ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

12 / 98
全く話が進みませんがよろしくお願いします。


11話

sideアスナ

 

「「「「…え?」」」」

 

今、何が起こったの?砕けた?

私のウインドフルーレが砕けたの?

あまりの光景に何が起こったか分からず呆然としてしまう。

 

「すみません!すみません!手数料とかは全て返します!本当にすみません!」

 

「ち、ちょっと待ってくれ!武器の強化失敗はプロパティの入替、強化素材のロスト、最悪プロパティ減少、この3つだろ!?これはどういう事なんだ!?」

 

いち早く正気を取り戻したキリト君が何か喚いてる。

だけどほとんど耳に入ってこなかった。

 

「先輩!!大丈夫ですか!?」

 

「アスナ!しっかり気を持って!」

 

ツキノワ君とミトが両方から私を支えてくれる。

でも凄い喪失感が身体中を包む。

どんどん身体が冷たくなって沈んでいくような感覚に襲われる。

あの子とならどこまでも行ける気がした、なのにここにはもういない。

剣士で無くなった私はどうなるのだろう?

みんなに置いてかれるのだろうか。

そう考えて、あの1人で絶望していた時の感覚を思い出した。

 

「…いて…いで…」

 

「…キリト、話はどうなった?」

 

「とりあえず手数料は返してもらった」

 

そう話し声が聞こえて、私の前にトレード画面が表示される。

私は機械的にそれを受け取りそのまま呆然としている。

 

「先輩、一度宿に行こう?」

 

そう言って優しく手を引いてくれるツキノワ君と背中をさすってくれるミトに宿まで連れていってもらう。

部屋に入る前にツキノワ君が私の両手を強く握った。

 

「先輩!俺は先輩を置いて行かないから!ずっと傍にいるし、先輩にはずっと傍にいて欲しい!俺はどれだけ遠くに行っても、必ず姉貴と明日奈先輩の所に帰ってくるから!だから…」

 

ここまで言って一息つくと

 

「行ってきます!明日奈先輩!」

 

その言葉が私を温かく包み込んでくれる。

彼の握ってくれている手から温かい熱が伝わってくる。彼の優しく強い目が私を見てくれている。

その事が凄く嬉しくて仕方なかった。

 

「…うん、いってらっしゃい優月君」

 

きっと彼はまた無茶をするのだろう。

それでもきっと大丈夫、だって約束してくれたから。

 

「じゃあ深澄、行ってくる。明日奈先輩をよろしく!」

 

「分かってるわ、いってらっしゃい。優月達こそ気をつけなさい」

 

「それこそ分かってる!」

 

そのまま飛び出す優月君。

それを見届けてから私達は部屋に入った。

入った途端ミトが顔を覗き込んできたと思ったら、突然ニヤニヤしだした。

何やら嫌な予感がしたが聞かずにはいられなかった。

 

「…何?」

 

「いや〜?顔色が良くなったどころか、顔が真っ赤よアスナ、多分過去一で!それに凄いニヤケ顔!そんなに嬉しかった?」

 

そう言われ思わず手鏡で確認してしまう。

そこには自分とは思えないくらい乙女の顔をした自分がいた。

 

「〜っ!深澄!見ないで!」

 

そう言って布団を頭まで被って隠れる。

そんな私の背中を優しくさする深澄。

 

(やっぱり私は優月君が好きなのだろうか?)

 

そんな事を悶々と考えながら、私達は何も言わず、2人を信じて待っていた。

 

sideツキノワ

 

「キリト!いるんだろ!」

 

フレンドリストから場所確認をして路地裏に来た俺は、どこかにいるであろうキリトを呼んだ。

そしたら奥にある角から手が出てきて、手招きしていた。それに従いそっちに向かうとキリトともう1人、見慣れない女性プレイヤーがいた。

 

「キリトおまたせ。そっちが噂の情報屋の鼠か?」

 

「オウ、オレっちが鼠こと【アルゴ】だヨ!ヨロシクなツキノワ!」

 

初対面の人にいきなり名前を呼ばれて驚く。

なるほどこれが情報屋か。

 

「俺なんかの名前を知ってるなんて流石だな」

 

