ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
それではよろしくお願いします。
outside
「人の魂はどこにあるのか?」
(そういう哲学的な話が、彼の口から出るなんて)
明日奈がそう思ったのは、エギルのお店で話した時だ。
行方が分からなくなった優月たちを探し出した明日奈は、千笑と深澄を連れて、ある人の手引きの元、ある場所に乗り込んだ。
「2人はどこ!?菊岡さん!?」
「な、なんで明日奈君がここに!?」
「明日奈だけじゃないわ」
「私達もいます」
「…これで、私が協力に乗った理由が分かったでしょう」
明日奈が協力を仰いだ人物の名は、【神代凛子】。
かつて、茅場晶彦の恋人だった人物だ。
「…なんとも、古典的な手を…」
明日奈は堂々と変装して、深澄と千笑は2人が持っていたキャリーケースに入ってたのだ。
「私が招聘に応じた理由は、分かったかしら?」
「…大学の学籍データベースから、多重チェックを施したはずだが?」
「そっちは既に細工済みよ。そういうのが得意な子がいるので」
得意な子というのは、ユイの事だ。
足跡を追い、あらゆるツテをたどった先にここ…洋上石油プラントに偽装した、陸上自衛隊の機密施設【オーシャン·タートル】にたどり着いたのだ。
「和人は無事なの!?」
「優月はどこにやったのよ!?」
「2人を治療できると言ったのは、嘘だったんですか!?」
3人からの厳しい追求に、菊岡は一言。
「…いや、事実だとも。ここでしか、彼らの治療はできない」
そう堂々と、断言したのだった。
side深澄
ラース。
それが和人が通っていた、バイト先の会社の名前だ。
その内容は新型フルダイブ技術の、ブレインマシーンインターフェイス、そのもののテストらしい。
ちょっと私にも分からないから、説明ができないが、要するに新しいVR方法のテスターということらしい。
「和人君には、テスト中のあらゆる記憶を外部に持ち出せないように、機密保持をかけてある」
「機密保持って…そんなことして、大丈夫なんですか!?」
「もちろん。脳へ多大な負荷をかけるものではなく、【フラクトライト】の経路を遮断しているだけだよ」
「…何よ、そのフラクトライトって」
私がそう呟くと、難しい顔をしながら、菊岡が口を開く。
「心は、どこにあると思うかな?」
「…頭…脳?」
「脳とは、脳細胞の塊だね。では脳細胞のどこにあると思うかな?」
「そ、そんなの…分かりませんよ!」
菊岡が言うには、脳細胞同士を支える、マイクロチューブルというものがあるらしく、その中を通る物質こそ光…フラクトライトと呼ぶらしい。
「それこそ心だと、私達は認識している」
「…つまり、そのフラクトライトを読み取る機械がSTL…Soul Trance Leaterってことね」
「そうだ。そしてこの理屈は逆転できる」
「逆転って…どういうことですか?」
「…フラクトライトを読み取るのではなく、フラクトライトに情報を送り込む、そういう事ね」
千笑の言葉に私が答えると、菊岡は静かに頷いた。
「そしてこのSTL最大の目玉は、フラクトライトアクセラレーション…FLA。フラクトライトの速度を速めることで、実際のダイブ時間より、長い時間を、フラクトライトに書き込める」
ではなぜこんなことをするのか。
それも、彼自身が答えた。
「STLを使い、2人のフラクトライトに直接影響を与えることで、新たなニューラルネットワークを、発生させるのを促せるのさ。だから2人をここに連れてきた。ここにはフルスペックのSTLがあるからね」
そこで一度話を切ると、仰々しく再び語り出した。
「さて、諸君は概要は理解してもらえた…そう考えていいね?」
その言葉に、4人は頷いた。
「だが目的までは知らないだろう。私たちの目的は…ボトムアップ型汎用人工知能の開発だ」
人工知能のアプローチには、2つの方法がある。
1つはトップダウン型。
知識と経験を積ませ、学習によって知性に近づけようとする方法。
もう1つがボトムアップ型。
1000億個の細胞が連結された人間の脳を、人工的再現して、そこに知性を植え付けようとする方法。
「だが我々は、ある見落としに気が付いた。これを見てほしい。気分が悪くなるだろうが、我慢してくれ」
私たちが見させられたのは、コピーされた魂が崩壊するところだ。
「…と、このように、ただ魂を複製しても、自身がコピーであるという事実に、耐えられない。そこで私たちは新生児の魂を複製して、一から育てることにした」
そしてそのため用意された世界こそ、アンダーワールドだ。
だが彼らにも、想定外があったらしい。
「公理教会と呼ばれる政治機関が、禁忌目録を作ったのだ。フラクトライト達は法を守る。…守りすぎるほどに」
この時私は、ある予感が走った。
「…まさか、あんたたち!?」
「深澄?どうしたの?」
「あんたたちの目的は…人を殺せるAIを作ること!」
「「「っ!?」」」
その言葉に菊岡は答えず、ただ黙るだけだった。
そして…
「和人に、その話はしてませんよね、絶対に」
珍しことに、千笑が強い口調で口を開いた。
「その心は?」
「もしそれを知ってたら、和人は絶対にそれを手伝いません。それにあなた達には、致命的なことにを目を瞑っています」
「それは?」
「人工知能の権利です」
そう、彼らには人間と同等の思考能力がある。
そんな彼らを、戦争の道具として使うなんて、認められない。
「彼らに生身の肉体は無いよ。言いたいことが分からない訳でも無い」
「彼らは生きてるんです!」
「でもね、10万のAIの命より、自衛官1人の命の方が重い」
私たちと菊岡には、あまりにも明確な差があった。
「…和人を巻き込んだのは?」
私はズレそうな話し合いを、強引に戻した。
「…この計画には、VR経験者の力が必要だったんだ。しかも年単位のね」
そういえば、時の流れが速いって言ってたわね。
そういうこと…ね。
「優月君を巻き込んだのは?」
「彼の場合は、想定外だったんだよ。ただ、彼の脳を救うにはこれしかない。だから連れてきたのさ」
そして、和人を巻き込んだ実験の結果は、成功だったらしい。
なんでも、禁忌目録を破ってでも動いた女の子がいたらしい。
名前は…アリス。
「そしてこれは本当に偶然なのだが、この計画の基盤となっているものの名前も【A.L.I.C.E】なのさ」
Artificial Labile Intelligence Cybernated Existence
人工高適応型自立存在…という意味らしい。
これらの頭文字を合わせて【A.L.I.C.E】。
それこそが目的だと言い切った菊岡は、最後にこう締めくくった。
「ようこそ、我らが【プロジェクト·アリシゼーション】へ」
次からは、優月視点に戻ります。
それでは失礼します。
ありがとうございました。