ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
それではよろしくお願いします。
side優月
俺たちは央都に戻り、おっさんに報告をした。
「なるほどな…まずカラントは、お前さんたちがまとめた話だと…まずは末端のカラント、次にそれらをまとめるカラント·クラスタ、そして帝国の全てのカラントをまとてるカラント·コア…この3つに分かれてるっつーことだな」
おっさんの言葉に、俺たちは頷く。
「そうか…よくやった。カラントの仕組みを解いただけではなく、エルドリエの救出もよくやった。ただ、不可解な点もあった…メディナ、お前さんの力のことだ」
その後メディナの口から語られたのは、ある意味見たまんまの内容だった。
触れた【ベクタの迷子】を、自分の支配下における、そういうものだ。
本人は命令するのではなく、お願いをすると言っているが、そんなものは詭弁だ。
俺はその力に、不信感と忌避感を感じていた。
「…」
それはアリスはもちろん、おっさんも同じだったらしく、顔は少し厳しい。
「…ベルクーリ様?ユヅキ様?」
俺たちの顔を見て、嫌な予感がしたのか、メディナは少し緊張気味に口を開く。
「メディナ殿。2人の懸念は、彼らの意思です」
代表して、アリスが口を開く。
「どういう意味ですか?」
「貴女の力は見方を変えれば、本人の意思に無視にて、相手に服従を強制させるものです。私たちはそれと同じことをした人物を知っています。その者が行った所業を…そして、どのようにして破滅したのかも、知っています。貴女には同じ轍を踏んで欲しくないのです」
「…忠告、痛み入ります」
俺は少し不貞腐れたような様子を見て、まだ不信感を抱いていた。
いつか、取り返しのつかないことをしそうな予感…そんな気がするのだ。
「まあ、俺としちゃ、数が増えるってーのは、喜ばしいことではあるがな。さて、次にお前さんの力そのものへの疑問なんだが…?」
「それは俺から説明するよ。優月、カーディナルから話があるって」
突然現れたキリトとバトンタッチして、俺は天幕の裏に向かう。
「カーディナル、話って?」
「メディナの件じゃ。あの者には、モジュールが埋め込まれている」
「…モジュール?」
なんで、そんなものが?
そのモジュールは、特定の者に作用するらしく、その特定の者というのが、【ベクタの迷子】らしい。
その実態は、現実世界の情報をもとにしたNPCらしい。
「つまり…その他のVRMMOのアバターデータってことか?」
「そういうことじゃ」
これまた厄介な…?
なぜそんなことになったかは、カーディナルにも分からないらしい。
通常の【ベクタの迷子】ではないため、【冒険者】と呼ぶことになった。
とにかく今は、この現状を維持するしかない、そういうことだ。
「おう、坊主。頼みてぇ事があるんだが」
「おっさん?」
という訳で
「全員、今日までご苦労だった!目先の問題に目処がついた!今日は好きなだけ飲み、好きなだけ食え!そして…この料理を用意した、坊主にしっかり感謝しろ!」
「させたのはあんただろうが…」
何故かパーティの用意をさせられる羽目になった、俺なのだった。
outside
「北帝国で、民が行方不明…か」
「ええ、それで招集がかかったみたい」
ミトから話を聞いた優月は、直ぐに用意を整えて、北帝国に向かう。
しばらく歩いたところで、ある事件に遭遇した。
「川に魔獣が?」
地元の青年が水汲みに向かったところ、川に魔獣が発生したらしく、近付くなという話を聞いたのだ。
「ですがこの一帯は、近衛兵が巡回してるはずです」
(近衛兵な…。あてにはならんと思ってたが、ここまでとはな…)
「近衛兵?」
近衛兵とは、各帝国が保有する戦力のことである。
通常は北帝国の皇帝の居城、【ノーランガルス帝城】を守っているが、今は魔獣討伐と、北帝国各地の監視をしている。
「近衛兵の人たちもやられちゃったのかな…?」
「違うな。おおよそ、お得意の法の目くぐりだろ」
「近衛兵?偉そうなおっさん達なら、数日前から見てねぇよ!」
「…見てない?」
(ほらやっぱり、そういうことだろ。マジ使えねぇ…)
