ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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連続投稿です。
それではよろしくお願いします。


65話

outside

 

200年振りに対峙する、アドミニストレータとカーディナル。

不敵な笑いながら、アドミニストレータは何かを唱えた。

 

「挨拶が遅れてごめんなさい。貴女を捕まえる為の神聖術の用意をしてたから…ね!」

 

そういった途端、突然周囲の窓が割れ、周囲が異界化する。

 

「貴様…アドレスを切り離したのか!?」

 

「これで逃げられないわ。貴女は猫のいる檻に入ったネズミよ」

 

今度はカーディナルが笑った。

 

「この状況じゃ、どちらがネズミか分からんがな?な。こちらは5人、貴様は1人なのじゃからな!」

 

「あら、それは計算が違うわ。正しくは、5対300よ?私を抜いてもね」

 

(300?…どういうことだ?)

 

「貴様…なんという非道な真似を!?」

 

優月の疑問に答えを言ったのは、カーディナルだった。

 

「そのもの達は、本来貴様が守るべき民では無いのか!?」

 

「民…?民って…人間?」

 

「人…なのですか?あの怪物が?」

 

「それが何なのかしら?たかが、300程度の人間ユニットを物質変換しただけよ?」

 

あまりの物言いに、流石の優月も言葉を失う。

アドミニストレータはその世界の人間を、本当の意味で道具にしか見ていないのだ。

 

「とはいえ、これはプロトタイプなのよねぇ。完成形にはそうねぇ…半分あればいいんじゃないかしら?」

 

「…まさか…その半分っていうのは…」

 

「もちろん、人界に住む8万人の半分。それだけあれば、人界を守り、暗黒界に攻め入るのも可能だと思うわ」

 

全員言葉を失った。

 

(イカれてる…!?怪物だ…コイツは!)

 

アリスもそう思ったのか、1人の神聖術師として問いかけた。

 

「最高司祭様、その神器の所有者は、どこにいるのです。武器との間に強固な絆が必要な【記憶解放術】は、貴女では行使できないはず!」

 

「…その答えは、ユージオが気付いたわよ。ねぇ?」

 

「…そうか…そういうことだったのか…!?」

 

ユージオの視線を追うと、そこにあるのは天井。

所々キラキラと光る装飾が施されているが、ここで優月もあることに気がついた。

 

「まさか…あの光は、整合騎士から抜き取った記憶の欠片なのか!?」

 

「貴様…!たしかに精神原型に差し込めば、擬似的な人間ユニットとして扱える。さらに、武器の素材に記憶に適合する人物を使えば…【記憶解放術】は使用可能になる!」

 

「正解よ。よくわかったわね、2人とも。触りたい、触れたい、自分のものにしたい…そういう醜い欲望が、これを動かしてるのよ。でも触れない…触れたら斬ってしまう剣だから。すごいでしょう?この欲望の力は」

 

「違う!それは愛じゃ!欲望などという言葉で表すな!」

 

カーディナルの言葉も、アドミニストレータには届かない。

 

「まあ別にいいわ。問題は…それを知った今、お前にこれを破壊できない、ということだ!なぜなら…これは、姿を変えただけの、人間なんだから!」

 

その事実は、カーディナルの心を折るのには、十分すぎだ。

諦めて杖を手放した時

 

「なら俺がやる」

 

そう言って1歩踏み出したのは、優月だった。

 

「優月!待て!俺も…」

 

「下がってろ!」

 

優月の鋭い声に、キリトの足が止まる。

 

「あら?貴方1人で何ができるの?1対300よ?」

 

「できるさ、何でもな。それに俺は…1人じゃない。数も違う。100対300…だ」

 

この刀に眠る剣士の力は、百人力だ。

そうして優月は、ゆっくりと息を吐いて

 

「リリース・リコレクション」

 

【桜刀:舞姫】の全てを解放したのだった。

 

side優月

 

俺の神器【桜刀:舞姫】には、3つの力がある。

刃をあらゆる形に変える【千変万化】。

天命を回復させる【無限再生】。

そして3つ目が【継承】。

かつてのこの神器の使い手だった、女剣士の戦闘経験を読み込み、自分の技へと継承させる。

 

「くっ…!」

 

膨大な戦闘経験と知識が、俺の脳…正確にはフラクトライトに流れ込んでくる。

その情報の濁流を整えて、自分の経験と知識と混ぜ合わせる。

 

「…行くぞ」

 

記憶の中にも、これくらいの怪物がいた。

俺も【スカル·リーパー】と被る。

あの時はアスナ先輩がいた。

でも今は…そして女剣士も1人。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

だから…【心意】を込めて弾く。

カウンターの一撃を、俺は全身を脱力させて、その一撃を受け流しながら、その勢いを殺さないように回転し

 

「秘奥義【輪渦】」

 

轟音と一緒に、ソードゴーレムを吹き飛ばす。

マズイな…頭痛が酷い。

残り2,3分か…!?

