ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
よろしくお願いします。
57話
side優月
イーディスがくれた毛布にくるまりながら、飛竜の背に揺られること、数時間。
「着いたわよ。ここが人界の中心。【セントラル·カセドラル】よ」
「いやでっけぇな!?」
思わず唖然としながら、目の前のバカでかい塔を見上げる。
まだある程度の距離があるけど、それでもそこそこのデカさだ。
「何階あるんだよ…」
「100よ。まだ大きくなってるって」
「はぁ!?100!?」
ちょっと…権威を示しすぎじゃ…。
そう考えていると、下の方に何やら空いてる場所があり、霧舞をそこに誘導する。
中には他の飛竜が数匹いた。
「ここは発着所よ」
「なるほどな…」
霧舞もそうだが、他の飛竜たちも可愛がられてるのか、痩せ細ったりはしていない。
その様子を見ていると
「おう、来たか、イーディス」
「あ!騎士長!帰ってたの!?」
男の声が聞こえて、その方を向く。
そこに居たのは40そこそこの男。
鍛え上げられた肉体と、鼻に走る古傷。
そして何より…重厚な剣士の気迫。
あまりの気迫に、一瞬飲まれかけるが、辛うじてそれを踏みとどまる。
「そいつが、報告にあった少年か」
「うん。これから猊下に指示を仰ごうと思うけど、猊下は?」
「その事だがな…先程、俺の報告のついでに聞いてみたんだが、俺の裁量に任せるだとよ」
つまり、俺の処遇はこの男によって、決められるのか。
そう思っていると、男と視線が合う。
「俺は【整合騎士団】団長、【ベルクーリ=シンセシス=ワン】だ。よろしくな、少年」
「優月です。よろしく…?」
「…」
「ッ!?」
今のなんだ!?
咄嗟に避けたが、今、透明な何が俺のそばを通り過ぎたぞ!?
「ほう…イーディス、今の見えたか」
「う、うん。騎士長の【心意】の小刃をユヅキがギリギリ避けたわね」
【心意】?
なんだよそれ?
意味わからねぇ…。
「ふむ…よし、少年。剣は使えるか?」
「た、多分…」
「なら、俺と一戦やるか」
「「…はぁ!?」」
なんでそうなった!?
outside
それから紆余曲折あり、優月の対戦相手がイーディスに変更になった。
「いくらなんでも、いきなり騎士長は重いでしょ!私がやるから!」
そう言われたベルクーリは渋々、イーディスにバトンタッチ。
そのまま練習場まで連れていき、それぞれに木刀を用意する。
「おう、好きなの選べ」
「…じゃあ、これ」
そう言って優月が選んだのは、木刀。
「ほう…」
「あら、私と同じなのね」
そういうイーディスの手には、同じ木刀が握られている。
「よし。ルールを説明する」
·一本先取。
·負けを認める、気絶、審判の判断により勝ち負けを決める。
·今回の審判はベルクーリが務める。
·骨折以上の怪我を追わせない。
「以上だ。双方、構え!」
木刀を水平に構えるイーディスと、ダラりと力を抜いている優月。
「…始め!」
「やあぁぁぁぁぁぁ!」
「フッ!」
イーディスが開始と同時に、一気に踏み込み突きを放つ。
優月はその突きを掬い上げるようにいなして、流れるように胴を横薙ぎに払う。
「うわぁ!?」
(何!?今の手応え!?まるで羽みたい…!?)
踏み込みを強引に止めることで、ギリギリ避けたイーディスは、一度距離をとる。
だが
「え?」
いつの間にかすぐ目の前にいる優月に、惚けてしまうイーディス。
「フッ!」
「クッ!?」
カァァァン!
木がぶつかる音を聞きながら、その重さに驚くイーディス。
あまりに軽やかな振り方だった為、想定以上の衝撃に、イーディスの腕が痺れる。
「シッ!」
「ッ!?」
よろけたイーディスめがけて、軽やかながら鋭い突きが迫る。
「システム·コール!ジェネレート·エアリアル·エレメント!ディスチャージ!」
「なっ!?」
イーディスから突然発せられた爆風に、優月は吹き飛ばされる。
転がりながら、体中に走る痛みに、優月は驚く。
(ペイン·アブソーバーが効いてない!?痛みがリアルにフィードバックするのか!)
「つ〜…!おい!今のなに!?ズルくね!?」
「【神聖術】よ!ルールに決められてないもの!ズルじゃないわ!」
「おい!おっさん!異議を申し立てる!」
優月の抗議を聞いたベルクーリは、少し考えてから
「たしかに決めちゃいねぇが、フェアじゃねぇわな。おい、イーディス。次は反則にするぞ」
「え〜!?」
神聖術の使用禁止を決定した。
それに喜ぶ優月と、反対するイーディス。
「いいわよ!剣技で勝ってやるわ!」
そのまま切りかかるイーディスと、それに反撃する優月。
イーディスの剣は、重く鋭い。
(重い!まともに受けたら、剣どころか腕までもってかれる!この体のどこに、こんな力があるんだよ!)