「アイツらがちゃんとしてれば、俺の妹は歩けなくなるなんて、ならなかったはずなんだ…!あんたらも剣士なんだろ!どうせアイツらみたいに、助けてくれないんだろ!」
その言葉を受けた優月とアリスは、立場上堪えるものがあり、何も言えなくなる。
助けたいとは思う、だがそれを言っても信じないだろう。
そういう気持ちが、2人の口を止めてしまったのだ。
その時
「そんなことない。その魔獣は私たちが討伐する。私はともかく、こちらのお2人は人界最強の剣士たちだ。頼りない近衛兵が1000人束になっても敵わない」
メディナの言葉を受けた青年は、渋々誰も村から出ないようにするよう、伝言を伝えに走ったのだった。
「…アリス様、ユヅキ様。勝手な真似をして申し訳ありません。ですがお2人ならきっと、こうすると思いましたので…」
「いや、みなまで言うな。…恥ずかしい…」
「貴女の判断は的確ですよ、メディナ殿」
こうして彼らは魔獣の元へと急いだ。
その時、悲鳴が聞こえてきた一行は、慌てて加勢して、速攻で片付けたのだった。
「…ふぅ、助かったぜ。あんたらも、新しい警備地に移動する最中だったのか?あんたらも迷惑だよな?平民ごとき、魔獣とやらに1人や2人食べられても、大したことでは無い」
「…貴方に聞きたいことがあります。この辺の警護を任せている貴方を、数日見ていないという話を聞きました。それと同時に、それを教えてくれた者の妹が、足を負傷し、二度と歩けなくなったとも。…お前は、その間何をしていたのです?」
アリスの酷く固くて冷たい声に
(((うわぁ…怒ってる…)))
特に付き合いの長い男組3人は、少しだけアリスと距離をとる。
だが優月は、それと同時にどこか残酷なことを考えていた。
「なぜそんなことを聞く?貴様に答える義理はないぞ!女!」
「…質問の仕方を変えましょう。私は整合騎士、アリス=シンセシス=サーティ。そしてそこの男は、同じく整合騎士、ユヅキ=シンセシス=ゼロ。お前はよもや、我ら整合騎士の前で質問に答えぬ不敬、もしくは虚偽を申告するつもりですか?ならば処罰も検討しなくてはいけませんね。ああ、ちなみにユヅキは、優しくはありません。彼が大人しくしてるうちに、選ぶのがいいでしょう」
アリスが一息に言い切ったところで、慌てて口を開く近衛兵。
なんでも決められた時間以外は、近衛兵長の私有地周辺を警護することを命じられているらしい。
「ではなぜ、大量の魔獣が放置されたのですか?対処出来なくても、対策本部に連絡することくらいは出来たはずです。…お前にとって平民は、取るに足らない存在だから…ですか?」
ついに惨めったらしく、命乞いをする近衛兵。
それを見たアリスは、呆れ果てながら、村への報告と早馬を使って対策本部への連絡を行うことに。
「メディナ殿。今回は助けられました。礼を」
この一言が、近衛兵にあること気付かせた。
「…メディナ?メディナ=オルティナノスか?…くくく…久しぶりだな…メディナ嬢」
「…っ!?貴様は…!父上の葬式にいた!?」
なんとメディナと知り合いだったのだ。
しかしいい意味はなく、悪い意味でだ。
次から次へと出てくる、オルティナノス家への侮辱に、優月はついに我慢の限界が来た。
「…おい」
「ヒィィィィィィ!?」
「優月?何する気だ?」
キリトの制止を無視して、優月は近衛兵の襟首を掴み、たまたま近くに現れた魔獣の前に放り捨てる。
「…お前の仕事だ。片付けろ」
「え?で、ですが…私の手には…」
「お前の仕事だ」
遠回しに手を貸す気は無い、そう告げる優月に、周りが何をさせる気か、やっと悟った。
「まさか!?」
「優月君!やめて!」
「やれ」
優月は周りの声を無視して、魔獣との戦闘を強要する。
案の定勝てるわけなく、死にかけた時
「…メディナ、助けてやれ」
「え?は、はい!」
突然そう言われたメディナは、慌てて冒険者を連れて、近衛兵を助けた。
「け、欠陥品のオルティナノス家に…助けられる…とは…!?」
「お前らが欠陥品と蔑む、オルティナノス家に助けられた気分はどうだ?…メディナ=オルティナノスへの侮辱は、その剣の腕を認めている、俺たち整合騎士への侮辱になる。その事を、お友達にもちゃんと伝えておけ」
異論を認めさせない優月の言葉に、近衛兵は慌てて逃げ出すのだった。
