ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
それではよろしくお願いします。
outside
対策本部が発足してしばらく、修剣学院近くにある【跳ね鹿亭】にて、2人の男が対峙していた。
「「…」」
((なんでこうなった…?))
対峙する2人…優月とユージオは2人揃って、困惑していた。
時は少し遡る。
「あ、キリト。少し…」
キリトを見かけたユージオが声をかけようとした時、その隣にいるサチを見て動きを止めた。
リアルワールドから来たサチは、キリトの恋人だと聞いていたユージオは、恋人水入らずを邪魔すまいと、【跳ね鹿亭】の蜂蜜パイを誘うのをやめ、1人で行くことに。
(1人だし、お店で食べようかな)
ユージオは、そのままお店に行き、店内で食べると告げてから注文した。
そしてその後、事件は起きた。
「あの、お客様」
「はい?」
「大変申し訳ないのですが、相席は可能でしょうか?」
(相席?)
ユージオが店内を見渡すと、賑わっており、満席となっていた。
あまり知らない人と話すのは得意ではないが、そこは人のいいユージオ。
断れる訳もなく、相席を同意。
そこへ現れたのが…
「すみません。とつぜ…ん?ユージオ?」
「いえ、おきに…え?ユヅキかい?」
同じ対策本部の仲間である、優月だった。
そのまま優月を案内した店員は、メニューを尋ね、優月は困ったまま、蜂蜜パイとコヒル茶を注文し、店員が消え、冒頭に繋がる。
「えぇっと…悪いな、ユージオ。相席しちゃって」
「い、いや大丈夫だよ。知らない人じゃなくて、ちょっとホッとしたよ」
2人はぎこちなく会話を始めたが、すぐに止まってしまう。
((き、気まずい…!))
というのも無理は無い。
2人の初対面は、殺しあった敵同士。
アドミニストレータの前では、共に轡を並べる味方として、何より戦闘中だったので、そこに気をつけてる余裕が無かった。
(サシで話したことないぞ…!どうしよう…!?)
(2人だけっていうのは初めてだよ…どうしよう…!?)
2人とも、ぎこちなさを隠すことが出来ないほど、緊張していた。
お互い何を話すことが出来ず、長い沈黙の中、2人の商品が運ばれて、店員が引いていく。
そんな時、ついに優月が覚悟を決めて、口を開いた。
「…正直に言うよ。ユージオ、俺はお前が羨ましい」
「え?羨ましい?」
「ユージオは、俺の知らないキリトの2年を知っている。しかもあのボッチ…人付き合いの苦手なキリトが、あれほど信頼して、相棒なんて言いながら話すのなんて、初めて見たしな」
優月がキリトといると、いつも決まってユージオの話になる。
ユージオがああだとか、こうだとか…いつもユージオの話を続けるのだ。
「なんというか…あいつの1番の友達枠は俺だと思ってたから、ちょっと寂しいかもな」
そう言って浮かべる苦笑いに、ユージオは思わず
「…それは僕もだよ」
「え?」
そう呟いていた。
「僕も、君に知っているリアルワールドのキリトを知らない。いつも無茶はするし、予想のつかないことをするし、いくら止めても言う事聞かないし…」
「…ゆ、ユージオ?」
「でも、あいつはいつもみんなの話をするんだ。特に多いのが、サチとユヅキ…君たちなんだよ。俺の兄弟分だ、なんて言いながら、いつも君の自慢話をするんだ」
ユージオがキリトといると、いつも決まって優月たちの話になる。
サチとがどうだとか、優月はああだとか…。
「だから僕こそ、友達としての1番は僕だと思ってたから、君が羨ましいんだ」
そう言われた優月は、驚いた後に、小さく笑った。
「…なんだよ、俺たち似たもの同士か?」
「みたいだね。ふふ」
2人は笑いあってから、優月はコヒル茶を一口飲んで、真面目な顔で口を開いた。
「…ユージオ、お前に言わないといけないことがある」
「なんだい?」
「アリスのことだ」
その瞬間、ユージオも真顔になり、2人は真剣な目をお互いぶつけ合う。
「お前が、かつてのアリスを取り戻したがってるのは知ってる。そのために、あの塔を登ってきたのも知ってる。だけど…」
「君のアリスは今のアリスだ…と言いたいのかい?」
先んじてセリフを取ったユージオに、優月は頷く。
「…なら何が言いたいかわかるな?」
