ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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よろしくお願いします。


北帝国編 第5話

sideミト

 

整合騎士…その強さは今まで見てきて、知っていたつもりだ。

だが…現実とは想像を超えてくるとつくづく思った。

 

「つぅぅぅ!?」

 

「ミト!?ディスチャージ!」

 

私の声に、サチがすぐに回復してくれる。

とはいえ、この世界はペインアブソーバーがない。

火傷は治っても、痛みは残る。

 

「ミトは下がって!はぁぁぁ!」

 

「シッ!」

 

「ぬるい!」

 

私の代わりにユージオが出て、私の下がる隙をシノンが作ってくれる。

 

「ミト!無理は禁物よ!」

 

「ええ、ありがとう。それにしても…強いわね」

 

「…これが整合騎士。人界最強の名前は、伊達じゃないってことね」

 

上がる息を強引に整えながら、思考に耽ける。

この男を、キリトとユージオは倒した。

優月はこの男と、肩を並べる強さがある。

同じ景色を、見たかっただけなのかもしれない。

その代償が、この火傷の痛みだ。

 

「…ふー…」

 

「ミト?」

 

体が震える…なのに笑みが止まらない。

恐怖でイカれたかな…?

嘘だ、違う。

楽しいのだ、人界最強の騎士に戦いを挑める、この現実が、楽しくてたまらない。

自分の全てをぶつけても勝てない相手…それに挑むのが、愉しくてたまらない。

 

「…姉弟って、そんなところも似るのね」

 

「これでもお嬢様なんだけど?」

 

「あれがお坊ちゃんに見える?」

 

「「2人とも!いつまで喋ってるの!?」」

 

シノンと軽口叩いていると、ユージオとサチに怒られた。

さて、私もそろそろでますか。

 

「ユージオ!スイッチ!」

 

「うん!やぁぁぁ!」

 

私はユージオと入れ変わって、鎌を振り下ろす。

その度に弓でいなされ、挙句には至近距離から矢が放たれる。

 

「っ!?」

 

「我を侮るな!小娘が!」

 

「侮ってなんか…ないわよ!はぁぁぁぁ!」

 

私は避けた体勢から、勢い任せに鎌を振り、その遠心力を利用して、体勢を直す。

当然私目掛けて矢が飛んでくるが、それを打ち払いながら、間合いを詰める。

 

「ジェネレート·クライオゼリックエレメント!シノン!」

 

「ありがとう、サチ!フッ!」

 

時々放たれるシノンの矢が、デュソルバートの動きを牽制してくれる。

 

「チッ!…なめるなぁ!!」

 

突然炎が吹き荒れて、私はたまらず後退する。

 

「…エンハンス·アーマメント」

 

嘘…まだ本気じゃなかったの!?

私の心の叫びを現実にするかのように、デュソルバートの持つ弓【熾炎弓】の炎が、みるみると熱くなっていく。

そして私の後ろから、凍えるような冷気が私たちを包む。

 

「…ユージオ…」

 

神器同士のぶつかり合い。

炎と氷という、真反対の性質を持つものの衝突。

 

「デュソルバートさん…貴方はたしかに強靭な騎士だ。そして誰よりも自分の信じるもののために、誠実な人だ。今だってそうだ!貴方はフィゼルとリネルを取り戻すために戦っているのでしょう!そんな貴方だからこそ、僕は貴方に正気を取り戻してほしい!真に信じるべきものを、思い出して欲しい!」

 

「無駄口を叩くな…小僧!」

 

「そう呼ばれるのは久しぶりだね。…でも、僕はあの時より強い!」

 

2人の神器の力が、どんどん上がっていく。

何か…何か私たちに打てる手は…!

