ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
いや…ストックを貯め続けてるのですが、だいぶ煮詰まってきて、かなり困ってます。
それではよろしくお願いします。
66話
outside
「キリト!ユヅキ!」
「カーディナル様!一体何が!?」
突然倒れた優月とキリトに駆け寄り、何事かと慌てる2人。
そしてカーディナルは端末に向けて、声をかける。
『キリト君!?ツキノワ君!?返事をしてくれ!』
「おぬし!2人に何をした!?」
『き、君は?』
「2人の友じゃ!そちらからなにかしたのでは無いのか?」
『な、何もしていない!それより何が起きている!?』
カーディナルは端末越しの声に、嘘はないと判断して、状況を説明した。
『と、とにかく!こちらでも調べてみる!彼らを安全な場所へ!』
ここで通信が途切れて、カーディナルは、ユージオとアリスに、今後の方針を伝える。
「カーディナル様…」
「倒れる直前、何らかの神聖術が行使されたのを確認した。恐らくアドミニストレータのやつめが、何らかの仕掛けを施したのじゃ。ユージオ!お主はキリトとユヅキを安全な場所に!アリス!お主は現状を整合騎士たちと共有せよ!【ディープ·フリーズ】の解除術式は、わしが教える!」
そうしてバタバタと対応におわれる中、アリスたち整合騎士たちの会議中にて。
「空から女性が3人、降りてきた?」
修道士が突然入ってきて、そんなことを口にした。
そしてこう言っていたとも伝えた。
ーーキリトとツキノワ…もしかしたら優月って名乗ってるかもしれないけど、とにかく2人に会わせて欲しい。
「キリト…ユヅキ…小父様!」
「気をつけろよ」
アリスが走ってその現れた場所に向かうと、3人の女がいた。
1人は栗毛色の髪を、クラウンハーフアップにした、品のある女性。
1人は紫の髪をポニーテールにした、どこか溌剌とした女性。
1人は黒髪をボブカットにした、どこか儚げで優しそうな女性。
特に紫の髪の女性を見た時、アリスは一度声を出しそうになった。
(似ている…ユヅキに)
「貴女達が、空から降りてきたという者達ですね」
「そうね。私はミト。こっちはアスナ、こっちはサチよ。サチはキリトの恋人で、アスナはツキノワ…多分優月って言った方がいいかしら、その恋人。私は優月の姉よ」
「…それをおいそれと、信じる訳にはいきませんね」
「だったら…こうするしかないわ」
そう言ってアスナは、剣を抜いて構える。
「ちょっとアスナ!待ちなさい!」
「落ち着いて!アスナ!私たちは戦うために、この世界に来た訳じゃないでしょう!?」
慌ててミトとサチが止めるのを見ながら、アリスはあるワードを拾っていた。
(この世界…?…まさか)
「貴女達、リアルワールドから来たのですね」
「「「っ!?」」」
どうして知っているのか、そう言わんばかりの反応に、アリスも隠し事は必要ないと判断した。
「2人が倒れる前、教えてくれました。…案内します。こちらへ」
3人を2人の元へと連れてったアリスは、そのまま3人から事情を聞いた。
2人はフラクトライトの中にある、セルフイメージという部分に、ダメージを負ってしまったのだ。
セルフイメージとは、ざっくり言うなら自我を指す言葉だ。
(自己認識…。自我…。作られた私は一体、何なのでしょうか…?)
