ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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ストックが溜まってきたので、久しぶりの投稿です。
今回は初めて出会った時の話です。
それではよろしくお願いします。


閑話休題⑥

side優月

 

それはまだ、リアルにいた頃。

明日奈先輩と知り合う前の話だ。

俺はいつも通り、部活を終えて、家に帰ってきた。

家は高級タワーマンションの最上階。

セキュリティもしっかりしてて、オートロックだ。

だからだろう、エントランス前にスマホ片手にオロオロした、綺麗で可愛い人が困り果てていたのは。

この時、自分の心臓が高鳴った気がした。

俺は何故か緊張しながら、彼女に声をかけた。

 

「…あの、どいてもらっていいですか?」

 

「あ、す、すみません!」

 

…緊張しすぎて、感じ悪かったかな。

少し後悔しながら、鍵でオートロックを開けた。

 

「あ、あの!少しいいですか?」

 

声をかけられたのはその時だった。

 

「…何ですか?」

 

「あ、あの…兎沢深澄って女の子知ってますか?ここに住んでる私ぐらいの女の子なんですが…」

 

「…深澄?深澄の知り合いなの?」

 

聞き馴染みのある名前に、思わず聞き返した。

いや…マジか?あのアイツに?友達?

 

「は、はい!今日お呼ばれしたんですが、部屋番号聞き忘れてしまいまして…スマホも出ないですし…」

 

「ハァ…。あのバカ。聞いてないぞ、そんな話」

 

あのバカはきっと寝てる。

ゲームで徹夜してたから、ほぼ間違えなく寝てる。

 

「着いてきてください。案内します」

 

俺は彼女を招き入れた。

 

「へ?そ、そんな!?いいんですか!?」

 

「いいんです。…実の姉なんで」

 

「…姉?」

 

何も言ってないのか!?アイツは!?

ハァ…あのダメ姉貴。

どうしてくれよう。

 

「初めまして、俺は兎沢優月。深澄の弟です」

 

「…お、弟!?深澄に弟いたんですか!?」

 

「やっぱり言ってなかったんですね。俺にはタメ口で大丈夫です。年下ですし。えっと…?」

 

「ゆ、結城明日奈です!よろしくね優月君!」

 

「結城…明日奈…先輩。よろしくお願いします、結城先輩」

 

綺麗な名前だな。

この人のぴったりな名前だと思った。

 

「フフ、名前でいいよ?私も勝手に呼んじゃってるし、気にしないで。こっちこそ、いきなり名前で良かったかな?」

 

「大丈夫です。苗字だとどっちか分からなくなるので」

 

そんな差し障りない会話をしながら、俺達は部屋まで着いた。

 

「どうぞ、いらっしゃいませ。親は仕事なんで好きにして下さい」

 

「お、お邪魔します」

 

玄関で一礼し、靴を脱いで整える。

そんな当たり前の姿でも、すごく綺麗に見える。

その所作から品の良さも伺える。

きっといいとこのお嬢様なのだろうな。

そう思いながら、スリッパを用意し、リビングまで連れてくる。

ソファーに腰掛けさせて、お茶を出す。

 

「すみません、ちょっと深澄起こしてくるので。…後、かなり煩くなります」

 

「う、うん…?」

 

そのまま俺は彼女を置いて、深澄の部屋にノック無しで乗り込んだ。

案の定、ダラしない姿で爆睡こいてる深澄に俺は、大きく息を吸って

 

「起きろ!!!バカ姉貴!!!」

 

全力で怒鳴りつけた。

その声でリビングから驚く声が聞こえるが、それは無視。

目の前のビックリして、ひっくり返っている人物に、非難の目を向ける。

 

「…おはよう優月。後、勝手に部屋に入らないで」

 

「やかましい!!!友達待たせといて、何言ってる!!!」

 

「…あ、あぁぁぁぁ!!!?明日奈来るんだった!!今何時!?」

 

「1時前!!とっくに来てたし、もうリビングにいる!!ちゃっちゃと用意せい!」

 

「嘘!?本当に!?明日奈ごめ〜ん!!」

 

