ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
今回は3層に入った所までです。
よろしくお願いします。
outside
「「「「やったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」」」」
全員の勝利の雄叫びがボス部屋に木霊する。
それぞれ、様々な喜び方をしている。
そんな中この4人は
「おい…キリト泣くなよ…」
「ほ、ほら私達無事だから?ね?」
「な、泣いでない…!」
「どう見ても泣いてるじゃない…」
キリトがツキノワに泣きついてるのを必死に宥めている最中だった。
キリトとツキノワは1層からずっと一緒だった。
デスゲームが始まったあの日、彼らはお互いの事を兄弟と言い合うぐらい近しい存在になったのだ。
そんな片割れが死にかけたのだから当然、キリトはかなり怖かったのだ。
「俺だぢは…兄弟…なんだぞ…かっでに…いぐなよ…」
「分かった分かった、俺が悪かったよ。だから泣くなって。せっかくの空気が台無しだぞ」
「全く仕方ないわね…ほら、おいでキリト。ツキノワと兄弟分なら私の弟よ。お姉さんが慰めてあげる!」
「ぞれは…いやだ…」
「何でよ!?」
「あ、アハハ…」
そんな漫才をしている4人の元に
「Congratulation!!4人とも!ナイスコンビネーションだったぜ!!」
エギルが4人を労いに近づいてくる。
「エギルさん達もお疲れ様です。皆さんにはかなり助けて頂きましたし」
ツキノワがそう言って労い返す。
「おう!お互い様だ。気にすんな…ってこれだけで終われたら良かったんだが…」
それまでの穏やかな空気はエギルの硬い声と表情で掻き消える。その目線の先にはネズハがいた。
「あんた、この前まで鍛冶屋だったよな」
「…はい」
「何故、突然戦闘職に変更した?しかもそんなレア武器まで引っさげてきて。鍛冶屋ってのはそんなに儲かるのか?」
「…」
「別に恨み言を言いたい訳では無いんだ。ただ俺達と似た境遇の奴らがここにも何人かいる。そして、そいつらは全員同じ懸念を抱いてる様だからな」
その言葉にツキノワが周りを見渡すと、確かに疑いの目線がいくつかネズハに向いている。
「待ってくれ!このチャクラムは俺が「キリトさん」っ!」
キリトが必死に弁明しようとした時、ネズハがそれを止めた。
「いいんです、キリトさん。皆さんの想像通りなんですから」
そう言って皆の前で土下座するネズハ。
「僕は皆さんの武器をエンド品とすり替えて詐欺を行いました」
「それは金に替えたのか?」
「はい、全て高級レストランやホテルに使いました」
エギルとネズハの淡々としたやり取りがボス部屋に響く。そんな中、1人のプレイヤーが遂に我慢の限界を迎えた。
「お…、お前!!わかってんのかよ!?大事に育てた剣失くして、俺達がどんな思いだったのか!?」
1人が爆発してしまえば後は連鎖的にどんどん広がっていく。
「俺も…もう前線に出られないと思って…。でも仲間が必死に助けてくれて…迷惑かけまくってよ…!」
「それをお前!その金を高級レストランに使った!?高級ホテルに使った!?挙句に自分はレア武器使って、ボス戦で英雄気取りか!ふざけんな!?」
口々とネズハへの不満が爆発していく中、遂に1人が剣をぬこうとした。
キリトとツキノワはそれを見て慌てて止めようとしたその時
「待たれよ。貴殿らの剣を汚す必要は無い」
オルランドがその集団に割って入っていった。
「この者は我らの…いえ、俺達の仲間です。こいつに強化詐欺をさせてたのは俺達です」
そしてオルランド達レジェンドブレイズは装備を床に置いて、ネズハ同様、その場で土下座していた。
あまりの光景の連続に誰もが理解が追いつかなかった。ただ1つ分かったのはネズハはレジェンドブレイズの一員である事、それだけだった。そんな混乱した空気を
「そんなんで許される訳ねぇだろ!?」
1つの甲高い声が切り裂く。
それは1層でも騒ぎを起こしたプレイヤーの声だった。
ツキノワはその声を聞いてまた眉間に皺を寄せる。
「金の問題はそいつらの装備を売ればどうにかなるかもしれねぇがな!?死んだ人間は戻らないんだよ!!!」
その瞬間、空気が凍りついた。
キリトも、睨んでいたツキノワも驚きに目を開く。
アスナとミトは口を手で覆っている。
「死んだ…人間…!?どういう事だよ!?」
プレイヤーの1人が聞き返す。
「お、俺は知ってるんだよ!!こいつらの詐欺の被害者の1人が店売りの武器でフィールドに出て、MOBに殺されたんだよ!!」
「ち、ちょっと待てよ…それってそんなのって…!?」
「そうだよ!?こいつらのやった事は、間接的はPKなんだよ!!」
決定的な一言をそいつは言い放った。
その一言が言い放たれてから、場が騒然としだす。
「おい!さすがにその理屈はやばいだろ!第一層のベータテスターの時とはワケが違うんだぞ!?」
「でも犯人が認めてるなら…」
「おい!?何言ってるんだよ!?」
どうするべきなのか場が混乱する中、騒ぎを起こしたプレイヤーがまたも爆弾を投下する。
「死んで償えよ。人殺し」
詐欺師ではなく人殺し。
そう表現した途端、全員が目の色を変える。
そうだ。死んだ奴に詫びを入れてこい。
このクソ野郎共が。殺せ、殺せ、殺せ!
