ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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やっと1層が終わりました。長かった…
それではよろしくお願いします。


9話

outside

 

「はぁ…はぁ…」

 

周りが歓喜する中キリトは肩で息をしながら座り込み、リザルト画面を見ていた。

その画面にはLAST ATTACK BONUSと書かれておりその下には【コート・オブ・ミッドナイト】と書かれていた。それを確認していると

 

「ナイスキル!キリト!お疲れ!」

 

後ろからツキノワが肩を組んで拳を突き出してきた。

 

「…ああ、お疲れツキノワ。ツキノワも凄い戦いぶりだったぞ」

 

お互いの健闘を称え合い拳をぶつける。

 

「ツキノワ君!キリト君!お疲れ様!」

 

「2人ともお疲れ。大丈夫かしら?」

 

「アスナ先輩、お疲れ様です!ミトもお疲れ!」

 

「お疲れ2人とも、俺たちは大丈夫だよ。そっちも大丈夫か?」

 

そこへアスナとミトもやってくる。

4人でそれぞれの心配をしつつも話していると

 

「いいもん見せてもらったぜ!Congratulation!この勝利はあんたらのもんだ!」

 

エギルがツキノワとキリトの肩を叩きながら賞賛する。それに礼を言おうとした時

 

「なんでや!!!」

 

そんな悲痛な叫び声が響いた。

 

「何でディアベルはんを見殺しにしたんや!?」

 

「…見殺し?」

 

その目はキリトを睨んでおり、キリトは困惑した。

 

「そうだろ!?だってお前はボスの攻撃パターンを分かってたじゃないか!?」

 

その言葉に場の空気が凍りつく。

そして静かにだが動揺が広がっていく。

 

「確かに…」

 

「なんでだ?」

それぞれがそんな疑問を口にして、キリトを見ていると

 

「俺知ってる!」

 

そんな声が響く。

 

「こいつは元ベータテスターだ!だからボスのパターンを知ってて隠してたし、美味い狩場やボロいクエストをいっぱい知ってるんだ!!」

 

耳障りな声でそんな事を言う。

ツキノワはそんな声を聞いて眉間に皺を寄せていると

 

「でもベータの情報はボス戦前の攻略本に乗ってだろ?だったら知識量は同じはずだぜ?」

 

エギルの仲間の1人がキリトを擁護する。

そう、彼らはボス戦が始まる前に新刊が出た攻略本を読み込み、ボス戦の情報を頭に叩き込んでいた。

だからベータ時代の情報は皆知っていたのだ。

 

「だ、だったらその情報が嘘なんだ!あの鼠がタダで情報を渡すわけないんだ!」

 

(ま、まずい…!?)

 

この時キリトは焦っていた。自分1人ならと思っていたが、アルゴにまで、いや他のベータテスター達にまで被害が及ぶ。

 

「おい!お前ら!」

 

「ちょっと!あなた達ねぇ!」

 

「黙って聞いてれば!」

 

アスナやミトだけでなくエギルまで反論しようとしている。

このままではまずい。

何とかしなくてはと考えいた時、

 

「はぁ…くっだらない」

隣から心底冷めきったツキノワの声が聞こえた。

その声は決して大きくはなかったが、ヒートアップしそうなこの場においては、とても響いた。

 

sideツキノワ

 

「はぁ…くっだらない」

 

心の底から呆れ返っていた俺の声は思ったより響いており、みんな黙り込んで俺を見ていた。

 

「く、くだらないって何だよ!お、お前もこいつの味方か!?」

 

まだ騒ぐ猿…いや、ブンブンうるさい小バエに対し

 

「うるせぇな、黙れよ虫けら」

 

冷たく、残酷に睨みつけた。

 

「っ!?」

 

その目に恐れ、黙り込んだその男を冷たく見ながら

 

「おい、俺たちにとって情報は命だ。だったらその情報を扱う情報屋にとって、1番大切なものはなんだと思う?」

 

「し、知るかよそんな事!そんな事なんの関係があるってんだ!」

 

呆れた、そんな事も分からないのか。

 

「答えは信頼だよ。どれだけ情報を集めようがそれを買うやつがいなければ成り立たない。それに1層には1ヶ月もいたんだ。もう情報なんて出尽くしてる頃合いだろう。そうなってくると売れる物が無い。だったら無料でもボスの情報を流し俺たちに次の層を開放してもらう。その方がよっぽど自分の利益にも繋がるし効率的だ。何か反論は?」

 