リビングから大丈夫だよ〜、と声が聞こえる。

俺は1度部屋を出て、自分の部屋に行き、着替えを用意して、洗面所に放り込む。

 

「はぁ…うちの姉が本当にすみません」

 

「いやいや!?大丈夫だよ!?気にしないで!」

 

「あの人、休みの前の日の夜とか、休みの日ってずっとゲームしてるから…よく徹夜するんですよ」

 

学校の方はよく分からないが、多分家とは違う感じなのだろう。

 

「あの…すみません。実は部活で汗でベタベタで…申し訳ないんですけど、シャワー浴びてきていいですか?」

 

ずっとそれが気になって仕方ない。

臭いとかも気になるし、あまり近くには行かないようにしてるけど。

 

「うん!大丈夫だよ。わざわざごめんね」

 

良かった、許可が出た。

 

「すみません、それでは」

 

「行ってらっしゃい!」

 

そのまま俺は、風呂場に直行してシャワーを浴びた。

汗が流れていくのを感じながら、体や頭を入念に洗う。

お客さんが来てる以上、身なりはしっかりしないと。

風呂から出ると、リビングで明日奈先輩と、深澄が仲良く談笑していた。

何故か、深澄は俺のスウェットを着ていたが。

 

「…深澄。なぜに俺のスウェット着てる?」

 

「楽なんだもん。それにお古なんだからいいでしょ?」

 

本当に家だとズボラなんだから、この人は。

俺はため息をつきながら、キッチンに立ち、材料を確認する。

 

「2人とも?お腹は?」

 

「減ってる!明日奈は?」

 

「確かに減ったかな〜。優月君、料理出来るの?」

 

「家は共働きですから。深澄以外は作れます」

 

「余計な事は言うな!」

 

深澄から怒られるが、それはスルー。

 

「明日奈先輩、嫌いな物は?」

 

「大丈夫だよ〜! 」

 

「それじゃあ、少し待っててください。チャチャッと作ります」

 

これなら…これが出来るな。

 

 

side明日奈

 

初めて見た時は、綺麗な人だって思った。

男の人にそんなに評価は変かもしれないけど、きっと佇まいが大人っぽくて、凛としてたんだと思う。

身長は170~180あるかないか位かな。

体格もしっかりしてる。

世間一般的に見ても、個人的に見ても、かなりイケメンだ。

というか、深澄に似てる?

思い切ってここに来た理由を話してみると、なんと弟だと言った。

深澄に弟がいたんだ、というか、兄じゃないんだ、と驚きながら、私はリビングで待っていた。

さっき煩くしますって一体…

 

「起きろ!!!バカ姉貴!!!」

 

「ヒャァ!!!? 」

 

うん、煩くなった。

凄くビックリした。

そのまま深澄を叱りつける声と、ドタバタと用意する音が響く。

深澄の謝罪の声が聞こえたので

 

「大丈夫だよ〜」

 

そう返しておく。

暫くして、優月君が帰ってくる。

 

「あの…すみません。実は部活で汗でベタベタで…申し訳ないんですけど、シャワー浴びてきていいですか?」

 

そっか、妙に物理的な距離感があった理由は、それか。

気も効くらしい彼は、中々高評価だった。

すぐに行ってらっしゃいと告げ、彼が消える。

入れ違うように深澄が、リビングに入ってくる。

 

「おはよう〜。明日奈ゴメンね!」

 

「おはよう。もう!ずっとゲームしてたの?」

 

「あはは…」

 

気まずそうに頷く深澄を見て、私はため息をつく。

 

「連絡はつかないし、部屋番号分からないし、かなり困ったんだよ?」

 

「ウッ…ごめんなさい…」

 

落ち込む深澄を見て、そこまでにしておく。

 

「まあ、いいわ。さて!始めましょうか!」

 

ここに来た目的、学校の課題を終わらせようとすると

 

「あれ?そういえば優月は?」

 

深澄が優月君の行方を尋ねてくる。

 

「優月君ならシャワー浴びるって言ってたよ」

 

「そっか。まあ、部活上がりだったしね」

 

そう言えば大きい荷物持ってたような…

 

「何部なの?」

 

「弓道よ」

 

