジャー海賊団の船員達だと。

 

「あれはまるで⋯⋯ロジャー海賊団の再来!!?」

 

 かつてはロジャー海賊団の見習いであったシャンクスとバギー、その二人が海賊同盟の大船長として⋯⋯今度は元ロジャー海賊団を率いてこの場にやってきた。

 

「ロジャー船長の残した宝を⋯⋯弄ぶような真似はさせない!!!」

 

「ギャハハハ!! ハデによく見ていやがれ世界!! 海賊王になるのはこのおれ様だ!!!」

 

 ──二人の考えは違えど、確かな意志を持って世界に向けて宣言した。ロジャーの意志を守ろうとする者、そして彼の意志を継ぎ新たな王を目指す者。役者の揃ったこの戦場に於いて生き残るのは誰か、それは誰にも予想出来ない。

 

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