そこまで言い切る。

男も何も言えず黙り込む。

当然だ、俺が言ったのは少し考えれば誰でも分かる正論で間違ってる事なんて何も無い。

ただリーダーを失ったディアベルの仲間たちは冷静さを欠いていた。

 

「それでもそいつがボスのスキルを知っていた事には変わらないじゃないか!?そこはどうなんだよ!?」

 

と言われる。

それに答えようとした時

 

「私も元ベータテスターよ」

 

ミトが突然参戦してきた。

 

「ミト!?」

 

ミトの参戦に驚いていると

 

「弟が頑張ってるのに見てるだけって訳にはいかないでしょ?」

 

俺の頭を撫でながらウインクしてくる。

その手を振り払って1歩下がる。

その様子を優しく笑いながら見ていたミトはディアベルの仲間たちと向き合った。

 

「私はベータ時代第10層まで登ったわ。今回ボスが使ってた刀スキルは、そこで初めて出てきたのよ。ベータ自体のコボルトロードは刀なんて使ってなかった。私たちが対応できたのは、10層で散々戦ってきたからなの」

 

自分たちの仲間であるミトの言葉にディアベルの仲間たちも黙り込む。

そんな沈んだ空気を俺は手を叩いてかき消した。

 

「今回俺たちはベータテストの情報を鵜呑みにしすぎた。その結果ディアベルを死なせた。これで分かったはずだ、俺たちにテスターだのビギナーだの言ってる余裕はない。全員で力を合わせないとまた誰かが死ぬ。これからはしっかり協力しあって進んでいくしかないんだ」

 

「せやな。まだ先は長いんや、今いがみ合っとる場合やなかったわ。ワイが余計な事したせいやな。すまんかった」

 

そうキバオウが謝罪したところで

 

「ところで2層には誰が上がる?俺としてはMVPのこいつらがいいと思うんだが」

 

エギルが俺たちを指さして言い出した。それに対し答えたのはキリトだった。

 

「元々俺たちから名乗り出る予定だった。主街区までフィールドを歩かないといけないから初見のMOBの相手をしないといけないしな」

 

テスターの事を隠す必要が無くなったキリトが遠慮なく言い切った。

俺達も特に反論はなかったためそのまま頷く。

 

「…そうか、なら頼む。だがその前に」

 

ディアベルの仲間である【リンド】がミトに向き合う。

 

「ミトどうするんだ?そのままそいつらと行くのか」

 

そう、ミトもディアベル達とおなじC隊なのだ。

仲間として確認したかったのだろう。

 

「…ええ、彼らと一緒に行くわ」

 

ミトはリンドの目を見ながらハッキリ言いきった。

 

「…分かった。好きにしろ」

 

そう言って去っていくリンド達。

 

「ほなお前ら、頼むわ」

その後に続くキバオウ達。

そのままどんどんと部屋を後にしていき気づいたら俺たちだけだった。

 

「…はぁ、疲れた」

 

そう呟いて振り向くと

 

「「「ツ〜キ〜ノ〜ワ〜(く〜ん)!!!」」」

 

「…はい」

 

鬼が3体程いました。

そのまま正座すると

 

「お前はバカか!バカなのか!」

 

「そうよ!あんな喧嘩売るような事して!かなりギリギリだったのよ!」

 

「もう!昔っからあんたはそうなんだから!お願いだから無茶しないで!」

 

「はい…善処します…」

 

滅茶苦茶叱られました。

解せぬ。

 

「そうだキリト。聞きたいことがあるんだけどちょっと見てもらっていい?」

 

「なになに…?SPECIAL BONUS ITEM ?こんなの見た事も聞いた事もないぞ?」

 

そう表記された内容を確認するとそこには【曲刀:イビルファング】と書かれていた。

 

「曲刀イビルファング…知らないな、俺は初めて見た。ミトは?」

 

「私も初耳だわそんな武器。とりあえずオブジェクト化してみたら?」

 

そう言われとりあえずやってみたら、とんでもない武器が出てきた。

他の曲刀より一回りは大きく、刃は幅広い。

デザインも過度な装飾はなく武骨というより、ただ何かを切る為の武器というイメージを与える。

何よりその剣は重く、必要STRは俺の現在のSTR値のギリギリ下くらいだ。

俺よりキリト向けの剣だなと思いつつもステータスを確認する。

 

「うわ、すげぇステータスだこれ。ほらキリト見てみろよ」

 

「どれどれ…!?な、何だこの武器!?強化可能回数が10回!?しかもこのステータスなら5層までなら全然使えるぞ!?」

 

