ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
よろしくお願いします。
sideツキノワ
俺は今、砂漠のど真ん中にいる。
俺は全神経を集中させて、周囲の気配を感じ取る。
…南東から足音、闇風だな。
あいつはシノンとキリトが何とかしてくれる。
放置して良し。
あの時、どうやって奇襲を読んだんだっけ?
…そうだ、あの時は殺気を感じたんだ。
まるで、水面に石を投げ込んで波紋が出来たような不安。
そう例えば…今みたいな感覚…!
「ッ!?」
俺は咄嗟に体を逸らして躱す。
髪を掠めたが、まあ別にいい。
「見つけた…!ハァ!」
第2射、第3射と次々に、弾きながら俺は、真っ直ぐにデスガンの元へと走っていく。
あと少し…!
その時、デスガンに向かって弾道予測線が向けられる。
シノンのアシストだ。
そうしてへカートの銃弾が、サイレントアサシンを破壊した。
「ナイス!ハァ!!」
俺は一気に加速して、全速の突きを放った。
「…え?」
しかし、パーツの一部を拾ったデスガンは、あの時よりも速い動きで突きを躱して、逆に左肩にカウンターを放ってきた。
「クソ!」
俺はすぐに刺さっているそれを弾いて、距離をとる。
その手に握られているのは、金属製のエストックだった。
「相変わらずのエストックか、デスガン…いや、ザザ。というか…GGOに金属剣があるなんてな」
「オ前トシタコトガ…勉強不足ダナ…【剣豪】。【銃剣作成スキル】デ作レル。長サヤ重サハ…コノアタリガ限度ダガナ」
お互い距離をとって、睨み合いながら、軽口を叩き合う。
「なるほど…俺が使うには、ちょいとばかり、貧弱そうだな」
「相変ワラズ…頑丈ナ武器ガ…オ好みカ?ナラバ…ソンナオモチャハ…サゾ物足リナイダロウ」
「そうでもねぇよ。こういうのもロマンだろ。それに、剣は剣だ。お前をぶった斬れれば、それで十分!」
俺は一息に距離を詰め、斬りかかった。
俺の一撃は躱され、お返しの突きが来る。
俺はすぐに払って、攻撃を返そうとして、咄嗟に首を捻る。
「ッ!?こいつ…!」
戻しが速い!
ていうかこいつ、こんなに速かったか!?
気づけば防戦一方になっていく俺。
「オ前ハ…現実ノ腐ッタ空気ヲ…吸イ過ギタ。オ前の刀ハモウ…錆ビツイタ!ソンナ鈍デハ…俺ハ斬レナイ!」
好き放題言いやがって…!
でもそうか、こいつが速いんじゃなくて、俺がなまってるのか。
その証拠に、ザザの突きの濁流を捌ききれず、少しづつ身体中にダメージエフェクトが刻まれる。
「この…くらいやがれ!」
俺は咄嗟にAR-57を取り出して、弾丸をばらまいた。
「クッ!?」
突然の事で、デスガンも対応出来なかったか、俺の銃弾をモロに受けて、後ろに飛んでいく。
だが、倒すには至らなかったらしく、まだ生きている。
「隙あり!」
俺はその隙を斬ろうと、斬りかかったが
「ヌルイ」
デスガンは転がりながら、砂を掴んで俺にかけてきた。
「ッ!?クソ!」
俺は銃で顔を隠して、砂から避けるがその隙に、俺の銃が蹴り上げられてしまう。
「にゃろう!」
俺は蹴った体勢のデスガンに斬りかかるも防がれて、しかも腹を蹴られながら、投げ飛ばされる。
「グハッ!」
「ダカラ言ッタダロウ。オ前ハナマッタンダト!」
クソ…!何としても、まずはこのラッシュをブレイクしないと…!?
side明日奈
私は今、千笑と一緒に、千代田区にある病院にいる。
この病院は、和人君がリハビリをしていた病院で、今は2人が、GGOにダイブしている病院だ。
「ッ!?優月君!」
「和人!」
私達は直ぐに2人に駆け寄り、2人がすごく辛そうなのに気づいた。
「結城さんと、指原さんね。話は菊岡さんから聞いてるわ」
そう、私にここを教えたのは菊岡さんだ。
…強引に聞き出した、と言った方が正解だけど、有事だから、なりふり構う気は無い。
「あの!2人は!?」
「それが突然心拍が上がって…でも、命の心配は無いから安心して」
突然心拍が?
どういう事?
『ママ!お姉ちゃん!モニターに、試合映像を流します!』
千笑の端末からユイちゃんの声が聞こえ、つられるようにモニターを見ると、優月君がデスガンと、和人君が闇風というプレイヤーと、戦っていた。
「和人!」
「2人は戦っているのね…」
私はここからでは何も出来ず、ただ祈るしか出来やなかった。
神様…お願い…どうか、彼に力を…!
sideツキノワ
激しいラッシュが続く。
その度に、俺の体にダメージエフェクトが発生して、俺のライフを削っていく。
弾く…弾く…弾く…!
