ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

79 / 98
クリスマスから年末年始にかけて、吐きそうなほどしんどい…。
それではよろしくお願いします。


閑話休題⑪

outside

 

対策本部が発足してしばらく、修剣学院近くにある【跳ね鹿亭】にて、2人の男が対峙していた。

 

「「…」」

 

((なんでこうなった…?))

 

対峙する2人…優月とユージオは2人揃って、困惑していた。

時は少し遡る。

 

「あ、キリト。少し…」

 

キリトを見かけたユージオが声をかけようとした時、その隣にいるサチを見て動きを止めた。

リアルワールドから来たサチは、キリトの恋人だと聞いていたユージオは、恋人水入らずを邪魔すまいと、【跳ね鹿亭】の蜂蜜パイを誘うのをやめ、1人で行くことに。

 

(1人だし、お店で食べようかな)

 

ユージオは、そのままお店に行き、店内で食べると告げてから注文した。

そしてその後、事件は起きた。

 

「あの、お客様」

 

「はい?」

 

「大変申し訳ないのですが、相席は可能でしょうか?」

 

(相席?)

 

ユージオが店内を見渡すと、賑わっており、満席となっていた。

あまり知らない人と話すのは得意ではないが、そこは人のいいユージオ。

断れる訳もなく、相席を同意。

そこへ現れたのが…

 

「すみません。とつぜ…ん?ユージオ?」

 

「いえ、おきに…え?ユヅキかい?」

 

同じ対策本部の仲間である、優月だった。

そのまま優月を案内した店員は、メニューを尋ね、優月は困ったまま、蜂蜜パイとコヒル茶を注文し、店員が消え、冒頭に繋がる。

 

「えぇっと…悪いな、ユージオ。相席しちゃって」

 

「い、いや大丈夫だよ。知らない人じゃなくて、ちょっとホッとしたよ」

 

2人はぎこちなく会話を始めたが、すぐに止まってしまう。

 

((き、気まずい…!))

 

というのも無理は無い。

2人の初対面は、殺しあった敵同士。

アドミニストレータの前では、共に轡を並べる味方として、何より戦闘中だったので、そこに気をつけてる余裕が無かった。

 

(サシで話したことないぞ…!どうしよう…!?)

 

(2人だけっていうのは初めてだよ…どうしよう…!?)

 

2人とも、ぎこちなさを隠すことが出来ないほど、緊張していた。

お互い何を話すことが出来ず、長い沈黙の中、2人の商品が運ばれて、店員が引いていく。

そんな時、ついに優月が覚悟を決めて、口を開いた。

 

「…正直に言うよ。ユージオ、俺はお前が羨ましい」

 

「え?羨ましい?」

 

「ユージオは、俺の知らないキリトの2年を知っている。しかもあのボッチ…人付き合いの苦手なキリトが、あれほど信頼して、相棒なんて言いながら話すのなんて、初めて見たしな」

 

優月がキリトといると、いつも決まってユージオの話になる。

ユージオがああだとか、こうだとか…いつもユージオの話を続けるのだ。

 

「なんというか…あいつの1番の友達枠は俺だと思ってたから、ちょっと寂しいかもな」

 

そう言って浮かべる苦笑いに、ユージオは思わず

 

「…それは僕もだよ」

 

「え?」

 

そう呟いていた。

 

「僕も、君に知っているリアルワールドのキリトを知らない。いつも無茶はするし、予想のつかないことをするし、いくら止めても言う事聞かないし…」

 

「…ゆ、ユージオ?」

 

「でも、あいつはいつもみんなの話をするんだ。特に多いのが、サチとユヅキ…君たちなんだよ。俺の兄弟分だ、なんて言いながら、いつも君の自慢話をするんだ」

 

ユージオがキリトといると、いつも決まって優月たちの話になる。

サチとがどうだとか、優月はああだとか…。

 

「だから僕こそ、友達としての1番は僕だと思ってたから、君が羨ましいんだ」

 

そう言われた優月は、驚いた後に、小さく笑った。

 

「…なんだよ、俺たち似たもの同士か?」

 

「みたいだね。ふふ」

 

2人は笑いあってから、優月はコヒル茶を一口飲んで、真面目な顔で口を開いた。

 

「…ユージオ、お前に言わないといけないことがある」

 

「なんだい?」

 

「アリスのことだ」

 

その瞬間、ユージオも真顔になり、2人は真剣な目をお互いぶつけ合う。

 

「お前が、かつてのアリスを取り戻したがってるのは知ってる。そのために、あの塔を登ってきたのも知ってる。だけど…」

 

「君のアリスは今のアリスだ…と言いたいのかい?」

 

