ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
side優月
俺たちは道中魔獣を狩りながら、山道を進んでいき、目的の村に着く。
中にはキリト達がいて、先に待たせていたらしい。
「キリト、悪い。遅くなった」
「何かあったのか?」
「いや…特には…」
その時ニヤけた顔のシリカとリーファが飛び出してきて、キリトにいらんことを言ってきた。
「優月さんが弱気になってたんですよ!」
「そうそう!すごく珍しい光景だったよ!」
「お、おい!お前ら!やめろ!///」
慌てて口を閉じさせるが手遅れで、同じくらいニヤけた顔をするキリトに、頭突きを入れた。
「いってぇ!?何するんだよ!?」
「うるせぇ!そのニヤけ顔やめやがれ!」
「2人とも!何してるの!?」
ユージオが慌てて駆け付けくる。
全く…このバカキリトめ…!
「…それで?状況は?」
なんでもこの村でも子供が失踪しており、近衛兵に調査を依頼したのだが、取り合って貰えず、俺たちで調べることになったらしい。
「カラントが絡むかもしれないし、やるしかないわね」
ミトの一言で俺たちも全会一致し、調査を進めた。
その結果…
「オーレシアン家?」
「ええ、なんでもその貴族の馬車が、この村に来ていたらしく…」
「失踪したのも、その後だったって事ね…」
俺たちはキリトたちが仕入れた、オーレシアン家の邸宅に向かったのだが、文字通りの門前払い。
「2人の権限で入れないの?」
「入れないことは無いが…まだ確定した訳でもねぇしな…」
「それにそのやり方は、衛兵や貴族が、絶対に拒否できない命令を下すのと一緒ですので…私自身、あまり使いたくありません」
リズの提案に、俺たちはいい顔はせず断ると、リズもその気持ちを汲んでくれた。
「キリト…何かいい方法ない?」
「まあ…忍び込むしかないだろうな…」
サチの言葉に、キリトは真剣な顔でそう呟く。
「あんたねぇ…そんなの論外よ」
「やっぱりここで待つしか…?」
キリトの言葉に反対するシノンだが、予想外の言葉を、ミトが口にした。
「…私はキリトに賛成。ただし、ここで馬車を待つしかないわね。その後、馬車を追いかけるのと、忍び込む組に分かれましょう。忍び込むのは…私·シリカ·フィネル·リネルでどうかしら?」
「ミト…本気か?」
「人命優先。ましてや相手は子供よ?何かヒントがあるかもしれないわ」
俺はミトの目を見て尋ねるが、本気なのが伺えた。
これは…止めても無駄だな。
「…なら俺も行く。言い出しっぺだからな」
「なら私も。神聖術で上手く誤魔化せるかもしれないし」
「我もこっちにいよう。だが2人のこともあるが、大人数だとかえって目立つだろう。サチ殿は神聖術をかけたあと、ここで待機していてくれ。その間は我がその身を守ろう」
ミトに続いてキリト·サチ·デュソルバートが名乗りを上げ、サチの護衛はデュソルバートに頼むことに。
「…よし、なら決まりだな」
こうして俺たちは近くに隠れながら、野宿をすることに。
夜まで待っていると、門が開き馬車が出てきた。
「見てください!馬車が出てきました!」
「ちょ!?アリス!?」
「バカ!声がでかい!?」
俺と先輩が慌てて口を閉じさせる。
「し、失礼しました…。こうも上手くいくとは思わずつい…」
「よし。手筈通り行くわよ」
「ミト。無茶するなよ」
「そっちこそ。サチ、お願い」
「うん。システムコール…」
サチの詠唱を聞きながら、俺たちは馬車を追いかけることに。
あまり近すぎてもいけないし、遠すぎると馬の速さには敵うわけなく見失ってしまう。
「流石にしんどいわね…」
「無理はするなよ」
そう話しながら追いかけていると、突如獣の鳴き声が響く。
「今のは!?」
「魔獣の鳴き声…みたいだね」
「結構近かったですね!急ぎましょう!」
俺たちは駆けつけるとそこには
「馬車が…!」
「チッ!みんな!馬車を守るぞ!」
俺たちは馬車を襲う魔獣と、そのまま戦闘を開始した。
「はぁ!」
「ユージオどいて!…フッ!」
ユージオが足止めして、シノンが撃ち抜く。
「おりゃあ!」
「リズさん!ナイスです!やぁ!」
