ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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アインクラッド編はこれにて終了です。
ここまで来るのに、半年くらいかかりましたね。
…大変だったなぁ…。
それではよろしくお願いします。


エピローグ

outside

 

「…俺の勝ちだ、ヒースクリフ」

 

「うむ…そして、私の負けだよ、ツキノワ君」

 

ツキノワの手には黒に光るレイピア、【ブラックパール】。

刀が砕ける直後、クイックチェンジで呼び出した1振りだ。

 

「おめでとう、諸君。これで…ソードアート・オンラインは、クリアだ」

 

そう言い残して、ヒースクリフは砕け散った。

ツキノワの耳に、鐘の音が聞こえる。

 

11月7日、14:55分、ゲームはクリアされました。

 

そんなシステム音が響き、そして彼らの視界は真っ白になった。

 

sideツキノワ

 

「…ここは?」

 

気づけば俺は、夕焼けに染る空にいた。

透明ななにかがあるのか、足場はしっかりしている。

辺りを見渡していると

 

「ツキノワ君…!」

 

「ッ!?アスナ…先輩…」

 

後ろから先輩の声が聞こえて、抱きつかれる。

 

「怖かった…!すごく怖かったんだよ…!」

 

「…ごめん、先輩。でも俺、ちゃんと勝ったよ?」

 

俺達は抱きしめ合い、そしてキスをした。

そのまま寄り添い合いながら、俺達は周りを見渡すと、先輩が何かに気づく。

 

「ツキノワ君、あれ…」

 

指さされた先には、崩れ落ちる浮遊城アインクラッド。

2年間、生きてきた世界が崩壊していくのは、少し…寂しかった。

 

「中々絶景だな」

 

「「ッ!?」」

 

声のする方へ振り向くと、そこには白衣を着た黒髪の男。

この男が…

 

「…茅場…晶彦」

 

「今アーガス本社、地下5階にあるSAOのメインフレーム等の、データを全消去している最中だ。後10分程で完了する」

 

「…あそこにいた人達は?」

 

「先程6147名のうち、6145名のログアウトが確認された。残りの2名は当然、君達だ」

 

「…死んだ約4000人は?」

 

「…人の命は、軽々しく扱っていいものでは無いよ、ツキノワ君」

 

遠回しに、死んだ人間は戻らないと告げられた。

つまり、やはりあそこの死は、本当に死だったってことか…。

 

「…何で?何であんなことを?」

 

何故か俺は、彼に対して怒りは覚えなかった。

先程の殺し合いの時もそうだ。

使命感や覚悟はあっても、怒りは無かった。

 

「何故か、か。…何故かは、私も忘れてしまったよ。フルダイブ環境の研究を始めた時…いや、その遥か前から、私はあの城に取り憑かれていたよ」

 

「「…」」

 

「いつか、現実の枠や法則を超えた城を作りたい。そして、地上を飛び出して、この城に行きたい。それだけが、長い間、私の欲求だったよ」

 

「「…」」

 

「私はね、ツキノワ君。まだ信じているのだよ。どこかここじゃない場所で、あの城が本当に存在するのだと」

 

「…だといいな」

 

長い彼の独白を聞いた俺が、口に出せたのは、その一言だけだった。

 

「…さて、私はそろそろ行くよ。君達もじきにログアウトが始める。それでは」

 

そう言って茅場は、本当に消えていなくなった。

ふと見ると、自分達もログアウトが始まったのか、光出した。

俺はもう一度先輩にキスして

 

「じゃあ先輩!また外で!」

 

「…うん!また外で!」

 

こうして俺達はログアウトしたのだった。

…はずだったんだ。

 

side???

