ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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今回はおやすみ話です。
よろしくお願いします。


閑話休題①

sideツキノワ

 

「ねぇ…まだ?」

 

「ちょっと待って。もう少しよ」

 

「ツキノワ君。動かないで、じっとしてて!」

 

どうも、ツキノワです。

突然だが今俺は両サイドを美女2人…具体的には姉のミトとその親友アスナ先輩に挟まれて、髪をいじられている。

本当に何故こうなったかと、ため息をつきながら経緯を思い出す。

 

 

数時間前、俺たちは第2層主街区【ウルバス】に着いた俺たちは一旦男女で別れ、そのまま先にいい宿をそれぞれ確保してから転移門のアクティベートを行った。

一気に流れ込んでくる人波を避けて宿に戻ると、ミトからすぐにこっちに来るようメッセージが届いた。

キリトに断りを入れを入れてから宿に着くと、突然部屋に連行された。

何事かと驚いていると

 

「ツキノワ、出掛けるわよ」

 

ミトが宣言しだした。

 

「え?俺も?」

 

聞き返すと

 

「当たり前じゃない」

 

呆れられた。

ではなぜ部屋に連行したのかと聞くと

 

「久しぶりにお揃いにしましょ!」

 

と言われる。

リアルで出掛ける時とかに、たまにお揃いのコーデで出掛けていた俺たちなのだが、ここでもそれがしたいらしい。

しかし、今の俺たちにそんな服はないので無理だが、どうするのだろうか?

そう思ってると

 

「ツキノワ君!こっち来て!」

 

ベットに腰掛けてたアスナ先輩が、ポンポンと隣を叩きながら呼ぶ。

 

「何ですか?」

 

呼ばれるままにそちらに向かい座ると

 

「「動かないで!」」

 

と両脇を固め髪を触り出す。

ここまで来てようやく何をお揃いにするのか理解した。

 

「まさか…俺も2人の髪型にするの?」

 

2人はクラウンハーフアップという、三つ編みにした髪を後ろでまとめる髪型である。

ミトはそこに上からポニーテールにしているが、俺にはそこまでの髪の長さはない。

 

「三つ編み出来るほどの長さはないけど?」

 

「だから普通のハーフアップにするのよ」

 

即答するミト。

 

「そもそも何で突然そんな事言い出しだよ」

 

恥ずかしくてつい、ミトを軽く睨みながら言うと

 

「私がしたくて提案したんだけど…嫌だった?」

 

反対側のアスナ先輩から、上目遣い+甘えるような声のダブルパンチを受けた俺は、一瞬で心の壁は崩壊した。

 

「…別に嫌ではないです。恥ずかしいだけなので。…もう好きにして下さい」

 

これが惚れた弱みというやつか。

そこ、チョロいとか言うなほっとけ。

 

「うん!ありがとう!」

 

キラキラの笑顔に顔が熱くなる。

 

「あら?ツキノワ、顔真っ赤よ」

 

ミトにからかわれ

 

「うっさい!」

 

つい立ち上がってしまう。

 

「あぁ!ツキノワ君!」

 

アスナ先輩から怒られた。

 

「…すんません」

 

解せぬ。

隠すどころか動くことも出来ない俺は、ずっと姉にニヤニヤされながら髪をいじられることとなった。

 

「よし!それじゃあ行こう!街探索!」

 

妙に元気なアスナ先輩とそれを優しく見るミト、そして既に疲れた俺。

 

「それで?どこから行くんすか?」

 

アスナに尋ねると

 

「決まってない!」

 

元気よくノープランと返ってきた。

まあ、そりゃそうか。俺もアスナ先輩も初めて来たんだし。

そこはテスターのミトに聞こう。

 

「ミト?ここのオススメは?」

 

「私も攻略一筋だったからあまり詳しくはないの」

 

マジかガイド無しかよ。

どうしたもんかと考えてると

 

「せっかくだし端から全部見ていこうよ!」

 

まあ、それもありか。

 

「そうね。知らない街の探索もこのゲームの」

 

「「醍醐味でしょ(だろ)?」」

 

アスナ先輩とハモリながらミトの言葉を遮る。

その事に先輩と目を合わせ、吹き出す。

 

「「アハハハハハ!!」」

 

「もう!2人に揃って私のセリフを取らないでよ!」

 

「「ほら!速く行くよミト!!」」

 

そう言いながら歩き出す俺たち。

 

「待ちなさい!私を置いていかない!」

 

慌てて追いかけてくるミト。

そんな騒がしい俺たちの休日が始まった。

 

「腹が減りました」

 

美味そうな匂いにつられて腹が鳴る俺。

戦闘して間もない俺達は飯をまだ食べてないので、腹が減っているのだ。

 