アリスはその話を聞いて葛藤を抱くも、今はそれは置いておくべきと判断した。
「しかしどうやって、2人を治すのじゃ?」
「自分で反応できない以上、外部からそれを補うしかないんです。彼らと近しい人たちの接触がある時、フラクトライトの活性が確認されています。主に…アリスさんとユージオ君。そして、私たちとそれが出来るそうです」
「ですが、私たちだけでは…」
「ええ、足りないわ。だから…呼んだのよ」
「「呼んだ…?」」
その後、リズにシリカ、シノンにリーファなど、2人の近しい人物が続々と来て、治療を施したのだが、事は上手く進まない。
「どうして…?アスナ!比嘉さんは?」
「…イメージが足りないって…ねぇ、彼らの他の関係者…待って…キリト君に接続を求めてる?」
どうやら何者かが、キリトへの接続を求めてるらしく、リアルワールドで反応に困っているらしい。
「場所は?」
「最上階…さらにもっと上…」
「…まさか…!?」
「…アスナさん、キリトに繋いでもらって」
アリスとユージオには、その人物に心当たりがあった。
そして…
「…ん…」
「キリト!」
まず、キリトが目を覚ました。
だが、優月は一向に目を覚まさない。
「ねぇ!?優月の関係者は他にはいないの!?」
その様子にミトが焦るように、アリスに詰め寄るが、アリスも苦い顔で
「…優月は1年間、世界中を旅していました。なので、その間のことを知るものがいないのです」
そう、優月が足らないのは、その部分の記憶であり、誰もその間を知らないから、セルフイメージを補えないのだ。
「…嬢ちゃん、状況は?」
「小父様!」
そこにふらりと、ベルクーリが現れた。
状況を聞いたベルクーリは、リアルワールドから来た面々に、
「お嬢さん方、そのセルフイメージっつーのは、人じゃなきゃだめか?」
「え?」
「坊主はこの2年間、欠かさず日記をつけてたらしい。そこになら、そのセルフイメージっつーやつの手がかりがあると思うんだが?」
その言葉は、リアルワールドの面々を驚かせた。
たしかにそうなのだ。
日記とは、人に見せるものでは無い。
だからこそ、そこには自身が思う自分…本音が記されている。
それも立派な自我…セルフイメージである。
「あ、あの!彼の部屋は!?」
「おう、坊主は…」
ベルクーリが答えようとした時、突然カセドラルが大きく揺れ出す。
「なに!?」
「キャ!」
シリカの足元に、巨大な木の根が生え出す。
それは次々生えてきて、セントラル·カセドラルそのものを飲み込もうとする。
「これは…嬢ちゃん!俺は連中をまとめる!坊主は頼んだぞ!」
「わ、分かりました!」
「アリスよ!ユヅキの部屋を想像せよ!ワシがそこまでの扉を作る!」
「私たちも行くわ!」
優月の部屋に行こうとするアリスとカーディナルに続き、ミトとアスナと立候補する。
それを認めたカーディナルは、大図書室への扉を作り、残りのメンバーを避難させた。
「よし、ゆくぞ!」
sideアスナ
カーディナルという、私たちにとって因縁のある名前の女の子が作ってくれた扉の先に拡がっていたのは、1人で寝泊まりするには困らない程度のワンルーム。
ただ本棚には、ビッシリと本が並んでいた。
「これは…全部神聖術の本ですね。道理で覚えがいいわけです」
優月君は頭もいい。
その実態はしっかりとした復習だ。
「さて、時間はないぞ。早くユヅキの日記を…」
「あったわよ」
「「「え!?」」」
いつの間にかミトが、衣装タンスをひっくり返して、奥にあったのだろう彼の日記帳を引っ張り出していた。
「あの子は隠したいものを、衣装タンスに隠すのよ。覚えておくといいわよ」
…ここまで来ると、嫉妬より優月君への哀れみが勝る。
とにかく、目的のものを手に入れた私達は、直ぐにカーディナルさんが作ってくれた扉で、みんなと合流する。
「でも日記って、どう使うの?」
「私たちが読んで、優月の気持ちを理解するしかないのかしら…」
プライベートな為、読むのは私とミトと、ここでの2年を、この場で一番知っているであろうアリスが、代表で読むことに。
「優月…」
最初に書かれていたのは、この世界の生活のことや、毎日への不安。
「馬鹿者…」
次にでてきたのは、アリスを始めとする、整合騎士の方々への罪悪感。
「君は…どこでも君なんだね」
最後の方には、2年間の経験で分かったことと、この世界の歪みのことと、世界と戦う覚悟。
「貴方がいつもお調子者を装っていたのは、自分の不安も飛ばそうとしていたのですね…まだ私は、貴方のことを知っていなかったのですね」
「あんたがなにを不安がろうと、私が絶対に追いつくわ。弟を守るのが、姉の仕事なんだから」
「優月君は全部一人で抱えすぎだよ。私も…私も、君の力になりたいんだよ?だから…お願い、戻ってきて。私のそばにいて…!」
「「「優月(君)(ユヅキ)…!」」」
sideツキノワ
(…ここはどこなんだろう…?)
