ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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腰やばいです…。
辛すぎて死にそうです…。
よろしくお願いします。


48話

sideシノン

 

「くそ!シノン!狙撃ポイントを探せ!出来るだけ近くだ!その間は俺達が引きつける!」

 

「…了解!死ぬんじゃないわよ!」

 

私はツキノワからのお願いに、可能な限り早く、ポイントを探して見つけた。

割と警戒が厳しく、少し遠くなってしまったが、許して欲しい。

そう思い、へカートを構えた瞬間、肩に衝撃が走った。

 

「っ!?うた…れた…!?」

 

声が上手く出せない。

そう思いステータス画面を確認すると、麻痺がかかっていた。

肩には針のような、小さい銃弾。

 

「スタンバレッド…!?」

 

まさか…!?

そう思った時、少し先の廃ビルの光景が少し歪んで、人の形が現れた。

その正体は…デスガンだった。

メタマテリアル光歪曲迷彩…ですって…!?

 

「ツキノワ…キリト…オ前達ガ…本物カ…偽物カ…コレデ…ハッキリスル」

 

そう言って引き抜かれたハンドガンを見て、私は凍りついた。

その銃は私の…朝田詩乃の弱さの象徴。

そして、恐怖の象徴。

 

「ヘイシン…54式…」

 

どうして…どうしてここに…!?

 

凍りついた体で、抵抗出来る訳が無く、為す術なく殺される…そう思った時

 

「テメェェェェェェェェ!!!」

 

怒鳴り声と共に、発砲音が鳴り響いた。

聞き慣れた声と、聞き慣れた銃声。

 

「ツキ…ノワ…!」

 

それはツキノワの声と、彼の相棒、AR-57だった。

ツキノワはグレネードを投げつけ、デスガンを追い払ったが、グレネードは爆発しない。

まさか…起動させずに投げたの!?

驚いてる内に、ツキノワに、へカート共々回収された。

ツキノワは振り向きざまに、グレネードを撃ち抜いて、爆発させた。

 

「ツキノワ!こっちだ!」

 

キリトがバイクをまわし、私達はそれに乗って、何とか離脱に成功したのだった。

 

outside

 

(何とかなったか…)

 

ツキノワはグッタリとしながら、キリトがシノンにロボットホースの破壊を依頼するのを聞いていた。

しかしいくら待っても破壊音が聞こえず、シノンの方を見ると

 

「引けない…引き金が…引けない…!」

 

恐怖のあまり、手が震えて指が動かなくなっていた。

ツキノワはすぐに、自分の銃で狙い撃ちしようと構えた時、ゾッとした。

デスガンがこっちに向かって、走ってきていたから。

 

「クソ!キリト!奴が来た!すぐに出せ!」

 

「っ!わかった!捕まれ!」

 

キリトが直ぐにバイクを走らせて、距離をとる。

だが、それ束の間。

 

(しつこいな…!)

 

デスガンは、ロボットホースに股がって、追いかけてきたのだ。

 

「マジか、あの野郎!あの時の意趣返しのつもりか!」

 

ロボットホースは、扱いがかなり難しい分、踏破力が桁違いだ。

こういう障害物の多い悪路には、最適なのだ。

 

「キリト!速度を上げろ!追いつかれるぞ!」

 

「無理だ!その悪路じゃ、これが限界だ!」

 

(クソ…!どうする!?)

 

「ァ…ァァ…嫌…来ないで…!」

 

ツキノワが対応策を考えているその時、弾道予測線が、シノンに向けられる。

 

(間に合え…!)