「…ふぅ。整合騎士モードは疲れる…」
「突然過ぎて、ビックリしたよ…もう…」
「まあ、こういう時はこうでもしないと、舐められるからね」
そう言いながら、大きく息を吐き出して、ぐったりとする優月。
基本フレンドリーな彼だが、時折騎士らしさを見せて、威厳を示しているのだ。
…もっとも、背伸び感が否めないのは、本人以外の秘密である。
「さて、アリスに合流しよう」
そう言ってアリスとの、合流地点に向かい、無事落ち合った一行。
そこでは聞かせらたのは
「伝承?」
「ええ、150年ほど前、この北帝国に現れた魔女によって、【善き子供】達が攫われた、そういう伝承です。そしてその魔女は、皇帝の聖なる剣で倒され、子供たちは親元に帰ったと言う話です」
だが、明確な文献などはなく、あくまで御伽噺程度のものでしかない、そういう話だ。
そして大事なのは、現在、それに近い状況が生まれている、ということだ。
「突如現れた、知らない子供たち…」
もし本当ならば、放置などできるはずがない、そう判断した一行は、ルーリッド村までの道中、その子供たちも探すことに。
side優月
一晩休んだ俺たちは、そのままルーリッド村へ急いだのだが…
「「…」」
ことある事に、アリスとメディナがぶつかり、困っているのだ。
そんなギスギスした空気を抱えながら、子供を助けつつ、ついにルーリッド村へ着いた。
着いたのだが…
「…」
「アリス?」
「私は待っています。…私は、罪人ですから」
アリスめ、直前でひよったな。
さてどうやって、発破をかけようか…?
そう思っていた時だ。
「キリト!ユージオ!」
茶髪のシスターが、走り寄っていた。
その子の顔立ち…特に目元が、アリスに似ていた。
この子が…セルカだったのか。
「ええっと…貴方たちは…ってあれ?貴方、半年くらい前に…?」
「おう、その節は世話になった。またよろしくな」
「あれ?ユヅキはここに来たことあるのかい?」
「ああ、旅をしてた時にな。二泊させて貰ったんだよ」
とはいえ、セルカ自身に会った訳ではなく、チラッと見かけた程度だ。
恐らくあちらも、その程度の認識だろう。
そんな話をしていると、セルカがある事に気が付いた。
「…姉さま?姉さまよね!?」
「っ!」
「アリス…俺の背中に隠れるな」
俺の後ろに隠れるアリスを、俺は強引に引っぱり出す。
「どうして…?」
「…説明するのは…とても難しくて…今は…」
「いいの」
そう言ってセルカは、アリスを真正面から抱きしめる。
「姉さまにまた会えただけで、十分嬉しいから」
「…ありがとう…セルカ…」
そう言って涙混じりに抱きしめるアリスを見ながら、俺とミトは静かに笑う。
「姉弟姉妹は、一緒じゃないとね」
「そうだな…姉貴」
特に意味はなく、拳をぶつけ合う。
ただ俺たちの絆を、再確認出来た気がした。
しばらくこの村を拠点に、調査を進めることになった俺たち。
数日がたった頃。
「西はミトをリーダーにサチ、リズ、シリカ。東はアスナ先輩をリーダーにシノン、リーファ。俺は北を見るから…」
「優月!」
「キリト?」
今日はキリトたち幼馴染組は、一日非番にしたはず。
なんかトラブったか…?
「これから3人で村を見て回るんだが、優月も一緒に来いよ!」
「…あのなぁ。俺ら仕事なの。お前らは非番にしたけど、俺まで休む訳には…」
「いいじゃない!行ってきなさいよ!」
俺の言葉に、リズが被せてくる。
「おい、そういう訳には…」
「優月さん、働きすぎですよ。こっちに来てから、一日も休んでないですよね?」
「そうですよ!しっかり休まないと、いざって時に、動けないですよ?」
「こっちどころか、央都にいたときから、貴方ほとんど休んでないじゃない」
「私たちにも出来ることなら、少しでも手伝うよ?」
「あんたの事だから、どうせ責任を感じてるのかもしれないけど、だからって働きすぎよ。また私たちを心配させる気?」
「優月君。私たちは君たちを助けるために、ここ行きに来たんだよ?だから…私たちをもっと頼って欲しいな?」
みんなに次々と言われてしまい、俺も何も言い返せなくなる。
…はぁ、休むか。
「…分かった。みんな、頼んでいい?」
みんなの温かい返事を貰い、俺はキリトたちと一緒にルーリッド村を回ることになったのだった。