ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
誰も声を出せなかった。
1万人近くが同じ場所に居るとは思えないくらい静かだった。
聞こえてくるはじまりの街の呑気な音楽が妙に耳に残る。
誰もが突然の茅場晶彦の
「いや……いやーーーーーーーーーーーーー!!!」
そんな空気を切り裂くような悲鳴が聞こえた時、全員が現実を認識し狂乱する。
場が騒然とする中
「ツキノワ、クライン、こっちに来い!」
突然キリトに腕を掴まれ裏路地に連れ込まれる。
「2人とも俺と一緒に来ないか?俺なら次の村までの安全な道を知ってる」
「どういう事だ?」
突然の提案にツキノワは困惑しているとキリトは細かく説明してくれた。
「この世界で生き残るには、ひたすら自分を強化しなければいけない。VRMMOが提供するリソースには限りがあるんだ。はじまりの街周辺のフィールドはすぐに狩りつくされる。効率よく進めるには、拠点を次の村に移動した方がいい」
「なるほど…」
確かにこれは現実的な提案だ。
ツキノワは自身が生き残るためにこの提案に乗るつもりだった。
でもクラインは違った。
「すまねぇ…一緒にログインしてるダチがいるんだ…。あいつらをほっとけねぇよ…」
そう、クラインは仲間がいる。
彼らを放ってこく事なんて出来ないだろう。
キリトもこれにはなんて返したらいいか分からなくなっていた。
正直なところ2人でさえ、かなりギリギリだった。
そこにさらに増えるのは、キリトだけでは守りきれない。
もしもの時の責任を考えて怖くなってしまったのだ。
「気にすんなよ。おめぇに教わった事をしっかり活かすぜ!これでもギルドの頭張ってたんだ!すぐに追いつくさ」
その事に気づいたクラインは笑いながら返した。
「…わかった。ツキノワはどうする?」
そう聞かれすぐに答えようとしだ、1つだけ確かめたい事があった。
「1つ聞きたい。その道はベーターテスターは誰でも知ってるのか?」
「コアなMMOプレイヤーなら知ってると思うけど、どうしたんだ?」
不思議そうに返すキリト。
それに対し
「実は姉もベータテスターでこのゲームにいるはずなんだ。だからまず少しはじまりの街の中を探したい。そこで見つからなかったら改めて一緒に行こう。姉もコアなプレイヤーだ。きっと知ってるはず」
と返した。
その発言に驚く2人。
「わかった。30分だけ探そう、それでいいか?」
「助かる。ワガママ言ってごめん」
「気にすんなよ!家族を探したいなんて当たり前じゃねぇか!」
励ましてくれるクライン。
その後フレンド交換をし、姉のプレイヤーネームと特徴を教えて別れることにした。
「…じゃあな。行こうツキノワ」
「クライン、無事でいてくれよ」
ツキノワはキリトに付いて行くと決め、クラインに謝罪する。
キリトとツキノワは、クラインに別れを告げ、町の出口へと向かおうとする。
「…キリト!ツキノワ!」
すると、クラインが二人を呼び止め、二人は振り向く。
「キリト、お前って、案外かわいい顔してるんだな!結構好みだぜ!ツキノワもリアルもイケメンじゃねぇかよ、羨ましいぜ!」
クラインは親指を立てて、二人に笑い掛ける。
「「お前こそ、その野武士ヅラの方がずっと似合ってるよ!」」
そうして俺たちは街を飛び出した。
走って走って走っていると、2体の狼モンスターが出てきた。
「ツキノワ!来るぞ!」
そう言ってモンスターに切りかかるキリト。
だがツキノワは剣を抜いただけで、恐怖で動けなかった。
そんなツキノワに対し襲いかかるモンスター。
「うわ!?」
寸前で剣で守るも体勢を崩し馬乗りにされてしまう。
「ツキノワ!?何とか堪えるんだ!」
キリトの焦った声を聞きながらツキノワは恐怖していた。
(死にたくない…死にたくない…死にたくない!)
そんな事で頭がいっぱいだった時、
「ハァ!」
キリトの一閃がツキノワを救った。
「ツキノワ!?大丈夫か!?」
「キリト…ああ、大丈夫だ」
脱力しきってしまい動けなかった。
「…無理してついてくることはないぞ?」
そう優しく声をかけられるが
「断る」
即答する。
「今のでわかった。人はいつか死ぬ。でもこんな状況だ、死に方なんて大層なものは選べない…。でも生き方なら、死ぬまでどう生きるか、それなら選べる!俺はこの世界に負けたくない!だから戦う!世界と!何より弱い自分と!!」
そう強く宣言した。
その目はさっきまでとは違い、強く燃え盛る炎のような光があった。
「わかった。なら生き残ろう!一緒に!」
そう言って拳を向けてくるキリト。
「よろしく頼むぜ、
「もちろんだ、
そうしてお互い拳をぶつけ合い、走り出す。
この世界に勝つために、生き残るために。
死ぬという結果を、どういう形にするかと考えたアスナ。
死ぬという結果を迎えるまで、どう生きるかを考えたツキノワ。
という訳で3話でした。