その時、後ろの方に動きがあった。

 

「ユージオ…?」

 

一振の白い剣が、そこにあった。

何が起きたかは、見れば分かる。

ユージオは、【青薔薇の剣】とひとつになった。

 

「…ユージオ。少し頼めるか?」

 

俺の言葉に答えるように、ユージオがソードゴーレムに切り込む。

…ありがとう、ユージオ。

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!」

 

鞘の中で花びら状にした刃を、無数に乱回転させた。

そうすることで、刃同士がぶつかり、無数の火花と超高温を生み出す。

 

「つぅぅ…!」

 

頭痛が酷くなる。

鞘を持つ手が焼ける。

本来の使い手たる女剣士ならば、心意で調整して上手く使うのだが、俺にはそんな器用な真似は出来ない。

それでも俺は、刃の回転を止めずひたすら回し続ける。

 

「これは…なんの音ですか…?」

 

「しかもこの匂いは…何かが焼けてる…?」

 

キリト達も気付いたみたいだが、絶対に止めない。

そして決定的な隙を、ユージオが作ってくれた。

 

「これで…!どけ!ユージオ!」

 

俺はついに、鞘から刀身を解放した。

密閉空間で燃え盛っていた炎に、急激に空気が入りその結果、ある現象を引き起こす。

 

「くぅぅぅぅぅ!?なんですか、この炎は!?」

 

「まさか…バックドラフト現象!!」

 

そう、バックドラフト現象だ。

それによって生じた爆発的な炎が、刀身に引火、さらに刀身によって誘導され、ソードゴーレムを燃やし尽くした。

 

「…絶技【百火桜乱】」

 

完膚なきまでに、コアまで消し炭にされたソードゴーレムは、やっとその動きを止めたのだった。

 

「はぁ…はぁ…つぅぅぅ…!」

 

激しい頭痛と左手の火傷に苛まれる中、ユージオは何故かアドミニストレータへと切っ先を向けた。

 

「あら、やる気なの?ユージオ?」

 

「ま…て…」

 

震える声で俺は制止させるも、止まらず襲いかかる。

 

「待てって…言ってん…だろうがァァァァァァ!!!」

 

強引に【武装完全支配術】で、アドミニストレータとユージオに間に、刃を通して止めさせる。

そのせいで、刀の天命がほぼゼロになったが、これには【無限再生】の特性がある。

そのうち回復するので、問題ない。

その隙に、キリトの手がユージオに追いつく。

 

「1人で…行かせるものか…」

 

「キリト…」

 

「優月、あとは任せろ。アリス、カーディナル。優月を頼む」

 

「頼むぜ…ヒー…ロー…」

 

「…ヒーローはお前だ、バカ」

 

sideキリト

 

あと一歩…俺にはあと一歩が足りなかった。

いつもそうだ。

俺の足りないあと一歩は、優月が…ツキノワが…背中を押してくれる。

だから…!

 

「今度こそ、この一歩に報いる」

 

そして俺は、久しぶりに二刀流を解放した。

 

「…不愉快だわ。招かれざる客が…私の世界で好き勝手するな!私この国を統べる者!最高司祭、アドミニストレータ!膝をつけ!首を差し出せ!!恭順せよ!!!」

 

「違う!お前はただの簒奪者だ!この世界を愛さないお前に、この世界を統べる資格は無い!」

 

「「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」」

 

俺の剣と【青薔薇の剣】となったユージオが、アドミニストレータの剣とぶつかる。

一撃ずつ重いアドミニストレータに対して、俺は速さと手数で対抗する。

俺は絶え間なく、ひたすら攻撃を重ねてアドミニストレータを圧倒して、吹き飛ばす。

 

「グゥ…!こ、こしゃくなァァァァァァァア!!!」

 

「ハァァァァァァァァァァ!!!」

 

俺とアドミニストレータの、【ヴォーパル·ストライク】がぶつかり合い、アドミニストレータの剣を砕いた。

そして…

 

「終わりだァァァァァァァァァ!!!」

 

そしてついに、俺は愛剣でアドミニストレータを貫いた。

 

「ふふふ…まさか…2本とも、金属では無い…なんてね…」

 

そう言い残して、アドミニストレータは死んだ。

 

「倒した…んだよな…俺たち…」

 

「おう、ナイス」

 

優月…ってそうだ!