先んじてセリフを取ったユージオに、優月は頷く。

 

「…なら何が言いたいかわかるな?」

 

「うん。…僕たちはいずれ、互いのアリスのために戦わないといけない。…そういうことだね」

 

ユージオにとってのアリスは、ルーリッド村で共に過したアリス。

ユヅキにとってのアリスは、カセドラルで出会ったアリス。

お互いにとって、かけがえのない存在なのだ。

故に2人の男は、互いに剣を向けないといけない。

そう直感しているのだ。

 

「ま、それはまだ当分先だ。いただきます…ん!美味いな、これ!」

 

「分かるかい?キリトも好きなんだ、これ」

 

そのまま2人は、主にキリトやアリスの話をしながら、蜂蜜パイを食べつつ、話し込んでいく。

最初の重苦しさは嘘のように、まるで長い付き合いの友のような気軽さで話していると

 

「あ!いた!優月!ユージオ!」

 

「こんにちは、サチ。どうしたの?」

 

「サチ?そんな血相変えてどうした?」

 

キリトの手を引いたサチが、2人の前に現れた。

当の手を引かれている本人のキリトは、困惑した様子で、目を泳がせていた。

 

「お前…まぁた、その辺の女引っ掛けたのか?」

 

「ほんと…キリトは相変わらずだね…」

 

「ひ、人聞きの悪いこと言うな!そうじゃない!」

 

「大変なの!キリト、まだ記憶が治ってないかもしれない!」

 

「「…え?」」

 

sideキリト

 

「それでは【キリトの記憶の回復が完全じゃないかもしれない会議】、始めるわよー」

 

なんでこうなった…?

俺は俺の天幕の中で議論される、【キリトの記憶の回復が完全じゃないかもしれない会議】を、頭を抱えながら眺めていた。

事の発端は数時間前、サチとのデートの時に起きた。

露天で売られていた服に懐かしさを覚えるサチに、俺はまるで思い出せず困っていた。

やっとの思いでペアルックで買ったのだと思い出した俺だったが、肝心のその理由が思い出せなかったのだ。

 

「…優月君、ちょっと」

 

「え、先輩?」

 

アスナにズルズルと引き摺られる優月を見送り、会議はそのまま続いていく。

 

「お兄ちゃん!?本当なの!?まだ完全に思い出してないの!?」

 

「それが…まだそうと決まったわけじゃないの。たまたま忘れてただけかもしれないし…」

 

「そ、そうだぞ!たまたますっぽ抜けてただけだって!」

 

リーファ…スグの言葉に曖昧に返すサチに便乗するように、俺も問題ないと畳み掛ける。

 

「でもそのたまたまが、恋人との思い出を忘れるかしら?」

 

「確かにそうですね。それでは軽薄と言わざるを得ない」

 

「そ、そうだよね…」

 

しかし俺の反論は、ミトとアリスに否定される。

しかもサチまで、その意見に飲まれてしまう。

そこへ優月とアスナが戻ってきた。

 

「アスナ。優月はどうだった?」

 

「うん、問題ないよ。ほぼ覚えてたから」

 

「買った店の店員まで覚えてませんよ…」

 

それは…無理だろう…。

アスナのムチャクチャな質問に、思わず優月に同情してしまう。

 

「まあそれはともかく…今回優月君やキリト君の意識の取り戻し方がかなり特殊だし…。サチが心配になる気持ちは私も分かるよ」

 

くっ…そう言われると、反論出来ない。

恐らく優月もそうだが、俺自身問題ないと断言は出来ないのだ。

 

「特殊って…セルフイメージの回復ってこと?」

 

「そう。2人は私たちのイメージや記憶を元に、意識を取り戻したでしょ?優月君の場合、姉のミトや長い付き合いの私、こっちで一緒だったアリスがいたから良かったけど…」

 

「あくまで私たちが知っているキリトは、SAOから…それ以前が怪しいってこと?」

 

サチの言葉にアスナは頷く。

というかアスナ…なぜ長い付き合いの部分を強調した?

アリスがすごい目で睨んでたぞ?

 

「でもリーファがいるじゃない」

 

「確かにそうですけど、私もしばらく疎遠だった時がありましたし…」

 

ミトの言葉を、他ならないスグ自身が否定した。

まずいな…大事になってきた…。

とても物忘れだなんて言えないぞ…!?

 

「でも忘れてたのは、サチとのペアルックだけでしょ?だったら単なる物忘れじゃない?キリトだし」

 

「まあ…確かにそうだよな…キリトだし」

 

「俺だしってなんだよ!?」

 

とはいえ、シノンの助け船に優月が同意してくれたことで、流れが少しづつ傾いてくる。

このまま終わってくれれば…

 

「でも私も、気になることがあるんです」

 

「リーファさん!?」

 

ここでまさかの義妹からの裏切り!?