 

ツキノワは咄嗟にフォトンソードを抜いて、銃弾を弾いた。

だがそれが、シノンの心を決壊させるきっかけになってしまった。

 

「いやぁぁぁぁぁぁぁ!!!?」

 

シノンが俺に縋って、泣きじゃくる。

 

「シノン!落ち着け!」

 

「嫌だ…助けて…」

 

ツキノワは恐怖で固まっているシノンを、強引に引き剥がして、肩を掴んで揺らす。

 

「シノン!お前の銃で奴を狙撃しろ!」

 

「無理…無理だよ!」

 

「無理でもやるんだ!やらないと、俺達が殺られる!当てなくていい!牽制だけでいいんだ!」

 

ここまで言われても、シノンは身体を震わせるだけで、動けない。

ツキノワは舌打ちをする。

 

「だったら俺にへカートを貸せ!俺が撃つ!」

 

「っ!?」

 

(へカート…私の分身。私だけが扱える…)

 

シノンはやっとへカートを構えて、スコープを覗く。

しかしバレッドサークルは酷く不安定で、照準自体も揺れで安定しない。

しかし、やはり恐怖で指が動かなかった。

 

「ダメ…!引き金が引けない…!私はもう…戦えない…!」

 

「違う!戦えない奴はいない!戦うか、戦わないか、その二択を選ぶだけだ!それに…」

 

ツキノワはシノンの手を、そっと包み込む。

驚いて振り返るシノンの目には

 

「俺も一緒に引く。俺達はパートナーだろ?」

 

不敵な笑みを浮かべ、その目には強い光が宿っていた。

 

(ツキノワ…貴方はどうして、そんなに強いの?)

 

シノンは不思議と、体の震えが無くなっているのに気がついた。

それと同時に呼吸が落ち着いてくる。

 

「…深呼吸だ。ゆっくり息を吸って…ゆっくり息を吐け。何も考えるな、ただ撃ち抜く事だけを考えろ。結果なんてのは、撃てば分かる。だから、ただ引き金を引く事だけを考えろ」

 

ツキノワの声が、不思議とシノンを冷静にさせた。

これで指は動くようになった。

だが、別の問題が残っていた。

 

「ダメ…!揺れが激しすぎる…!これじゃ!」

 

「大丈夫」

 

シノンの不安を払拭するような、強い声で、ツキノワが返す。

 

「俺達を信じろ。キリト!」

「5秒後に、揺れが止まる!備えろ!…2,1,今!」

 

キリトの宣言通りに、バギーバイクの揺れが止まった。

障害物を利用して、高く飛んだからだ。

 

「「っ!」」

 

シノンとツキノワは同時に、へカートの引き金を引く。

その弾丸は、あらぬ場所へと飛んでいく。

 

(…外した…)

 

「ビンゴ♪」

 

外したと思うシノンと、逆に当たったというツキノワ。

シノンが疑問をぶつけるより早く、へカートの弾丸は廃車にぶつかり、大爆発を引き起こした。

 

(ここまで、読んでたの…!?)

 

シノンはこの光景に驚愕していた。

 

(この2人は、強いとか弱いとかじゃない。自分の出来る事を全力でやってるんだ。そしてそれこそが…本当の強さ!)

 

「…キリト、とっととトンズラしようぜ」

 

「ああ、掴まってろよ」

 

こうして3人は、市街地を抜け、砂漠地帯へとバギーバイクを進めたのだった。

 

sideツキノワ

 

俺達はサテライトスキャンを避ける為、砂漠地帯にある洞窟に身を潜めた。

どういう理屈でSterbenが、サテライトスキャンを避けてるかは知らないが、ここなら入口は一つの上、砂だらけなので足音も足跡も残る。

 

「あいつ、どうやって現れたんだ?」

 

「…光学迷彩マントよ。メタマテリアル光歪曲迷彩っていうアビリティよ。それより、あの爆発であいつも死んだんじゃ…?」

 

いや、それはどうだろうな。

そう思っていると、代わりにキリトが答えた。

 

「爆発する直前、ロボットホースから飛び降りるのが見えた。無傷では無いだろうが、生きてはいると思う」

 

それにしてもあの野郎。

 

「圏内事件の嫌味か。ちくしょうめが」

 

「そういえばお前、あの時乗馬スキル持ってたのか?」

 

「いや、リアルの経験。一回だけだけど」

 

「…文武両道を地でいくのか…」

 

