ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
よろしくお願いします。
sideミト
アスナがログアウトして、私もログアウトしようとした時、戦況が動き出した。
「見て!ボロマントが動き出した!」
ボロマントが馬に乗って、バギーに乗っている3人の女の子を追いかけている。
「っておい!黒髪と金髪の名前を見ろ!」
クラインの声に、プレイヤーネームを確認すると、kirito、thukinowaと書かれていた。
まさか…!?
「黒髪がキリトで、金髪がツキノワって事!?」
「あいつらネカマやってるのか!?」
「お兄ちゃん!?」
「キリトさん!?ツキノワさん!?」
私達はそれぞれ驚愕していると、不意にある事に気がついた。
「おい、ミト。ツキノワの奴、何やってるんだ?」
クラインも気づいたらしい。
ツキノワは先ほどから、指を叩いたり、横に一回動かしたり…まさか!?
「また懐かしい暗号を…」
「暗号だぁ?」
それはまだ、私達が小さい頃。
アニメの影響で、暗号とかにハマっていた私たちは、その時親に見つからないような、伝達方法を編み出した。
それがあの暗号だ。
手や足で50音を示すのだが、今の場合だと、指を叩く回数で行数を示して、引く本数で列を示す。
今なら、3回叩いているからさ行。
横線1本だから、1番上。
つまり、さをひたすら繰り返しているのだ。
「あんた達って…」
「似た者姉弟だったんだなぁ…」
「う、うるさいわよ!///とにかく、あれはさを表してるのよ!」
さ、さ、さ、さ、さ、さ、さ…
「笹?葉っぱかな?」
「リーファさん、それは違うかと…」
リーファとシリカの言葉で、不意にある事を思い出した。
そしてそれは、確信に変わった。
「ささ…あぁぁぁぁ!いた!そんな名前のプレイヤー!」
「ああ、間違えねぇ!」
どうやらクラインも、思い出したらしい。
そう、こいつの名前は
「「ザザ…【赤目】のザザ!」」
私すぐにログアウトして、この事をお父さんに伝えたのだった。
sideツキノワ
「私ね…人を…殺したの…」
シノンの小さな声の、独白が始まる。
「5年前、東北の小さな町で起きた、郵便局の強盗事件でね」
報道では、犯人は銃の暴発として処理されたらしいが、本当は強盗の中を奪ったシノンが、撃ち殺したらしい。
「5年前…」
「11歳の時の話。それ以来、銃を見ると吐いたりしちゃうんだ。あの時の犯人の顔が浮かんできて…そして…」
PTSDってやつか…。
だが妙だな。
「でも…でも、この世界では大丈夫だった。だから思ったの、この世界で一番強くなれたら、現実の私も強くなれるって。でも、あの時、私はシノンじゃなくて、現実の私に戻ってた」
シノンは語る。
死ぬのは怖い。
だがそれと一緒くらい、怯えたまま生きるのが辛い、と。
その時の記憶と戦わずに逃げることが怖い、と。
俺はそれを聞いて、純粋に思った。
シノンこそ、強い、と。
「俺も…俺も、人を殺した」
「…え?」
俺の言葉に、シノンが反応する。
「前に、俺はSAO帰還者なのは話したよな。その中でな、11人殺した。しかもその内9人は、プレイヤーネームすら知らない。…知ろうとも、思わない。俺はさ、シノン。大切な人を守る、あのデスゲームを終わらせる、そんな
「ツキノワ!それは…!」
俺の言葉を、キリトが慌てて否定する。
ありがとう、キリト。
でもな
「違わねぇよ、キリト。俺は自分を正当化させてばかりで、殺してきた奴らの本当の名前すら、知ろうとはしなかった」
「…ツキノワ…」
「…あのボロマントはさ、
俺の言葉の続きを、キリトが拾う。
「情報が漏れていたんだ。俺達は逆に奇襲を受け、大混戦になったんだ。そしてその最中、ツキノワの姉が、殺されそうになって…それで…」
「俺はその時、人を殺した」
「そして、俺を助けようとして、また1人殺したんだ…」
キリトの悲しそうで悔しそうな顔を見て、俺は苦笑いをする。
俺はその事を、忘れた訳では無かった。
だが、見て見ぬふりをして、蓋をして、 逃げていた。