こいつ、左手が!?

 

「優月!手は大丈夫なのか!?」

 

「カーディナル様々だぜ」

 

そう言って、左手をヒラヒラさせる優月を見てホッとすると、【青薔薇の剣】が光り出して…

 

「ん…戻れた…」

 

ユージオ…。

良かった…本当に…!

ボヤける視界で、色んなことを思って、口から出た言葉は

 

「このバカ野郎!!!」

 

「うわぁ!?」

 

どいつもこいつも…なんで俺の周りの連中は…!

 

「キリト…泣いてるのかい?」

 

「な、泣いてない…!」

 

誰のせいだと…!

 

「やれやれ、お前は本当に…泣き虫だなぁ」

 

「うる…さい…!」

 

他人事みたいに言うけど、お前は筆頭なんだぞ…!

俺は必死に目を擦って、涙を隠す。

 

「大丈夫だよキリト…僕はここにいる…」

 

「こら、目を擦るな。ったく、世話の焼ける…」

 

「お前ら…1人で…行こう…なんて…二度と…するなよ!」

 

もし2人に何かあったら…俺は…俺は…。

ふと気付くと、ユージオが窓から外を眺めていた。

 

「ユージオ。どうかしましたか?」

 

「…キリト、君の剣の銘【夜空の剣】なんて、どうかな?」

 

【夜空の剣】…多分ユージオは、あの夜空を見てそう思ったんだろう。

なんだろう…色んな名前を考えてピンと来なかったけど、この名前はすごくしっくりくる。

 

「…ああ、ありがとう、ユージオ。そうさせてもらうよ」

 

不思議と黒いやつ…改め、【夜空の剣】も嬉しそうに光った気がする。

 

「キリト…お前…」

 

「銘なんて、普通最初に付けるものでしょう…」

 

2人の顔は、そんなんでよく戦えたなと、ありありと書いてあった。

さて…そろそろ…。

 

「優月、あれを」

 

「ああ…ノートPC…システムコンソールか」

 

俺と優月は、それに向き合って、まず2人に俺達の説明をした。

俺たちはこことは違う世界、リアルワールドから来たこと。

【ベクタの迷子】というのは、嘘であること。

当然、記憶が無いのも嘘であること。

ただし、俺も優月もなぜここに来たのか、それは分からないのは本当であること。

 

「アリス、騙してすまなかった」

 

「…構いませんよ。元々怪しいとは思ってましたし、それに【ベクタの迷子】と言い出したのは、イーディス殿ですから」

 

「…さて、話は済んだかのう?色々と問題は山積みだがまずは…キリト、ユヅキ。お主らの生還が先じゃ」

 

そう言ってカーディナルが締めくくった。

俺はコンソールを操作して、リアルとの通信チャンネルを開く。

 

「菊岡さん…聞こえるか?」

 

『キリト君…?キリト君なのかい!?』

 

「俺もいるぜ、菊岡さんよ」

 

『その声…ツキノワ君かい!?2人とも…記憶のロックがされてないのか!?』

 

やはり菊岡は俺だけではなく、優月がいることも知っていた。

つまり現実世界の俺たちは…同じ場所にいる可能性が高い。

 

「さて、菊岡さんよぉ。俺たちはあんたに、山ほど話さないといけないことがあるんだが?」

 

「あんたのしてきたこと…は…?」

 

ん?

なんだあれは…?

 

『キリト君?ツキノワ君?どうしたんだい?』

 

「あの光は…」

優月もそれに気が付いた途端、突然光が俺たちに降り注いで

 

「「がぁ…!?」」

 

そのまま気を失った。




というわけで、リコリスルートに突入します!
それでは失礼します。
ありがとうございました。
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