ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
それではよろしくお願いします。
side明日奈
ある日、私たちはエギルさんのお店でゆっくりしてから、帰路に着いた。
その時
「あれ?」
優月君があることに気が付いた。
その視線の先を追うと、一人の7,8歳の男の子が。
今は夜の6時前。
そんな男の子が、こんな時間になんで一人でいるのか?
私たちは声をかけようとした時
「あ!」
男の子がコケてしまった。
その時、何かを落としたのか車道に転がっていく。
そして男の子は、それを追いかけてしまう。
「バカ!!行くな!!!」
「ダメ!!戻って!!!」
私たちが叫んだ理由は、すぐそこまでトラックが迫っていたからだ。
トラックの運転手も、飛び出すとは思ってなかったのか、慌ててブレーキをかける。
でもとてもじゃないが、間に合わない。
私が走り出すより速く、優月君が駆け出した。
あっという間に追いついて、子供を引っ張る。
でも…それだと…!!
「優月君!!!」
全てがスローモーションに見える。
何もかもがゆっくり動く中、優月君の目が私を見る。
口元が動く。
声は聞こえないけど、何を言っているかは、分かってしまった。
ーーごめん。
激しい衝撃音と共に、優月君が消える。
伸ばした手が、駆け出した足が止まり、恐る恐る振り返ると
「いや…」
視界が真っ赤に染る。
「いや…!」
見たくない見たくない見たくない!!
「イヤァァァァァァァァァァァァァァ!!!」
血だらけの、優月君が横たわっていた。
近隣の家から人が出てくる。
私はそこにしゃがみ込んだまま、何も出来ず。
ただ叫ぶしか出来なかった。
それから直ぐに、救急車と警察が来て、私は連れられるがまま、優月君と一緒に救急車に乗せされる。
心電図のモニターが、まだ生きている事を教えてくれる。
「優月君…優月君…優月君…」
ただ手を握って、祈るしかできない。
病院につき、そのまま手術室に運ばれる彼を見送ると
「明日奈!!!」
「優月は!?」
「無事なのか!?」
深澄と、ご両親の声が聞こえる。
「私…私…私…!」
「大丈夫よ!明日奈は悪くない!だから、落ち着いて!ね!?」
「深澄…!深澄!!私…アァァァァァァァァァ!!!」
私は深澄の中で、ただ泣き続けることした出来ない。
いくら泣いても、彼の命の保証は出来ない。
なのに、涙が止まらなかった。
それならすぐに
「「「明日奈!」」」
私の家族が来る。
まず私に駆け寄ったのは
「明日奈!」
「お母…さん…」
「あぁ!明日奈…!」
お母さんだった。
深澄とお母さんが、私を励ましてくれていると
「あの…」
一組の親子がやってくる。
その子供に、私は見覚えがあった。
「君は…」
「明日奈、知ってるの?」
「優月君は…あの子を守るために…轢かれたの…」
その言葉を聞いて、優月君のお父さんとお母さんが、顔色を変える。
「すみませんが、話なら後にしてください」
「今は、私たちの息子が第一なので」
なにか言おうとする男の子のご両親を、一言で切り捨てる。
そのまま誰も何も言わない無言の時がすぎて、手術室の電気が消える。
「っ!?先生!息子は!?優月は!?」
兎沢家が、いの一番に駆け出して、お医者さんに詰め寄る。
「…何とか成功です。生きているのが奇跡です」
生き…てる…?
優月君は…生きてるの…?
「良かった…良かったよ…!!」
「ええ…ええ…!!」
私と深澄が抱き合いながら、涙を流していると
「ですが…」
先生が、重苦しく二の句を告げる。
「頭部を強く打っています。なんらかの意識障害、記憶の欠損…最悪、急な体調の変化による死亡も、考えられます。何が起きてもおかしくない…その心構えだけは、しておいて下さい」
まだ、油断出来ない。
そう思うと、自然と体が震える。
私と深澄は、ICUに運ばれた優月君のそばに、いることにした。
あとから聞いた話だと、あの男の子はご両親と喧嘩して、家から飛び出してしまったらしい。
その時持っていたものは、ずっと大切にしてきたペンダントだとか。
男の子の方は、かする傷ですんだと聞いて、少しだけホッとしたのは内緒だ。
「…ちゃん!いちゃん!」
「この声は…!?」
「直葉ちゃん!?」
私と深澄は慌てて、声の方に向かうと
「直葉ちゃん!?」
「千笑も!?」
何故か、直葉ちゃんと千笑がいた。
2人はどうして…?
「2人とも…お兄ちゃんが…!!」
「和人が…ジョニー·ブラックに…!!」
「な、なんですって!?」
「嘘…!?和人君まで…!?」
私たちは、思わず悲鳴じみた声を上げてしまう。
優月君だけじゃなくて…和人君まで…!?