「うん。…僕たちはいずれ、互いのアリスのために戦わないといけない。…そういうことだね」
ユージオにとってのアリスは、ルーリッド村で共に過したアリス。
ユヅキにとってのアリスは、カセドラルで出会ったアリス。
お互いにとって、かけがえのない存在なのだ。
故に2人の男は、互いに剣を向けないといけない。
そう直感しているのだ。
「ま、それはまだ当分先だ。いただきます…ん!美味いな、これ!」
「分かるかい?キリトも好きなんだ、これ」
そのまま2人は、主にキリトやアリスの話をしながら、蜂蜜パイを食べつつ、話し込んでいく。
最初の重苦しさは嘘のように、まるで長い付き合いの友のような気軽さで話していると
「あ!いた!優月!ユージオ!」
「こんにちは、サチ。どうしたの?」
「サチ?そんな血相変えてどうした?」
キリトの手を引いたサチが、2人の前に現れた。
当の手を引かれている本人のキリトは、困惑した様子で、目を泳がせていた。
「お前…まぁた、その辺の女引っ掛けたのか?」
「ほんと…キリトは相変わらずだね…」
「ひ、人聞きの悪いこと言うな!そうじゃない!」
「大変なの!キリト、まだ記憶が治ってないかもしれない!」
「「…え?」」
sideキリト
「それでは【キリトの記憶の回復が完全じゃないかもしれない会議】、始めるわよー」
なんでこうなった…?
俺は俺の天幕の中で議論される、【キリトの記憶の回復が完全じゃないかもしれない会議】を、頭を抱えながら眺めていた。
事の発端は数時間前、サチとのデートの時に起きた。
露天で売られていた服に懐かしさを覚えるサチに、俺はまるで思い出せず困っていた。
やっとの思いでペアルックで買ったのだと思い出した俺だったが、肝心のその理由が思い出せなかったのだ。
「…優月君、ちょっと」
「え、先輩?」
アスナにズルズルと引き摺られる優月を見送り、会議はそのまま続いていく。
「お兄ちゃん!?本当なの!?まだ完全に思い出してないの!?」
「それが…まだそうと決まったわけじゃないの。たまたま忘れてただけかもしれないし…」
「そ、そうだぞ!たまたますっぽ抜けてただけだって!」
リーファ…スグの言葉に曖昧に返すサチに便乗するように、俺も問題ないと畳み掛ける。
「でもそのたまたまが、恋人との思い出を忘れるかしら?」
「確かにそうですね。それでは軽薄と言わざるを得ない」
「そ、そうだよね…」
しかし俺の反論は、ミトとアリスに否定される。
しかもサチまで、その意見に飲まれてしまう。
そこへ優月とアスナが戻ってきた。
「アスナ。優月はどうだった?」
「うん、問題ないよ。ほぼ覚えてたから」
「買った店の店員まで覚えてませんよ…」
それは…無理だろう…。
アスナのムチャクチャな質問に、思わず優月に同情してしまう。
「まあそれはともかく…今回優月君やキリト君の意識の取り戻し方がかなり特殊だし…。サチが心配になる気持ちは私も分かるよ」
くっ…そう言われると、反論出来ない。
恐らく優月もそうだが、俺自身問題ないと断言は出来ないのだ。
「特殊って…セルフイメージの回復ってこと?」
「そう。2人は私たちのイメージや記憶を元に、意識を取り戻したでしょ?優月君の場合、姉のミトや長い付き合いの私、こっちで一緒だったアリスがいたから良かったけど…」
「あくまで私たちが知っているキリトは、SAOから…それ以前が怪しいってこと?」
サチの言葉にアスナは頷く。
というかアスナ…なぜ長い付き合いの部分を強調した?
アリスがすごい目で睨んでたぞ?
「でもリーファがいるじゃない」
「確かにそうですけど、私もしばらく疎遠だった時がありましたし…」
ミトの言葉を、他ならないスグ自身が否定した。
まずいな…大事になってきた…。
とても物忘れだなんて言えないぞ…!?
「でも忘れてたのは、サチとのペアルックだけでしょ?だったら単なる物忘れじゃない?キリトだし」
「まあ…確かにそうだよな…キリトだし」
「俺だしってなんだよ!?」
とはいえ、シノンの助け船に優月が同意してくれたことで、流れが少しづつ傾いてくる。
このまま終わってくれれば…
「でも私も、気になることがあるんです」
「リーファさん!?」
ここでまさかの義妹からの裏切り!?
