ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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それでは、よろしくお願いします。


62話

outside

 

「…ユージオ?」

 

「キリト?」

 

突然キリトが、ユージオの名前を呼ぶ。

 

「どうしましたか?」

 

「…いや、なんでも。それより壁登りだけど、月が登れば、再開出来そうだな」

 

「ああ、ある程度作ってから、ゆっくり登っていこうと思うが…」

 

優月は上を見上げて、げんなりとした顔をする。

数十メートル先に見える、明かりを見ている。

 

「あと何メルも登るのかと思うと…」

 

「目が回りそうなくらい腹が減る…」

 

「言うなよ…俺も減ってきた…」

 

「はぁ…男というのは…」

 

キリトと優月の間抜けな会話聞いたアリスは、深いため息をつきながら、額に手を当てる。

 

「一度や二度、食事が取れないだけで、なんだというのです。子供じゃあるまいし」

 

「いや、お前俺が飯作ると、滅茶苦茶食うじゃん。おっさんなんて、若ぇな…なんて言いながら、遠い目をしてるぞ?」

 

「今その情報を言う必要ありましたか!?斬りますよ!?」

 

アリスがそう叫んだ時、アリスの腹が鳴る。

 

「…ククク…」

 

「キリト!離しなさい!今すぐこの男を斬ります!」

 

「落ち着け!落ち着けってアリス!」

 

そうこう騒いでいると、キリトが突然ポケットを漁る。

 

「あった!天の助けだ!」

 

「…なぜポケットから饅頭が?」

 

「ポケットを叩けば、饅頭3つだ!…ところでさ、このまま食べても、美味しくないよな?」

 

「「?」」

 

優月とアリスが、不思議そうに首を傾げていると、キリトは饅頭に神聖術を行使しようとした。

 

「システムコール·ジェネレート·サーマルエレメント·バース…」

 

「「バカか(ですか)!お前は!」」

 

2人に止められて、呆気に取られるキリトから、アリスが饅頭を強奪した。

 

「はぁ…あんなことしたら、丸焦げだろうが…最悪お前の腕ごと」

 

「マジか!?」

 

「ジェネレート·サーマルエレメント·アクゥイアスエレメント·エアリアルエレメント…ヴォーテックスシェイプ·バースト」

 

こうすることで、神聖術でレンチンが可能なのだ。

 

「まさか道具無しで、神聖術だけで饅頭を蒸せるとは。流石は料理上手のセルカのお姉さんだな」

 

「セルカ?誰そ…」

 

「お前今、なんと言いました!?」

 

アリスがもの凄い剣幕で、キリトに詰め寄った。

その様子を見たキリトは、気まずそうに一言。

 

「君には…妹がいる。そう言ったんだ」

 

side優月

 

アリスには、妹がいるらしい。

それからキリトが語った話は、俺の違和感を解消してくれるには、十分すぎる話だった。

 

「君の本当の名前は、アリス=ツーベルク。北部辺境の村、ルーリッド村の村長の娘として産まれた。そして、11歳の頃、ある禁忌を犯して、このセントラル·カセドラルに連行されたんだ」

 

「ある…禁忌…」

 

「それは…暗黒界(ダーク·テリトリー)への侵入。ほんの少し、指先が出てしまったんだ」

 

アリスは考え込み、頭痛がするのか、辛そうな顔をする。

 

「おいアリス…無理はするな」

 

「私は…知りたい…全てを」

 

それからキリトは、アリスの身の上を語った。

 

「…私たち整合騎士は、人界を守るのが第一の務めです。仮にお前たちが、全てを倒したとして、一体誰が、この人界を守るのですか?」

 

「では逆に聞くが、君は整合騎士だけで、本当に暗黒界(ダーク·テリトリー)の軍を退けられると、そう思うか?優月、お前はどう思う?」

 

「それは…」

 

「無理だな、100%」

 

この人界を守るには、明らかに数が足りない。

ただでさえ、整合騎士すら欠番があるくらいだ。

各帝国の近衛兵なんて、数に入れるのすら烏滸がましい程の雑魚の寄せ集め。

 

「だからこそ、おっさん…整合騎士長も同様の懸念を抱いていた」

 

だがそれこそが、アドミニストレータの作りだした状況だ。

それでも武器庫の武器を解放し、剣術や神聖術を教え込めば、形にはなる。

だが今の状況では、決してそれは叶わない。

 

「最高司祭アドミニストレータを倒して、残された時間を最大限有効活用して、軍隊を整える…これしかない」

 

「…会えますか?」

 

長い沈黙の中、ポツリとアリスが呟いた。

だがそれは、叶わぬ夢だった。

整合騎士たちに施された【シンセサイズ】の秘儀。

これを解けば、アリス=シンセシス=サーティが消える。

 

「それは…」

 

それは…なんなんだ、俺。

認められない…違う、それはダメだ…。

でも、俺は…俺のアリスは…このアリスだ。

このアリスが消える…俺の友達が死ぬ?