俺達の日常会話が疑問だったのか、シノンが丸くなりながら、尋ねてくる。

 

「…怖くないの?あの男が」

 

「「怖いよ」」

 

俺とキリトは揃って即答した。

当然だ、怖くないはずが無い。

でも、それ以上に

 

「それ以上に、大切な人達が死ぬのが怖い。キリトが、シノンが死ぬのが怖い。だから戦う。最悪を避ける為に、俺は剣を取り、銃を握る」

 

「俺も似たようなものかな。大切なものがあるから、戦える」

 

結局、俺達は似た者同士…それだけだ。

さてと、用意も整ったし、回復も出来た。

 

「キリト。行くぞ」

 

「ああ。シノン。君とはここでお別れだ。本当はログアウトして欲しいが、大会中は出来ないしな」

 

「…逃げない。私も…戦う」

 

などと言ってきたシノンに、俺はため息をつく。

 

「はぁ…。あのな、そんな状態で戦って何が出来る?本当に死ぬかもしれないんだぞ?」

 

「それでも構わない」

 

「…あ?」

 

こいつ、今なんつった?

 

「私…あいつがすごく怖かった。情けなく悲鳴を上げて…みっともなく泣き叫んで…。でも、それじゃダメなの。私はもう、怯えて生きるのには疲れたの…。そんな弱いままの私で生きるなら…死んだ方がいい」

 

「…1人で戦って、1人で死ぬ…そういう事か?」

 

俺の声が無意識に固くなっていく。

そしてそれは、キリトの雰囲気も同じだった。

別に俺は、他人の命には関心は無い。

74層の時みたいに、もし大切な人達が危険になるなら、俺はそれらを切り捨てる覚悟はある。

だがシノンは、既に俺にとって大切な仲間だ。

見捨てる事なんて、出来はしない。

 

「お前が死んで、誰も悲しまないと?だとしたら勘違いだ」

 

「だったら何?あんたには関係無いでしょ」

 

「あるに決まってんだろ!お前と何ヶ月コンビ組んできたと思ってるんだ!!」

 

「うるさい!誰も悲しんでくれなんて、頼んで無い!!」

 

俺とシノンの言い合いは、完全な平行線であり、お互いに譲らなかった。

 

「あんたは何なのよ!?私の中に勝手に入り込んできて…!あんたに私の、何がわかるのよ!!!」

 

「分かる訳ねぇだろ!テメェから歩み寄ろうともしねぇで、何が出来るってんだ!!」

 

「だったら!!!」

 

俺この時、初めてシノンが泣いてる事に、気がついた。

そして初めて、シノンの涙を見た。

 

「だったら…貴方は握ってくれるの!!?この人殺しの手を!!この手を握って、私を守ってくれるの!!!?」

 

人殺しの手。

この平和な日本でそんな事が起こるなんて、そうそう無いだろう。

きっと相当深いトラウマなのだろう。

だが、それでも、俺はシノンが望むなら

 

「握るさ、何度だって」

 

俺は何度もぶつけられるシノンの小さい手を、強く握り締める。

 

「お前が失意のどん底に落ちるっていうなら、俺は何度だってこの手を握って引っ張り上げる。お前が恐怖で動けないっていうなら、何度だってその背中を蹴り飛ばしてやる」

 

「…どう…して…そのまで…?」

 

何をいまさら。

そんなのは決まってる。

 

「お前はお前の弱さを補う為に、俺を育てたんだろ!だったら頼れよ!!俺達はパートナーだろうが!!!」

 

持ちつ持たれつ。

頼り頼られて。

それが俺とシノンの関係性。

俺達はパートナーなんだから。

 

「…ツキノワ…ア…ァァ…アァァァァァァァァァ!!!」

 

俺は泣きじゃくるシノンに上着を被せ、顔を見えないようにしてやる。

シノンの心が少しでも軽くなるように…そう祈りながら、シノンの頭を撫でるのだった。




それでは失礼します。
ありがとうございました。
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