ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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連続投稿です。
よろしくお願いします。


49話

sideミト

 

アスナがログアウトして、私もログアウトしようとした時、戦況が動き出した。

 

「見て!ボロマントが動き出した!」

 

ボロマントが馬に乗って、バギーに乗っている3人の女の子を追いかけている。

 

「っておい!黒髪と金髪の名前を見ろ!」

 

クラインの声に、プレイヤーネームを確認すると、kirito、thukinowaと書かれていた。

まさか…!?

 

「黒髪がキリトで、金髪がツキノワって事!?」

 

「あいつらネカマやってるのか!?」

 

「お兄ちゃん!?」

 

「キリトさん!?ツキノワさん!?」

 

私達はそれぞれ驚愕していると、不意にある事に気がついた。

 

「おい、ミト。ツキノワの奴、何やってるんだ?」

 

クラインも気づいたらしい。

ツキノワは先ほどから、指を叩いたり、横に一回動かしたり…まさか!?

 

「また懐かしい暗号を…」

 

「暗号だぁ?」

 

それはまだ、私達が小さい頃。

アニメの影響で、暗号とかにハマっていた私たちは、その時親に見つからないような、伝達方法を編み出した。

それがあの暗号だ。

手や足で50音を示すのだが、今の場合だと、指を叩く回数で行数を示して、引く本数で列を示す。

今なら、3回叩いているからさ行。

横線1本だから、1番上。

つまり、さをひたすら繰り返しているのだ。

 

「あんた達って…」

 

「似た者姉弟だったんだなぁ…」

 

「う、うるさいわよ!///とにかく、あれはさを表してるのよ!」

 

さ、さ、さ、さ、さ、さ、さ…

 

「笹?葉っぱかな?」

 

「リーファさん、それは違うかと…」

 

リーファとシリカの言葉で、不意にある事を思い出した。

そしてそれは、確信に変わった。

 

「ささ…あぁぁぁぁ!いた!そんな名前のプレイヤー!」

 

「ああ、間違えねぇ!」

 

どうやらクラインも、思い出したらしい。

そう、こいつの名前は

 

「「ザザ…【赤目】のザザ!」」

 

私すぐにログアウトして、この事をお父さんに伝えたのだった。

 

sideツキノワ

 

「私ね…人を…殺したの…」

 

シノンの小さな声の、独白が始まる。

 

「5年前、東北の小さな町で起きた、郵便局の強盗事件でね」

 

報道では、犯人は銃の暴発として処理されたらしいが、本当は強盗の中を奪ったシノンが、撃ち殺したらしい。

 

「5年前…」

 

「11歳の時の話。それ以来、銃を見ると吐いたりしちゃうんだ。あの時の犯人の顔が浮かんできて…そして…」

 

PTSDってやつか…。

だが妙だな。

 

「でも…でも、この世界では大丈夫だった。だから思ったの、この世界で一番強くなれたら、現実の私も強くなれるって。でも、あの時、私はシノンじゃなくて、現実の私に戻ってた」

 

シノンは語る。

死ぬのは怖い。

だがそれと一緒くらい、怯えたまま生きるのが辛い、と。

その時の記憶と戦わずに逃げることが怖い、と。

俺はそれを聞いて、純粋に思った。

シノンこそ、強い、と。

 

「俺も…俺も、人を殺した」

 

「…え?」

 

俺の言葉に、シノンが反応する。

 

「前に、俺はSAO帰還者なのは話したよな。その中でな、11人殺した。しかもその内9人は、プレイヤーネームすら知らない。…知ろうとも、思わない。俺はさ、シノン。大切な人を守る、あのデスゲームを終わらせる、そんな大義名分の元(言い訳をして)、自分の殺しを正当化させようとする、クソ野郎なんだよ」

 

「ツキノワ!それは…!」

 

俺の言葉を、キリトが慌てて否定する。

ありがとう、キリト。

でもな

 

「違わねぇよ、キリト。俺は自分を正当化させてばかりで、殺してきた奴らの本当の名前すら、知ろうとはしなかった」

 

「…ツキノワ…」

 

「…あのボロマントはさ、笑う棺桶(ラフィン·コフィン)っていう、プレイヤーキラーギルドの、最高幹部の1人だった。そして、俺はあいつとはライバル関係みたいなものだったんだ。ある時、笑う棺桶(ラフィン·コフィン)を壊滅させようと、攻略組内で、討伐隊が編成されて、俺とキリトはそれに参加した。だが…」

 

俺の言葉の続きを、キリトが拾う。

 

「情報が漏れていたんだ。俺達は逆に奇襲を受け、大混戦になったんだ。そしてその最中、ツキノワの姉が、殺されそうになって…それで…」

 

「俺はその時、人を殺した」

 

「そして、俺を助けようとして、また1人殺したんだ…」

 

