ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

91 / 98
それではよろしくお願いします


西帝国編第一話

side優月

 

メディナが冒険者を連れて失踪してから数日。

未だ手がかりは掴めずにいた。

俺はアスナ先輩と一緒に、西帝国にいた。

 

「この辺りね、魔獣の情報があったのは」

 

「はい。早めに片付けて、情報収集の時間を長めにとりしょう」

 

「…心配してるんだね、メディナさんのこと」

 

心配…というより、後悔かもしれない。

確かにメディナのやり方はやりすぎだと思うし、俺自身間違ったことは言ってないと思っている。

だが、やはり言い過ぎたのは事実だ。

メディナのことを理解しようとせず、ただ頭ごなしに否定しただけ。

 

「…大丈夫。大丈夫だよ、優月君」

 

「アスナ先輩…」

 

「大丈夫、会えるよ。会ってちゃんとお話しよ?私もそばにいてあげる。何があっても、私は優月君の味方だから」

 

「…ありがとう、先輩」

 

先輩の優しさと温かさに、ホッとしていると、魔獣の声が聞こえてきた。

 

「…先輩、行きましょう」

 

「うん。こっちだね」

 

俺達は急いで声の方へ移動して、魔獣を討伐した。

割と早く終わった討伐任務の後、俺達は周辺で聞き込みを行った。

だが大した収穫はなく

 

「知れたのは、【ベクタの迷子】の西帝国バージョンか」

 

特に気になる情報も無かった俺は、少し肩を落としていると

 

「ヒャア!ゆ、優月君!」

 

突然先輩が飛びついてきた。

びっくりした…何事!?

 

「せ、先輩!?どうたんですか!?」

 

「お願い…手を繋いで帰ってくれる…?せ、戦闘中は離すから!」

 

「それはいいですけど、どうしたんですか?」

 

「だって!お化けがいるかもしれないんだよ!?」

 

…もう、相変わらずお化けは苦手なんだな、アスナ先輩。

仕方ない…さっきのお返しだ。

 

「大丈夫…俺がいますから。俺が守りますよ」

 

そう言って、俺は強く先輩の手を握った。

 

「…うん。ありがとう、優月君」

 

そのままアスナ先輩は、まだ西帝国での捜索を続けるらしく、シノンとリーファと交代する形で、俺は対策本部に戻ったのだった。

 

outside

 

少し日にちが経ったが、未だにメディナの手がかりは無く。

 

「アリス、どうだった?」

 

「…いえ。なんの手がかりもありませんでした」

 

優月は執務をしながら、続報を待ち続けた。

 

「ユヅキ、ちょっといい?」

 

「シェータ?どうした?」

 

話しかけてきたのは、シェータ=シンセシス=トゥエルブ。

最優先度を誇る神器【黒百合の剣】を使う、生粋の人斬り。

その無口さから、【無音】とすら呼ばれている女性騎士だ。

 

「巡回中の近衛兵が、カラントを見つけたって。ついてきて欲しい」

 

「了解。行こうか」

 

「…私も同伴していいでしょうか?」

 

恐らく、じっとしてられなかったのだろう。

アリスがついて行きたいと言い出したことを、優月は少しだけ悩んだが、これを同意。

3人でカラントを斬りに行くことに。

 

「魔獣を討伐した後は、また周辺住民から話を聞きましょう」

 

「彼女のこと、心配?」

 

アリスの言葉に、シェータが小さく呟く。

アリスは頷くが、同時にただ心配しているだけでは無い。

アリスの一番の懸念は…

 

「ハァシリアンか」

 

「はい。もしあの男の誘いに乗っていたら…」

 

「最高司祭を甦らせるのに、協力するかもってことか」

 

優月は苦い顔で、一番嫌な可能性を口にする。

もし蘇られたら…全てが水の泡と化す。

 

「…それの何がいけないの?」

 

「…え?」

 

シェータの何気ない一言に、アリスが呆然と呟いた時、魔獣の鳴き声が響き渡る。

声の方を確認すると、ハリネズミ型の魔獣が数体、出現していた。

 

「…お話は一旦やめようか。行くぞ!飛んでくる針に注意しろ!」

 

優月は直ぐに飛び出して、近くの魔獣を斬りつける。

だが踏み込みが浅く、深手とはならなかった。

 

(クソ…。この針、邪魔くさいな…!)

 

優月は直ぐに針を切り落とすが、直ぐに生えてきてしまい、意味は無いと判断。

その時、魔獣の体に力が入るのを見て取った優月は、次の行動を予測した。

 

「針飛ばすぞ!防御!」

 

「クッ!…シェータ殿!?」

 

優月とアリスがガードする中、シェータだけが切り払いながら進み、無防備となった魔獣を一突きで倒した。

 

「マジかよ…!?シェータ!しゃがめ!」

 

シェータの背後から攻撃しようとした魔獣を、優月は刀を伸ばして貫く。

そのまま刀を手元戻すのではなく、自分の体を近づけるように元の刀身に戻して、力ずくで薙ぎ払う。

 

「スゥ…ハァ!」

 

そのままソードスキル【緋扇】で、魔獣を倒すと、今度はアリスが前に出る。

 

「ハァ!」

 