「はぁ!?何その性能!?見せなさい!?…うわぁ、これちゃんと強化すれば7,8層位まで行けるんじゃない?」

 

キリトとミトが凄い騒ぐ。

なるほどそんなに凄いのかこの武器。

イビルファング…邪悪な牙か、これからはこいつが俺の相棒か。

そう思いながら刃を軽く叩く。

 

「これからよろしくな」

 

そうやってひとしきり騒いでいると

 

「みんな!早く2層に行かないと!」

 

アスナ先輩が俺たちを急かす。

 

「そうですね。早く行きましょう。2人とも!いつまで騒いでんの!?早く行くぞ!」

 

そうして2人を急かし次の層の扉を開ける。

その先に広がっていたのは無限に広がる草原だった。

その光景に

 

「「「「綺麗…」」」」

 

俺たちは全員見蕩れていた。

 

「…ほら、みんな行くぞ。俺とツキノワが前を見るからミトはアスナと一緒に後ろを警戒しててくれ」

 

いち早く立ち直ったキリトが隊列を決めると俺達もそのまま主街区を目指して歩き出した。

 

sideアスナ

 

「ねぇミト、ツキノワ君って昔からあんな感じなの?」

 

私はあの時の事を思い出しながらミトに聞く。

いつも私が見てきた彼は優しくも凛々しく、ちょっとミトに素直じゃない、けど姉想いの男の子だった。

だからあの時のあんな彼は初めて見たし少し怖かった。ミトは私の話を聞くと少し気まずそうに答えてくれた。

 

「まあ昔からそうよ、あの子は怒ると淡々となるのよ。元々あまり他人に興味を示さない子だし表向きは普装ってたから。よく言えば八方美人って感じかな」

 

(そうなんだ、じゃあ私と仲良くしてくれるのも…)

 

と考えていると

 

「ねぇアスナ、初めて家に来た時のこと覚えてる?」

 

突然ミトがそんな事を聞いてきた。

 

「?うん、覚えてるよ。ツキノワ君に会ったのもその時だし」

 

そう、彼と会ったのはその時が初めてで、それ以来の付き合いだ。

 

「そう、他人に興味を示さないあの子が自分から関わってきたのはあなたが初めてなの、だから…」

 

そう言ってミトは一歩前に出ると私と目を合わせる。

 

「だからあの子の事を信じてあげて。あの子は、優月は明日奈と仲良くなりたくて、あなたを慕ってるのよ?今まで明日奈に見せてきた優月は全部、優月の本当の気持ちなの」

 

その言葉に思わず優月君を見る。

キリト君とふざけながらも周囲を警戒いるその背中は大きく、頼もしく感じられた。

 

「それにしてもそんな事気にするなんて、もしかして明日奈、あなた…」

 

ニヤニヤしながらこっちを見るミト。

その先の言葉を想像し、顔が赤くなる。

 

「そ、そういうのじゃないの!?これは… あれよ!?もう1人の姉としての心配よ!!そう、心配なの!!」

 

慌てて取り繕うも未だにニヤケ顔が止まらないミトに対し

 

「もう!知らない!」

 

と先を歩く。

 

「あ、待ってアスナ!?」

 

慌てて追いかけるミトをさらに突き放すように走る私、そのまま男子2人も追い抜かし、

 

「ほら!街まで競走よ!負けた人は何か奢りね!」

 

そう言い残し走り出す。

 

「「「アスナ(先輩)!?待って!!」」」

 

慌てて追いかけてくる3人を見て

 

「アハハハハハ!!」

 

心から笑う。

こんな事になってるけどそれなりに楽しくなってきたと思う。

私達の戦いは始まったばっかりだ。

でも今だけは楽しもう。

そう晴れ渡った心で思う私なのだった。




という訳で1層突破です。
今更ながら彼のプロフィールを出します。

プレイヤーネーム:ツキノワ
本名:兔沢優月
年齢:14歳
身長:165cm
体重:50kg
好きな物:肉料理、甘い物
嫌いな物:茹でたor煮た卵、トマト、虫全般
特技:料理、喧嘩
弓道部所属の中学2年生。周りからはよく大人っぽく見られる。勉強は1桁をキープしている秀才。運動神経は姉よりいい。実は格闘技をやっていて喧嘩も強いがあまりしない。だが大切な人達を守る為ならなんだってする。

好物に関しては自分の好き嫌いで決めました。
それではありがとうございました。

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