ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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天幕での話です。ツキノワ君、シスコンですね。
それではよろしくお願いします。


閑話休題②

sideツキノワ

 

驚きのまま案内された天幕は俺達4人でも充分な広さではあった。

 

「まさか…今日ここで…」

 

「4人一緒に…?」

 

呆然と呟くキリトとミト。

 

「危険よ!!野宿より危険だわ!!」

 

「「失礼な」」

 

あまりの言われように、ついキリトと共に突っ込んでしまう。

 

『すまないが客用の天幕は用意できなくてな、ここは私のなんだ』

 

「なら良かったー!」

 

「先輩、いいんですかそれ?」

 

『ああ。夜警の際は十分な時間戻らないから安心しろ』

 

「「「「いや、ほんとそういうの結構なので」」」」

 

口を揃えて否定する俺たち。

 

「とりあえず、両端はアスナとキリトね。その隣に私とツキノワでいいわね」

 

「OK。それが1番安牌でしょ」

 

「それとも、お姉さんと一緒に寝たいかしら?」

 

「…ハン」

 

思わず鼻で笑う。

 

「あんた鼻で笑ったわね!?」

 

適当にやり過ごしていると

 

『ミトとツキノワは姉弟なのか?』

 

とキズメルが尋ねてくる。

 

「ええ、そうよ。私が姉なの。毎回弟の無茶ぶりには、冷や汗をかくわ」

 

『ふむ…私も妹の行動に何度冷や汗をかかされたか…』

 

突然、姉談義を始める2人。

 

「キリト、何故そこで頷く?」

 

「俺も兄だから、一応な。2人の気持ちも分かる」

 

「へぇ、意外ね。どちらかと言うと弟みたいだけど」

 

「失礼な!失礼な!大事な事だから2回言ったぞ」

 

姉談義を見ながら話す俺達。

 

『さて、陣中ゆえ大したもてなしは出来ないが、この天幕は自由にしてくれ。食堂に行けば何時でも食事は摂れるし、簡素だが風呂もある』

 

「!お風呂もあるの!?」

 

へぇ、マジか。

それは驚いた。

 

『当然だ。野営地とはいえ、浴場用の天幕は常に用意している。』

 

「…1つだけだが」

 

「1つってどういう…」

 

「…要するに混浴よ。…後天幕だから鍵も無ければ扉も無いのよ…」

 

ミトが恥ずかしそうに呟く。

なるほど、それは女性陣には恥ずかしいだろうな。

 

「俺達が見張りするよ?」

 

「そっちの方が危険よ!?」

 

「キリトは前科あるでしょ!?」

 

…は?

 

「おい、キリト…どういう事だ?」

 

「つ、ツキノワ…ちょっと待て…落ち着こう!落ち着いて話をしよう!」

 

「ああ、俺は落ち着いてるぞ?落ち着いてるからほら、話してご覧?俺が席を外した間に一体何があったんだ?」

 

「剣をしまえ!剣をしまってくれ!アスナ!ミト!助けてくれ!」

 

「「…」」

 

「キリト…オハナシシヨウカ」

 

「頼むから落ち着いてくれーーー!!!」

 

sideアスナ

 

「わぁ…!本当にあった!」

 

「…2人とも、しっかり見張ってなさい」

 

「へいへーい」

 

「…了解デス…」

 

そう言って風呂に入っていくミトと私。

 

外にキリト君やツキノワ君がいることを恥ずかしく思いながら、メニューを操作して服や髪型を変えていく。

ふとミトの体を見ると、スラッとしていて無駄な所が一切なく、まるでモデルみたいに綺麗な体つきをしている。

 

「…何、どうしたの?アスナ」

 

「ミトって綺麗な体してるよね」

 

「ちょ、ちょっと何言ってるの…!アスナだって出るところは出てて引っ込んでるところは引っ込んでるじゃない。理想的な体型してるわよ」

 

「は、恥ずかしいよ…!ミトだって無駄なお肉は一切無くて、スラッとしてて、まるでモデルさんみたい!」

 

「ふふ…ありがとうアスナ。でもここまでにしましょ?」

 