知ろうともせず、理解しようともせず、ただ自分を正当化させたいが為に、俺はその事から、目を瞑り続けてきたんだ。
「ツキノワ、一つだけ教えて。貴方はその記憶を…どうやって乗り越えたの?どうやって、過去に勝ったの?なんで今、そんなに強くいられるの?」
俺は乗り越えても、過去に勝っても、強くなんてない。
「言っただろ、正当化させてきたクソ野郎だって。乗り越えてもなければ、過去に勝った訳でもなければ、強く訳でもない。ただ、逃げてきただけだ」
俺は一生、逃げられない。
この業を、俺は一生背負っていかなくてはいけない。
それこそ、俺に課せられた罰なのだろう。
「そんな…私は…どうしたら…?」
「どうもこうもねぇよ。ただ己の行いを受け止め、悩み、苦しみ続ける。それが俺やお前に課せられた罰なんだよ、きっと」
「受け止め…悩み…苦しみ続ける…」
outside
「あの中身は…人間なんだよね?」
「そりゃあな、お化けだったら敵わんわ」
シノンの問いかけに、ツキノワは肩を竦めながら答える。
「じゃあ…SAOを忘れられなくて、GGOに来たって事?」
次にシノンの質問に答えたのは、キリトだった。
「いや、それだけじゃない気がする。ゼクシードの時も、薄塩たらこの時も、そしてペイルライダーの時も。アイツは大衆の目が集まるように、殺している」
つまりデスガンは、注目されたい、という事だ。
己の力を見せつけたい…それは自身への自信の無さの裏返しにもとれる。
「あの大袈裟な十字架といい、恐らく不特定多数にアピールしてるんだ」
2人のプレイヤー死因は、心不全だ。
それにアムスフィアで、殺人は不可能だ。
となるとどうなるのか…そう考えたツキノワは、ある事に気がついた。
「…いや待てよ。妙だ」
「ツキノワ?どうした?」
「俺を迎撃した時少し撃たれたが、その時発砲音がしなかったんだ。多分、アイツはハンドガンから、スナイパーに持ち替えたんだと思う。そのままハンドガンなら、俺を殺せたのに」
「…撃たなかったんじゃなくて、撃てなかった?」
シノンの何気ない一言が、ツキノワにあるヒラメキを与えた。
「まさか…」
「何か気づいたのか?」
「…やっぱりここから、現実世界で人は殺せない。こっちだけでは、まだ条件が揃わないんだ」
「どういう事?」
ツキノワは出来るだけ、自分の考えを噛み砕いて、伝わりやすいように伝える。
「例えば、こっちで撃つのと一緒に、現実世界でも用意がいるのとしたら?」
「用意って?」
「ターゲットの居場所を、知らなくちゃいけない」
「そんなの…そもそもどうやって、プレイヤーの住所を知るのよ?」
「アイツは光学迷彩マントがある。BoBにエントリーする時、任意で住所を打ち込む欄があるだろ?その様子を、マントを使って隠し見てたら?」
「…だとしても、デスガン本人はゲームにログインしてるんだから、そんなの…」
「本人は、な」
ツキノワの不穏な一言に、キリトは喉を干上がらせる。
「まさか…!?」
「共犯者がいたら?それならば、打ち合わせさえすれば可能だ」
1人目のデスガンが、ゲーム内でプレイヤーを撃ち、同時に2人目のデスガンが、現実世界のプレイヤーを殺す。
そういうことなのだろう。
「でも!分かったとしても、どうやって忍び込むのよ!」
これに答えたのは、キリトだ。
「…あの2人に関して言えば、古いアパートで一人暮らしだ。鍵もおそらく、セキュリティの古い初期型かもしれない。それに、ダイブ中は完全に無意識だ。多少手間取っても、問題は無い」
「じゃ、じゃあ死因は!?警察や医者にも分からないなんて…!?」
次に答えたのはツキノワだ。
「死体は発見が遅れて、かなり腐敗が進んでいたらしい。それにプレイヤーネームに医療用語を使うくらいだ。何らかの形で医療関係なんだろう。例えば…自分、もしくは身内が病院勤務だとか?」
ここまで話して、ツキノワとキリトは最悪のシナリオを考えていた。
やがて、ツキノワはシノンの肩に手を置いた。
「シノン、いくつか質問する。お前はたしか、一人暮らしだったな?」
「え、えぇ。うちも初期型の電子錠。チェーンは…して…ない…かも」
