ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
というわけで、よろしくお願いします。
side優月
あっぶねぇ…何とか間に合った。
俺とキリトは咄嗟に剣を突き刺して、キリトはギリギリで、アリスの手を掴むのに間に合った。
「アリス!手を伸ばせ!」
「いえ…!罪人に助けられるなんて、生き恥を晒すつもりはありません!離しなさい!」
あ、バカ!
なに自分から落ちようとしてるんだ!
「動くなバカ!」
「こんな時まで石頭はやめろ、バカ!俺たちは整合騎士だぞ!」
「ここでヤケになっても、何も解決しないことくらい悟れよ、バカ!」
「なっ!?2人揃って、またしても私を愚弄しましたね!撤回しなさい!」
「うるせぇ!バカにバカって言って何が悪い!」
「このバカ野郎!いいか!ここで死ねば、ユージオは直ぐに最高司祭の元に行くぞ!」
「俺たちの仕事は、それを止めることだろうが!だったら今は、生き残ることが最優先だろうが、バカ!」
「そんな理屈も分からないバカだから、バカって言ってるんだ!」
「「このバカ!」」
俺たち…バカしか言ってなくね?
場違いにも、そう思った俺。
「じ、10回もその屈辱的な言葉を言いましたね!?」
「バカの回数を数えてたのか!?バカなのか!?」
場違いがもう1人いたわ…しかも本人だし。
「1回追加です!」
「だからカウントしなくていい!」
だがやっと、アリスは冷静になったのか、今度は違う言葉を口にした。
「ではなぜ、お前はその手を離さないのです?その理由が、私にとって死ぬより、耐え難い憐憫ではないと、お前は証明できるのですか!?」
その言葉に、キリトは言葉を詰まらせながらも、その胸中を口にする。
「俺とユージオは…公理教会を壊滅させたくて、ここまで登ってきた訳じゃない。俺達だって、人界を暗黒界から守りたい気持ちは同じなんだ」
だからこそ、こいつらは今まで、1人も整合騎士を殺していない。
それは神聖術を使い、見てきたから知っている。
「ならばお前は、何故その刃を人に向け、血を流すという最大の禁忌を犯したのですか!?」
「俺たちが斬ったのは…公理教会と禁忌目録が間違っていると思ったからだ!」
なんでも女の子が、貴族に辱めを受けるのを止めるために、やむを得ず斬ったらしい。
なるほど、それは仕方ない。
よくやったな、キリト、ユージオ!
「禁忌目録に違反してないからって、ロニエやティーゼのような女の子が、上級貴族から辱められてもいいって言うのか…!答えろ!!整合騎士!!!」
「…法は法…罪は罪です…それを私意によって判断するのなら、どのように秩序は守られるのですか…」
アリスとて、決してそれを良しとする訳では無い。
だが、だからと言って逆らう訳にもいかない。
「ならその最高司祭が正しいか、誰が決める!天界の神か!?ならどうして、俺に裁きの雷が落ちない!?」
「…神の!ステイシア様のご意思は下僕たる我らの行いによって、明らかになるものです!」
「それを明らかにしたくて、俺たちはここまで来たんだ!」
今、ミシッて…!?
マズイ…壁の方が限界に…!?
「キリト!」
「今あんたを…死なせる訳には…いかないんだ!」
強引に持ち上げたキリト。
今のアリスは鎧も着てるため、かなり重いはず。
「アリス!早く壁の継ぎ目に、剣を刺せ!」
そしてアリスが刺したの同時に、キリトの方が限界を迎えた。
「キリトぉぉぉぉ!!!」
ダメだ…届かない…!?