と言いながら指を刺すミト。

そこは天幕の入口でここが布で囲まれただけの空間である事を忘れていた。

 

「〜ッ!2人とも!!聞いてた!!」

 

「え!?あっ!?何を!?」

 

キリト君の返事はきたがツキノワ君からは返事はない。

 

「ちょっと!?ツキノワ君!」

 

更に問いただそうとした時

 

「ツキノワ?もしかして寝てる?」

 

キリト君の声が聞こえてきた。

 

「え?寝てるの?」

 

「あちゃ〜あの子どこでも寝れるから…それに色々あって疲れたのかも。キリト、そのまま寝かせてあげて。これ使っていいから」

 

そう言ってメニュー画面から毛布を取りだし、入口に投げるミト。

 

「うお!?ありがとうミト」

 

「気にしないで。こっちこそごめんなさい。弟が迷惑かけるわ」

 

「それこそ気にすんなよ。こっちは大丈夫だからゆっくり入ってくれ…キズメル?」

 

『邪魔するぞ』

 

そう言ってキヅメルさんが入ってくる。

 

「キズメルさんも今からですか?」

 

『さんは不要だ。失敬するぞ』

 

そうして装備を解いたキヅメルを見て

 

((男が作ったファンタジーだ))

 

その規格外のプロポーションにそう思う私。

きっとミトも同じ事を思ったのだろう。

2人でボーッと見ていると

 

『2人とも、感心せんぞ。掛け湯をしろ』

 

「「あ、はい」」

 

まさかエルフに入浴マナーを言われるとは。

そう思いながら掛け湯をして、湯船に浸かる。

 

「「はぁぁぁぁぁ…」」

 

気が緩んだ私達の声と顔を見られる。

 

『妹を思い出していた。あの子も湯浴みが好きだったからな』

 

「妹さんって…狼使いのお嫁さんっていう」

 

『うむ。見かけによらず気の強い嫁と腕に似ず少年のような旦那でな。そぐわぬようでなかなか似合いの夫婦だった…キリトとツキノワとは長い付き合いなのか?』

 

「キリトとは数週間、ツキノワはまあ、姉だから」

 

「同じくキリト君とは数週間、ツキノワ君は1年弱です」

 

『ほう、アスナもツキノワとは長いのだな。あの連携は納得だ。キリトとも中々の息のあいようだったぞ2人とも。まあ、アスナの場合はキリトや周りが合わせてる節があるがな』

 

そう言われ、今日の事を思い出す。

確かにそうだ、みんな私に合わせて戦ってくれていた。

 

『そなたが存分に無茶が出来るのは、常に傍で見守る者がいるからこそだ。その献身を軽んじる事の無いようにな』

 

そうだ、私のせいであの人は…

 

「ごめんなさい…」

 

「アスナ…?」

 

「私が調子乗って出しゃばったばっかりに…」

 

『違う!そうでは無い!…人族も苦しい戦いを強いられていると聞く。背中を任せられる相手は、大切にな。後は早めに素直になっておく事だ。…すまない。余計なお世話だったな』

 

「いえ、善処します…」

 

いなくなってからでは遅い。

きっとそういう事を言いたいんだろうなって思った。

確かに、たまにツキノワ君が何処か遠くに行っちゃうのではと思う時がある。

帰ってくると約束したとはいえ、それに甘えすぎたかな。

そう考えていると

 

『ミトよ。そなたも無茶が多い闘い方だったぞ。ツキノワという上を行くものの陰に隠れていたが、そなたも危ういぞ。何があったかは分からんが、己が命をかけてできることなぞたかがしてているぞ。生きてこそだという事を忘れるな』

 

「…はい」

 

そのまま私達はゆっくり浸かった後、お風呂場に入ってきた狼を洗ってあげてお風呂を出た。

そこにはびしょ濡れのキリト君と、ぐっすりと眠ったツキノワ君がいた。

 

「ツキノワ、起きなさい。ツキノワ!」

 

ミトが肩を揺らして起こす。

 

「んん…」

 

少しづつ目を開けるツキノワ君。

 

「ほら、ツキノワ君。速くお風呂入ったら?キリト君、悪いんだけど付き添ってあげて?」

 

