ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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閑話休題⑨

sideキリト

 

飛竜に乗った整合騎士から逃げている時、謎の声に導かれるがままに逃げ込んだ先は、変な子供がいる大図書室だった。

 

「わしの名は【カーディナル】。かつて世界の調停者であり、今はここのただ1人の司書じゃ」

 

ユージオはカーディナルに導かれるままに、風呂に入りにいった。

 

「…あんたはアンダーワールドの人間じゃないな。システム管理者に近しい存在だ!」

 

「それはお主もじゃろう。無登録民のキリトよ。ああ、もう1人おるの。無登録の者が。その者は整合騎士として、特例番号を背負っておるが」

 

もう1人…?

胸騒ぎがするが、今は現状確認が先だ。

 

「この世界を作った連中の名はラース。そしてあんたはカーディナルシステム。ヴァーチャル世界を維持するための、自立プログラムだ」

 

「ほう、それを知っているのか。さてはわしの同朋にあったか?」

 

俺はそこははぐらかして、先を促す。

現実との連絡手段が出来るか尋ねたが、出来るのはアドミニストレータだけらしい。

 

「さて、ステイシア神を始めとする4体の神じゃが…実はそれに等しいものたちは存在しとったんじゃ。それらの神は、緊急措置用スーパーアカウントとして設定されておる。もっとも、使われたことは無いがな」

 

このアンダーワールドを作った人物たち…ラースの職員のことだ。

その4人は8人の子供に、読み書きや作物·家畜の育て方、善悪の基準などを教えた。

だがその4人のうち1人だけ、所有欲や独占欲などの利己的な欲望を教えてしまった。

 

「それらの子孫が、今の上級貴族や有力な権力者たちじゃ。そしてそれらのトップに立つのが、公理教会最高司祭であり、システムの管理者でもある、アドミニストレータじゃ」

 

そしてアドミニストレータは、なんとカーディナルの双子の姉でもあるらしい。

 

「…どういうことだ…!?」

 

大昔の話、人界初の政略結婚がなされ、1人の子供が産まれた。

名を【クィネラ】…後のアドミニストレータだ。

神聖術の天才として、村から多大なる信頼と尊敬を得たクィネラは、己を支配欲をどんどんと満たしていった。

 

「これが後の禁忌目録や、カセドラルの礎となるのじゃ」

 

そして果てなき欲望の末、ついにクィネラは開けては行けない蓋を開けてしまった。

 

「システムコール!インスペクト·エンタイア·コマンドリスト!」

 

「これは…!?」

 

そう言って、カーディナルが開いて見せてくれたのは

 

「そう、この窓には、全システムコマンドの一覧じゃ」

 

これを開いてしまったクィネラは、見た目を戻したり、天命の自然減少を停止させたりなどを行ったらしい。

だが彼女は、同等の権力を持つもの…カーディナルシステムすら、その存在を許せなかった。

 

「だから奴は、カーディナルシステムの権限をも、奪おうとしたのじゃが…」

 

当然と言うべきか、失敗に終わった。

それどころか、カーディナルシステムの基本命令を、自分のフラクトライトに焼き付けてしまったのだ。

 

「秩序の維持…それが如何なるものか、同じシステムを知るお主には、よく分かるだろう」

 

「ああ…」

 

俺が思い浮かべたのは、消されるユイ。

思わず拳を握りこんでいた。

 

「こうして、絶対的支配者、アドミニストレータが生まれた」

 

だがこれもそう長くは続かなかった。

自身のフラクトライトの容量が、限界に来たことを気が付いたのだ。

 

「だが、あの女はまたもや、悪魔的解決法を思いついてしまったのじゃ」

 

それこそ、魂と記憶の統合を意味する【シンセサイズ】の秘儀により、ついに他人のフラクトライトを強奪することに成功した。

 

「じゃがこれこそが、奴の失敗じゃった。なぜなら…一瞬の間だけ、奴と同等の権力を得るものが現れるのだから」

 

「…そうか、サブプロセス!」

 

「その通りじゃ」

 

カーディナルシステムは、人間に手を借りずに長期間稼働できる。

自分で自律して動けるのだ。

メインが世界のバランスを保つのと同時に、サブがのメインをチェックする。

 