 

「…夢…なのか…?」

 

暗闇の中、小さく呟く少年。

体を起こすと、ガチャリと金属音がなる。

その時シュンという音と共に、誰かが入ってくる。

逆光で顔は見えないが、背格好は男だろう。

そして少年は、それが誰か知っている。

 

「…よう、インテリ。眉間にシワがすごいぜ?」

 

「相変わらず…生意気な小僧だな!」

 

「グッ!」

 

男は少年の顔を、思いっきり殴り付ける。

そのまま倒れる少年の腹を、ひたすら蹴り続ける男。

それはまるで…というか、ただのストレス発散だ。

一通りやってスッキリしたのか、嫌味ったらしい笑顔を浮かべながら、男は部屋を後にする。

 

「…どれだけたったのかなぁ…」

 

SAOでヒースクリフを倒してから、少年の感覚では、少なくても1ヶ月以上はたっただろう。

それだけたっても尚、少年…ツキノワはVR世界に閉じ込められていた。

そして、彼の恋人アスナを含めた約300人が同様に、取り残されたままだったのだ。

 

side深澄

 

電車に揺られながら、私は音楽を聴いている。

 

「…」

 

しかしただ聞いているだけで、実際にはほとんど頭に入ってきていない。

2ヶ月前、ツキノワ…優月がヒースクリフを倒して、デスゲームをクリアに導いた。

私が目を覚ますと、隣には優月と明日奈の姿があった。

私達は同じ病院、同じ病室に運ばれたのだ。

それからしばらくして、どこかで聞きつけたのか、キリト…桐々谷和人がやって来た。

彼から聞いて分かったのが、2ヶ月たった今でも、あの子達を含む、約300人が戻ってきていないのだとか。

そんな事を考えながら着いたのが、私の元入院先で、今も尚、2人が眠る埼玉県の所沢市総合病院だ。

 

「…あら、先に来てたのね、キリ…和人、千笑」

 

「ああ、久しぶりだな深澄」

 

「久しぶり、深澄」

 

先にいたのは、和人とその恋人のサチ…指原千笑だ。

2人共、明日奈と優月の為に、足繁く通ってくれているのだ。

 

「2人共、ありがとう。この子達も喜ぶわ」

 

そう言って、私は2人が持ってきた花を生ける。

しばらくと話していると、父から腰を痛めたという連絡が来た。

 

「ごめんなさい、父が腰を痛めたらしくて…。先に戻らないと」

 

「ああ、こっちは任せとけ」

 

「いってらっしゃい」

 

2人を任せて、私は急いで帰路に着いた。

結果父の腰は大事では無く、ホッとした。

しかし夜になり、和人から来た連絡を見て、思わず机に拳を叩きつけた。

 

「…須郷…!あの蛇男め…!!」

 

私が帰った後、明日奈のお父さんと、その部下である須郷伸之が来たらしい。

内容は、須郷が明日菜と婚約するという内容だった。

SAOを運営していたアーガスは、結城彰三氏がCEOを務める、総合電子機器メーカーのレクトという会社が買収した。

奴はその会社の、フルダイブ部門の責任者なのだ。

そして優月達の命は、あいつが握っていると言っても、過言ではないのだ。

昔から、あいつの事は気に食わなかった。

本当に蛇のように、何を考えてるのかまるで分からない。

私だけではなく、優月もまた、すごく気に入らないらしい。

 

「その見返りに明日奈との婚約ですって…!ふざけるな…!!」

 

あんな男に、何で明日奈を…!

怒りに燃えていると、まだ続きがある事に気づいた。

添付ファイルだ。

…エギルからなの?

そのファイルを開くと、そこに写っていたのは

 

「…明日奈…?」

 

画質は悪いが、確かに鳥籠に囲われた、明日奈が写っていた。




という訳で、まさかの主人公は捕まってますね、はい。
ALO編、実はあまり描きません。
ロクアカでもやった端折りです。
数話でカタをつけます。
だって、これはキリトとリーファの話で、主人公を絡ませる要素ないんですもん。
後は単純に僕の好みの問題です。
GGO編の方が好きなんだもの…。
サチの本名は公表されてないので、それっぽくなる名前を勝手につけました。
それでは失礼します。
ありがとうございました。

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