「このまま入ったら溺れそうだもんな…ほら、行くぞ。ツキノワ」

 

そう言ってキリト君に先導されながらお風呂場に入っていく。

寝ぼけてたツキノワ君、可愛かったな〜そう思ってると

 

「アスナ、ツキノワの事考えてたでしょ」

 

「み、ミト!?何言ってるの!?」

 

『なるほど、アスナはツキノワが好きなのか?』

 

「ちが!?私は!?」

 

『ああ…そういう事か…』

 

「ええ…そういう事よ…」

 

2人に生暖かい目を向けられる。何、なんなの!?

 

「2人揃って何なのよ!!!」

 

outside

 

夕飯を食べ、キズメルの天幕に戻った俺達は最初に決めた順に寝たが、ツキノワは寝れないでいた。

さっきまで寝てたのと、色々あって考えていたからだ。

そのまま剣を腰に差し外へ向かう。

フラフラと森を歩いていると、そこには無数の剣が突き立てられていた。

 

「…まるで、墓標だな…」

 

『まさにその通りだ』

 

いつの間にか後ろにキズメルが立っており、手には皮袋と剣が握られていた。

その剣の柄には2つの指輪がチェーンで繋がれており、そのデザインはまるで、婚約指輪みたいだった。

 

「…狼使いの剣か?」

 

『ああ、そうだ。あやつらの剣と指輪だ』

 

そう言って木の真下に剣を突き刺し、皮袋を煽った。

 

『飲むか?』

 

「ありがとう…辛!?苦!?お酒かこれ!?」

 

キズメルから貰った袋の中身はワインらしきもので、ツキノワには刺激が強すぎた。

 

『月涙草のワインでな、妹の好物だったんだ…本当はあやつらの祝いの席で振舞おうとしたやつなんだが、あの時以降は、仇をとったら義弟と飲もうと思ってたんだが…今やそれも叶わない』

 

そう言ってそのワインを剣にかける。

 

『ミトとお前の話をした。昔からよく無茶をするらしいな。少し姉の気持ちも考えてやってくれ。下に無茶されると、上は不安でしょうがないんだ』

 

「…善処する。」

 

2人は静かに月を見上げる。

 

『そろそろ戻るといい。体を冷やすぞ。…ちゃんと送り届けてやるのだぞ』

 

「わかってるよ…ほら、行きますよ?アスナ先輩」

 

「…気づいてたんだ」

 

「キズメルもね。それでどうしたの?」

 

「…ミトとキリト君に言われたわ。割り切っておけと。…でも私にはできないよ。たとえ作られた存在だとしても、あの時言葉を交わし、その存在を感じて、私の為に大切な何かを失ったんだよ!?だから私は私自身の手でケリを付けたい。これは…私の物語なんだから!」

 

アスナは強くそう言い放つ。

ツキノワは全部聞いて

 

「いいんじゃないですか?先輩がしたいのなら」

 

あっさりとそれをいいと言った。

 

「…え?」

 

「俺達にとってはここはゲームの世界です。でもこの世界の住民からすれば、ここが現実なんです。だから…無理にこっちの常識に合わせる必要なんてないんですから」

 

穏やかに告げるツキノワ。

どっちも正しい。

その終わりをどうするのか、ただそれだけだった。

 

「…そうだよね!私が物語を作るんなら、私の思い通りにやればいいんだよね!」

 

アスナは元気を取り戻したように言う。

そんな様子にツキノワは微笑みながら、上着を被せる。

 

「さあ、速く天幕に戻りましょう?ミト達が心配しちいますし」

 

「そ、そうだね…ありがとう…」

 

(わー!わー!ツキノワ君の上着を被された!暖かいし!いい匂いする!)

 

思わず赤面させるアスナ。

ツキノワは寒いからかと思いそれをスルーしていた為、気づいてなかった。

そうして、幻想的な夜の森を、2人は歩いて天幕に向かった。




ありがとうございました。
さて、ネタが尽きたのでまた少し時間がかかります。
まあ、基本行き当たりばったりなのですが(笑)
それではありがとうございました。

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