ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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今回は説明回です。
それではよろしくお願いします。


59話

outside

 

刀に手をかける優月の気迫に、エルドリエは呑まれてしまい、唾を飲み込むしか出来ずにいた。

 

(なんだ…この気迫は…!?これほどの心意…感じたことない…!?)

 

「…なぁ、後輩くん。早く用意してくんねぇかな?やる気ねぇなら帰るぞ」

 

この時初めて、エルドリエは自分がただ棒立ちになっていたことに、気が付いた。

慌てて自身の神器【霜鱗鞭】を構える。

エルドリエは優秀な騎士だ。

故に気が付いてしまった。

 

(今、本気で斬りかかれていたら、数回は死んでいた…!)

 

自身が、ただの気まぐれで生きていることに。

一方の優月は、エルドリエの構えを見ながら、どう勝つかを考えていた。

 

(速攻キメるか?いや、鞭は動きが読みにくい。それにあれは恐らく神器。何かヘンテコ能力を持っている可能性が高い。まずは…先手を取らせるか)

 

そう考えた優月は、わざと隙を見せる。

 

「っ!ハァ!」

 

振るわれる鞭の先端は、目では追えない。

だから優月は、エルドリエの腕の動きを追って、その軌道を予測する。

軌道の予測自体は当たった。

だが、予想外の変化が、鞭に起きた。

 

「っ!?何!?」

 

慌てて避ける優月。

その理由は、エルドリエの【霜鱗鞭】が、二つに分かれたからだ。

分裂…それがエルドリエの神器【霜鱗鞭】の能力である。

 

「ハァァァァァァ!!」

 

空気を切り裂く音と共に、鞭がいくつにも分裂して、エルドリエ周辺を埋めつくしてしまう。

 

「…なるほど、これは不利だ」

 

優月はエルドリエへの、間合いを詰める道を失ってしまった。

どこを通ろうにも、鞭の餌食になる。

 

「さてさてさ〜て…どうするかなっと…!」

 

優月は刀身を伸ばして、超高速でエルドリエに向かって攻撃を仕掛ける。

その勢いは鞭の攻撃を全て弾く程だ。

 

「何!?」

 

驚きつつも、エルドリエとて整合騎士。

その刀身の動きをしっかり見切りつつ、鞭のを丸めて、その一撃を防ぐ。

だがそれに気を取られた隙に、優月が視界から消えた。

エルドリエは唖然としながら鞭を構えると、上から何かが落ちてきて、腕を止められてしまう。

 

「っ!?これは…鞘!?」

 

「ハァァァァァァア!!」

 

落下の速度を乗せて、振り下ろされる刀。

エルドリエは咄嗟に、腰に差した剣で防ごうとして、なぜか剣がすれ違った。

 

「なに!?」

 

「詰みだ」

 

気付いた時には、小さい刃がエルドリエの首元に突きつけられていた。

 

「…刃が…小さい…?」

 

「目に頼りすぎだぜ、後輩くん」

 

優月は攻撃をわざと見切らせ、それに気を取られせた隙に上に飛んでから、鞘で動きを止めた。

この時エルドリエは、鞘から刃わたりを無意識に予測していたのだ。

それもこれも、エルドリエが優秀であるが故に、利用された隙。

振り下ろされた刀が、想定より小さくなっていたのは、優月の神器の特性【千変万化】だ。

 

「…さてと、いい加減出てきたら?そこの観客。金とるよ」

 

「…なぁんだ、気付いてたんだ」

 

「だから言ったじゃないですか、イーディス殿。ユヅキは気配に敏感だと」

 

「ま、これくれぇ気付けねぇと、まだまだだがな」

 

優月の言葉に現れたのは、ベルクーリ、イーディス、アリスだった。

 

「あんな露骨な視線送っといて、白々しい…なぁ、エルドリエ?」

 

「と、当然ですとも!」

 

「ふふ、エルドリエは、将来有望ですね」

 

(((いや、あれは気付いてなかったな…)))

 

アリス以外のメンバーが、心を一つにしていると、ベルクーリが咳払いをして、優月の神器を指さす。

 

「そいつが、坊主の神器か?随分と小さいな」

 

「いや、こいつは大きさを変えられるから」

 

そう言って、優月は神器を元の大きさに戻した。

 

「へぇ、便利ね」

 

「名前はなんですか?」

 

「【桜刀:舞姫】」

 

前の使い手が女性だったことを考え、すこし華やかな名前にした優月。

 

「へぇ、かわいい名前ね。…うん、刀も美人さんね」

 

白い鞘に桜色の柄、刃も純白でまるで美術品と見間違う美しさがある。

優月はそれをしばらく見つめて、ゆっくりと鞘にしまう。

 

(まるで、【菊一文字正宗】みたいだな)

 

「さてと、今日はもう休め。報告は明日でいい」

 