「そうね、まず腹ごしらえからね。こっちにいいNPCレストランかあるわ。こっちよ」

 

ミトが心当たりがあるのか先導する。

 

「へ〜、何がオススメなの?」

 

楽しみで俺が聞くと

 

「この2層は牛がメインなの。だから通称【モーモー天国】。ツキノワが大好きなお肉料理が多いのよ」

 

「おお!楽しみ!」

 

期待値の高い答えが返って来る。

 

「フフ、そんなに楽しみ?」

 

隣を歩くアスナ先輩が優しい笑顔で聞いてくる。

 

「はい!肉料理好きですから!」

 

「そう、向こうに帰ったら何か作ってあげるね」

 

「本当に!?楽しみにしてます!」

 

「あなた達!こっちよ。はぐれないでね」

 

アスナ先輩と話してるとミトに急かされる。

慌てて追いかける俺たち。

だからこの時、アスナ先輩が顔真っ赤だったのには、気づかなかった。

 

「さあ着いたわ。ここよ」

 

歩いて数分、だいぶ入り組んだ所にあったその店は外観はとてもオシャレで女性受けが良さそうな印象だった。

 

「わあ!可愛いお店!」

 

「でしょ?私も気に入ってたの」

 

現にミトとアスナ先輩はウキウキであり俺も楽しみだった。

 

「いらっしゃいませ」

 

お店に入り人数を伝えてそのまま席に着く。

 

「何にしようかな〜」

 

「どれもオススメだけどアスナはこれとか好きそうじゃない?」

 

ワイワイと楽しそうにメニューを考える2人に対し

 

「俺は決めた」

 

速攻で決める俺。

 

「「はや!?」」

 

それに驚く2人。

 

「ツキノワがそんな即決なんて珍しいじゃない」

 

普段外食する時大体家族で1番メニュー決めに時間かかるのが俺だ。

だからミトが珍しいそうに言うと

 

「食べたかったのがあったから見つけてすぐそれにした」

 

そう話してるとアスナ先輩も決めたらしい。

 

「すみません!」

 

NPCを呼びそれぞれのメニューを伝えて金を払う。

ミトとアスナ先輩はビーフシチュー、俺はハンバーグセットとご飯大盛りが来た。

それぞれの頼んだ物が来た所で

 

「「「いただきます!」」」

 

食べだした。

肉汁たっぷりのハンバーグはジューシーで噛めば噛むほど肉の旨味が広がる。

 

「うまい!」

 

思わず大きい声が出るが咎める人はいない。

2人も自分の食べ物に集中しているのだ。

 

「うん、やっぱりここは美味しい」

 

「美味しい!コクがあって味にも深みがある!」

 

それぞれの反応を見せながら舌鼓をうつ俺たち。

そのまま食べ進め

 

「「「ごちそうさまでした!」」」

 

見事に全員完食した。

 

「あ〜食った食った…」

 

「美味しかったぁ!また来ようよ!」

 

「ベータ時代より美味しかったかも…さてと、2人とも?デザートは?」

 

「「食べる!」」

 

まさかデザートまであるとは。

 

「本当は違うやつがオススメなんだけど、大きいからそれは今度ね。代わりに違うやつを頼むわ」

 

そう言うミトはNPCを呼び止め 、注文を始めた。

 

「ミルクゼリー3つとブラックコーヒー3つ」

 

まとめてミトが支払うと

 

「ミト!?自分の分は払うよ!」

 

慌てて止めるアスナ先輩。

 

「せっかくだもの。私が奢るわ」

 

「でも…」

 

まだ抵抗があるアスナ先輩だが俺は遠慮しない。

 

「じゃあ、ゴチになりまーす!」

 

そんな話をしていると注文したやつが来た。

それは真っ白でプルプルなゼリーだった。

 

「「「いただきます」」」

 

商品が来たことで観念したアスナ先輩も素直に食べだした。

 

「!!うまい!」

 

牛乳本来の甘みにハチミツだろうか、それが牛乳の匂いと味にいい感じにマッチしている。

そのままコーヒーを流し込むと、コーヒーの苦さとゼリーの甘みが見事に調和されていて更に旨味が増した。

女性陣に関しては、最早感想をなく目をキラキラさせながら黙々と食べていた。

 

「「「ごちそうさまでした」」」

 

手を合わせ大満足した俺たち。

そのままひと息ついた俺たちは次の行動を開始した。

 

「さて、次は何があるかなっと…」

 

キョロキョロしていると後ろから

 

「アスナ?」

 

とミトの呼び声が聞こえた。

振り払るとアスナ先輩がある店を見ていた。

そこはアクセサリー屋だった。

 