「何言ってるんダ?ツー坊は有名人だゾ?世界でたった1つのユニーク武器を持ち、防戦とはいえボスと1人で渡り合った剣技の持ち主だしナ!それにアーちゃんに続くニュービー期待の新星だしナ!」

 

何やらもの凄く恥ずかしいこと言われた気がする。オマケにへんなあだ名までつけられたがもう気にしないことにした。

 

「それで?状況は?」

 

「まずアルゴの調べた結果を聞くぞ。アルゴ、どうだったんだ」

 

お互いの自己紹介が終わりキリトが先を促した。その途端、急に真面目な顔に変わったアルゴにつられ俺も真剣に聞く体勢をとった。

 

「まず同様の事件がないか調べた結果、既に7件起きていたヨ」

 

「7件も!?」

 

「マジか…」

 

俺もキリトもこれには驚いた。

それだけ起きていて何故表立って話題に上がっていないのだろうか?

そのままアルゴの話は続く。

 

「それと、強化した時に武器が壊れる現象だか、1つだけ条件がある事が分かったんダ」

 

「その条件って何だよ!?」

 

思わずアルゴに詰め寄ってしまう。

そんな俺をキリトが慌てて止める。

 

「落ち着けってツキノワ!それでアルゴ、その条件って?」

 

「お、オウ…その条件っていうの八…【エンド品】を強化した時なんだヨ」

 

聞き慣れない言葉が出てきたのでキリトに聞いてみた。

 

「エンド品って何?」

 

「エンド品っていうのは強化可能回数を使い切った武器の事を言うんだ。例えばツキノワのイビルファングの強化可能回数は10回だろ?だからMAXで +10って事になるんだ。だが失敗も1カウントされる。そういうのも含めたのが、強化可能回数なんだ」

 

なるほど分かりやすい、でもおかしい。

 

「先輩のレイピアはまだ回数を使い切ってないだろ?」

 

「ああ、つまりこれは…」

 

「エンド品とすり替えた強化詐欺事件って事ダ」

 

俺たちにとって剣は相棒であり、半身と言っても差し支えない。

そんなものを騙し取るなんて言語道断だ。

拳を握りしめ頭に血が登るのを必死に抑えていると、

 

「鍛冶屋が動いたぞ」

 

キリトの声にハッと顔を上げ、3人で後をつけていくと、普通の居酒屋に着いた。

鍛冶屋が向かっていったのはある集団だった。

 

「あいつら、今日のボス攻略にいた連中だ。確か…」

 

「レジェンドブレイズだ!あいつら急に出てきた連中だとは聞いたけど、そういう事かよ!」

 

あいつらのご大層な装備を見ていると、ある事に気づいた。

 

「なあ、壊れたのはエンド品なんだよな」

 

「ああ」

 

「という事は先輩のレイピアは壊れてないって事だよな」

 

「ああ、それが?」

 

「所有権はどうなるんだ?」

 

そう、装備は落としたり盗まれたりしても、1時間以内なら所有権は残っているのだ。

 

「…!そうだ!所有権はまだアスナにある!まだ取り戻せる!」

 

「でも後10分ぐらいだぞ!どうするんだよ!?」

 

「【コンプリートリィ・オールアイテム・オブジェクト】だ!それならギリギリ何とかなる!」

 

そう言いきってから一気に街を駆け抜けるキリト。

 

「俺も行く!アルゴ!監視を頼む!」

 

そう言って俺も近道の為に裏路地に駆け出す。

色々ごちゃごちゃした路地裏だったがパルクールをやっている俺はどんどんペースを上げて駆け抜ける。

宿の前に着く時にはちょうどキリトも着いたらしく

 

「速っ!?どこから来た!?」

 

大袈裟に驚くキリトを無視する。

 

「早く行くぞ!時間がない!」

 

2人で階段を駆け上がり部屋に飛び込む。

突然俺達が部屋に飛び込んできたからか、ミト達は凄く驚いていた。

 

「あなた達、突然何!?」

 

「ごめんミト!話は後!ツキノワ!時間は!?」

 

「後5分!ギリギリだぞ!」

 

「分かった!アスナ!今は俺の言う事を聞いてくれ!」

 

