ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
sideキリト
飛竜に乗った整合騎士から逃げている時、謎の声に導かれるがままに逃げ込んだ先は、変な子供がいる大図書室だった。
「わしの名は【カーディナル】。かつて世界の調停者であり、今はここのただ1人の司書じゃ」
ユージオはカーディナルに導かれるままに、風呂に入りにいった。
「…あんたはアンダーワールドの人間じゃないな。システム管理者に近しい存在だ!」
「それはお主もじゃろう。無登録民のキリトよ。ああ、もう1人おるの。無登録の者が。その者は整合騎士として、特例番号を背負っておるが」
もう1人…?
胸騒ぎがするが、今は現状確認が先だ。
「この世界を作った連中の名はラース。そしてあんたはカーディナルシステム。ヴァーチャル世界を維持するための、自立プログラムだ」
「ほう、それを知っているのか。さてはわしの同朋にあったか?」
俺はそこははぐらかして、先を促す。
現実との連絡手段が出来るか尋ねたが、出来るのはアドミニストレータだけらしい。
「さて、ステイシア神を始めとする4体の神じゃが…実はそれに等しいものたちは存在しとったんじゃ。それらの神は、緊急措置用スーパーアカウントとして設定されておる。もっとも、使われたことは無いがな」
このアンダーワールドを作った人物たち…ラースの職員のことだ。
その4人は8人の子供に、読み書きや作物·家畜の育て方、善悪の基準などを教えた。
だがその4人のうち1人だけ、所有欲や独占欲などの利己的な欲望を教えてしまった。
「それらの子孫が、今の上級貴族や有力な権力者たちじゃ。そしてそれらのトップに立つのが、公理教会最高司祭であり、システムの管理者でもある、アドミニストレータじゃ」
そしてアドミニストレータは、なんとカーディナルの双子の姉でもあるらしい。
「…どういうことだ…!?」
大昔の話、人界初の政略結婚がなされ、1人の子供が産まれた。
名を【クィネラ】…後のアドミニストレータだ。
神聖術の天才として、村から多大なる信頼と尊敬を得たクィネラは、己を支配欲をどんどんと満たしていった。
「これが後の禁忌目録や、カセドラルの礎となるのじゃ」
そして果てなき欲望の末、ついにクィネラは開けては行けない蓋を開けてしまった。
「システムコール!インスペクト·エンタイア·コマンドリスト!」
「これは…!?」
そう言って、カーディナルが開いて見せてくれたのは
「そう、この窓には、全システムコマンドの一覧じゃ」
これを開いてしまったクィネラは、見た目を戻したり、天命の自然減少を停止させたりなどを行ったらしい。
だが彼女は、同等の権力を持つもの…カーディナルシステムすら、その存在を許せなかった。
「だから奴は、カーディナルシステムの権限をも、奪おうとしたのじゃが…」
当然と言うべきか、失敗に終わった。
それどころか、カーディナルシステムの基本命令を、自分のフラクトライトに焼き付けてしまったのだ。
「秩序の維持…それが如何なるものか、同じシステムを知るお主には、よく分かるだろう」
「ああ…」
俺が思い浮かべたのは、消されるユイ。
思わず拳を握りこんでいた。
「こうして、絶対的支配者、アドミニストレータが生まれた」
だがこれもそう長くは続かなかった。
自身のフラクトライトの容量が、限界に来たことを気が付いたのだ。
「だが、あの女はまたもや、悪魔的解決法を思いついてしまったのじゃ」
それこそ、魂と記憶の統合を意味する【シンセサイズ】の秘儀により、ついに他人のフラクトライトを強奪することに成功した。
「じゃがこれこそが、奴の失敗じゃった。なぜなら…一瞬の間だけ、奴と同等の権力を得るものが現れるのだから」
「…そうか、サブプロセス!」
「その通りじゃ」
カーディナルシステムは、人間に手を借りずに長期間稼働できる。
自分で自律して動けるのだ。
メインが世界のバランスを保つのと同時に、サブがのメインをチェックする。
「まさかあんたは…」
「そうじゃ。そのサブプロセスがわしなのじゃ」
だが力の差が大きすぎて、カーディナルでは、アドミニストレータを倒すことが出来なかっ。
だがらカーディナルは、この大図書室へと逃げ込んだのだった。
「以来200年…わしは奴への反撃の一手を考え続けた。じゃが奴は、わしの奇襲に備えて、強力な手駒を揃えたのじゃ」
「それが…整合騎士」
俺の言葉に、カーディナルは頷く。
最初の騎士にして、整合騎士長の名は…ベルクーリ=シンセシス=ワン。
「わしは何としても協力者を求めた。そうして見つけたのが…お主らじゃ。キリト、ユージオ」
多くの使い魔を放ったらしい。
その時、髪が急に動いて、何かが飛び出した。
…小さい蜘蛛?