「中学に弓道部があるんだ!」

 

「既に選抜にも選ばれてるんだって」

 

「へぇー!凄いんだね!」

 

そんな話をしていると、いつの間にか優月君がシャワーから出てきていた。

 

「…深澄。なぜに俺のスウェット着てる?」

 

「楽なんだもん。それにお古なんだからいいでしょ?」

 

それ優月君のお古なんだ…。

通りで大きいと思ったのよ…。

優月君はため息をつきながら、キッチンに立ち、材料を確認してる。

 

「2人とも?お腹は?」

 

「減ってる!明日奈は?」

 

「確かに減ったかな〜。優月君、料理出来るの?」

 

男の子が料理ってなんか意外!

 

「家は共働きですから。深澄以外は作れます」

 

「余計な事は言うな!」

 

深澄は出来ないんだ…。

何となく想像つくけど。

 

「明日奈?」

 

「ナ、ナンデモナイヨ?」

 

この子、勘がいい… !

 

「明日奈先輩、嫌いな物は?」

 

「大丈夫だよ〜! 」

 

「それじゃあ、少し待っててください。チャチャッと作ります」

 

そう言って料理を始める優月君。

その様子をぼんやりと見つめていた。

手際もいいし、問題なさそう。

でも、誰かが料理してる姿は初めて見た。

 

「明日奈?どうしたの?」

 

「ううん、何でもない。ただ、誰かが料理してる姿初めて見たから」

 

その言葉に深澄は少し顔を暗くする。

私の家の事を知ってるからか、その空気を払拭しようと、深澄はわざと大きな声を出す。

 

「優月の料理は美味しいから!きっと満足できるわ!」

 

「…フフ!!じゃあ、楽しみだね!」

 

「コラー!ハードルあげるな〜!」

 

聞こえてたのか、キッチンから悲鳴が上がる。

 

「「アハハ!!!頑張って!!!」」

 

私達は笑いながら、優月君を応援するのだった。

 

 

side優月

 

「お待ちどうさま、カルボナーラです」

 

俺はプレッシャーを受けながら、余り物で作ったカルボナーラを出す。

一応他人に出すものだから、見た目にも気をつけてみた。

 

「わあ!美味しそう!!」

 

「本当に好きね、これ。パスタ作る時いつもこれよね」

 

「ほっとけ。嫌なら食うな、自分で作れ」

 

「有難く頂きます!」

 

この姉貴は本当に…アレだなぁ。

 

「2人とも。冷める前にどうぞ」

 

「「頂きます!」」

 

2人は同時に手をつける。

俺も遅れて食べ出す。

うん、美味い。

今日も問題なく出来てるな。

 

「うん、安定の美味さね」

 

「美味しい!美味しいよ!優月君!」

 

「あ、ありがとうございます…」

 

初めて他人に褒められたので、嬉しかった。

 

「私も料理やろうかな…」

 

「その時は家でやってもいいですよ?一緒にやります?」

 

俺は無意識に次の約束を勝手に取り付けていた。

気づいたのは深澄の驚いた目を見た時だ。

だが、そこには気づきてないのか

 

「いいの!?その時はよろしくね!」

 

キラキラした目でこっちを見る明日奈先輩がいた。

 

「え、えぇ…よろしくお願いします…」

 

「やったー!!」

 

何故か大喜びしてる先輩を尻目に、俺達はヒソヒソ話をする。

 

「あんた…何してるのよ?」

 

「なんか…無意識につい」

 

「2人共?どうしたの?」

 

「「いや、なんでも」」

 

先輩が俺達の様子に気づきたのか尋ねてくるが、そこは2人ではぐらかす。

 

「ふーん…それにしても、よく食べるね優月君は」

 

そこには言及せずに、俺の皿を見て驚く先輩。

 

「まあ、1人前では足りませんので。2人前は欲しいです」

 

「た、食べ盛り…」

 

「こいつこんなけ食べても、太らないのよ。羨ましいわ…」

 

「深澄も十分細いだろうが」

 

そんな話をしながら、俺達は完食して、洗い物に入る。

 

「そういえば、明日奈先輩は、今日何で家に来たんですか?」

 