【金木犀の剣】の耐久値を利用して、強引に距離を詰めると、【ホリゾンタル·スクエア】で魔獣を倒した。

 

「よし!シェータ、最後の一体任せていいか?俺とアリスはカラントを斬る」

 

「ん。お願い」

 

優月たちは役割を分担して、無事にカラントを斬ることに成功したのだった。

 

sideアリス

 

「…お疲れ様です」

 

「おう。シェータも、お疲れ様」

 

「それじゃ私は、【西の峡谷】の警護に向かうから」

 

【西の峡谷】とは、西帝国最西端だ。

…正直、ここに警護はいらない気がしますが…ハァシリアンの件もある。

1人は置いておく必要があるかもしれない。

そう考えながら私は、シェータ殿を引き止め、さっきの言葉の意味を尋ねていた。

 

「最高司祭様が何をしようとしていたのか、騎士長から聞いて知った。実際にこの目で見たわけじゃないからなんとも言えないけど、騎士長の言葉なら信じられる。でも私は…最高司祭様が、完全な悪だとは思えない」

 

「それは…何故ですか?」

 

私の問いに、シェータは神器【黒百合の剣】を抜くと相変わらずの眠そうな顔で、小さく呟く。

 

「この剣は、暗黒界に咲く黒百合を剣に変えたもの。その時こう言ったの」

 

『この剣は、あなたの魂に刻まれた呪いを、形にしたものよ。性質遺伝変動数値が生み出した、殺人衝動という名の呪いをね。斬って斬って、斬り続けなさい。その血塗られた道の果てにのみ、あなたの呪いを解く鍵がある…かもしれないわ』

 

なんともあの方らしい、残酷で冷たく、そして僅かながらに優しく暖かい言葉だ。

 

「私はその意味を考え続けながら、生きていくことになった。それがいいことなのか、悪いことなのかは分からない。でも最高司祭様に与えられた物も、たしかに存在する」

 

そしてシェータ殿はこう締めくくった。

もし蘇るなら、なぜあんな言葉を残したのか。

なぜ望み通りに、罪を犯した自分を眠らせてくれたのか…と。

シェータ殿の話を聞きながら、私はこの【金木犀の剣】を貰った時のことを思い出した。

 

『この剣は不朽の存在とされる、世界最古の金木犀をリソースにしたもの。あなたが信じ続ける限り、この剣は何者にも斬られない。あなたなら、この剣を信じ続けられるでしょう?』

 

だがあれは、私たちを騎士人形として使うために、優先度の高い武器を与えたに過ぎない。

あの人に情など、僅かにも存在するはずが無い。

 

「…シェータ殿は、最高司祭様が蘇ったら、再び彼女に与すると?」

 

「分からない。その時私の魂が何を求めるかは、私自身知る由もないこと。そしてそれは、どの整合騎士も抱える問題。…あなた達以外」

 

そう、私たちはそれを知った上で、最高司祭様に逆らうと決めた。

いや、ユヅキはそもそもあちらの人間だ。

そして私たちには未だに、敬神モジュールが埋め込まれている状態。

今私たちを繋ぎ止めているのは、整合騎士団という集団への忠誠心だけ。

私たちは、薄氷の上を歩いているのだと、再確認させられた気がしたのだった。

 

side優月

 

西の峡谷に向かうシェータを見送りながら、俺はこう思っていた。

…シェータって、こんなに喋るんだ。

いや、だって…【無音】とすら呼ばれるほどの無口な人だぞ。

そんな人がこんなにペラペラと喋るとは…実は結構お喋り?

 

「…なんというか…意外に色々考えてたんだな、あの人」

 

「若干失礼な言い方ですが…そうですね。彼女の言葉は正しいです。私たちは迷っている。何が正しく…一体何のために、私たちの力は存在するのか」

 

「…俺は、その迷いを抱く余地すらないよ」

 

その言葉にアリスは、ハッとしたような顔をする。

だがその問題は、既に乗り越えた。

 

「なぁ、アリス。アリスはどうしたい?整合騎士とか、作られた存在だとか…そういうのは一旦置いといてよ。アリスって女は、どうしたいんだ?」

 

「私が…アリスがしたいこと…」

 

アリスが難しい顔をして、考え込み出す。

それを黙って待っていると、恐る恐る口を開いた。

 

「私は…人界の民を兵器にしてしまう、そんな計画は許せない。それゆえ、最高司祭様復活など、決して認められない。ですがそれは…」

 

「作られた騎士の意志か、アリスの意志か分からない…と言いたいのか?」

 

「はい…」

 

「ばーか。どんなアリスでも、アリスには変わりねぇよ」

 

俺はアリスを軽くデコピンしながら、カラリと笑う。

 

「どんな私も私…?」

 

「騎士のお前も、ユージオが取り戻したいお前も、同じアリスって女の子だってこと。わざわざ区別するから、ごっちゃになるのさ。お前が見て、聞いて、感じたことが大事なんだぜ?」

 

そう言って、俺はアリスの肩を叩く。

 

「さ、聞き込みと行こうぜ」

 

結局聞き込みは、大した成果は上げられず、俺たちはセントリアに戻るのだった。




それでは失礼します。
ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。