 

「優月?」

 

「…なんでもねぇ」

 

「…セルカ…毎日、毎晩…呼んできた…そんな気がする。セルカ…セルカ…」

 

そう言ってアリスは、静かに涙を流す。

 

「…私にもいるのね、家族が。この夜空の下のどこかに…うぅ…ヒック…」

 

そう言って蹲りながら泣くアリスに、俺は黙って上着をかけてやる。

やがて泣き止んだアリスは

 

「…ひとつだけ、お願いがあります。この体に、アリス=ツーベルクの魂を戻す前に、一度でいい…遠くからでもいい。セルカを…家族の姿を見せてください」

 

「…約束する」

 

その言葉を聞いて、アリスは立ち上がり、覚悟を決めた。

 

「人界と、そこに暮らす人々を守るため、私アリス=シンセシス=サーティは、たった今から整合騎士のしめ…!?」

 

「「アリス?」」

 

突然言葉を止めたと思えば

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

「「アリス!」」

 

sideアリス

 

「グゥゥゥゥゥゥゥゥゥ!!!」

 

突然右目が焼けるように熱い。

右側の視界が赤く染る。

これは…!?

 

「アリス!どうした!?…これは…バーコード!?おい、キリト!何がどうなってる!?」

 

「ユージオの時と一緒だ!ユージオが学院で人を斬った時は、右目が吹っ飛んでた!」

 

二人の会話が聞こえるが、痛みでほとんど理解出来ない。

ただ分かるのは…この痛みは、乗り越えなくてはいけない、ということだけだ。

 

「これ…は…!!」

 

「アリス!?無理するな!」

 

神聖語と、数字が見える。

 

「システムアラート…コード871?キリト!なんなんだよこれ!?」

 

「俺にも分からない!多分教会に逆らおうとすると発動する、心理防壁だ!」

 

こんな…もの…まで…!

最高司祭猊下は…何を…考えている…の!

 

「これ…も…最高…司祭…様が?」

 

「いや、多分違う。…この外から、この状況を見てる連中だと思う」

 

「ああ…創世記には登場しない、神の一人の仕業だと思う」

 

そんな…存在が…いるの!?

私たち整合騎士は…神の作った世界を…守っているのに…信じてくれないの…!?

ここまで服従を強要されるなんて…!

 

「私は人形では無い!たしかに私は作られた存在かもしれない!けど私にも、意思はあるのです!私はこの世界…この世界に住む人々を守りたい!それが私の…ただ一つの使命なのです!!」

 

私はそう言いきって、目の前のユヅキにしがみつく。

 

「ユヅキ…私を離さないで…」

 

「分かった」

 

最高司祭アドミニストレータ…そして、名も知らない神よ。

私は、私の成すべき事を成すために…!

 

「貴方と、戦います!!!」

 

side優月

 

己の務めを果たすべく、右目を潰したアリスは、そのまま気を失った。

俺とキリトは何とか協力してよじ登り、こうして95層【暁星の望楼】にたどり着いた。

 

「ふぅ…何とかなったな…」

 

「あぁ…疲れた…」

 

2人でぐたっとしていると

 

「そう、なら説明してくれる?」

 

鎧が擦れる音と、剣を突き刺す音が聞こえる。

キリトは弾かれたような動くが、俺は逆にゆっくりとしか動けなかった。

その声は、今東にいるはずの人物の声。

視線を上げたその先には、灰色の鎧と髪に黒いリボン。

赤い目は全体的にうさぎを想起させたが、今はそう思えない。

 

「イー…ディス…」

 

「説明しなさい、ユヅキ。事と次第では、あんたも斬るわ」

 

整合騎士イーディス=シンセシス=テン。

俺の恩人が、俺たちの敵として立ち塞がった。




久しぶりのイーディス登場です。
アリブレをやめてしばらく経ちますが、多分こんな感じな登場だった気がします。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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