一体何を…!?
「何よ気になることって?」
「なんだかお兄ちゃん、すごくしっかりしてる気がするんです!」
…え?
どういうこと?
それって怪しむところなのか?
「うん。それは私も思ってた。キリト、1人でなんでも出来るようになってたし、私の知ってるキリトとは少し変わってるもの」
「いや…サチ?その怪しむ目はなんだ?それに、それはこの2年で俺が成長した証なのでは?」
喜ばしいことであって、心配されることでは無いと思うが…?
「いえ、かなり心配だわ」
「リズ!?」
「まあ、ユヅキやシノンの言う通り、大切な思い出を忘れたというのは、キリトらしいと言えますが…。確かに元々のキリトの部分が無いというのは、心配にはなりますね」
「アリスまで!?」
2人のあまりの言いようにガックリしていると、今まで黙っていたユージオが口を開いた。
「確かにキリトはここにいるし、まさか本物のキリトじゃないってことはないと思うよ」
「ユージオ…!」
ほら、ユージオもこう言ってるし、みんなが心配することはなにも…
「でも、君が大切な思い出を忘れてるかもしれないのは、ちょっと寂しいな」
「ユージオ…!?」
「やっぱりそう思うわよね、ユージオ」
…どうやらここに、俺の味方はいないらしい。
俺はついに諦めた。
そう思っていると、またもやリズが変な提案をしだした。
「こうなったら確かめるしかないわね!」
「確かめるって…どうやって確かめるの?」
アスナの問いに案を出したのは、シリカだった。
「あ、あの!だったらゆっくりお話するのはどうでしょうか?」
「あ、それ名案だね、シリカちゃん!」
「いや、案はいいが、俺たちにそんなゆっくりしてる時間ないぞ」
「えぇ。常に人手不足な対策本部ですし、カラントを斬れるキリトは当然、最前線に立ってもらわなければなりません」
「キリトだけじゃなくて、私たち自身も最前線に出ないといけないしね」
シリカの提案を、優月とアリスとミトが否定する。
確かに少しでも人手が欲しい今の俺たちにとって、時間は少しでも有効活用したい。
そうゆっくりしてられないというのは、事実だ。
「だからこそ、時間の有効活用よ!」
「…どういうこと?」
「夜!寝る前にちょっと話す程度でいいのよ!」
…はぁ?
寝る前?
「いや、それ寝落ちしたらどうすんだよ」
「寝ちゃえばいいじゃない」
「「「「「「「「「「…はぁ!?」」」」」」」」」」」
リズのやつ、何言って…!?
「り、リズ!?何言ってるの!?」
「だってそもそも時間なんて、そこしかないじゃない。それに…あくまでキリトの記憶確認のためだし、やましいことは何も無いわよ〜」
「…まさかリズさん、最初からキリトさんと過ごすために…!?」
「流石というか、なんというか…」
「ああなったら、サチじゃ止められないわね…」
シリカとシノンとミトが、何を話してるのかは聞こえなかったが、この流れは止められなさそうだ。
「あ、アスナ先輩は俺が認めないから。リズ、そこんところ分かってるよな?」
「…はい。承知の上です」
「ゆ、ユヅキ?顔がとても怖いことになってるけど?」
俺の角度では死角になるため確認できないが、顔を青くさせるユージオの反応を見る限り、相当のものだ。
「そ、それに!キリトと同じ部屋なんて、久しぶりで楽しそうだな〜」
「確かに。キリトと一緒に寝るのって、いつ以来だ?」
「優月!?言い方を考えてくれ!」
優月の怪しい言い方に、鳥肌が立つ。
そして、ユージオの純粋さを忘れていたよ…。
「仕方ありません。私も協力しましょう。ありがたく思いなさい」
などというアリスの一言で、全てが決まってしまった。
そして記念すべき(?)第一弾は…
「おっす」
「邪魔するよ、キリト」
「早速始めましょう」
優月、ユージオ、アリスの3人だった。
キリトのようにどっちも助けたいではなく、お互いが知るそれぞれのアリスの為に、戦うという気持ちで2人は話しています。
それでは失礼します。
ありがとうございました。