キリトの悲しそうで悔しそうな顔を見て、俺は苦笑いをする。

俺はその事を、忘れた訳では無かった。

だが、見て見ぬふりをして、蓋をして、 逃げていた。

知ろうともせず、理解しようともせず、ただ自分を正当化させたいが為に、俺はその事から、目を瞑り続けてきたんだ。

 

「ツキノワ、一つだけ教えて。貴方はその記憶を…どうやって乗り越えたの?どうやって、過去に勝ったの?なんで今、そんなに強くいられるの?」

 

俺は乗り越えても、過去に勝っても、強くなんてない。

 

「言っただろ、正当化させてきたクソ野郎だって。乗り越えてもなければ、過去に勝った訳でもなければ、強く訳でもない。ただ、逃げてきただけだ」

 

俺は一生、逃げられない。

この業を、俺は一生背負っていかなくてはいけない。

それこそ、俺に課せられた罰なのだろう。

 

「そんな…私は…どうしたら…?」

 

「どうもこうもねぇよ。ただ己の行いを受け止め、悩み、苦しみ続ける。それが俺やお前に課せられた罰なんだよ、きっと」

 

「受け止め…悩み…苦しみ続ける…」

 

outside

 

「あの中身は…人間なんだよね?」

 

「そりゃあな、お化けだったら敵わんわ」

 

シノンの問いかけに、ツキノワは肩を竦めながら答える。

 

「じゃあ…SAOを忘れられなくて、GGOに来たって事?」

 

次にシノンの質問に答えたのは、キリトだった。

 

「いや、それだけじゃない気がする。ゼクシードの時も、薄塩たらこの時も、そしてペイルライダーの時も。アイツは大衆の目が集まるように、殺している」

 

つまりデスガンは、注目されたい、という事だ。

己の力を見せつけたい…それは自身への自信の無さの裏返しにもとれる。

 

「あの大袈裟な十字架といい、恐らく不特定多数にアピールしてるんだ」

 

2人のプレイヤー死因は、心不全だ。

それにアムスフィアで、殺人は不可能だ。

となるとどうなるのか…そう考えたツキノワは、ある事に気がついた。

 

「…いや待てよ。妙だ」

 

「ツキノワ?どうした?」

 

「俺を迎撃した時少し撃たれたが、その時発砲音がしなかったんだ。多分、アイツはハンドガンから、スナイパーに持ち替えたんだと思う。そのままハンドガンなら、俺を殺せたのに」

 

「…撃たなかったんじゃなくて、撃てなかった?」

 

シノンの何気ない一言が、ツキノワにあるヒラメキを与えた。

 

「まさか…」

 

「何か気づいたのか?」

 

「…やっぱりここから、現実世界で人は殺せない。こっちだけでは、まだ条件が揃わないんだ」

 

「どういう事?」

 

ツキノワは出来るだけ、自分の考えを噛み砕いて、伝わりやすいように伝える。

 

「例えば、こっちで撃つのと一緒に、現実世界でも用意がいるのとしたら?」

 

「用意って?」

 

「ターゲットの居場所を、知らなくちゃいけない」

 

「そんなの…そもそもどうやって、プレイヤーの住所を知るのよ?」

 

「アイツは光学迷彩マントがある。BoBにエントリーする時、任意で住所を打ち込む欄があるだろ?その様子を、マントを使って隠し見てたら?」

 

「…だとしても、デスガン本人はゲームにログインしてるんだから、そんなの…」

 

「本人は、な」

 

ツキノワの不穏な一言に、キリトは喉を干上がらせる。

 

「まさか…!?」

 

「共犯者がいたら?それならば、打ち合わせさえすれば可能だ」

 

1人目のデスガンが、ゲーム内でプレイヤーを撃ち、同時に2人目のデスガンが、現実世界のプレイヤーを殺す。

そういうことなのだろう。

 

「でも!分かったとしても、どうやって忍び込むのよ!」

 

これに答えたのは、キリトだ。

 

「…あの2人に関して言えば、古いアパートで一人暮らしだ。鍵もおそらく、セキュリティの古い初期型かもしれない。それに、ダイブ中は完全に無意識だ。多少手間取っても、問題は無い」

 

「じゃ、じゃあ死因は!?警察や医者にも分からないなんて…!?」

 

次に答えたのはツキノワだ。

 

「死体は発見が遅れて、かなり腐敗が進んでいたらしい。それにプレイヤーネームに医療用語を使うくらいだ。何らかの形で医療関係なんだろう。例えば…自分、もしくは身内が病院勤務だとか?」

 

ここまで話して、ツキノワとキリトは最悪のシナリオを考えていた。

やがて、ツキノワはシノンの肩に手を置いた。

 

「シノン、いくつか質問する。お前はたしか、一人暮らしだったな?」

 