「まさかあんたは…」

 

「そうじゃ。そのサブプロセスがわしなのじゃ」

 

だが力の差が大きすぎて、カーディナルでは、アドミニストレータを倒すことが出来なかっ。

だがらカーディナルは、この大図書室へと逃げ込んだのだった。

 

「以来200年…わしは奴への反撃の一手を考え続けた。じゃが奴は、わしの奇襲に備えて、強力な手駒を揃えたのじゃ」

 

「それが…整合騎士」

 

俺の言葉に、カーディナルは頷く。

最初の騎士にして、整合騎士長の名は…ベルクーリ=シンセシス=ワン。

 

「わしは何としても協力者を求めた。そうして見つけたのが…お主らじゃ。キリト、ユージオ」

 

多くの使い魔を放ったらしい。

その時、髪が急に動いて、何かが飛び出した。

…小さい蜘蛛?

 

「シャーロットじゃ。ルーリッド村を出てからずっと、お主らと一緒におった。もっとも…見る以外のこともしておったらしいが」

 

「っ!?あの声って!?君なのか!?」

 

「シャーロットは、ワシが最初に放った最古の使い魔じゃ」

 

カーディナルは長い時の中で、なぜ外界はアドミニストレータの支配を野放しにしているのか、それが気になったらしい。

そうしてある答えにたどり着いた。

 

「ラースの者たちは、この世界の幸せを望んでおらぬ…ということじゃ」

 

そしてついに、最終的な負荷実験を始めよういる。

それこそ、暗黒界の進軍だ。

だが、圧倒的差がありすぎで、このままでは人界は崩壊する。

 

「つまりあんたは…自身の目的さえ達成出来れば、この世界がどうなってもいいというのか」

 

「…そうかもしれぬ。じゃがわしは、このままそれを良しする訳には、いかぬ。じゃからわしは、ある方法を思いついた」

 

それは…人界も暗黒界も、全てを無に帰す、という方法だ。

フラクトライトを全て、ひとつ残らず消し去るということらしい。

 

「キリトよ。もしアドミニストレータを倒して、わしが全権限を取り戻せたら、限定的ではあるが、フラクトライトは消さずに保存しておこう。後であちらで、取り出せば良い」

 

フラクトライトは【ライトキューブクラスター】という、小さい箱に入れて、保存することが出来る。

10個程度ならば、それが可能だという。

だが俺には…命の取捨選択なんて…出来ない…。

 

「…あんたはなぜ、逃げ出さなかったんだ?なぜあんたは、200年もの間ここに籠ってたんだ?あんたにも、貴族の血が…己の欲望を求める血が、流れいるんだろう?」

 

そう言うとカーディナルは、少しだけ寂しそうな顔をして、おもむろに立ち上がった。

 

「キリト、お主も立て」

 

「あ、あぁ…」

 

言われるがままに立ち上がり、そばに寄るとなぜか抱きつかれる。

 

「か、カーディナル!?」

 

「そうか…これが…これが、人間である…ということか…。暖かい…」

 

気付けば、カーディナルはさっきまでのしおらしさを捨てて、いつも通りに戻ってしまう。

 

「それで、結論は出たか?」

 

俺は…この話に…乗るしかないか。

 

「分かった。あんたの作戦に乗るよ。でも…」

 

「ん?」

 

「俺は考えることを辞めない。悲劇をどうにかは回避して、この世界が平和に存続出来る方法を」

 

そうだ、考えることこそが大事なんだ。

諦めず、足掻き続ける…そのために顔を上げ、拳を握り、頭を回し、戦い続ける。

それこそ…人が生きる、ということなんだから。

 

「…お主にも、いつか諦めるという苦さを知る時が来る。それを受け入れる覚悟をするのじゃ」

 

俺はカーディナルの顔を見て、ふとあることを思い出した。

 

「そういえば、俺と同じやつがもう1人いるって言ってたけど…」

 

「そうじゃな。その者はお主と同じ時に東の大門に現れたのじゃ。そしてそのすぐ後に、1人の整合騎士がカセドラルに連行したのじゃ。じゃがその者は禁忌目録に違反した訳ではなく、前例のないことをして、判断に困ったからと、わしは見ておる」

 

東の大門とは、東帝国の果て…暗黒界との境にある、バカでかい門のことだ。

 

「一体何をしたんだ?」

 

「東の大門の上に立ったらしい」

 

「は?」

 

何それ?

