ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
ツキノワ、捕まってますし。
それではよろしくお願いします。
40話
side深澄
翌日、私は再び電車に揺られ、ある場所を目指していた。
着いたのは、東京の御徒町にひっそりと構える、隠れ家的バー。
と言っても、バータイムは夜からで、今はカフェの時間だ。
【Dicey Cafe】という店名のお店は、エギル…アンドリュー=ギルバート=ミルズが、夫婦で営むお店だ。
ちなみに、本人たっての希望でこっちでも、エギルと呼んでいる。
なんでも開店直後に、SAO事件に巻き込めれてしまったのだが、奥さんが1人で、切り盛りしていたらしい。
本当に立派で、良い奥さんだ。
そう思いながら、ドアを開ける。
場末のバーと言った感じの店内は、落ち着きがあって、優月が好みそうな雰囲気だ。
「いらっしゃい。2人はまだだぜ」
「大方、キリトが寝坊してるのでしょ?想像つくわ」
私はコーヒーとホットケーキを頼む。
ここのホットケーキはフワフワで、美味しい。
きっと優月も…明日奈も…。
「…大丈夫か?ミト…いや、深澄?」
「…大丈夫よ…」
そう言うと、エギルはカウンター越しに私の頭に手を置いた。
「本来ならクラインの仕事なんだが…。まあ、俺も大人だ。子供が遠慮すんな」
ああ、ダメだ。
こんな優しくされたら、涙が溢れてしまう。
「…ヒッグ…ゆずきぃ…グス…あすなぁ…!」
相変わらずの弱虫だ、私は。
ダメだ…涙が止まらない…!
どうにか必死に涙を止めようとしていると、後ろから誰かに抱きしめられる。
「深澄…。大丈夫…私達もいるよ…」
「弟と親友が戻ってこないんだもんな…。不安だよな…。でも、大丈夫。あいつらは、こんな程度の事に、負ける奴らじゃない。だから…信じよう」
「千笑…和人…」
2人もいつの間にか、来ていたらしい。
そうだ、私は1人じゃない。
皆がいる。
だから…戦える。
今度こそ…明日奈を、優月を助けるんだ…!
気づけば私の涙は、止まっていた。
「ごめん…恥ずかしいとこ見せた…」
私は鼻をかみながら、皆に謝る。
皆は優しく笑いながら、首を横に振る。
「さてと…エギル、あの写真は?」
和人が、早速本題に入った。
私達も姿勢を正す。
エギルはカウンターの下から、何かを取りだし、和人に向けて滑らせる。
…かっこいい、様になってる。
「それ…ゲームのパッケージ?」
千笑の声に私も確認する。
【Alfheim Online】と書かれている。
アルフヘイム?…いや、アルヴヘイムかしら。
「アルフヘイム?」
「アルヴヘイムと読むらしいぞ。通称ALO」
「妖精の国という意味よ」
「ほう、よく分かったな」
「あら?私は聖エテルナ女学院の学年1位よ」
これでも一応才女だ。
少し胸を張っていると、キリトとエギルが無視して、話を進める。
「妖精って言うと、まったり系か?」
「いや、かなりハードだな。ドスキル制、プレイヤースキル重視、PK推奨」
「無視しないでよ…。それにしても、かなりハードなのね」
要するにレベルは存在せず、各種スキルは反復使用で上昇。
戦闘はプレイヤーの運動能力頼りで、魔法あり·ソードスキル無しのSAOって感じかな。
「あの…PK推奨っていうのは…」
「キャラメイクの段階で、種族が選べるんだが、他種族同士なら、キル有りなんだとよ」
「何か…怖いね…」
千笑が体を震わせる。
確かに、千笑には向かなさそうなゲームだ。
「ただ、このゲームの一番の魅力はそこじゃない。…飛べる事だ」
「「「飛べる?」」」
「妖精だから、当然羽がある。フライトエンジンとやらを搭載する事で、慣れると自由に飛び回れるらしいぞ。…まあ、難易度は激ムズだが」
…飛んでみたい…!
不覚にも、楽しそうだと思ってしまった。
「それで?あの写真は?」
「このゲームには、世界樹というものがある。今のプレイヤー達は、その頂上を目指しているのだが、これは目指した連中の1人が撮影したものを、限界まで引き伸ばしたものだ」
「じゃあ、この写真は…」
「ああ、それはALOの中だ」
だったら…決まりだ。
「エギル…このゲーム貰えないか?」
「行くのか?」
「あいつには、返しきれない恩がある。ここらで一つ位は返したい」
和人は行く気らしい。
「私も。私達も彼に助けて貰った。その恩をまだ返してない。行こう、和人」
「ああ、行こう千笑」
千笑も行くと宣言。
もちろん私と行く。
でも行く前に…
「私も行くわ。その前に、親を説得しないといけないけど」
あの事件以降、親がVRコンテンツに神経質なのだ。
だからまずは、その親への説得からだ。
「2人共、悪いんだけど先に行って。私も直ぐに追いつくわ」
「…分かった。絶対に来いよ」
「このゲームはアムスフィアという、ナーヴギアの後継機のソフトだ。一応ナーヴギアにも対応してるらしいが。…気をつけろよ、お前達」
なら私はハードから買わないと。
後、大丈夫よエギル。
「「死んでもいいゲームなんて、ぬる過ぎる」」
コアゲーマーの私達は、同じ事を言ったのだった。
その日の夜、家に帰った私は、早速親に切り出した。
「…本気で言ってるのか、深澄」
「本気だよ、父さん」
私の父、兎沢真澄は直ぐに反対した。
父は総務省の官僚、当然SAO事件の被害者が、まだ戻ってきていない事を知っている。
その中に、優月と明日奈が入ってることを知ってからは、仕事から帰ってくるのが遅くなった。
「深澄。貴女自分が何言ってるのか、分かってるの?」
「分かってるよ、母さん」
次に口を開いたのは、私の母、兎沢美月だ。
相変わらず、歳を感じさせない綺麗さだ。
母は、父の秘書を務めている。
2人共決して、理不尽に厳しいのでは無い。
私達を思うが故の厳しさであるのは、私も優月も知っている。
もちろん、2人共甘い時もあるのだ。
「…私は、あの2年間で、何度も優月に助けられた。1度、明日奈を見捨てた。だから次は、私が助ける。もう、見捨てたくない!」
あの時、ペネントの群れを前に、明日奈を見捨てた。
その後、その間違えを優月が正してくれた。
何度も何度も、私はあの子に助けられた。
だから今度は…!
「…私達とて、須郷のことは、怪しんでいる。しかし確たる証拠が無いのが現状だ」
深いため息の後、父さんが口を開く。
「…アムスフィアの安全性は、証明されている。行ってきなさい、深澄」
「…あなたがそう言うなら。いい、深澄。言ったからには、絶対に助けなさい。それまで諦めてはダメよ」
「…!…ありがとう…!」
私は2人の許可を得て、ALOへダイブする事が、出来るようになったのだった。
次の日、私はキリト達と待ち合わせ場所を決めて、買ったばかりのアムスフィアを被る。
優月…明日奈…今行くからね…!
「リンクスタート!」
話の流れは、基本ALOと変わりません。
なので、ロクアカでお得意の端折りです。
それでは失礼します。
ありがとうございました。