ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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仕事がしんどすぎて、気がおかしくなりそう…。
何とか生きてます。
よろしくお願いします。


GGO編
43話


sideツキノワ

 

俺とシノンの出会いは、まあ簡単だ。

ログインしたての俺が、当然右も左も分からないので、その辺のプレイヤーを捕まえようと、声をかけたのが、シノンだった。

 

「あ、すみません。少しお伺いしたい事が…」

 

「何かしら?…あら?珍しいわね、女の子なんて」

 

…は?女の子?

俺どんな見た目してんの?

 

「…え、えぇっと…俺、男なんですが…」

 

「…嘘!?その見た目で!?」

 

「逆にどんな見た目!?」

 

俺は周りを見渡して、ふとビルの窓に写る自分を見る。

クリっとした大きな蒼い目。

細い体つきに白い肌。

身長はリアルよりかなり低く、髪は金髪ロング。

 

「な…なんじゃあこりゃァァァァァァァ!!!!?」

 

俺の悲鳴は、このGGOのメイン街【SBCグロッケン】中に、響き渡ったとか何とか。

 

outside

 

「落ち着いた?」

 

「…すみません。ご迷惑お掛けしました」

 

「別にいいけど…その堅苦しい敬語やめて。むず痒いわ」

 

シノンは、突然声をかけてきた金髪美女(見た目だけで、中身とアバター性別は、男)を、裏路地へと連れていく。

そこで、お互い自己紹介すらしていない事を、思い出した。

 

「私はシノンよ。貴方は?」

 

「俺はツキノワ。よろしく、シノン」

 

「さてと…何から聞きたいの?」

 

「…全部!」

 

「一周まわって清々しいわね」

 

あまりの言い分に、思わずツッコミを入れてしまったが、シノンは悩む。

 

(心苦しいけど、私に初心者にレクチャーする暇なんて無いし…。それに、ソロの方が…いや…)

 

ここでシノンは、少し考え方を変える。

 

「貴方、他のVR系は?」

 

「SAOとALO」

 

「な!?貴方…SAO帰還者(サバイバー)!?」

 

世の中SAO帰還者(サバイバー)は、その事を隠したがるものだが、この少年はそうでも無いらしい。

 

「…あ、オフレコで」

 

訂正、どうやら何も考えてなかっただけらしい。

シノンはガクッとズッコケかける。

 

「と、とにかく!完璧な素人では無いのね?」

 

その言葉に頷くツキノワ。

シノンはそこで熟考する。

 

(この手のゲームは初心者かもしれないけど…戦い慣れ自体はしてるはず。だったら…)

 

「分かったわ、私がレクチャーしてあげる」

 

「本当!?ありがとう!」

 

「眩しい笑顔ね…!」

 

シノンが考えたのは、自身のスタイルに合わせた、パートナー育成計画だった。

実は、少しソロプレイが行き詰まっていたのだ。

シノンは典型的なスナイパータイプ。

だから、接近戦には弱いのだ。

そこで、彼にその接近戦を補ってもらえるように、教育していこうという、魂胆だった。

 

(ただ…彼の眩しい笑顔を見ると、自分の浅ましさを感じるわ…!)

 

彼の性格を知らない彼女には、少々心苦しかったようだ。

 

「それじゃあ、まずは武器を買いましょう?デパートはあっちよ」

 

そう言って2人は移動を開始する。

その道中で、大雑把にこの世界の事を教える。

 

「このGGOは、世紀末の世界観を舞台にしているわ。モンスターが出たり、プレイヤー同士で撃ち合ったり」

 

「どんなモンスター?」

 

「気持ち悪いファンタジー系モンスターから、ロボット系モンスターまで、様々よ。後このゲームが他と違う特徴があるのだけど、知ってる?」

 

「ん?知らない」

 

「【リアル·マネー·トレード】。要するにこっちで稼いだお金を、現金に変換出来るのよ。とは言っても、私を含めた大体の人は数千円。こっちでかかる費用を抜くと、このゲームにかかる月額料金程度しか、稼げないわ。でもごく稀に、数十万稼ぐ人もいるのよ。そんな風だからその極一部…つまり、プロ連中は比較にならない位強いわ。あと厄介なのは、本職連中よ」