何度も何度も繰り返して…俺は引くのでは無く、前に出た。
「ナニ!?」
デスガンの突きを滑らせながら、あえて前に出て、距離を詰める。
詰めながら鳩尾辺りに肘をねじ込み、体勢を崩させる。
「グッ!」
「まだ…だぁ!」
襟首を掴みヘッドバッドを叩き込み、よろめいた所を、飛び膝蹴りで吹き飛ばした。
「オラァ!」
「グッ…!コノ程度デ…!」
そう、この程度では大したダメージは無い。
だがこれで、ラッシュを切る事には成功した。
そしてその時、デスガンに弾道予測線が向けられた。
これは…!?
「ッ!?」
「逃がすかァァァァァ!!」
この予測線による攻撃は、シノンの経験と閃き。
闘志のあらん限りを詰め込んだ、幻影の一弾。
このラストアタック…
俺は土壇場で、あと一歩間に合わないと踏んで、掴もうと伸ばした手を引っ込めて、Five-seveNを引き抜いた。
「ッ!?」
「ぁぁぁぁぁぁ!!」
全弾打ち込んだ俺は、透明化して逃げようとするデスガンを、防ぐ事に成功した。
「グゥ…!コノォ!」
デスガンの【スタースプラッシュ】が、俺の体を貫く。
「ぐっ…ガアァァァァァァァァ!!!」
それを無視して俺は、フォトンソードをデスガンの体にめり込ませた。
「ハァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
そして俺は、デスガンの体を真っ二つに切り裂いたのだった。
outside
「マダ…マダ…終ワラ…」
切り裂かれたデスガンは、そう弱々しく言い残して、倒れた。
「いや、もう終わりだ、デスガン。…いや、ザザ。お前の正体は既に、外に伝えた。ミトなら気づくはずだ。お前の共犯者もすぐに洗い出される。ラフコフの殺しは、俺達の戦いは、もう終わりだ」
ツキノワはそう言い残して、死亡判定で動かないデスガンのアバターに背を向けて、AR-57を回収して立ち去る。
「やったな、ツキノワ」
「お疲れ様、ツキノワ」
「キリト、シノン。ありがとう」
3人は合流して、拳をぶつけあった。
「あいつらは、自分の力を誇示する事を第一としている。だからあいつの仲間も、手は出せない筈だ」
「ただ何が起こるか分からないから、警察に連絡した方がいい」
「警察って…なんて説明するのよ?」
シノンにそう言われて、キリトとツキノワは顔を見合わせて、肩を竦める。
「たしかに…ここでシノンの住所聞く訳にもなぁ…」
「ツキノワの親父さん、公務員だろ?何とかならないのか?」
「多分、ザザの身柄を抑える方に手を回してるから、何とかなると思うけど」
「…いいわよ。ツキノワは私の事知ってるし。住所と教えるわ」
そう言って2人は、シノンのプライベート情報を教えてもらう。
住所を聞いて、2人は目を見開いた。
「驚いたな、俺達の今いる場所から近いじゃん」
そう、2人は今、千代田区の病院にいる。
シノンの家は、そこから近かったのだ。
「俺達がそっちに行くよ」
「…ありがとう、でも近くに信用出来る友達がいるから、大丈夫よ」
シノンの言葉を聞いて、少しだけ嫌な予感を抱いたツキノワだが、それは棚上げする事に。
キリトの方も本名を教えて、そろそろ決着をつける事に。
「どうするよ?乱戦でケリつけるか?」
ツキノワの言葉に、シノンは2人を見比べてため息をつく。
「あのねぇ…2人共ボロボロじゃない。そんな奴らに勝っても、嬉しくないわ。…決着は次の機会にする」
「じゃあ、どうやって?」
「それはね…」
そう言ってシノンは、ツキノワの手首を掴む。
不思議そうに首を傾げるツキノワとキリトを無視して、説明を始めるシノン。
「第1回優勝は、2人同時優勝なの。理由は、勝つはずだった選手が油断して、負けるはずの選手のお土産グレネードに引っかかったのよ」
「は?…テメェ!?」
お土産グレネード。
この言葉の意味に気づいたツキノワは、全速力で逃げようとするが、当然シノンはその手を離さない。
「おまっ!シノン!ふざけんなぁ!」
「あら?へカートぶん回してる私に、STRで勝てるとでも?」
そんなぎゃあぎゃあ騒ぐツキノワを見て、ヤバいと悟ったキリトは、コッソリと逃げようとするが
「クソ!こら、キリト!逃がさねぇぞ!」
「グェ!?ツキノワ!離せ!」
それを見抜いたツキノワは、キリトの襟首を掴んで逃がさない。
そんなやり取りをしてる隙に、グレネードを起動させたシノンは、それを持ったまま、2人に抱きつく。
「ふふーん♪」
「「ふざけるなぁァァァァ!!!」」
ドガァァァァァァァァァァァァァァァン!!!!!!
男2人の悲鳴は、爆発音によって掻き消されたのだった。
sideツキノワ
「ったく…シノンの奴め…」
俺はログアウトの待機時間中、愚痴りながら、ある事を考えていた。
シノンの言う、信用出来る友達、という奴だ。
恐らくはシュピーゲルとかいう、プレイヤーだろう。
リアルで同じ学校だと言っていた。
だがあの男の目は、嫌な記憶を過ぎらせる。
そう…クラディールと同じ目をしてきた、そんな気がするのだ。
「…すぐに向かうか」
この胸騒ぎを、勘違いだと分からせるために。
それでは失礼します。
ありがとうございました。