「じゃあ、次はあそこに行きましょうか。行くわよアスナ」

 

「あ、ミト!ちょっと待ってよ!」

 

2人して入っていくので俺も続くことにした。

中に入るとオシャレなアクセサリーが所狭しと並んでおり男の俺には少し居づらかった。

適当にブラブラしていると2人がある所で立ち止まっていた。

 

「2人とも?どうしたの?」

 

不思議に思い尋ねると

 

「「な、なんでもない!」」

 

と言って他のものを見に行った。

2人の様子に首をひねりながらも俺もブラブラしてると、あるものが目に止まった。

幾つか種類のあるそれを俺は2つほど速攻で買った。

ついでにキリトに買ってやると2人は外にいた。

 

「買い物は終わった?」

 

「終わった。お待たせしたみたいでごめん」

 

「買い物はこういうものでしょ?気にしないでいいよ?」

 

そう言われたので気にしない事にして俺たちはそのまま街に向かって歩き出した。

 

「う〜ん!遊んだね〜!」

 

「ええ、これで大体街のことは分かったわね」

 

2人とも満足したのか楽しそうに話してる。

そんな2人を見てそろそろか思っていると

 

「じゃあ、そろそろ一旦解散しましょか」

 

ミトが言い出し

 

「そうね、また明日から頑張りましょ!」

 

アスナ先輩が便乗した。

 

「その前に少し待って」

 

ここだと思い俺は2人を呼び止めた。

 

「「なに?」」

 

2人とも立ち止まって聞き返してくる。

 

「これ。今日の記念に」

 

そう言ってトレード画面を見せる。

それを見た2人はオブジェクト化する。

それは雫の形をしたネックレスだ。

恐らく何らかの石を雫の形に削ったのだろう。

色は薄ピンクと紫で2人の色をイメージしたものだ。

特に特殊効果はないが記念にと思い、買っておいたのだ。

 

「ツキノワ君!ありがとう!大切にするね!!」

 

「ありがとうツキノワ。大事にするわ」

 

そう言って笑う2人。

喜んでくれた様で何よりだ。

ほっとしていると目の前にトレード画面が出てきた。

 

「実は私達もあそこで買ってたのよ」

 

「良かったら見てみて」

 

言われるままにオブジェクト化するとそれはリングチェーンだった。指輪には赤色の石がはめ込まれており、シンプルで男らしいデザインだった。

 

「それはSTR値を上げる効果があるから使ってみて」

 

「ありがとう2人とも。大事にしますね」

 

そう言って有難く受け取る。

その時突然アスナ先輩が顔を真っ赤にする。

 

「どうしたの?」

 

突然だったのでビックリして聞いたら

 

「なんでもない!」

 

と言って顔をそらされた。何で?

 

「ハイハイ、明日も早いし解散するよ」

 

ミトに急かされ解散することにした。

 

「じゃあ2人とも。また明日」

 

「ええ、また明日」

 

「ま、また明日!おやすみツキノワ君!」

 

そう言って別れる俺たち。

帰り道あるものをオブジェクト化しながら貰ったものを見る。

 

「まさか、キリトにやるものの違うやつを選ぶなんてな」

 

そう、2人がくれたのは俺がキリトに選んだやつの色違いバージョンだったのだ。

キリトのは黒でVIT値を上げるやつだ。

 

「ま、いっか。とりあえず明日から頑張るか!」

 

そう言いながら俺は帰路に着いた。

 

sideミト

 

我が弟ながらにくい事をする。

そう思いながらずっとニヤけてる目の前の親友を見る。手には貰ったネックレスがあり、それを大切そうに撫でているのだ。

 

「はぁ…アスナニヤけすぎ」

 

呆れながら言うと慌てたように返してくる。

 

「に、ニヤけてなんかないよ!?」

 

「ここでは感情がオーバーに演出されるから顔に出っぱなしよ」

 

「うそ!?」

 

慌てて顔を触って確認するアスナ。

そして気付いたのか顔を真っ赤にして唸りながら枕に顔を埋める。

優月、あと一押しよ。

頑張りなさい。

そして明日奈、あと一歩よ、自覚しなさい。

そう思いながら私は寝る用意に入る。

 

「じゃあ、私は寝るわね。おやすみアスナ」

 

「私も寝る。おやすみミト」

 

そう言いながら電気を消す。

明日からも頑張ろう。

そう思える充実した1日だった。




ありがとうございました。
ツキノワがミトを呼び捨てにするのは自分が兄を呼び捨てだからです。
姉貴と呼んだり姉系の言葉で呼ぶ時は甘えてる時か精神的にも弱ってる時だけです。
それでは失礼します。

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