「…警察や自衛官って事か?」

 

「そう、更には在日米軍とか、ガチの猟師とか。さ、着いたわ。まずは、素養を見ないとね」

 

「素養?」

 

「あっちよ」

 

そう言われてツキノワが連れてこられたのは、射撃訓練場だ。

 

(なるほど、買う前に色々撃って、何が合うかを見るってことか)

 

「とりあえずハンドガンから、やってましょう?」

 

ツキノワは練習用の銃を持ち、構える。

 

「なんだか…思ってたより軽いな…」

 

「強化プラスチックだからね。練習用の使いやすい銃だから、反動も少ないはずだけど両手で持った方がいいわ。後、左目も開けてね」

 

ツキノワはもう一度構え直し、トリガーに指をかける。

その途端突然、サークル状のなにかが出てきた。

 

「これは?」

 

「攻撃的システムアシスト、【バレット·サークル】よ。貴方の鼓動に合わせて、大きさが変化しているわ。弾はその範囲内にランダムに当たるわ。つまり、穴が小さいほど、正確に狙いやすいのよ」

 

「なるほどな…」

 

ツキノワは一度銃を下げて、大きく深呼吸。

 

(イメージは、弓を引く時みたいに…)

 

バン!

 

「…驚いたわ。1発でど真ん中なんて」

 

(彼…もしかしたら同系統かな?)

 

シノンは褒めながらも、彼の素質に少し困ってしまう。

しかしそんな声には、耳も貸さずにひたすら構えるツキノワ。

そのまま2発3発と、淡々と引き金を引く。

カチン…

 

「あ、弾切れか」

 

シノンが黙って、目標を近づける。

その目標には、7つの穴が空いていた。

全て中央付近だ。

 

「…貴方、銃使った事あるの?」

 

「ある訳ないだろ?…弓道やってるんだよ」

 

シノンは何故か納得してしまいかけるが…

 

(いやいや、それで納得出来る訳…)

 

「他の銃も試してみましょう」

 

そうして全部確かめた結果

 

「貴方…なんでも出来るのね…」

 

「相性いいんかな?」

 

全部の武器種で、実戦レベルで対応可能だという事が、判明したのだった。

 

sideツキノワ

 

「さてと…なんでも出来るのはいいけど、私も貴方も、1つ大事な事を忘れてたわ」

 

「ん?大事なこと?」

 

「…貴方、お金ないでしょ」

 

「あ」

 

忘れてた…どうしよう…。

 

「…少し…出そうか?」

 

「お気持ちだけで結構です!我が家で殺される…!」

 

兎沢家ルールの中で、『何があっても、家族以外に金を借りるな』という厳格なルールがある。

基本あまり束縛しない我が家で、数少ないルールの1つだ。

その分、かなり厳しいし、俺自身も後味が悪すぎる。

 

「なにか、手っ取り早く稼ぐ方法は?カジノとか」

 

「オススメはしないけど…ほら」

 

指さす先には、【Untouchable】と書かれた看板と、西部劇風の変なセット。

 

「何あれ?」

 

「ちょうどやるみたいね、見てなさい」

 

「Hey!chicken!come on!」

 

入口にある機械に手を触れ、独特な交換と共に、カウントダウンが始まる。

0になった途端、一気に駆けだすプレイヤー。

しかし直ぐに変な体勢になって、銃弾を避ける。

 

「…パントマイム?」

 

「違うわよ。銃を向けられるとね、防御的システムアシスト【バレット·ライン】が見えるのよ。通称、弾道予測線」

 

なるほど、それを避けてるのか。

だが、残り数メートルで体制を崩してしまい、撃たれてしまった。

 

「…と、言う感じよ。あそこから、あのNPCガンマンをタッチすれば、クリアよ。クリアしたプレイヤーが、今まで貯められてきた金額を総取り」

 

「総取り!?50万弱を!?」

 

俺は上に表示されてる数字を、指さしながら驚く。

マジかよ…!?