一体何を…!?

 

「何よ気になることって?」

 

「なんだかお兄ちゃん、すごくしっかりしてる気がするんです!」

 

…え?

どういうこと?

それって怪しむところなのか?

 

「うん。それは私も思ってた。キリト、1人でなんでも出来るようになってたし、私の知ってるキリトとは少し変わってるもの」

 

「いや…サチ?その怪しむ目はなんだ?それに、それはこの2年で俺が成長した証なのでは?」

 

喜ばしいことであって、心配されることでは無いと思うが…?

 

「いえ、かなり心配だわ」

 

「リズ!?」

 

「まあ、ユヅキやシノンの言う通り、大切な思い出を忘れたというのは、キリトらしいと言えますが…。確かに元々のキリトの部分が無いというのは、心配にはなりますね」

 

「アリスまで!?」

 

2人のあまりの言いようにガックリしていると、今まで黙っていたユージオが口を開いた。

 

「確かにキリトはここにいるし、まさか本物のキリトじゃないってことはないと思うよ」

 

「ユージオ…!」

 

ほら、ユージオもこう言ってるし、みんなが心配することはなにも…

 

「でも、君が大切な思い出を忘れてるかもしれないのは、ちょっと寂しいな」

 

「ユージオ…!?」

 

「やっぱりそう思うわよね、ユージオ」

 

…どうやらここに、俺の味方はいないらしい。

俺はついに諦めた。

そう思っていると、またもやリズが変な提案をしだした。

 

「こうなったら確かめるしかないわね!」

 

「確かめるって…どうやって確かめるの?」

 

アスナの問いに案を出したのは、シリカだった。

 

「あ、あの!だったらゆっくりお話するのはどうでしょうか?」

 

「あ、それ名案だね、シリカちゃん!」

 

「いや、案はいいが、俺たちにそんなゆっくりしてる時間ないぞ」

 

「えぇ。常に人手不足な対策本部ですし、カラントを斬れるキリトは当然、最前線に立ってもらわなければなりません」

 

「キリトだけじゃなくて、私たち自身も最前線に出ないといけないしね」

 

シリカの提案を、優月とアリスとミトが否定する。

確かに少しでも人手が欲しい今の俺たちにとって、時間は少しでも有効活用したい。

そうゆっくりしてられないというのは、事実だ。

 

「だからこそ、時間の有効活用よ!」

 

「…どういうこと?」

 

「夜!寝る前にちょっと話す程度でいいのよ!」

 

…はぁ?

寝る前?

 

「いや、それ寝落ちしたらどうすんだよ」

 

「寝ちゃえばいいじゃない」

 

「「「「「「「「「「…はぁ!?」」」」」」」」」」」

 

リズのやつ、何言って…!?

 

「り、リズ!?何言ってるの!?」

 

「だってそもそも時間なんて、そこしかないじゃない。それに…あくまでキリトの記憶確認のためだし、やましいことは何も無いわよ〜」

 

「…まさかリズさん、最初からキリトさんと過ごすために…!?」

 

「流石というか、なんというか…」

 

「ああなったら、サチじゃ止められないわね…」

 

シリカとシノンとミトが、何を話してるのかは聞こえなかったが、この流れは止められなさそうだ。

 

「あ、アスナ先輩は俺が認めないから。リズ、そこんところ分かってるよな?」

 

「…はい。承知の上です」

 

「ゆ、ユヅキ?顔がとても怖いことになってるけど?」

 

俺の角度では死角になるため確認できないが、顔を青くさせるユージオの反応を見る限り、相当のものだ。

 

「そ、それに!キリトと同じ部屋なんて、久しぶりで楽しそうだな〜」

 

「確かに。キリトと一緒に寝るのって、いつ以来だ?」

 

「優月!?言い方を考えてくれ!」

 

優月の怪しい言い方に、鳥肌が立つ。

そして、ユージオの純粋さを忘れていたよ…。

 

「仕方ありません。私も協力しましょう。ありがたく思いなさい」

 

などというアリスの一言で、全てが決まってしまった。

そして記念すべき(?)第一弾は…

 

「おっす」

 

「邪魔するよ、キリト」

 

「早速始めましょう」

 

優月、ユージオ、アリスの3人だった。




キリトのようにどっちも助けたいではなく、お互いが知るそれぞれのアリスの為に、戦うという気持ちで2人は話しています。
それでは失礼します。
ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。