「2人はどうして…?」
「…優月君が、子供を庇って、トラックに…」
「幸い、今は一命を取り留めたけど…」
「「そんな…!?」」
あまりの事態がたて続けに起きてしまい、私たちは混乱していた。
だからなのか、そうでは無いのか。
今、一つだけハッキリしていることがある。
「2人はどこに消えたの…!?」
優月君と和人君…2人の行方が分からなくなってしまったことだ。
side優月
この世界に来て、1年が経った。
この1年で特に何をした訳では無いが、俺はこの世界を統べる機関【公理教会】最高司祭【アドミニストレータ】より、何故だがこの世界の守護者にして、裁定者である整合騎士の立場を貰ってしまった。
名前はユヅキ=シンセシス=ゼロ。
番外ということらしく、あくまでトップはベルクーリのおっさんだ。
まあ、それはともかく
「坊主、【神器】探してこい」
「テキトーすぎません?おっさん」
いきなり執務室に呼ばれたかと思えば、何故こんなにも適当な指示を?
「いやよ、整合騎士なのに【神器】もねぇんじゃ、締まらねぇだろ」
【神器】とは簡単に言えば、ものすんごい強い武器のこと。
イーディスの黒い刀【闇斬剣】や、おっさんの【時穿剣】、アリスの【金木犀の剣】が該当する、
「で?それって自分で見繕うものなの?」
「一応、最高司祭殿に見繕って貰うのもアリだが、お前さん嫌いだろ」
「うん、嫌い」
誰が好きになるか、あんな腹ん中地獄の釜女。
地雷もいいところだわ。
「だから、自力でみつけてこい」
「りょーかい。身分は隠すんだよな」
「おうよ。一応、一般人との接触は禁止だからな。今回は特例ってことで、最高司祭殿の許可が出てる」
なるほどな…仕方ねぇ。
「そんじゃあ、行ってくる」
「おう、気長にな」
気長に旅しないといけねぇのかよ…。
そう思いながら、俺は執務室を出て、自室に向かっていると、ちょうどアリスと遭遇した。
「お、アリスじゃん。やほー」
「ユヅキ、もう少しちゃんと挨拶しなさい。…それで?随分と早足でしたね」
「ああ、おっさんから神器見つけてこいって、追い出されることになった。気長に行け、とよ」
「…気長になりますね、神器探しは」
どこか遠い目をするアリス。
やはりそういうものらしい。
「では、先輩として助言をひとつ」
「タメだろうが」
「黙りなさい!全く…。いいですか?こういうのは、自分の感性を信じるのです」
「感性…ね…」
まあ、言わんとすることは、分からんでは無い。
こういうのは、フィーリングだろう。
「OK。サンキュな」
「相変わらず貴方は時々、よく分からない神聖語を使いますね…」
「これも感性だよ、感性」
「…私の感覚では、お礼を言われていると、告げています」
「そ、せいか〜い。という訳で、用意して行くわ」
「相変わず自由ですね!?…お気をつけて」
なんやかんやで、良い奴だこいつは。
そんなアリスの声を背に、俺は自室に向かい旅支度を整えて、武器庫から引っ張り出して貰った剣を一振、地面に刺して手を離す。
倒れた方角は…西だ。
「よし、西から行きますか」
そうして俺は、神器探しの旅に出たのが、約10ヶ月前。
未だに見つからないでいる。
「だぁぁぁぁぁ!これが最後だ!行くぞ!東帝国!!」
イスタバリエス東帝国。
西、北、南を探し回ったが何も無く、ついに最後になったこの帝国。
【東の大門】有するこの方角は、奥に向かえば向かうほど、空気が重くなっていく。
暗黒界に近づくからだろうか?
そう思いながら旅を続けること2ヶ月。
ある村に立ち寄った俺は、1つの御伽噺を聞く。
それは、ある女剣士が闇の軍勢を1人で倒したという話。
その最期は、死んだ女剣士を祀るために、その死体の上に、桜の木を植えたらしい。
「…桜の木の下には、死体がひとつってな…」
リアルだな…リアルなのか。
俺は御伽噺を元に、その噂の桜の木の場所を突き止め、山奥を目指す。
「…いるな。魔獣か」
この旅は、魔獣を狩る旅でもあった。
その中でも、このライオンみたいな魔獣は、最大で最強だった。
「クッ!」
重いし速い!
そして重さに負けて、剣が折れてしまった。
「しまった!?グワァ!?」
そのまま振り下ろされた前足の勢いに、俺は吹き飛ばされる。
その背中に当たるのは、大きな桜の木。
「…この木の下に…眠る死体は…俺…か…」
くっそ…頭を強く打ちすぎたか…。
血が止まらねぇし…クラクラする。
ここまでか…そう思った時過ぎったのは、現実世界で俺の帰りを待っているであろう、みんなの顔だ。
「…そうだよな…」
震える体に力を入れて、木を支えに立ち上がる。
「ここで…折れたら…」
震える心に喝を入れて、それを支えに剣を握る。
「俺じゃねぇよなぁ!!」
その時、不意に後ろの桜の木が、脈動した気がした。
「…え?」
突然風が吹き荒れ、花びらが舞い散り、やがて…桜の木が一振の刀に変わった。
…なんでだ?