 

「無理よ、諦めなさい」

 

「は?なんで?」

 

「あのガンマン、8メートル切ったら、エグいぐらい早くなるのよ」

 

ふーん…面白いじゃん。

俺はスタスタと入口に近づく。

 

「ちょっと!?やる気!?」

 

「まあ見てなって」

 

俺はタッチして、カウントダウンを待つ。

0になった途端、一気に加速。

…なるほど、これが弾道予測線。

俺は前に飛び避けながら、距離を詰める。

狙いを定めにくくする為に、フェイントを混ぜつつ、距離を詰める。

そのまま一気に近づき、残り10メートル。

ここから早くなるんだっけ?

 

「ッ!?」

 

確かに急激に上がったけど…問題ない。

スライディングで躱して、残り2メートル。

 

「弾切れだろ…ッ!?」

 

銃を持つ手が動いた。

ゲッ!?レーザー!?

俺は慌てて上に飛び、躱してからタッチ。

 

「Noooooooooo!!!」

うわぁ…金貨が流れ出てくる。

こうして俺は、50万クレジットを手に入れた。

 

「いや〜、大漁大漁!」

 

「あ、貴方…どうやって…!?ていうか最後!?2メートル位のあのレーザー!あんな予測線と発射なんて、ほぼ同じタイミングじゃない!!!?」

 

シノンにものすごい勢いで詰め寄られるが、そんなに変な事かね?

キリトならもっと余裕だろうな。

 

「だってこれ、弾道予測線を予測するっていうゲームだろ?」

 

というか、先輩の剣の方が速いし。

 

「よ、予測線を予測ぅぅぅ!!!!?」

 

という訳で、無事金を手に入れた俺は、武器を買う事に。

あれこれ悩んだ結果、サブマシンガンのAR-57と、サブウェポンにFive-Sevenを買った。

何でも弾が共通なんだとか。

弾を買っていると、あるものが目に入った。

 

「剣があるのか?」

 

「ん?ああ、【フォトンソード】ね。一応あるけど…買うの?」

 

「金あるし、接近戦用にね」

 

俺は赤のボディの【フォトンソード】を買って、軽く素振りする。

視線を感じて振り返ると、シノンが呆然と見ていた。

 

「ん?どうした?」

 

「いえ…すごく、綺麗で…」

 

「サンキュ」

 

最後に初期の服装から、着替える。

黒パンツに、黒インナー。

赤の丈の短いフード付きのジャケットを羽織り、黒のミリタリーブーツ。

最後に髪をポニーテールして、バレッタで高いところで止める。

 

「…うん、こんなもんか」

 

「似合うわね…ていうか、髪弄るのも手馴れてるのね」

 

「まあ…実際慣れてるしな」

 

こうして全ての用意を整えた俺は、早速フィールドに出る準備を整える。

 

「さてと…ところで、私に貸1よね?」

 

そう来るか…。

 

「…常識の範囲内で」

 

「大丈夫よ貴方にもメリットはあるから」

 

「メリット?」

 

一体どういう事だ?

 

「私のパートナーになりなさい」

 

「え?パートナー?」

 

どういう事だ?

俺が困惑していると、ポツポツと話し出す。

 

「私、基本ソロなんだけど、最近行き詰まって来てたのよ。そこで、1人パートナーでもつけようかと思ってたところに、貴方が来たのよ。初心者の貴方なら、私の都合に合わせて育てたれると思って、ここまでしたのよ」

 

なるほど、道理でやけに親身だと思ったよ。

確かに俺にもメリットはある。

その申し出は、むしろ好都合だ。

 

「俺としても、一緒にいてくれるのはありがたい。よろしく頼む」

 

「ええ、よろしく!」

 

side優月

 

これが俺とシノンの出会い。

そんな関係が、かれこれ3ヶ月位だ。

 

「何ボサってしてるのよ、優月」

 

「ん?いや、お前と初めて会った時のこと、考えてたんだよ、詩乃」

 

