ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
outside
「…ユージオ?」
「キリト?」
突然キリトが、ユージオの名前を呼ぶ。
「どうしましたか?」
「…いや、なんでも。それより壁登りだけど、月が登れば、再開出来そうだな」
「ああ、ある程度作ってから、ゆっくり登っていこうと思うが…」
優月は上を見上げて、げんなりとした顔をする。
数十メートル先に見える、明かりを見ている。
「あと何メルも登るのかと思うと…」
「目が回りそうなくらい腹が減る…」
「言うなよ…俺も減ってきた…」
「はぁ…男というのは…」
キリトと優月の間抜けな会話聞いたアリスは、深いため息をつきながら、額に手を当てる。
「一度や二度、食事が取れないだけで、なんだというのです。子供じゃあるまいし」
「いや、お前俺が飯作ると、滅茶苦茶食うじゃん。おっさんなんて、若ぇな…なんて言いながら、遠い目をしてるぞ?」
「今その情報を言う必要ありましたか!?斬りますよ!?」
アリスがそう叫んだ時、アリスの腹が鳴る。
「…ククク…」
「キリト!離しなさい!今すぐこの男を斬ります!」
「落ち着け!落ち着けってアリス!」
そうこう騒いでいると、キリトが突然ポケットを漁る。
「あった!天の助けだ!」
「…なぜポケットから饅頭が?」
「ポケットを叩けば、饅頭3つだ!…ところでさ、このまま食べても、美味しくないよな?」
「「?」」
優月とアリスが、不思議そうに首を傾げていると、キリトは饅頭に神聖術を行使しようとした。
「システムコール·ジェネレート·サーマルエレメント·バース…」
「「バカか(ですか)!お前は!」」
2人に止められて、呆気に取られるキリトから、アリスが饅頭を強奪した。
「はぁ…あんなことしたら、丸焦げだろうが…最悪お前の腕ごと」
「マジか!?」
「ジェネレート·サーマルエレメント·アクゥイアスエレメント·エアリアルエレメント…ヴォーテックスシェイプ·バースト」
こうすることで、神聖術でレンチンが可能なのだ。
「まさか道具無しで、神聖術だけで饅頭を蒸せるとは。流石は料理上手のセルカのお姉さんだな」
「セルカ?誰そ…」
「お前今、なんと言いました!?」
アリスがもの凄い剣幕で、キリトに詰め寄った。
その様子を見たキリトは、気まずそうに一言。
「君には…妹がいる。そう言ったんだ」
side優月
アリスには、妹がいるらしい。
それからキリトが語った話は、俺の違和感を解消してくれるには、十分すぎる話だった。
「君の本当の名前は、アリス=ツーベルク。北部辺境の村、ルーリッド村の村長の娘として産まれた。そして、11歳の頃、ある禁忌を犯して、このセントラル·カセドラルに連行されたんだ」
「ある…禁忌…」
「それは…
アリスは考え込み、頭痛がするのか、辛そうな顔をする。
「おいアリス…無理はするな」
「私は…知りたい…全てを」
それからキリトは、アリスの身の上を語った。
「…私たち整合騎士は、人界を守るのが第一の務めです。仮にお前たちが、全てを倒したとして、一体誰が、この人界を守るのですか?」
「では逆に聞くが、君は整合騎士だけで、本当に
「それは…」
「無理だな、100%」
この人界を守るには、明らかに数が足りない。
ただでさえ、整合騎士すら欠番があるくらいだ。
各帝国の近衛兵なんて、数に入れるのすら烏滸がましい程の雑魚の寄せ集め。
「だからこそ、おっさん…整合騎士長も同様の懸念を抱いていた」
だがそれこそが、アドミニストレータの作りだした状況だ。
それでも武器庫の武器を解放し、剣術や神聖術を教え込めば、形にはなる。
だが今の状況では、決してそれは叶わない。
「最高司祭アドミニストレータを倒して、残された時間を最大限有効活用して、軍隊を整える…これしかない」
「…会えますか?」
長い沈黙の中、ポツリとアリスが呟いた。
だがそれは、叶わぬ夢だった。
整合騎士たちに施された【シンセサイズ】の秘儀。
これを解けば、アリス=シンセシス=サーティが消える。
「それは…」
それは…なんなんだ、俺。
認められない…違う、それはダメだ…。
でも、俺は…俺のアリスは…このアリスだ。
このアリスが消える…俺の友達が死ぬ?