リズが足場を崩させ、その隙にリーファが斬る。
「遅い!はぁぁ!」
「そこ!やらせない!」
アリスが薙ぎ払い、その隙をメディナが守る。
「シッ!」
「ハァ!」
俺と先輩が、互いの背中を守るように剣を振る。
こうしてそれなりの数がいた獣たちを、何とか殲滅した俺たち。
「優月くん。御者の人は…もう…」
「そうですか…」
御者はダメだったか…。
俺たちが俯いていると
「…ん?なにか聞こえませんか?」
「本当ね。…馬車の中?」
リーファとシノンが声が聞こえると言い出した。
たしかに…聞こえるかも。
「安否確認だもの。確認してもいいわよね?」
リズの言葉に俺とアリスが頷く。
確認をとったリズが荷台を開けると…
「嘘…君たち!?」
「お姉ちゃんたち、だれ?」
子供が数人、乗っていた。
これで確定だ。
オーレシアン家は、子供の失踪に関与している。
「…もう大丈夫よ。私たちがお家へ返してあげるからね」
「…アスナ先輩、子供たちをお願いします」
「うん。僕達が警護するから」
「私も警護に回ろう」
子供たちはアスナ先輩たちに任せ、俺とユージオとメディナで、道中の警護をすることに。
無事に村について、子供たちを返したはいいが、そこで想定外の事を言われてしまった。
「失踪した子供の数が足りない!?」
「なんてこと…!?まだいたのですか!?」
俺たちは直ぐにオーレシアン邸宅に向かい、キリトたちと合流した。
幸い既に戻ってきており、直ぐに情報交換が出来た。
「俺たちの方でも、証拠を掴んだぞ。この貴族は子供たちを、ここに連れて行っていたらしい」
キリトが地図で示した場所は、俺たちが追いかけた街道の終着点にある、名前のない城だ。
だが俺は、その城を知っていた。
「城…?こんな場所に城が?」
「ああ…ここは【ノーランガルス旧帝城】。昔の皇帝が住んでいた城だ」
outside
「【ノーランガルス旧帝城】…。そんな場所にどうして…?」
「昔の皇帝…。そういえば、北帝国に来る前、カーディナルが教えてくれたよな」
キリトの言っていることは、南帝国に現れた巨人族のことだ。
かつて、南の回廊を破って侵入した巨人族の集団がいたらしい。
それらを率いていたのが、ザクザとジクジだ。
結局彼らは、整合騎士の手によって倒されたのだ。
「つまり…キリトはこう言いたいのか?かつての皇帝が、カラントによって甦ったと」
優月の言葉に、キリトは神妙に頷く。
もし本当にそうだった場合、厄介なことになる。
「ねぇキリト。あの老人に聞いてみないかい?」
「おお!それだ!」
「ん?何の話だ?」
優月たちは知らない話だが、キリトたちがオーレシアン家の事を知ったのは、聞き込みの際、昔の皇帝に仕えていたという老人から聞いたのだ。
彼ならば知っているだろうと、聞き込みに行った一行だったが…。
「すまんな…。たとえお主らの言葉が真実だとしても、皇帝陛下を裏切るような真似、出来んのだ」
協力は望めず、断られしまう。
だがキリトが、何故か1人で何かをしに、一旦離れた。
「…まさか…」
「そのまさか、だと思うよ…」
優月はサチと2人で、キリトに対して深くため息をつく。
((無茶苦茶するなぁ…相変わらず…))
呆れる優月と、仕方なさげに笑うサチ。
その様子にみんながハテナを浮かべていると、キリトが情報を持って戻ってきた。
「おまたせ!湖に面した場所に、城内に入れる隠し通路があるらしい!行こう!」
「あのお爺さんがよく教えてくれたね。どんな手を使ったんだい?」
「え!?えぇっと…日頃の行いさ!ユージオ君!」
「お前が日頃の行いがいいとでも…?」
アリスがものすごい怪しい視線をキリトに送り、その視線を受けたキリトは焦ったように視線を逸らす。
「と、とにかく急ごう!」
キリトがそう言った時、デュソルバートが焦ったように走ってくる。
「はぁ…はぁ…」
「どうしたんですか!?デュソルバートさん!?」
「リネルとフィゼルが…どこにもいないのだ…。稽古の時間になっても現れず…」
突然のリネルとフィゼルの失踪に、一行が動揺する中、キリトはあることに気がついた。
「…まさか」
「キリト、何を知ってる?」