今俺達は、月に2回位リアルで会う程、仲が良くなった。

まあ、GGOに入れば、ほぼずっと一緒にいるしな。

 

「随分と昔のように感じるけど、ほんの3ヶ月前よね」

 

「そうそう。変な感じ」

 

そう言いながら、俺はこの店をリストに加える。

ここなら、先輩もきっと喜ぶ。

 

「…あんた、私を彼女とのデートの為のダシに使ってない?」

 

「もちろん!」

 

「はっ倒すわよ!」

 

ケラケラと笑いながら、俺はシノン…朝田詩乃の言葉をスルーする。

しかし、見た目に反して、随分と激しい物言いだ。

はっきり言って、美形ではあるが、見た目は陰キャだ。

勿体ない。

 

「今、失礼な事考えたでしょ」

 

「気の所為だろ。さてと、そろそろ帰るか」

 

俺はさっさと話を切り上げて、先に会計を済ませる。

 

「はいこれ、私の分よ」

 

「確かに」

 

もちろん奢らないし、奢らせらない。

きっちり割り勘だ。

お互いに駅に向かおうとした時だった。

 

「あれ〜?朝田〜?」

 

ん?詩乃の知り合いか?

振り返ると、如何にもなギャルがいた。

うわぁ…俺こいつみたいな奴、苦手。

 

「遠藤…さん…」

 

「何そのイケメン〜!彼氏〜!キャー!すごいじゃーん!…で?そのイケメン彼氏は、あんたのこと知ってんの?」

 

「…ッ!?やめて…!」

 

ん?こいつの事って…?

詩乃をチラリと見ると、顔色は真っ青で、身体中が震えてる。

 

「あれぇ?知らないんだ〜!じゃあ、教えてあげる!ねぇねぇ、彼氏君。この女はさ…」

 

「やめ…やめて…!」

 

「はい、そこまで」

 

俺は何とかさんの前に立ち、唇に手を当てる。

 

「悪いね、こいつとは付き合ってる訳じゃないけど、嫌がってるし、やめたって?」

 

「い、いやいや!こいつはさ…「おい」ッ!?」

 

はぁ…、つけ上がりやがって。

 

「俺さ、2度も3度も同じ事言うの、嫌いなんだわ。…そのくせぇ口閉じろよ、ゴミ女。失せろカスが。こいつに関わんな。次ふざけた真似してみろ、テメェのクソみてぇな顔面、もっとクソみたいに整形するぞ」

 

俺は殺気をぶつけながら、黙らせる。

その殺気に、何も言えず固まるバカ女。

俺はそいつを無視して、詩乃の手を取り、歩き出したのだった。

 

side詩乃

 

「…ねぇ」

 

「うん?…あ、悪い」

 

優月が私の手を離す。

別に名残惜しいとは思わないけど、不快感は無かった。

初めて会った時は、こんなイケメンなのかと、本当にビックリした。

どんな奴かと警戒したが、GGOのツキノワとほぼ一緒。

こっちの方が、男らしく大人っぽい位だ。

そんな彼の怒りを、初めて見た。

…すごく、口悪くなるのね。

 

「…すごく、口悪くなるのね」

 

思わず思った事がそのまま口に出た。

そんな優月は苦笑いしながら、頭を搔く。

 

「どうにも昔から喧嘩っぱやいというか、なんというか…」

 

そういう問題なのかな…?

まあそれはいいけど…

 

「…聞かねぇよ、別に」

 

「え?」

 

私が聞くよりも前に、先に優月が口を開いた。

 

「誰にだって言いたくない事の1つ2つはあるだろ。俺だって、お前に全てを言ってる訳じゃない」

 

…本当に、性格までイケメンね、こいつ。

まあいいわ、正直、言いたくない話だ。

 

「そういう訳で、いつも通りここでいいか?」

 

「うん、ありがとう。それじゃあ、また」

 

「おう、また」

 

駅へと向かっていく、優月の背中を見る。

見た目以上に、大きく見えたのはきっと気のせいでは無いのだろう。

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