どういう状況?

 

「おそらくそこに降り立ったのじゃろう。そしてアドミニストレータは判断を、ベルクーリに一任させ、そのベルクーリはそやつを抱え込むことにした。そして一年後、奴はアドミニストレータによって、1人の整合騎士と認められた」

 

「整合騎士…」

 

「名は…ユヅキ。ユヅキ=シンセシス=ゼロ」

 

「…は?」

 

ナンダッテ…?

優月…?

優月が…整合騎士…?

俺の脳裏に過ぎる、紫色の髪を靡かせた、兄弟分。

堂々として、凛としている、家族想いのカッコイイやつ。

そして…弱さを抱えながらも、その弱さと向き合う覚悟を持つ強いやつ。

 

「ありえない…ありえない!!どうして!どうして優月がここにいる!?あいつはなんで…!?」

 

「わしにも分かるわけなかろう。そちらの世界の都合じゃろう。じゃが…おかしな話なのじゃ」

 

おかしい?

何がだ?

 

「そもそもの話をしとらんかったの。整合騎士とは、【敬神(パイエティ)モジュール】という、三角柱状の物体を入れることで、【シンセサイズ】の秘儀の成立とされる」

 

三角柱…エルドリエの額から出てきたやつか!

この敬神(パイエティ)モジュールは、過去を封じるのと同時に、最高司祭への絶対的服従を植え付けるのだとか。

そしてそれを除去するには、2つのものがいるらしい。

1つは、過去を想起させるような何か。

もう1つは、本来そこに存在した、最も大切な記憶の欠片。

そしてその欠片は、最高司祭の居室にあるらしい。

 

「この敬神(パイエティ)モジュールは、記憶の接続を阻害するように埋め込まれるのじゃが…ユヅキには、それが行われた形跡がないのじゃ。その証拠に、奴はアドミニストレータに対して直接、不快感や不信感を言い放っておった」

 

「つまり…ちゃんとした、整合騎士じゃないってことか?」

 

「そういうことじゃ。おそらく…弄れなかったか、気まぐれか」

 

そう言われて、俺はホッとした。

優月がまともなら、あいつが何故、何もしてこなかったか、それは想像がつく。

 

「あやつは正常なら、なぜ何も行動を…」

 

「機会を伺ってたんだよ」

 

「なんじゃと?」

 

「あいつはあれでいて、計算高いやつだ。勝算がつくまで、動かないだろう。…優月と合流出来れば、100人力だ」

 

俺は必要な情報をまとめて、ユージオと合流する。

それから整合騎士に関する説明をして、目的を再確認した。

 

「つまり僕達は、最高司祭の部屋に行き、アリスの記憶の欠片を見つける必要がある…そういうことだね」

 

「そしてそのために、最高司祭を倒す必要がある…ということだ」

 

「…これを使うがいい」

 

そう言ってカーディナルから、2本の短剣を受け取った。

 

「これはわしとのパスを繋ぐもので…簡単に言うならば、わしの神聖術を100%当てることが出来るものじゃ」

 

カーディナルは俺たちの剣を取り返すことを、手伝ってくれるらしい。

そして切り札…【武装完全支配術】を授けてくれた。

 

「2人とも目を閉じ、己の剣を思い浮かべよ」

 

俺の脳裏に浮かぶ、巨大なギガスシダー。

そうして俺たちに渡せらたのは、長ったるい神聖術の術式が書き込まれた、1枚の羊皮紙。

 

「うぇ…」

 

これを…丸暗記…?

 

「ユージオ…キリトよ。世界の命運は、お主らに託した。ワシがやれることは、全てやった。己の道を信じよ」

 

「…行くぞ、ユージオ」

 

「ああ、キリト」

 

俺たちはカーディナルが作った扉を、くぐり抜ける。

目指すは…武器庫だ。




次は現実世界に戻っての、説明会となります。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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