気付けば俺は、大きな桜の木がある湖のほとりで1人、ぼんやりと立っていた。
(俺は、なんでここに…?いや、そもそも…俺は…何者だ…?)
訳も分からず、ただぼんやりと、立ち尽くしていた。
なんだか、身体中がダルい…疲れてるのかな。
(それもそうか…。アインクラッドから、ずっと走ってきた訳だし…)
俺は、死にたくなかった。
無意味に消えたくなかった。
だからずっと、何かを求めて走り続けた。
SAOで必死に戦って…ALOで何故かサンドバッグにされて…GGOで過去の因縁にケリをつけて、そして…ここで、一つの国を滅ぼした。
(俺は…なんで…?)
なんで、こんなことをしてるんだ?
誰かのため?
…違う、そうじゃない。
力の誇示?
…それも違う。
本当に俺は…何のために?
(…自分のためだ)
死にたくないから戦った。
死に方なんて選べない?
(違う、死ぬことなんて想像したくない)
どんなことでもやる覚悟がいる?
(違う、そうやって言い訳しないと、剣を握れない)
守りたい、終わらせたい、救いたい。
(失いたくない、逃げ出したい、1人になりたくない)
どれもこれも、自分の弱さと醜さを隠すための、都合のいい言い訳だ。
挙句には、この世界で俺は何をした?
(別に…ただ、間違ってると思ったから、戦うと決めた。その先にあるものを考えもせず)
曲がりなりにも、アドミニストレータは国のトップだ。
そんな人物を倒せば、国が混乱する。
そんな責任、取れるはずがないのに、何も考えずに、ただ自分勝手に戦った。
人界を守る気もないのに、あたかもそういう風ですと装った。
(この先に待つ暗黒界との戦い…つまり、戦争だ)
そんなものと向き合う覚悟は、俺には無い。
関係ない…。
逃げたい…逃げたい…逃げたい…!
ーーいいのよ、逃げても。
(え?)
気付けば、すぐ後ろに、女の人がいた。
俺はその人を、知っている。
(…女剣士?)
ーーそうね。あの刀の前の持ち主。貴方のことは、色々知ってる。貴方は、この世界の人間じゃない。だったら、貴方がこの世界の問題を、わざわざ背負う必要は無いの。
(でも…何もせず無責任に放り投げるなんて…そんなの…筋が…)
ーーだったらそもそも、この世界のために戦うことこそ、筋が通ってないわ。だって、無関係じゃない、貴方は。
(…)
ーーねぇ、優月。貴方がしたいことは?私はあの時、貴方の生きたいという意思に応えて、刀になったの。だから、貴方のやりたい事をやりなさい。人が自分のために生きちゃいけない…そんなルールは、ありはしないわ。
俺の…やりたいこと…。
(会いたい…みんなに…会いたいよ…)
ーーそれでいいの。さぁ、行きなさい。みんなが待ってるわ。行ってらっしゃい、坊や。
「…行ってくる!」
俺は少しずつ歩き出して、気付けば走り出していた。
目指すは遠くに見えるあの光。
ただまっすぐ…ひたすら真っ直ぐに、走り抜けて…そして…。
「…あ…」
「まったく…」
「遅すぎです…」
「…よっと!」
俺はアスナ先輩、ミト、アリスの顔を見ながら飛び起きて、ユージオが持ってくれていた神器を、【心意の腕】で手繰り寄せる。
「…ありがとう、舞姫。ありがとう、みんな」
俺は神器を腰に差して、上着を羽織り直した。
「…ただいま。みんな」
「…おかえり!優月君!!!」
俺は泣きながら飛びついてくるアスナ先輩を、優しく抱きとめるのだった。
キリトには、幼いアリスがいましたが、優月にはどうしようかと悩んだ結果、日記というご都合主義に走りました。
かなり強引ですが、こうするしか無かったんです…。
それでは失礼します。
ありがとうございました。