 

「ミト。私に賭けてくれないかな?」

 

「サチ?」

 

「私の神聖術と、ミトの防御技であの矢を抑えるの。その後シノンが、デュソルバートさんを狙撃して」

 

「「…分かった」」

 

シノンが後ろに下がり、私とサチが構える。

やがて私たちのボルテージが、限界を迎えた。

 

「エンハンス·アーマメント!」

 

「炎よ!焼き尽くせぇぇぇぇぇ!!」

 

「システムコール!ジェネレート·クライオゼリック·エレメント!アクィアス·エレメント!エアリアル·エレメント!ブリザード·シェイプ!·バースト!!」

 

「アインクラッド流鎌防御技…【パニッシュメント·ストーム】!!」

 

デュソルバートの炎鳥の矢と、ユージオの青薔薇と、サチの神聖術を巻き込んだ私の防御技がぶつかる。

 

「つぅぅぅ!…アァァァァァァァ!!」

 

ギリギリの攻防の末…何とか矢を弾くことに成功した。

 

「ァァァ!」

 

「ユージオ!シノン!」

 

「咲け!!青薔薇!!!」

 

そのままユージオの【武装完全支配術】が、デュソルバートを拘束する。

 

「シノン!今だ!」

 

「外しはしないわ。…ジ·エンドよ」

 

本当に終わらせてはダメよ…シノン…。

シノンの渾身の一射が、デュソルバートを打ち据えた。

 

「グハァァァァァァ!?」

 

氷が砕け、壁に激突するデュソルバートは、弓をと手放して、気を失ったのだった。

 

「…何とかなったわね…」

 

「ミト!」

 

「アスナ…何とか…あわわっ!?アスナ!?」

 

アスナ!?

なんで飛びついてくるの!?

びっくりしてると、アスナが泣きそうな顔で見上げてくる。

 

「もう!どうしてミトまで無茶するの!?本当に姉弟揃って、むちゃくちゃなんだから!」

 

「いや、私は優月ほどむちゃくちゃじゃ…」

 

「言い訳しない!本当に心配したんだからね!分かってるの!?」

 

「はい…すみません…」

 

結局私は、見かねたサチが止めるまで、ずっとアスナに説教させることになったのだった。

 

outside

 

「サチ!ユージオ!良かった…!」

 

「キリト、心配しすぎだよ」

 

「そうだよ!私だって戦えるんだし!」

 

「シノン!ナイスショット!」

 

「ありがとう」

 

それぞれ労ってから、意識を取り戻したデュソルバートに事情を聞こうとしたが

 

「その前に…この、大バカどもが!勝手な行動するなと、何度言えば分かる!!」

 

デュソルバートはリネルとフィゼルに、雷を落とした。

その様子を、一行は苦笑いで見つめる。

一通り説教を終えたデュソルバートは、説明を始める。

城の裏口から侵入したデュソルバートだったが、頭巾の男に敗れ、拘束。

一方のリネルとフィゼルは、城に向かう途中に捕まってしまっていた。

そして、カラントの種子はなく、既に持ち去られたのでは、というのが彼らの予想だった。

 

「ぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

しかしカヨーデの悲鳴が聞こえてきたことで、話し合いを一時中断。

慌てて駆けつけた時には、既に死にかけており、子供達の安全を聞き遂げ、消えていった。

 

「…後味悪いですね…」

 

「子供たちが無事だっただけでも、良しってことにしましょう…」

 

親元には、デュソルバート達が手配することに。

ようやく全てケリがついた…そう安堵した優月の耳に、予想だにしなかった出来事が聞こえた。

 

「ユヅキ!キリト!ルーリッドの村に、魔獣が現れました!すぐに急行しましょう!」

 

side優月

 

どういうことだ…!?

カラント·コアは、たしかに斬ったはず!

 

「まさか…供給源を絶っても、全てのカラントが消えるわけでは無いってことか!?」

 

クソ…そんなのありかよ!

とにかく急がないと…!

 

「ってあれ?メディナは?」

 

「多分先行した!俺たちも行くぞ!」

 

俺たちはルーリッドまで、最短距離を走り抜け、何とか村の前まで来る。

だがかなりの数がおり、中々村まで行けない。

 

「優月君!ここは私達が引き受けるわ!」

 

「ありがとう!先輩!みんな!一気に突破するぞ!」

 

俺たちは何とか魔獣を蹴散らして、道を作る。

 

「セルカ…!」

 

「あ!待てアリス!」

 

「優月!また出たぞ!」

 

こんな時に邪魔くせぇな…!