「え?」
あ、アリス…
「…」
アリスは何も言わず、キリトを掴み楽々持ち上げる。
「良かった…」
「助けた訳ではありません。借りを返しただけですし、お前とは剣の決着がついていない」
「…そういうことにしておくよ。優月、どうにかならないか?」
俺に言われてもな…。
壁の破壊はほぼムリ、飛竜は来れない、ここから下に降りるのもムリ。
こうなると手はひとつ…上に登るしかない。
「さっきみたいに壁の継ぎ目に棒をさして、フリークライミングしかねぇな」
「上に行って入れる場所はあるのか?」
「ある。俺の本来の持ち場、95層の【暁星の望楼】は吹き抜けだから、そこしかない」
「少し待ちなさい」
俺たちが方針をまとめていると、アリスが口を挟む。
「ユヅキ…貴方は、この男の味方なのですか?」
「…あぁ、そうだ。とは言っても、こいつがここに来たのは、予想外だったが」
「俺のセリフだ、それは。なんで優月がアンダーワールドに?」
「え?ここがそうなの?」
「…そうか。優月はその辺は何も知らないか…」
「だから待ちなさい!2人で話を進めない!」
おおっとそうだ。
アリスに説明しないとだな…何をどう説明しよう?
「…悪い、よく考えたら、俺も何を説明したらいいか分からない。というか、説明出来るだけの材料がないんだ」
「…まあ、ステイシアの窓すら知らない貴方でしたから、期待はしてませんでした。さて、貴方たちはどうやって登る気ですか?」
そうだな…まずは…
「アリス、その手甲さ、鎖に変えてよ」
「は?なぜです?」
「命綱代わり」
「…仕方ありません。システムコール·フォームオブジェクト·チェインシェイプ」
アリスが神聖術で手甲を、鎖に変換する。
「な!?物質変換術!?」
「お前の耳は節穴か…」
「今のは形状変化です!」
俺とアリスから呆れられ、小さくなるキリト。
クク…笑える。
「優月!笑ってるの気付いてるからな!」
「しっつれ〜」
「お前なぁ…!」
「お前たち!状況をわかっているのですか!?」
「「は〜い…」」
怒られる俺たちだが、そろそろ移動を始めよう。
「システムコール·ジェネレート·メタリックエレメント·フォームエレメント·ウェッジシェイプ」
俺は鉄素で杭を作り、それを刺して剣をしまう。
そのまま鉄棒の要領で半回転して、杭の上に乗る。
もう1回同じことをして、登れることを確認する。
「よし!これで行けるぞ!」
「なら俺も…!」
「…り…す」
キリトが登ってくる中、アリスだけはそこから動けないでいた。
「はぁ?何だって?」
「無理です、と言ったのです」
はぁ、何言ってるんだこいつ?
「お前、神聖術なら騎士団でもトップクラスの…」
「そう意味では無いのです!このような状況初めてで…恥を晒すようですが、こうしてぶら下がってるだけで、精一杯なんです」
ああ…要するに、腰を抜かしのか。
全く…世話の焼ける…。
「なら俺たちが鎖を引っ張って、あんたを杭の上に乗せる!」
「仕方ねぇな…貸1だぞ!」
キリトと息を合わせて持ち上げる。
クソ…マジで重いな…!
「両手で壁に掴まれ…!」
「アリス…鎧…何とかならねぇのか…!?」
「変えても結果の重さは同じです…すみません…」
まあ、形状変化はその名の通り、形を変えてるだけだしな。
無理もないか…。
というか、そんなにしおらしくされたら、調子が狂う。
俺たちはこれを数時間続けて、既に夕方。
「「はぁ…はぁ…はぁ…」」
2人で分担してきたが、ソルスが落ちてきたせいで、空間神聖力が落ちてきた。
鉄素の生成には、神聖力を大量に使うから、夜までには何とか、あのでっぱりに行きたい。
「おい、みんな。あそこなにか見えないか?」
「ん?…石像でしょうか?」
石像って…なんであんな場所に?
「まあこの際、なんでもいいか。休めるならどこでもいい」
「違いねぇ。だが…あと2本はいるな…」
「…仕方ありません。いざという時のために、取っておきましたが、今がその時ですね」
アリスが手甲を、杭に変えた。
おぉー、ナイス!
その手があったか!
「しかしこう見ると、気味悪い像だな…」
たしかによく見ると…よく…見ると…!?