そう言ってどんどんメニューをいじる。

そして

 

「それだ!イエーーーース!!!」

 

ポチッとタップする。

 

「何してるの?キリトは」

 

「【コンプリートリィ・オール・アイテム・オブジェクタイズ】だって」

 

「コンプリートリィ?」

 

「コンプリートリィ!」

 

アスナ先輩の疑問にキリトが元気に答える。

 

「オールアイテム?」

 

「オールアイテム…っ!」

 

ミトの疑問に俺が答え時その意味に気づいた俺は、慌ててキリトの襟首を掴み部屋を出ようとする。

 

「キリト!早く部屋を出るぞ!ミト!後でメッセージ送るからあと頼む!」

 

「ぐぇっ!ツキノワ、何すんだよ!」

 

「いいから大人しく出なさい!このバカキリト!」

 

俺達の姉弟の連携に、強制退室させられるキリト。

 

「何すんだよ、ツキノワ!!」

 

「バカかお前は!オールアイテムって事は服とかも出るって事だろうが!」

 

「…あっ」

 

やっと意味を理解したキリトは顔を赤くする。俺はミトにメッセージを送りながらため息をつく。

 

「はぁ…差し入れでも買いに行くぞ」

 

俺はキリトを連れてそのまま差し入れを買いに出かける事にした。

 

outside

 

コンコンッ

 

「ツキノワとキリトだけどもう大丈夫?」

 

「うん、大丈夫だよ」

 

アスナから返事を受け部屋に入るツキノワとキリト。

アスナとミトはベッドの上に腰をかけており、2人ともご機嫌そうだった。

 

「2人とも、本当にありがとう!」

 

「一時はどうなると思ったわよ…二重の意味で」

 

ジト目で男子2人を睨むミト。

 

「俺は言葉しか知らなかったし」

 

「時間が無かったから焦ってたし」

 

「仲良く言い訳しない!」

 

ツキノワとキリトは言い訳するものの、ミトにまとめてバッサリ切られる。

 

「まあまあ、ミト…それより一体何がどうなってるの?」

 

ミトを宥めながらアスナがもっともな疑問を口にする。

「その説明はアルゴが来てからするとして、まずはこれ食べましょう!」

 

ツキノワがそう言って出したのは肉まんみたいものだった。

 

「何これ?ベータにこんなのあったっけ?」

 

「いやなかったぞ。次の街の名前にもなってる【タラン饅頭】だとよ。きっと肉まんじゃないか?」

 

キリトがそう言いながら、食べようとした瞬間

 

「うにゃぁ!?」

 

「きゃあ!?」

 

「んんっ!!」

 

3人の悲鳴じみた声が聞こえ何事かと見た瞬間、

 

「ん…んゅう…」

 

「何…クリーム?」

 

「アッツ…」

 

それぞれ左からアスナ、ミト、ツキノワである。

顔にベッタリ付いているのはクリームなのだが、妙に色っぽい景色に思わずフリーズするキリト。

その時ガタンッ!!と何かが落ちた音がする。

音の方に振り向くと

 

「あ、アーちゃん達に…き、キー坊のガ…一体何が…いや待って本当に何がどうなってるの??」

 

アルゴが口調を変えるのを忘れるくらい動揺していた。

 

「待てアルゴ!ちゃんと説明するから!!するから話を聞いてーーー!!」

 

 

アルゴが合流したところでツキノワ達は事情説明に入った。

 

「なるほど、そういう事ね。随分手の込んだ事をしてるのねあいつら」

 

それを聞いたミトが吐き捨てるように呟く。

 

「アルゴ。あの鍛冶屋の名前は分かる?」

 

「ああ、あいつの名前は【ネズハ】ダヨ。スペルはNezhaダ。他にもナーザという読み方もあるんダ」

 

「ナーザ…ナタクの事だな。立派なレジェンドブレイズだ」

 

ツキノワ達の予感は当たりらしい。

問題はその手口だ。

 

「あのカーペットって何なんだ?」

 

まずツキノワが目をつけたのはカーペットだった。

何もヒントがない以上、手当たり次第に探るしかない。そう考えていたのだ。

 