「シャーロットじゃ。ルーリッド村を出てからずっと、お主らと一緒におった。もっとも…見る以外のこともしておったらしいが」
「っ!?あの声って!?君なのか!?」
「シャーロットは、ワシが最初に放った最古の使い魔じゃ」
カーディナルは長い時の中で、なぜ外界はアドミニストレータの支配を野放しにしているのか、それが気になったらしい。
そうしてある答えにたどり着いた。
「ラースの者たちは、この世界の幸せを望んでおらぬ…ということじゃ」
そしてついに、最終的な負荷実験を始めよういる。
それこそ、暗黒界の進軍だ。
だが、圧倒的差がありすぎで、このままでは人界は崩壊する。
「つまりあんたは…自身の目的さえ達成出来れば、この世界がどうなってもいいというのか」
「…そうかもしれぬ。じゃがわしは、このままそれを良しする訳には、いかぬ。じゃからわしは、ある方法を思いついた」
それは…人界も暗黒界も、全てを無に帰す、という方法だ。
フラクトライトを全て、ひとつ残らず消し去るということらしい。
「キリトよ。もしアドミニストレータを倒して、わしが全権限を取り戻せたら、限定的ではあるが、フラクトライトは消さずに保存しておこう。後であちらで、取り出せば良い」
フラクトライトは【ライトキューブクラスター】という、小さい箱に入れて、保存することが出来る。
10個程度ならば、それが可能だという。
だが俺には…命の取捨選択なんて…出来ない…。
「…あんたはなぜ、逃げ出さなかったんだ?なぜあんたは、200年もの間ここに籠ってたんだ?あんたにも、貴族の血が…己の欲望を求める血が、流れいるんだろう?」
そう言うとカーディナルは、少しだけ寂しそうな顔をして、おもむろに立ち上がった。
「キリト、お主も立て」
「あ、あぁ…」
言われるがままに立ち上がり、そばに寄るとなぜか抱きつかれる。
「か、カーディナル!?」
「そうか…これが…これが、人間である…ということか…。暖かい…」
気付けば、カーディナルはさっきまでのしおらしさを捨てて、いつも通りに戻ってしまう。
「それで、結論は出たか?」
俺は…この話に…乗るしかないか。
「分かった。あんたの作戦に乗るよ。でも…」
「ん?」
「俺は考えることを辞めない。悲劇をどうにかは回避して、この世界が平和に存続出来る方法を」
そうだ、考えることこそが大事なんだ。
諦めず、足掻き続ける…そのために顔を上げ、拳を握り、頭を回し、戦い続ける。
それこそ…人が生きる、ということなんだから。
「…お主にも、いつか諦めるという苦さを知る時が来る。それを受け入れる覚悟をするのじゃ」
俺はカーディナルの顔を見て、ふとあることを思い出した。
「そういえば、俺と同じやつがもう1人いるって言ってたけど…」
「そうじゃな。その者はお主と同じ時に東の大門に現れたのじゃ。そしてそのすぐ後に、1人の整合騎士がカセドラルに連行したのじゃ。じゃがその者は禁忌目録に違反した訳ではなく、前例のないことをして、判断に困ったからと、わしは見ておる」
東の大門とは、東帝国の果て…暗黒界との境にある、バカでかい門のことだ。
「一体何をしたんだ?」
「東の大門の上に立ったらしい」
「は?」
何それ?
どういう状況?
「おそらくそこに降り立ったのじゃろう。そしてアドミニストレータは判断を、ベルクーリに一任させ、そのベルクーリはそやつを抱え込むことにした。そして一年後、奴はアドミニストレータによって、1人の整合騎士と認められた」
「整合騎士…」
「名は…ユヅキ。ユヅキ=シンセシス=ゼロ」
「…は?」
ナンダッテ…?
優月…?
優月が…整合騎士…?
俺の脳裏に過ぎる、紫色の髪を靡かせた、兄弟分。
堂々として、凛としている、家族想いのカッコイイやつ。
そして…弱さを抱えながらも、その弱さと向き合う覚悟を持つ強いやつ。
「ありえない…ありえない!!どうして!どうして優月がここにいる!?あいつはなんで…!?」
「わしにも分かるわけなかろう。そちらの世界の都合じゃろう。じゃが…おかしな話なのじゃ」
おかしい?
何がだ?
「そもそもの話をしとらんかったの。整合騎士とは、【
三角柱…エルドリエの額から出てきたやつか!
この
そしてそれを除去するには、2つのものがいるらしい。
1つは、過去を想起させるような何か。
もう1つは、本来そこに存在した、最も大切な記憶の欠片。
そしてその欠片は、最高司祭の居室にあるらしい。
「この
「つまり…ちゃんとした、整合騎士じゃないってことか?」
「そういうことじゃ。おそらく…弄れなかったか、気まぐれか」
そう言われて、俺はホッとした。
優月がまともなら、あいつが何故、何もしてこなかったか、それは想像がつく。
「あやつは正常なら、なぜ何も行動を…」
「機会を伺ってたんだよ」
「なんじゃと?」
「あいつはあれでいて、計算高いやつだ。勝算がつくまで、動かないだろう。…優月と合流出来れば、100人力だ」
俺は必要な情報をまとめて、ユージオと合流する。
それから整合騎士に関する説明をして、目的を再確認した。
「つまり僕達は、最高司祭の部屋に行き、アリスの記憶の欠片を見つける必要がある…そういうことだね」
「そしてそのために、最高司祭を倒す必要がある…ということだ」
「…これを使うがいい」
そう言ってカーディナルから、2本の短剣を受け取った。
「これはわしとのパスを繋ぐもので…簡単に言うならば、わしの神聖術を100%当てることが出来るものじゃ」
カーディナルは俺たちの剣を取り返すことを、手伝ってくれるらしい。
そして切り札…【武装完全支配術】を授けてくれた。
「2人とも目を閉じ、己の剣を思い浮かべよ」
俺の脳裏に浮かぶ、巨大なギガスシダー。
そうして俺たちに渡せらたのは、長ったるい神聖術の術式が書き込まれた、1枚の羊皮紙。
「うぇ…」
これを…丸暗記…?
「ユージオ…キリトよ。世界の命運は、お主らに託した。ワシがやれることは、全てやった。己の道を信じよ」
「…行くぞ、ユージオ」
「ああ、キリト」
俺たちはカーディナルが作った扉を、くぐり抜ける。
目指すは…武器庫だ。
次は現実世界に戻っての、説明会となります。
それでは失礼します。
ありがとうございました。