「じゃあお言葉に甘えて。風呂に入って寝るわ…おやすみ」

 

優月は欠伸を噛み殺しながら、中に入っていく。

それを4人は見送りながら、アリスはポツリと呟いた。

 

「それにしても…恐ろしい心意の強さでしたね」

 

「そうね。私も飛び上がっちゃったもの」

 

(あるいは、坊主の心意は俺より上かもしれねぇな)

 

ベルクーリは、優月の心意の強さに疑問を抱きつつも、好戦的な笑みを隠せないでいたのだった。

 

side優月

 

翌日、俺は報告書と共に、この2年でわかったことをまとめていた。

俺は自分の手の甲にS字を書いて、真ん中をタップする。

 

「【ステイシアの窓】…ね…」

 

ステイシアの窓とは、それ自身のステータスやパラメータを視覚化するものだ。

それに現れるのは天命値、【オブジェクトコントロール権限】、【システムコントロール権限】だ。

【オブジェクトコントロール権限】とは、物体を操るのに必要な権限レベルだ。

ゲームに例えるなら、武器の装備に必要なステータス数値とかだ。

 

「今の俺は48。神器は46…か」

 

このレベルが低いと、持ち上げるのすら一苦労。

逆に少しでも軽ければ、難なく扱えるようになる。

 

「次は【システムコントロール権限】…」

 

これは神聖術に必要なレベルだ。

高いほど、高位な神聖術を扱える。

俺のレベルは38。

それなりに高い方だろう。

…多分、きっと、恐らく。

 

「…まあ、数値はあまり意味ないか」

 

俺が驚いたのは、この世界において、数値はあまり意味をなさないということだ。

この世界で大切なのは…イメージ力だ。

イメージ力が強いほど、その人自身の強さも跳ね上がるということ。

それはつまり…イメージ力次第では、世界すら変えられるということ。

そして戦いに大切なのは、勝てるという自分自身のイメージ出来るかどうか、ということだ。

レベル差があっても、勝つイメージがあれば強くなる。

逆にそのイメージがなければ、レベルで勝っていても負けてしまう。

 

「次は…ソードスキル…か」

 

そしてこの世界では、ソードスキルが使えるのだ。

剣の流派があり、それぞれに【秘奥義】という形で、ソードスキルが存在していた。

例えばハイ·ノルキア流の技、【天山列波】は両手剣ソードスキル【アバランシュ】にあたる。

 

「イメージ次第では、OSSも使用可能。オブジェクトのレベルが高い程、高位のソードスキルを使用出来る…か」

 

武器の性能が高い程、高位のソードスキルが使用可能。

そしてもうひとつ、この世界のソードスキルは単発系しかない、ということが分かった。

要は当たれば勝ち、外せば死、ということだ。

だから連続技は、全く存在しない。

俺はそれを知った時、いざと言う時のために連続技を封印した。

 

「そして何より…この世界は綺麗すぎる」

 

一番俺が違和感を感じたのは、この世界の人間は禁忌目録を守りすぎている、ということだ。

禁忌目録には人を殺すな、とかの当たり前な内容から、貴族などの強者が弱者を搾取することを、良しとする法まで様々だ。

現代日本だって、禁止していても毎日殺人事件は起きる。

ましてや強者が弱者を虐げる事を、法律の下許可するなんて、言語道断だ。

 

「なのにこの世界では、デモやクーデターが起きていない」

 

それはつまり…公理教会が、絶対的支配を敷いていることに、他ならない。

ハッキリ言おう。

 

「反吐が出る」

 

1年間、世界中を旅して、この世界の歪さを理解出来た。

俺は…公理教会に反旗を翻す。

そう決めた俺は、その時を待ち続けた。

そして1ヶ月が経った頃。

 

「アリス?こんな朝早くからどうしたんだ?」

 

朝練をしていると、完全武装したアリスが発着場へと向かっていた。

 

「おはようございます、ユヅキ。実は昨夜、【北セントリア修剣学院】で、殺人の禁忌を違反した者が2人現れたらしく、それの捕縛に向かうのです」

 

殺人…この世界で…?

 

「それは…なんとも珍しい。名前は?」

 

「たしか…【キリト】と【ユージオ】ですね」

 

…何?

俺はあまりにも予想外の名前に、思わず思考が停止する。

キリト…だと?

まさか…あのキリトなのか?

 

「…ユヅキ?どうしましたか?」

 

「あ…あぁ…いや、何でもない。気にするな。気をつけろよ」

 

「ええ、ありがとうございます」

 

そう言ってアリスは、飛竜の【雨縁】に乗り、修剣学院へと飛んでいった。

 

「…時は来た」

 

間違えはいつか、正さなくてはならない。

敵は…セントラル·カセドラルにあり、だ。




ここから少しだけ、主人公視点から外れる時があります。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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