「優月?」
「…なんでもねぇ」
「…セルカ…毎日、毎晩…呼んできた…そんな気がする。セルカ…セルカ…」
そう言ってアリスは、静かに涙を流す。
「…私にもいるのね、家族が。この夜空の下のどこかに…うぅ…ヒック…」
そう言って蹲りながら泣くアリスに、俺は黙って上着をかけてやる。
やがて泣き止んだアリスは
「…ひとつだけ、お願いがあります。この体に、アリス=ツーベルクの魂を戻す前に、一度でいい…遠くからでもいい。セルカを…家族の姿を見せてください」
「…約束する」
その言葉を聞いて、アリスは立ち上がり、覚悟を決めた。
「人界と、そこに暮らす人々を守るため、私アリス=シンセシス=サーティは、たった今から整合騎士のしめ…!?」
「「アリス?」」
突然言葉を止めたと思えば
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「「アリス!」」
sideアリス
「グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」
突然右目が焼けるように熱い。
右側の視界が赤く染る。
これは…!?
「アリス!どうした!?…これは…バーコード!?おい、キリト!何がどうなってる!?」
「ユージオの時と一緒だ!ユージオが学院で人を斬った時は、右目が吹っ飛んでた!」
二人の会話が聞こえるが、痛みでほとんど理解出来ない。
ただ分かるのは…この痛みは、乗り越えなくてはいけない、ということだけだ。
「これ…は…!!」
「アリス!?無理するな!」
神聖語と、数字が見える。
「システムアラート…コード871?キリト!なんなんだよこれ!?」
「俺にも分からない!多分教会に逆らおうとすると発動する、心理防壁だ!」
こんな…もの…まで…!
最高司祭猊下は…何を…考えている…の!
「これ…も…最高…司祭…様が?」
「いや、多分違う。…この外から、この状況を見てる連中だと思う」
「ああ…創世記には登場しない、神の一人の仕業だと思う」
そんな…存在が…いるの!?
私たち整合騎士は…神の作った世界を…守っているのに…信じてくれないの…!?
ここまで服従を強要されるなんて…!
「私は人形では無い!たしかに私は作られた存在かもしれない!けど私にも、意思はあるのです!私はこの世界…この世界に住む人々を守りたい!それが私の…ただ一つの使命なのです!!」
私はそう言いきって、目の前のユヅキにしがみつく。
「ユヅキ…私を離さないで…」
「分かった」
最高司祭アドミニストレータ…そして、名も知らない神よ。
私は、私の成すべき事を成すために…!
「貴方と、戦います!!!」
side優月
己の務めを果たすべく、右目を潰したアリスは、そのまま気を失った。
俺とキリトは何とか協力してよじ登り、こうして95層【暁星の望楼】にたどり着いた。
「ふぅ…何とかなったな…」
「あぁ…疲れた…」
2人でぐたっとしていると
「そう、なら説明してくれる?」
鎧が擦れる音と、剣を突き刺す音が聞こえる。
キリトは弾かれたような動くが、俺は逆にゆっくりとしか動けなかった。
その声は、今東にいるはずの人物の声。
視線を上げたその先には、灰色の鎧と髪に黒いリボン。
赤い目は全体的にうさぎを想起させたが、今はそう思えない。
「イー…ディス…」
「説明しなさい、ユヅキ。事と次第では、あんたも斬るわ」
整合騎士イーディス=シンセシス=テン。
俺の恩人が、俺たちの敵として立ち塞がった。
久しぶりのイーディス登場です。
アリブレをやめてしばらく経ちますが、多分こんな感じな登場だった気がします。
それでは失礼します。
ありがとうございました。