疑問だったことを聞くと

 

「あ!そうよ深澄!早く課題終わらせるよ!」

 

「えぇ…今?」

 

何やらゲームの配線を弄っている深澄に向かって言う。

なるほど、課題が出てるのか。

それなのにゲームの配線を準備してるし…。

 

「ゲームは後!先に課題!ほら。早く用意して!」

 

怒られてるし…何してんだが。

 

「先輩、深澄の事頼みます。やる気さえ出れば、問題ないので。強引にスイッチ入れてあげて下さい」

 

「了解!任されました」

 

そう言って深澄の元へ歩いていく先輩を見送る。

その仲睦まじい光景に、俺は感慨深いものを感じた。

それはまだ小学生の頃、姉はよくゲーム機片手に外に出ていっていた。

いつも会う友達がいるとか。

なのにその日はすぐに帰って来て、部屋に閉じこもったまま、出てこなかった。

後々話を聞くと、ゲームの腕の差で誰もついていけず、つまらないと言われたのだとか。

そしてそのまま、友達は離れていったらしい。

俺はせめて、俺だけでもって思いながら、深澄のゲーム相手を努めてきた。

今では何回かに1回なら勝てるようになった。

でも、それでも偶に寂しそうな顔を深澄はしていた。

でも今は、すごく楽しそうな顔をして、先輩と話している。

 

「…き。…月!」

 

それがすごく嬉しくて、でも少し悔しくて…

 

「優月!!」

 

「へぁ!?何!?」

 

「何じゃない!手は止まってるし、何度呼んでもぼ〜としてるしどうしたのよ?」

 

気づいたら、すぐ真隣に深澄がいて、洗い物の手は止まっていた。

 

「…いや、何でも」

 

「なくないでしょ。そんな顔して丸わかりよ」

 

「…そんなに顔に書いてある?」

 

「姉なんだから、当然でしょ」

 

姉の勘らしい。

なんか腹立つな、そのドヤ顔。

 

「優月。私は大丈夫よ。大丈夫。優月がいるから、怖くない。明日奈がいてくれるから、寂しくない」

 

そう言いながら、俺の頭を撫でる深澄。

その顔はさっきまでのドヤ顔ではなく、優しく、慈愛に満ちた姉の顔だった。

 

「…いいから速く行けよ。先輩待ってるんだろ。ほら、お茶ならここ。後でお菓子も用意しておくから 」

 

「ありがとう!明日奈、おまたせ」

 

そう言いながら、先輩の元へ歩いていく深澄。

俺は手早く残りの洗い物を済ませ、お菓子作りを始めた。

残り焼くだけのところまで来たので、1回手を止め、時間を確認する。

 

「深澄、少し寝る。キッチンそのままにしといて」

 

「分かったわ。おやすみ」

 

「おやすみなさ〜い」

 

「はい。失礼します」

 

俺はそのまま、部屋に戻り昼寝をする事にした。

割と眠かったのか、直ぐに落ちていた。

 

sideツキノワ

 

「…うん?」

 

気づくとそこは俺の自室ではなく、見慣れない天井だった。

その天井は、これから2人で暮らす新居の天井だ。

 

「…懐かしい夢だったな」

 

どうやら夢を見ていたらしい。

あの後、お菓子振舞ってからゲームして、先輩の帰る時間になったんだよな。

それ以降も会って遊んだり、勉強見てもらったりどんどん仲良くなっていって俺は…

 

「惚れたんだよなぁ…」

 

そっと隣を見ると、そこにはまだ寝てるアスナ先輩がいた。

俺はそっと抱きしめて、額にキスを落とした。

 

「…好き。大好き。愛してる」

 

そう言いながら俺は、額に何回かキスした後、二度寝してしまった。

だから気づかなかった。

 

(起きてる!!///全力で起きてるから!!!///)

 

アスナ先輩が起きてて、俺の胸元で真っ赤になっていた事に。




という訳で、過去(の夢を見ていた)回でした。
この時の彼はツンデレです。
これが…ちょいヤンデレにシフトしていんですね〜!
怖いな…。
それでは失礼します。
ありがとうございました。

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