ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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それではよろしくお願いします。


西帝国編第三話

side優月

 

俺たちはミルディア平原の湖畔まで来ていた。

そこで再び、カラントを守る冒険者に出会った。

 

「なんだお前ら」

 

「悪いがその花を斬らせてもらう」

 

キリト…そんなバカ正直に言わなくても…。

案の定抵抗されるが、その後ろでこっそりとサチが神聖術の詠唱を唱えていた。

 

「…ディスチャージ!」

 

サチの発動した神聖術が、カラントを焼き尽くした。

おぉ…ナイスコントロール。

 

「サ、サチ!?当たったらどうするのですか!?」

 

「大丈夫。絶対に当たらない…そのつもりでやったから」

 

「つもりって…」

 

アリスにはまだ分からないだろうが、この世界ではイメージ力がものを言う。

つまり、当たらないというイメージが強いほど、神聖術の精度もあがるということだ。

やはりここでも、カラントに実る実を集めていたらしいが、その目的は知らされていないらしい。

 

「お兄さん?」

 

そこへいつもメディナと一緒にいた、冒険者の女の子が近づいてくる。

 

「メディナ殿の居場所を知りませんか?」

 

「知らない人に教えるなと、命令されています」

 

「メディナさん…この子にまでそんな命令を…」

 

アリスの質問にそう返事をする女の子に、アスナ先輩が痛ましそうに呟く。

 

「俺たちは、友達のメディナに会いたいんだ。教えてもらえないか?」

 

「友達…お兄さんは、メディナ様のお友達ですよね」

 

おや…風向きが変わってきたぞ…?

 

「…私たちは砦にいます」

 

「お、おい!?」

 

「知らない人ではないので、命令には背いていません」

 

仲間の静止を無視して、俺たちに情報を教えてくれた。

彼女はメディナの笑顔が見たくて、わざわざ教えてくれたのだとか。

本当にいい友達だな。

彼女と別れてから、俺たちはやることを確認する。

 

「砦か…。ミネルダの岩場に使ってない砦があるな」

 

「恐らくそこでしょう」

 

「彼女のためにも、メディナとちゃんと話そう」

 

俺たちはすぐに砦に向かったが、案の定門前払い。

どうするかと思っていたところに、村からの納品があるらしく、俺たちはそれを利用することに。

しかしそこまでしても、かなり怪しまれた結果、キリトがかなり強引に入り込むことに。

 

「まさかここまでとは…」

 

「彼らは…全員冒険者なのですか?」

 

「多分…」

 

冒険者がこんなに居たとはな…。

 

「お前たちに問います。ここにメディナ殿がいるはずです。どこですか?」

 

「貴様らに答える義務は無い。立ち去られよ」

 

「メディナ!いるんだろう!」

 

「友達が来た。そう伝えてくれませんか?」

 

「救世主様に馴れ馴れしいぞ!」

 

アリスやキリトやユージオがそう言うと、冒険者たちが苛立った様子で詰め寄ってくる。

だがそれを、メディナ自身が止めた。

 

「待て!謁見を許可しよう。その者たちをこちらへ」

 

そう言うと、すぐに道を開けてくれた。

…お山の大将だな、ありゃ。

 

「…悪ぃ、3人とも。任せていいか?また余計なこと言いそう」

 

「…分かりました」

 

「キリト、私たちも村にいるね」

 

「分かった」

 

そう言って俺たちは、その場を離れてキリトたちの帰りを待つことに。

 

「…謝らなくてよかったの?」

 

「今じゃない。今は届かない。…そんな気がしたんです」

 

アスナ先輩の心配そうな声に、俺はそう返すことしか出来ず…そして、戻ってきたキリトたちの様子を見て、失敗に終わったのだと理解した。

 

outside

 

「…そう、メディナがそんなことを」

 

「やっぱりメディナが指示を出して、それを遂行するために、あんなマネをしてたのね」

 

サチとリズベットが、冷静に話をまとめる。

 

「なんだか…信じられないよ…」

 

「根はいい人だと思ってたのに…」

 

その一方でリーファとシリカは、悲しそうに呟く。

 

「メディナはやっぱり、あのハァシリアンとかいえやつについたのね…」

 

「メディナ…バカなことを…」

 

「あいつは、力の使い方を間違えた。…第2のアドミニストレータの誕生ってわけだ」

 

シノンとミトと優月が、どこか冷たい声でそう呟く。

 

「…でも、今は止められない…私たちは、他にもやるべきことがある。だから引いたんでしょ?」

 

「ああ、雷を止めないとな。ところでそっちは何か分かったのか?」

 

キリトたちがメディナと話してる間に、優月たちは雷や竜の伝承を調べていた。

 