「嘘だろ…!?」
「これは…まさか…!?」
その時突然、石像が動き出した。
だがそれ以上に問題なのは、動き出した事実より、動き出したヤツの方だ。
「な、なんだよこいつら!?」
「【ミニオン】…!暗黒界の連中の使い魔だ!」
outside
突然動き出した石像に、アリスは呆然として、キリトと優月は戦闘態勢に入る。
「アリス!剣を抜け!ボサってするな!」
「アリス!」
だがアリスは何も出来ず、ただ鎖にしがみつくだけだった。
「クソ…エンハンス·アーマメント!」
優月は【桜刀:舞姫】の【武装完全支配術】で、迎撃する。
「魅せろ…舞姫!」
変幻自在の刃が、ミニオンの一体を切り刻んだ。
(クソ…イチがバチか…!)
「優月!俺を守ってくれ!アリスはしっかり鎖に掴まれ!」
「「お前…まさか!?」」
「おりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!!!」
キリトは全力でアリスの鎖を、上にぶん投げた。
「キャァァァァァァァァァァァァァア!!!」
(アリスもこんな悲鳴あげるんだな…)
そんな場違いな感想を抱く優月だったが、
「うぉ!?」
「キリト!っぶぇ…!?」
滑り落ちるキリトと、それをギリギリで掴む優月。
その時、キリトの体が少し浮く。
その事に、顔を青くする2人。
「「…まさか…!?」」
「こんのぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」
「「うおわぁぁぁぁぁぁぁあ!?」」
アリスの渾身のバカ力で、2人まとめて投げられる。
優月は完全に投げられ損である。
「何を考えてるのです、この大馬鹿者!!」
「…お前が腰抜かさなきゃ、良かっただけの話だろうが!このバカ力女!」
「なんですってぇ!?」
「優月!アリス!今は後!残り2体、片付けるぞ!」
キリトの声に、2人は直ぐに剣を構え直す。
「…アリス、あれは…」
「自分で言っていたでしょう。あれはミニオンです」
「だよな…クソッタレ…!」
優月とアリスの言葉に、キリトが尋ねる。
「2人はあれを知ってるのか…?」
「暗黒界の暗黒術師…こっちでいうところの神聖術師が使う使い魔です」
「名をミニオン。間違っても…整合騎士すら近付けない場所にいていいやつでは無い」
2人が何よりも気にしていたのは、そこだった。
ここは飛竜すら近付けない程に、高い場所。
決してあってはならない事態。
「ましてや…高い権力を持つ教会内部の人間により、匿われていたなんて、あってはないません」
「っ!?来たぞ!優月!アリス!そっちにもだ!」
「…ここは任せたぞ、アリス」
「ええ、私が斬ります」
横に一閃。
それだけで、真っ二つになるミニオン。
そして、縦切り4連撃【バーチカル·スクエア】によって、ミニオンを切り裂くキリト。
「…なんだよ」
「言え、奇妙な技を使う思っただけですよ。夏至のお祭りの芝居小屋で披露すれば、それなりに客を呼べるのではないですか?」
「そりゃどうも…あれ?あんた、セントリアの夏至祭に行ったことあるのか?あれは庶民のお祭りで、修剣学院でも、見ない生徒がほとんどだったぞ」
こっそり抜け出して、行ったことがあるな、それ。
たしかにあれは、庶民向けって感じだったな。
まあまあ楽しかったけど。
「私を気取った連中と一緒にしな…」
突然アリスの言葉が止まる。
2人は不思議そうに、首を傾げていると
「…なんでもありません。それより、ミニオンの血を落としておきなさい。病を呼ぶと言われていますから」
そう言われたキリトは、戸惑いながら袖で拭おうとすると
「こら!…あぁもう!男というのはどうして…」
「おい、一括りにするなよ。…俺もないけど」
「無いんですか!?全く…!手巾の1枚くらい持っておきなさい!」
俺たちはそのまま、でっぱりで一休みすることにした。
「ユージオのやつ…大丈夫かな…」
キリトの呟きに、優月はハッキリと答えた。
「大丈夫、あいつは強い。そうそう負けねぇよ。…あの人が相手じゃなかったらな」
「あの人?」
「そのまま登ったとして、90層にて待ち受けるのは整合騎士最強のお方…整合騎士長ベルクーリ=シンセシス=ワン」
セントラル·カセドラル内部にて、北の英雄に、北の若き剣士が戦いを挑んでいたのだった。
それでは失礼します。
ありがとうございました。