「あのカーペットは専用のメニューがあって、カーペットの上にあるアイテムをそのメニューに一気に入れられるのよ」

 

「うーん、それにしてもかなり敷き詰められてた様な…」

 

「確かにかなりあったな。あれじゃあ、カーペットそのものも見えない気が…」

 

「…カーペットそのものが見えない…?」

 

 

「カーペットの機能を使って搾取する事は出来ないの?」

「多分無理だゾ。あれは全部収納しちまうからナ。その中からすぐに1つのアイテムだけをすぐに取り出すのは至難の業だゾ」

 

みんながあれこれと議論する中ただ一人、ミトだけは最初話して以降黙り込んでずっと考え込んでいた。

 

「…ミト?どうした?」

 

その様子に気づいたツキノワが声をかけ、それに全員が注目しているが、それでも思考を止めない。

やがて

 

「…すぐに…取り出す…あぁぁぁぁ!!分かった!」

 

突然大声をあげるミトに全員が驚く。

 

「あったわよ!武器をすぐに変える方法!」

 

「お、おうその心は?」

 

「【クイック・チェンジ】よ!!」

 

「「…!そうか(カ)!そういう事か(カ)!」」

 

キリトとアルゴも理解したらしいが、ビギナーであるアスナとツキノワには全く分からなかった。

 

「ちょっと待て、テスター同士で話を進めるな!」

 

「そうよ!クイックチェンジって何!?」

 

「ああ、すまないナ。クイックチェンジっていうのは簡単に言うと、予め登録しておいたアイテムをすぐに装備するスキルの事ダ。例えばツー坊が曲刀を弾かれた時、すぐに別の武器に変えれたら便利だロ?それを可能にするのがクイックチェンジなんダ」

 

「なるほど…でもそれがどう関係するんだよ。システム的に武器を手に入れた訳では…」

 

「ところがそうじゃないんだ。ネズハは客から預かったものをアイテムストレージに入っていなくても、手にすることで一時的に自分の物として扱えるんだ。もちろん所有権は客にあるんだけど、戦ってる最中に仲間の武器を使えるのと同じで、クイックチェンジを使うことも出来るんだ」

 

「でもその操作画面はどこにあるの?」

 

「それは恐らく敷き詰められた武器の下よ。そうすればこっちからは見つけにくいわ」

 

1つ分かれば後はトントン拍子で解決していく。彼らの推理はどんどん現実味を帯びてきて仮説として充分なものとなって来ていた。

 

「後は誰が囮をやるかだけど…頼む!キリト!」

 

「はぁ!なんでだよ!!」

 

「私は分かってても、もう勘弁よ…」

 

「私とツキノワは武器が特殊すぎてすぐにバレるわ」

アスナは心情的理由、ミトとツキノワは装備している武器が理由で目立ちすぎるのだ。

つまり消去法でキリト以外にいないのだ。

反論の隙がないことを唸っていたキリトはやがて

 

「分かったよ…俺がやるよ…」

 

諦めて囮役を引き受けた。

ちなみにキリトが既にクイックチェンジを習得している事も理由の一つである。

 

「強化を頼む。種類は丈夫さ、素材は持ち込みだ」

 

フルプレートの男が自身の武器を鍛冶屋に突きつけた。

 

「かしこまりました…。それでは始めます…」

 

カンッカンッカンッと鉄を打つ音が10回ほどなった時剣が、砕け散った。

 

「す、すみません!すみません!」

 

「…いや、謝罪は結構だ」

 

そう言って装備を全て一瞬で入れ替えた。

そこには1人の少年の姿があった。

 

「…!あなたは…!」

 

「驚くことは無い。あんたがやった事と一緒の事をしただけだ」

 

その時鍛冶屋の後ろに何かが落ちてきた。

慌てて振り向くとそこには紫色の髪をした少年がいた。

 

「そういう事だ。さて鍛冶屋ネズハ」

 

「「署までご同行願おうか」」

 

そうして二人の少年、キリトとツキノワは犯人に対し言った。




後2話くらいで終わらせたいですね…
アスナが少しづつ自覚してきました。今後どうなるやら。
ありがとうございました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。