だが、感じる。
「…これだ」
この刀が…俺の神器だ。
俺は迷わずその刀を手に取る。
その時、誰かの記憶が駆け巡る。
「ッ!?…」
一瞬だった。
そしてその一瞬で、俺は理解した。
「…話が違うじゃん。御伽噺」
桜の木を植えたんじゃない…この女剣士とその愛刀が、ひとりでに桜の木に変わったんじゃないか。
恐らくそれは、この刀の原型が桜の木だったのだろう。
そう思いながら俺は、飛びかかってくる魔獣を無意識に、一刀両断していた。
そのすざましい切れ味に、俺は顔を引き攣らせた。
「…段違いだな。まずは…システム·コール。ジェネレート·ルミナスエレメント。ディスチャージ」
俺はこの1年で、イーディス達から学んだ、神聖術で傷を癒す。
「帰りますかね…」
俺はフラフラと帰り道を歩くのだった。
outside
帰り道の道中、優月は自身が手にした刀のことを、細かく調べていた。
(特性は【千変万化】【無限再生】【継承】の3つ)
【千変万化】は、刀自体をあらゆる形に変形出来る。
(これは面白い戦い方が出来そうだ)
【無限再生】は、その名の通り、耐久値や体力…この世界では【天命】と呼ばれるものを、無限に回復する。
(それは使用者の俺にも及ぶが、当然人体へのフィードバックには限界がある。だからこそ、女剣士は死んだ訳だし)
【継承】は、元々の使い手たる女剣士の戦闘経験を、自身へとダウンロードするものだ。
(これは使ってみないと分からねぇな。…まあ負担は大きそうだけど…)
「お兄さん、央都【セントリア】に着いたよ」
「ありがとう、おっちゃん。…はいこれ、足りる?」
「まいど。お兄さんにステイシア神の加護を」
「ありがとう!」
優月は馬車を飛び降り、裏路地を駆使してカセドラルに辿り着く。
「やっと着いた…疲れた」
優月は中庭を歩く。
その中庭には、この世界では超基調なバラが、沢山植えられている。
(うっ…バラの匂いがきつい…)
バラはいい香りなのだが、数が多すぎて香りがキツイのだ。
アリスも同様で、特に夜が香りが強く、2人とも夜は近付かない。
「動くな」
噴水広場に差し掛かった時、男の声が優月の足を止めさせた。
「貴様、何者だ?ここがどこだと思っている?」
男は銀色の鎧を着た、青年だ。
銀髪をオールバックにした男を見て、優月は驚いたような顔をする。
「…俺がいない間に、新しい整合騎士が増えたのか」
「貴様!私の質問に答えろ!」
「知りてぇなら、まずそっちが名乗れよ」
「ふん!貴様なぜ指図する!…【エルドリエ=シンセシス=サーティワン】だ」
(いや名乗るんかーい)
優月はツッコミを入れながら、ズッコケる。
まさか名乗るとは思っておらず、なぜか肩の力が抜ける。
「…優月だ。ユヅキ=シンセシス=ゼロ」
優月がそう名乗った時、エルドリエはハッとした顔をして、ジロジロと優月を見た。
「貴殿が…アリス様の言っていた…」
「アリス…様?」
(え?様?なんで様付け?)
優月がポカンとしていると
「先程は失礼致しました、ユヅキ殿。私はつい先日整合騎士として、天界より召喚されました。お噂はかねがね」
(天界より召喚された…ね)
整合騎士は、天界より召喚さて、人界を守る者…全員そうやって教えこまれている。
事実は全くの嘘なのだが。
「ユヅキ殿、アリス様もかっていたその剣の腕、是非、若輩者の私にご教授頂ければ」
そういうエルドリエの目は、決して教えを乞うものではなく、眼前のライバルを倒したい、そう物語っていた。
「いや、疲れてるから」
「逃げるのですか!?」
「もうそれでもいいよ。無駄な剣は抜かない。騎士や剣士として、当然の話だ」
(まあ、知らんけど)
適当にでっち上げながら、スルーしようとした瞬間、膨れ上がった殺気に、優月はすぐに身構えた。
「流石です。ですが、殺気を向ける相手を無視する…そうはいきますまい」
「…仕方のねぇ後輩だ」
そう言って優月は、荷物を置き、居合の構えをとる。
「…一撃だけだ。それで片をつける」
その気迫に、エルドリエは無意識に唾を飲み込むのだった。
優月が新たな武器を手に入れた!
ということで、ここで失礼します。
ありがとうございました。