キリトが出来るだけ冷静に、現実を告げる。
「…いいか、落ち着いて聞いてくれ。アイツは俺達を追いかけている時も、シノンを撃った。それはつまり、準備は出来ている、という事だ」
シノンは理解したくないのか、震える声で聞き返す。
「準備って…なんの…?」
そしてツキノワもまた、ハッキリと告げた。
「今、この瞬間にも、共犯者がお前の部屋にいて、撃たれるのを待っている…という可能性がある、という事だ」
「っ!?…え…?」
シノンの様子が、変化しだす。
呼吸は乱れ、体が震えだす。
「ハァ…ハァ…ハァ…!?」
「シノン!落ち着け!ダメだ!気をしっかり持て!」
「今強制ログアウトしたら、何しでかすか想像がつかない!それだけはダメだ!だから落ち着け!」
キリトとツキノワが、慌ててシノンを落ち着かせろうと、必死に声をかける。
「…デスガンに撃たれるまで、あいつらは何も出来ない。それが、あいつら自身が定めたルールだ。裏を返せば、それまで何も出来ないって事だ。だから落ち着け…な?」
「でも…!でも…!怖いよ…!」
「…そうだよな、怖いよな…」
ツキノワとキリトは、優しく宥めすかしたのだった。
「俺達が出来るのは、一つだけ」
「ああ…倒すぞ、デスガン」
これだけが、唯一の安全を確保出来る手段だった。
sideツキノワ
「デスガンとやり合う上で、厄介なのがひとつ」
「なんだ?」
「闇風が生き残ってる、という事だ。さっきサテライトスキャンで確認した。デスガンはプレイヤースキルそのものも高い。それと同時に、闇風を相手取るのは、最悪だ」
俺は闇風と戦ったことあるが故に、あいつの強さを知っている。
「だからシノンとキリトは、そっちを頼む。デスガンは…俺がやる」
これは俺の因縁だ。
俺がこの負の連鎖を断ち切る。
これだけは、何があっても譲れない。
「…わかったわ。ツキノワに任せる。でもどうやって、デスガンをおびき出すのよ?」
「もうじきサテライトスキャンだ。俺がわざと身を晒すから、それで釣る」
「あんた、自分が囮になるの!?」
「こうでもしないと、あれは釣れねぇよ」
俺は肩を竦めると、あるものに気づいた。
「あれ、なんだっけ?」
「え?…ああ。ライブ映像カメラよ。…ははぁん。そうね、貴方には可愛い彼女がいるのよね、優月?」
「あはは、あんまからかうとぶっ殺すぞ、詩乃?」
俺達はにこやかに笑いながら、殺気をぶつけ合う。
それに当てられたキリトが、慌てて2人を止める。
「お、おい!2人共!?落ち着けって…!?」
「「いや、冗談だけど」」
「紛らわしいんだよ!!」
そんなこんなで、用意を整える3人。
「…ねぇ、2人の予想通りなら、デスガンの共犯者は、私の家に張り付いてるってことよね?」
「そうだけだ…」
突然どうしたんだ?
「なら、闇風に囮になってもらったら?」
う〜ん、悪くないんだが。
「あまり使いたくない手だな」
「どういう事?」
「ペイルライダーを撃ってから、お前を撃つまで約30分。つまり、ペイルライダーからシノンの家まで30分圏内って事になる」
「…それ、都合が良すぎないか?」
俺の言葉に、キリトが疑問をぶつける。
そう、その通りだ。
「でも、そうだとしか…」
「デスガンの共犯者が1人だとは、限らない。もしもう1人いたら?あいつには、よくコンビを組んでいたうるさいバカがいる」
「…まさか、ジョニーブラック!?」
キリトはその可能性に気づいて、声を張り上げた。
俺は頷いて肯定する。
「ちょっと待って…こんな殺人行為に…3人以上が関わっているってこと…?」
シノンが声を震わせて尋ねるが、俺は頷く事しか出来ない。
「…PKには、PKなりの矜持や覚悟があるわ。動けない人を毒薬で殺す…そんな奴らには…負けられない!」
「ああ、ここで全てにケリをつける。キリト、シノン。頼むぞ!」
「ああ、闇風は任せろ兄弟!」
「あんたの背中、私が見てるわ、相棒」
俺達は拳をぶつけ合い、当初の予定通りの作戦に乗り出した。
デスガン…いや、ザザ。
「終わらせよう。俺達の戦いを」
それでは失礼します。
ありがとうございました。