「ああ、情報を聞いてた時、人影が見えた気がしたんだ。気のせいだと思ってたんだが…」
リネルとフィゼルが、盗み聞きをしていた。
その事に気付いた一行は慌てて追いかけようとしたが、そこに魔獣の大群が迫っているという連絡が。
「…我が単身で追いかける。こちらを任せてもよいだろうか?」
「デュソルバートさん、頼んだ!俺達も一気に叩くぞ!」
優月の声に従い、全員で現場に駆けつけたのだが、そこは既に
「魔獣が倒されている…?」
白い衣服に身を包んだ、銀髪の男が既に魔獣を倒していた。
「…先輩、ミト。下がってて」
「サチもだ。下がってろ」
優月とキリトは、アスナたちを少しを下げさせて、嫌な悪寒を感じながら身構える。
「これはこれは…残念でしたね。せっかくあなた方に素晴らしい血飛沫舞う饗宴を、お見せしようと思ったのですが…まあ、余興は残ってますし、構いませんが」
「…この魔獣はあなたが倒したのですね?見た感じ、近衛兵では無いようですが?」
「…フハハハハハ!分かりきったことを聞くとは、整合騎士とは随分と頭が悪いようですね!まあいい、私の要件はあなたたちではありません。…ようやくお会い出来ましたね、私の救世主様」
アリスを嘲笑ったその男が、頭を下げた相手は…
「お前…一体何者だ!?」
メディナだった。
「私の名前は、【ハァシリアン】。【元老院統括代理】でございます」
「「【元老院統括代理】…?」」
side優月
【元老院統括代理】…そんな役職、聞いたことがない。
多分アリスも同様だ。
とはいえ俺たちは、まだ若い騎士。
イーディスやデュソルバートさん、ファナティオさんやおっさんたちなら、何か知ってるかもしれない。
「私はオルティナノス家についてなら、なんでも存じ上げております。天命を凍結された我が身、長きに渡りオルティナノス家に仕えて参りました。さあ、参りましょう、救世主様。私と共に、最高司祭様を復活させましょう!」
まずい…!
メディナは学生だから、本当のことを伝えてない!
当然復活という言葉に疑問を抱くメディナに、ハァシリアンは真実を口にした。
「あなた様は騙されているのです。最高司祭様を殺した大罪人を抱え込んだ、偽りの公理教会に!」
「ちょ、ちょっと!大罪人って誰のことよ!」
「「リズ!」」
「な、何よ…!?アスナにミト…」
バカ野郎…余計なことを口走りやがって…!
俺は思わずリズを睨みかけるが、もはや意味はなく。
「特別にお答えしましょう。最高司祭様を殺した大罪人は…この者です」
そう言ってハァシリアンは、キリトを指さした。
こいつ…どうして知っている?
「…う、嘘だ!?キリトが最高司祭様を殺したなんて、あるはずがない!」
狼狽えるメディナを無視して、ハァシリアンはメディナに一緒に来るように勧誘する。
だがメディナは、それを拒絶した。
「…はははは!その高貴な弁舌、まるで5代目当主、【ミリアム·オルティナノス】そっくりですね!」
「っ!?お前…どうしてその名を!?私たちでもほとんど記録に残っていない、5代目の名前をどうして!?」
「言ったでしょう?私は長きに渡り、オルティナノス家に仕えて参りました、と。…まあいいでしょう。今回は引き下がります。それでは、またお会いしましょう」
そう言ってハァシリアンに、神聖術で霧を生成されてしまい、逃げられてしまった。
「無事か!?」
「ええ、みんな無事よ」
俺がみんなの安否を確認していると、キリトとメディナが向き合っていた。
「…キリト。あいつの言っていたことは、本当なのか…?答えてくれ!キリト!」
「…本当だ。俺がアドミニストレータを殺した」
キリトを事実を伝えていると、頭を抱えんでしまう。
やはりこの事実は、人界の人には重すぎる。
そしてそれは…フラクトライトの崩壊を招くだろう。
「メディナ!いつか絶対に説明する!だから、今は力を貸してくれ!頼む!」
「…分かった」
考えることをやめたメディナは、少し落ち着いたらしい。
それを見た俺たちは、城に向けて歩き出す。
だから気づかなかった。
メディナは表面的に落ち着いただけで、未だ混乱の最中にいたことに。
それでは失礼します。
ありがとうございました。