「え、えぇ。うちも初期型の電子錠。チェーンは…して…ない…かも」

 

キリトが出来るだけ冷静に、現実を告げる。

 

「…いいか、落ち着いて聞いてくれ。アイツは俺達を追いかけている時も、シノンを撃った。それはつまり、準備は出来ている、という事だ」

 

シノンは理解したくないのか、震える声で聞き返す。

 

「準備って…なんの…?」

 

そしてツキノワもまた、ハッキリと告げた。

 

「今、この瞬間にも、共犯者がお前の部屋にいて、撃たれるのを待っている…という可能性がある、という事だ」

 

「っ!?…え…?」

 

シノンの様子が、変化しだす。

呼吸は乱れ、体が震えだす。

 

「ハァ…ハァ…ハァ…!?」

 

「シノン!落ち着け!ダメだ!気をしっかり持て!」

 

「今強制ログアウトしたら、何しでかすか想像がつかない!それだけはダメだ!だから落ち着け!」

 

キリトとツキノワが、慌ててシノンを落ち着かせろうと、必死に声をかける。

 

「…デスガンに撃たれるまで、あいつらは何も出来ない。それが、あいつら自身が定めたルールだ。裏を返せば、それまで何も出来ないって事だ。だから落ち着け…な?」

 

「でも…!でも…!怖いよ…!」

 

「…そうだよな、怖いよな…」

 

ツキノワとキリトは、優しく宥めすかしたのだった。

 

「俺達が出来るのは、一つだけ」

 

「ああ…倒すぞ、デスガン」

 

これだけが、唯一の安全を確保出来る手段だった。

 

sideツキノワ

 

「デスガンとやり合う上で、厄介なのがひとつ」

 

「なんだ?」

 

「闇風が生き残ってる、という事だ。さっきサテライトスキャンで確認した。デスガンはプレイヤースキルそのものも高い。それと同時に、闇風を相手取るのは、最悪だ」

 

俺は闇風と戦ったことあるが故に、あいつの強さを知っている。

 

「だからシノンとキリトは、そっちを頼む。デスガンは…俺がやる」

 

これは俺の因縁だ。

俺がこの負の連鎖を断ち切る。

これだけは、何があっても譲れない。

 

「…わかったわ。ツキノワに任せる。でもどうやって、デスガンをおびき出すのよ?」

 

「もうじきサテライトスキャンだ。俺がわざと身を晒すから、それで釣る」

 

「あんた、自分が囮になるの!?」

 

「こうでもしないと、あれは釣れねぇよ」

 

俺は肩を竦めると、あるものに気づいた。

 

「あれ、なんだっけ?」

 

「え?…ああ。ライブ映像カメラよ。…ははぁん。そうね、貴方には可愛い彼女がいるのよね、優月?」

 

「あはは、あんまからかうとぶっ殺すぞ、詩乃?」

 

俺達はにこやかに笑いながら、殺気をぶつけ合う。

それに当てられたキリトが、慌てて2人を止める。

 

「お、おい!2人共!?落ち着けって…!?」

 

「「いや、冗談だけど」」

 

「紛らわしいんだよ!!」

 

そんなこんなで、用意を整える3人。

 

「…ねぇ、2人の予想通りなら、デスガンの共犯者は、私の家に張り付いてるってことよね?」

 

「そうだけだ…」

 

突然どうしたんだ?

 

「なら、闇風に囮になってもらったら?」

 

う〜ん、悪くないんだが。

 

「あまり使いたくない手だな」

 

「どういう事?」

 

「ペイルライダーを撃ってから、お前を撃つまで約30分。つまり、ペイルライダーからシノンの家まで30分圏内って事になる」

 

「…それ、都合が良すぎないか?」

 

俺の言葉に、キリトが疑問をぶつける。

そう、その通りだ。

 

「でも、そうだとしか…」

 

「デスガンの共犯者が1人だとは、限らない。もしもう1人いたら?あいつには、よくコンビを組んでいたうるさいバカがいる」

 

「…まさか、ジョニーブラック!?」

 

キリトはその可能性に気づいて、声を張り上げた。

俺は頷いて肯定する。

 

「ちょっと待って…こんな殺人行為に…3人以上が関わっているってこと…?」

 

シノンが声を震わせて尋ねるが、俺は頷く事しか出来ない。

 

「…PKには、PKなりの矜持や覚悟があるわ。動けない人を毒薬で殺す…そんな奴らには…負けられない!」

 

「ああ、ここで全てにケリをつける。キリト、シノン。頼むぞ!」

 

「ああ、闇風は任せろ兄弟!」

 

「あんたの背中、私が見てるわ、相棒」

 

俺達は拳をぶつけ合い、当初の予定通りの作戦に乗り出した。

デスガン…いや、ザザ。

 

「終わらせよう。俺達の戦いを」




それでは失礼します。
ありがとうございました。
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