一方の優月の剣は、とにかく上手い。
(剣の使い方が上手い!あまりにも自然に振ってるから、いつ切ってくるかわからない!まるで体の一部みたいに使ってる!)
攻守が次々と切り替わるのを、ベルクーリは見ながら驚愕する。
(あのイーディスと互角にやりあうとはな…)
イーディスの持ち味は、神聖術と剣術の組み合わせだ。
神聖術を封じた故に強みは減ってはいるが、それでも剣術だけでも、整合騎士団において上位に食い込む。
そのイーディスと互角に戦う優月を見て、ベルクーリは剣士の性が疼き出す。
「小父様、これは一体…?」
そんなベルクーリのそばに現れたのは、金色の女騎士だ。
見た目の年頃は、優月とそう変わらない。
「おう、アリスの嬢ちゃんか。イーディスが連れてきた男の腕を見てたんだが…嬢ちゃんも見てけ」
金色の女騎士の名前は【アリス=シンセシス=サーティ】。
整合騎士団の中で、若くして第3席に君臨する実力者だ。
「はぁ…」
「俺達には無い、おもしれぇ戦い方するぞ」
side優月
俺が思うに、戦いとは理詰めだ。
本能が大事だと言う奴もいるが、それも間違えではない。
だが、それ以上に俺は、理性が大事だと思っている。
「フッ!」
「クッ!?」
イーディスが動きたいであろう動きを、先に埋めることで足止めする。
「シッ!」
「うわわ!?」
イーディスが認識しずらいだろうタイミングで、そこを突いて剣を振る。
「ハァ!」
「ッ!」
イーディスの攻撃するタイミングで、先に仕掛けて不発させる。
これだけ打ち合えば、イーディスの思考パターンとタイミングは読めてくる。
あとはそこから、選択肢を狭めていくだけだ。
「こ…のぉぉ!!」
「グワッ!」
ほら、やっぱり力ずくで弾こうとしてくる。
「隙あり!」
俺は両手で握られた、振り下ろされる剣を見ながら、1歩前に出て柄の真ん中…ちょうどイーディスの両手のど真ん中に手を添える。
「え?」
そのまま腰を入れて、重心ごとイーディスを持ち上げる。
いくら力が上でも、体重は俺の方が上だ。
というか、この技には力はいらない。
太刀取り…合気道と呼ばれる武道の技の1つ。
「なっ!?…ギャア!?」
女が上げちゃいけない声を上げながら、背中から落ちるイーディスは、その衝撃で木刀を手放す。
当然俺はその木刀を握っているわけで、
「シッ!」
「そこまで!」
俺がイーディスの木刀を、イーディスの真横に刺したのと、ベルクーリのおっさんが止めたのはほぼ同時だった。
「勝者!ユヅキ!」
俺はベルクーリの判定を聞きながら、イーディスの手を掴み起こす。
「…今の何よ」
「太刀取り。徒手空拳だ」
「ズルいわよ!」
「ルールに決められてないし」
ムスッとするイーディスを無視ししながら、俺はベルクーリに木刀を返した時、見慣れない女騎士がいた。
「えぇっと…どちら様?」
「そちらから名乗るのが筋でしょう」
たしかにそうか。
「優月だ。そっちは?」
「アリス=シンセシス=サーティです。先程の戦い、お見事でした」
「ああ、あのイーディスを下すとはな。大したもんだ。よし!お前さんの処遇が決まった!」
そういえばそうだった。
突然始まった決闘で、すっかり忘れてた。
「お前さんは、カセドラルの警護を頼む!よろしくな、坊主!」
「…まあ、一宿一飯の恩くらいは、返しますよ」
という訳で、俺はここで暮らすことになったとさ。
それから数週間後、俺は何をしてるかというと
「ユヅキー!お腹減ったー!」
「早く食べたいです!」
「あーもう!分かったから、離れろ!フィゼル!リネル!」
「…ユヅキ殿。済まないがコヒル茶を貰えないか」
「私にも貰えないか?」
「デュソルバートさん!ファナティオさん!そこにあるから!好きに入れて!」
「お〜い!ユヅキ〜!私もお腹減ったよ〜!」
「おはようございます、ユヅキ。今日はなんですか?」
「おう、坊主。すっかり板についたな。…料理人が」
「だ〜!もう!なんで!てめぇらの!飯の世話を!しねぇと!!いけねぇんだよ!!!」
すっかりシェフに、なってしまったのだった。
本当になんでさ!?
さて…なぜこうなったのだろうか?
それでは失礼します。
ありがとうございました。