そんな暴動が今にも、起きそうになっている。
キリトも、アスナも、ミトも、エギルもどうすればいいか分からなくなっている中、ただ1人ツキノワだけは冷静に
「証拠は?」
たった一言、騒ぎの中心にいるプレイヤー声をかけた。
sideツキノワ
はぁ、どいつもこいつも。
単純にも程がある。
そう思いながらまた騒ぎだしたクソ虫野郎に声をかける。
「証拠は?」
突然話しかけられて驚いたのだろうが、俺だと認識すると忌々しそうに怒鳴ってきた。
「またてめぇかよ!!てめぇもこいつら「だから!証拠は!!」っ!」
ベラベラ喋りだしそうだったので大声で強引に止める。その声に周りも俺らの事に気付いたのか、静かになる。
「こいつらが狙ったんだから、フロントランナーなんだよな。だったら俺らの誰かが、知っててもおかしくないだろ。おら、言ってみろよ、どこの誰だよ…言えよ!!!」
そこまで言っても口を噤んだままだった。
そりゃそうだろうな。
「はぁ…アルゴ、まだいるか?」
「ああ、いるヨ」
俺の呼び声に反応してアルゴが出てくる。
突然のアルゴの登場に全員驚いた。
「アルゴ!?いつの間に!?」
思わずキリトが皆の気持ちを代弁するように叫ぶ。
「ネズハと一緒に来たんだヨ。…それよりツー坊、要件ハ?」
「前に頼んどいたやつ、終わってるよね?」
「ああ、終わってるヨ。みんな!悪いけど今から名前呼ぶやツ、返事してくレ!もしくはここにいない奴がいたら、誰かのフレンドリストからどこにいるか確認してくレ」
そう言って1枚のスクロールをオブジェクト化させ、そこに書かれた名前をどんどん読み上げる。
その場で返事がある奴も居れば、フレンドリストで何処にいるか確認された奴もいる。
「…最後、アスナ」
「私よ」
先輩が手を上げる。
それを確認しアルゴが高々に宣言する。
「…以上、強化詐欺にあったプレイヤー計8名。その全員の生存が確認されタ」
この一言を聞いて、周りはざわめき出す。
その視線はネズハではなく、1番最初に騒いだプレイヤーに向けられていた。
「さて、これでお前の嘘が露呈した訳だが、1つ聞いていいかな?お前さっきこう言ったよな。『こいつらがやった事は間接的なPKなんだよ!』って。でも結果はどうだ?誰も死んでない。お前は今、死人が出たという嘘をついて、こいつらを殺そうとした。…だったらお前がやろうとした事も…『間接的なPK』だよな?」
俺はわざと笑顔を浮かべながら、言い放った。
その顔を見たそいつは顔を真っ青にさながら後ずさる。
「お前らも無視してんじゃねぇよ!このクソ虫野郎に便乗して殺せって言ってただろうが!!だったらここでも、そう言うべきなんじゃねぇの!?」
今度は周りをそう煽る。
どいつもこいつも馬鹿ばっかりだ。
散々偉そうにほざく癖に、自分からはやろうとしない、群れなきゃ何も出来ない。
大人がこんなのとか呆れてくる。
「で?どうすんの?お前は。自分で吐いた唾は飲み込めねぇぞ?どうやって落とし前つけるんだよ!?自分だけ屁理屈並べて逃げられるなんて思うなよ!!!」
そういって睨みつける。
更に後ずさるそいつを見て
「逃げんじゃねぇよ!!おら、速く腹を「ちょお、待たんか!!!」…なんだよキバオウ」
そんな俺達にキバオウが割って入ってくる。
「確かにこいつがやったんは許されへんことや。せやけどな、こいつはわしの仲間や。勝手にどうこうするのは認められへん。まずわしを通してからにせぇ。これは筋の問題や」
ふーん、確かにこいつの部下がやらかしたことは、上司であるこいつの責任だ。
「だったらどう落とし前つけるんだよ。こんなクソ野郎が一緒とか、背中預かれないし預けられないぞ」
いつか言っていたキバオウの言葉をそのまま返した。
「それもお前さんが口を挟むことやない。そこをどうするかはそいつらとこいつで決めることや。とりあえず【ジョー】、お前は謹慎や。ホームでじっとせい…今出来るのはこれくらいや。これ以上は、そっちの被害の話し合いが成立してからや」
「…ちっ」
ここまで言われては流石にゴリ押せないだろう。
そう思いここは引く事にした。
「おい、クソ虫野郎。これからは考えてからものを言うんだな。後便乗した阿呆ども!お前らも少しは頭を使え。こんな事してる暇なんてねぇのにくっだらねぇ…3人とも、先に3層をアクティベートしに行こう」
そのまま俺は3人に声をかけ、そのまま3層までの階段を登りだした。
sideキリト
気まずい空気の中、俺達は階段を上がっていく。
理由は俺の目の前を歩くツキノワの纏う空気だ。
ハッキリ言ってめちゃくちゃキレてる。
前にミトにキレると口調が変わるとは聞いていが、これ程とは思ってなかった。
その時突然ツキノワが振り返ってきた。
「ミト、アスナ先輩、ちょっと浅慮だったんじゃない?」
「「…」」
は?何を言い出すんだツキノワは?