俺たちは速攻で片付けて、すぐにアリスを追いかけた。

どうやら間一髪だったらしい。

セルカを辛うじて助け出したアリスと合流して、目の前の魔獣の群れを討伐しようと身構える。

 

「お力添えします!」

 

そこへメディナが、冒険者を連れて現れる。

だがこいつらは、戦えないはずだ。

 

「総員、構え!魔獣を蹴散らすぞ!」

 

「「かしこまりした!救世主様!」」

 

「…お前…やりやがったな…!」

 

「まさか、接触したのですか!?私たちとの約束を破ったのですね!」

 

「話は後です!今は敵を倒すことが優先です!」

 

チッ…この女…!

俺はこの腹立たしさを、魔獣とカラントにぶつけることに。

 

「畜生共が…邪魔なんだよ!」

 

怒りに任せるまま、とにかく俺は刀を振るい続けた。

数分後、魔獣を全て斬り伏せ、カラントを刈り取った俺たちは、アリスとキリトはセルカを送りに、ユージオは村の中を見回る。

そして俺とメディナは…

 

「さて…俺が納得いく、さぞかし素晴らしい言い訳があるんだろうな、メディナ=オルティナノス」

 

「私は、私の行いが間違ってるとは思いません」

 

お互いに一触即発な雰囲気で、話し合いをすることに。

 

「彼らは戦うことを望まず、それゆえにこの村で天職を与えられた。なのにお前は彼らになんの断りもなく、自分の手駒にした。…相違ないな」

 

「はい。この北帝国を守るために、必要だと判断しました」

 

その心はつまり…

 

「近衛兵が信用出来ないから…だな」

 

「事実、近衛兵は立場にあぐらをかき、民を救おうとはせず!対策本部は慢性的な人手不足で、対応出来ない事案ばかりではないですか!私は冒険者たちに、北帝国の警護と巡回をお願いした!それが、北帝国の民の為になると、判断したからです!」

 

「だからといって、人の意志を捻じ曲げていいとでも?大した誇りだな、オルティナノスの当主殿」

 

「…何が言いたいのですか」

 

「てめぇの言う、オルティナノスの誇りってやつは、たかが知れてるなって言ってんだよ」

 

民を守る…耳障りのいい言葉だ。

だがやっているのは、他人の意思を捻じ曲げ、自分の考えを強制する。

結局のところ、他の貴族と一緒だ。

 

「散々ご高説たれてきたがよ、結局やってるのは、他の貴族どもの一緒だ。はっ!この世界の貴族どもなんて、腐りきった連中ばかりだが、お前も同類か。俺の目は随分と節穴だったらしい」

 

「いくら整合騎士殿とはいえ、オルティナノスへの侮辱は訂正して頂きたい!」

 

「上級法で自領の民や、下級貴族を踏みにじる連中と何が違う!お前のやってる事は、結局それも一緒なんだよ!そんなゲスなことで取り戻せる誇りなんてな、クソの役にも立たねぇんだよ!」

 

「貴様ァァァァァァァ!!!」

 

俺に向かって刀を振りかざすメディナだが、俺にそんな単調な攻撃なんて当たるわけなく、逆に拘束して動きを封じる。

 

「お前は他の貴族とは違う思ったんだがな…。結局力に溺れただけか。…下らね、相手にする価値もない」

 

俺はそう吐き捨てて、メディナの拘束を解く。

 

「…やっぱり、対策本部は間違ってるのかもしれないな…」

 

「あの胡散臭い男の方が正しいと?そっちの方が自分を評価してくれるからってか?」

 

「じゃあどうして、最高司祭様を殺したという事実を隠していたんだ?」

 

「お前、それを聞いた後どうなった?あんな恐慌状態を、人界中に広めろと?」

 

「このままでは、この人界の苦しむ人達を誰も救えない!私は、私のやり方で戦います!」

 

「お前みたいな勘違い野郎で救えるなら、こんな苦労はしてねぇだろうよ」

 

「優月!!何してるの!!!」

 

「メディナも落ち着いて!!ね!?」

 

先輩たちが追いついてきて、俺たちを慌てて仲裁しようとする。

だが生憎と、吐いた唾は飲み込めないし、メディナを認めることもない。

 

「メディナ?…おい、優月、何があった?」

 

「別に。ただの喧嘩。…まあ、引く気もないけど」

 

こうして俺とメディナの間に、決定的な溝が出来たまま、一晩迎えることとなった。




それでは失礼します。
ありがとうございました。
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