ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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現実世界での説明回です。
それではよろしくお願いします。


閑話休題⑩

outside

 

「人の魂はどこにあるのか?」

 

(そういう哲学的な話が、彼の口から出るなんて)

 

明日奈がそう思ったのは、エギルのお店で話した時だ。

行方が分からなくなった優月たちを探し出した明日奈は、千笑と深澄を連れて、ある人の手引きの元、ある場所に乗り込んだ。

 

「2人はどこ!?菊岡さん!?」

 

「な、なんで明日奈君がここに!?」

 

「明日奈だけじゃないわ」

 

「私達もいます」

 

「…これで、私が協力に乗った理由が分かったでしょう」

 

明日奈が協力を仰いだ人物の名は、【神代凛子】。

かつて、茅場晶彦の恋人だった人物だ。

 

「…なんとも、古典的な手を…」

 

明日奈は堂々と変装して、深澄と千笑は2人が持っていたキャリーケースに入ってたのだ。

 

「私が招聘に応じた理由は、分かったかしら?」

 

「…大学の学籍データベースから、多重チェックを施したはずだが?」

 

「そっちは既に細工済みよ。そういうのが得意な子がいるので」

 

得意な子というのは、ユイの事だ。

足跡を追い、あらゆるツテをたどった先にここ…洋上石油プラントに偽装した、陸上自衛隊の機密施設【オーシャン·タートル】にたどり着いたのだ。

 

「和人は無事なの!?」

 

「優月はどこにやったのよ!?」

 

「2人を治療できると言ったのは、嘘だったんですか!?」

 

3人からの厳しい追求に、菊岡は一言。

 

「…いや、事実だとも。ここでしか、彼らの治療はできない」

 

そう堂々と、断言したのだった。

 

side深澄

 

ラース。

それが和人が通っていた、バイト先の会社の名前だ。

その内容は新型フルダイブ技術の、ブレインマシーンインターフェイス、そのもののテストらしい。

ちょっと私にも分からないから、説明ができないが、要するに新しいVR方法のテスターということらしい。

 

「和人君には、テスト中のあらゆる記憶を外部に持ち出せないように、機密保持をかけてある」

 

「機密保持って…そんなことして、大丈夫なんですか!?」

 

「もちろん。脳へ多大な負荷をかけるものではなく、【フラクトライト】の経路を遮断しているだけだよ」

 

「…何よ、そのフラクトライトって」

 

私がそう呟くと、難しい顔をしながら、菊岡が口を開く。

 

「心は、どこにあると思うかな?」

 

「…頭…脳?」

 

「脳とは、脳細胞の塊だね。では脳細胞のどこにあると思うかな?」

 

「そ、そんなの…分かりませんよ!」

 

菊岡が言うには、脳細胞同士を支える、マイクロチューブルというものがあるらしく、その中を通る物質こそ光…フラクトライトと呼ぶらしい。

 

「それこそ心だと、私達は認識している」

 

「…つまり、そのフラクトライトを読み取る機械がSTL…Soul Trance Leaterってことね」

 

「そうだ。そしてこの理屈は逆転できる」

 

「逆転って…どういうことですか?」

 

「…フラクトライトを読み取るのではなく、フラクトライトに情報を送り込む、そういう事ね」

 

千笑の言葉に私が答えると、菊岡は静かに頷いた。

 

「そしてこのSTL最大の目玉は、フラクトライトアクセラレーション…FLA。フラクトライトの速度を速めることで、実際のダイブ時間より、長い時間を、フラクトライトに書き込める」

 

ではなぜこんなことをするのか。

それも、彼自身が答えた。

 

「STLを使い、2人のフラクトライトに直接影響を与えることで、新たなニューラルネットワークを、発生させるのを促せるのさ。だから2人をここに連れてきた。ここにはフルスペックのSTLがあるからね」

 

そこで一度話を切ると、仰々しく再び語り出した。

 

「さて、諸君は概要は理解してもらえた…そう考えていいね?」

 

その言葉に、4人は頷いた。

 

「だが目的までは知らないだろう。私たちの目的は…ボトムアップ型汎用人工知能の開発だ」

 

人工知能のアプローチには、2つの方法がある。

1つはトップダウン型。

知識と経験を積ませ、学習によって知性に近づけようとする方法。

もう1つがボトムアップ型。

1000億個の細胞が連結された人間の脳を、人工的再現して、そこに知性を植え付けようとする方法。

 

「だが我々は、ある見落としに気が付いた。これを見てほしい。気分が悪くなるだろうが、我慢してくれ」

 

私たちが見させられたのは、コピーされた魂が崩壊するところだ。

 

「…と、このように、ただ魂を複製しても、自身がコピーであるという事実に、耐えられない。そこで私たちは新生児の魂を複製して、一から育てることにした」

 

そしてそのため用意された世界こそ、アンダーワールドだ。

だが彼らにも、想定外があったらしい。

 

「公理教会と呼ばれる政治機関が、禁忌目録を作ったのだ。フラクトライト達は法を守る。…守りすぎるほどに」

 

この時私は、ある予感が走った。

 

「…まさか、あんたたち!?」

 

「深澄?どうしたの?」

 

「あんたたちの目的は…人を殺せるAIを作ること!」

 

「「「っ!?」」」

 

その言葉に菊岡は答えず、ただ黙るだけだった。

そして…

 

「和人に、その話はしてませんよね、絶対に」

 

珍しことに、千笑が強い口調で口を開いた。

 

「その心は?」

 

「もしそれを知ってたら、和人は絶対にそれを手伝いません。それにあなた達には、致命的なことにを目を瞑っています」

「それは?」

 

「人工知能の権利です」

そう、彼らには人間と同等の思考能力がある。

そんな彼らを、戦争の道具として使うなんて、認められない。

 

「彼らに生身の肉体は無いよ。言いたいことが分からない訳でも無い」

 

「彼らは生きてるんです!」

 

「でもね、10万のAIの命より、自衛官1人の命の方が重い」

 

私たちと菊岡には、あまりにも明確な差があった。

 

「…和人を巻き込んだのは?」

 

私はズレそうな話し合いを、強引に戻した。

 

「…この計画には、VR経験者の力が必要だったんだ。しかも年単位のね」

そういえば、時の流れが速いって言ってたわね。

そういうこと…ね。

 

「優月君を巻き込んだのは?」

 

「彼の場合は、想定外だったんだよ。ただ、彼の脳を救うにはこれしかない。だから連れてきたのさ」

 

そして、和人を巻き込んだ実験の結果は、成功だったらしい。

なんでも、禁忌目録を破ってでも動いた女の子がいたらしい。

名前は…アリス。

 

「そしてこれは本当に偶然なのだが、この計画の基盤となっているものの名前も【A.L.I.C.E】なのさ」

 

Artificial Labile Intelligence Cybernated Existence

人工高適応型自立存在…という意味らしい。

これらの頭文字を合わせて【A.L.I.C.E】。

それこそが目的だと言い切った菊岡は、最後にこう締めくくった。

 

「ようこそ、我らが【プロジェクト·アリシゼーション】へ」




次からは、優月視点に戻ります。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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