「えっと…ツキノワ?」
「はぁ…。その様子だとキリトは気づいてなかったか」
「何に気づいてないんだよ?」
「政治の基本は情報と根回し、後は演出だぞ?多分、エギルさんやキバオウ、リンド辺りには今回の件、言ってあったんじゃないか?」
「え!?そうなの!?」
思わず2人の方を見ると気まずそうに頷く2人。
マジか…全く気づかなかった。
「ていうか、ツキノワは知ってたのか?」
「いや、2人ならやりそうだと思っただけ。後はキバオウがやけに冷静に俺の相手をしたから、まさかって思ったんだよ」
そこまで読んでいたなんて、ツキノワも凄いなぁ…。
俺にはサッパリだよ…。
「ツキノワはあそこまで読んでたの?」
「当たり前。あんな阿呆がいるんだからそこまで考えるのが道理だろ?」
ミトの質問にあっさりと返すツキノワ。
「…じゃあ、あの時の言葉も演技なの?」
「…いや、言い方とかはわざとらしく煽る為に芝居を打ちましたけど、言ったことは本心です。人の命に手を出すんだから、自分も手を出される覚悟をしておくべきです。因果応報、人を呪わば穴二つってやつですよ」
淡々と告げるツキノワ。
そこまでの覚悟一体どこで…ふと俺達は1度殺されかけた時の事を思い出した。
「コペルの時か…お前がそこまでの覚悟を決めたのはあの時なのか!?」
「…まあ」
「キリト、なんの事?」
「…俺達は1度、MPKされかけたんだ。結局、仕掛けた本人だけが死んだんだけど…」
その事に2人の顔色が青くなる。
「…あの時気づいたんだよ。この世界は無法地帯だ。ネズハの言ったことはある意味事実だよ。この世界は出来ないことは予め決まってる。裏を返せば決まってない事は、やっても何も罰はないって事だ。そんな世界で大事なものを守るには、どんな事でもやる覚悟をする必要がある。そしてやるからには、やり返されるかもしれない。そのリスクを覚悟した上で、守るしかないんだ」
俺は自分が恥ずかしくなった。
俺はまだこの状況を、ゲームとしてしか見ていなかった事を。
ゲームであっても遊びではない、その意味をやっと理解した。
ここは現実なんだ、俺達がやってるのは極論、殺し合いだ。
それがいつかプレイヤー同士で、剣を向け合う可能性があるという事から、目を背けていた。
「…ま、本当に殺す気は無かったんけどね!!」
「…へ?」
突然、おどけるツキノワにアスナはポカンとする。
「そもそも俺にその権利はないから!」
「…も、もう!驚かさないでよ!!」
確かに言ってしまえばそうなのだが、きっとこれは嘘だ。
ミトもアスナも気づいてるだろうが、気づいてないふりをしているのだろう。
そして気づいてないふりに気づいてるだろうツキノワも、それを見て見ぬふりをしている。
その様子を見て俺も向き合う覚悟を決めた。
その時
「キリト、踏み込みすぎてはダメよ」
ミトが突然静止させる声をかけてくる。
「確かに、必要な覚悟なのかもしれない。でもだからこそ、傍に引っ張り上げる人が必要だわ。あなたとアスナにはそういう人になって欲しい。…踏み込むのは私でいいわ」
「ミト!?何言ってんだよ!?」
ミトの宣言に慌てて止めようとする。
そのミトは優しい目しながら、ツキノワを見ていた。
「だって姉だもの。弟を1人放っておく事なんてできないわ」
…ああ、ダメだ。
俺も兄だから、気持ちが分かってしまう。
だから止められない。
もし妹が、直葉が同じ事を言ったら俺も同じ事を思うだろうな。
「…はぁ…分かった!お前らの戻るべき場所は俺が守る!」
「ええ、そうしてちょうだい」
そんな兄姉談義をしていると
「ミト!キリト君!速く!」
「キリト!ミト!遅いぞ!」
「「分かった分かった!ちょっと待って!!」」
慌てて2人を追いかけて扉の前に並ぶ。
「さあ、みんな覚悟はいい?ここから真のSAOが始まるよ」
「真のってどういう意味だよ?」
「それは…お楽しみってやつだ」
そう言いながら扉を開ける。
そこには一面樹海と言っても差し支えない光景が広がっていた。
キレると不良スタイルに変わる主人公。
口調に意外に悩みました。
コペルの時に抱いた思いがここで少し顔を出します。
ラフコフ戦では多分、1番暴れまくるであろう人物です。その辺は今後の展開として待っていてください。
ありがとうございました。