「やはり西の守護竜とみて間違えなさそうだが、それ以上はなにも」

 

「ただ、ラウバル緑地にあるグリフォアの町に、落雷があったらしいの」

 

「よし、ならそこに向かおう」

 

その町に身向かって、情報収集を続け一行だが、大きな成果は無く、分かったのは優月の言っていた竜の伝承はかなり廃れていることと、西の峡谷の近くにいる老人が、細かい事情を知っている可能性がある、ということだけだった。

 

「一度、竜の伝承を再確認しましょう」

 

「ええっと確か…『西の峡谷に住みし竜は、雷を自在に操るという。竜はこの土地を愛し、ひとたびこの地を穢すものが現れれば、怒りとともに雷を落とし続けた。やがて人々は竜を敬い、竜もそれに応えた。守護者となった竜は、峡谷で人々を見守り続ける』…だっけ?」

 

「そうですね。…やはり、雷を落としているのは、竜とみるべきですね」

 

「そうね。早く老人の元に向かいましょう」

 

西の峡谷に向けて進み始めた一行だが、橋が壊れていて、それを直すよう依頼された職人も、依頼した貴族が金をケチったらしく、材料が手に入らないと相談を受ける。

 

「仕方ない、俺たちが集めるよ」

 

そう言って材料をかき集め、どうにか橋を再建してもらい、やっと西の峡谷の手前に位置する、ヴァリンド台地群に辿り着いた。

 

side優月

 

「ここまで来ると、雷そのものが見えるな…」

 

「はい。すごい落雷…」

 

「明らかに異常ですね…。昔、おへそを取られるよって、おじいちゃんから言われました…」

 

シリカの言葉に、懐かしさを覚え、思わず小さく笑う。

しかしそんな空気を、

 

「みんな!あれ!」

 

リズベットの緊迫した声が、切り裂いた。

酷く傷ついた鎧を着た男が、ふらつきながらこちらの方へ歩いてくる。

 

「どうした?大丈夫か?」

 

「さ、触るな…!反逆者が!早く仲間を…呼びにいかなくては…!」

 

反逆者…?

こいつもしかして…

 

「あなた…冒険者ですか?」

 

「さ、され!さもなくば斬る!」

 

そう言って剣を構える男を見て、思わずため息が出る。

 

「すっかり敵判定か…」

 

「メディナ殿の指示があった以上、仕方の無いことでしょう…」

 

「助けを呼びに行くと言っていたが、一体何があった?」

 

「そんな身体じゃ、助けなんて呼べないよ!」

 

キリトとサチの言葉に全く答えず、頑なに俺たちを突き放そうとしてくる。

 

「…あなたは、魔獣の討伐を命じられ、しかしそれがこなせなかった…そういうことですね」

 

「アスナ先輩…?」

 

突然先輩が一歩前に出て、冒険者と話を始めた。

一体何をする気で…?

 

「取引しましょう。あなたたちの代わりに、私たちがその魔獣を倒すわ。居場所を教えて。そうすれば怪我の治療もする」

 

「…教える!だから仲間を助けてくれ!」

 

…流石女子校育ちの、心理戦のプロだ。

こういう相手を妥協させるのは、本当に上手い。

俺がやっても、ただの圧力で押し切るだけだから、こんなスマートには出来ないや。

サチの神聖術で治療された冒険者に従い、たどり着いた先には、体中にビッシリと苔を覆った、デカいカエルが。

 

「…キモ」

 

「ボヤかないで。行くわよ!」

 

俺たちは一気に、そのカエルに突撃する。

相手はデカくてもカエル、跳躍力は高く、それなりに離れていたはずの距離も、直ぐに詰めて来た。

 

「っ!?回避!」

 

俺たちは散開して、何とかその突進をやり過ごす。

その横から、俺とキリトが挟み込むように斬りつけるも、ぶよぶよした肉に阻まれて、上手く剣が通らない。

 

「こいつ…!」

 

「ある意味頑丈だな…!」

 

「「スイッチ!」」

 

俺とキリトの後から、ミトとリーファが突撃するが、それも同じ結果に。

 

「たぁぁぁぁぁ!」

 

その隙に、リズが正面からハンマーで殴るが、それも通らない。

 

「何よこいつ…感触が気持ち悪い…!?」

 

「リズさん!?避けてください!」

 

カエルが体を起こして何かを…まさか!?

顎を叩きつける気か!?

 

「リズ!動け!」

 

「嘘…間に合わ…!?」

 

「リズゥゥゥゥ!!」

 

咄嗟にキリトが割り込んで、全身でそれを受け止め支える。

 

「グ…グガァァァ!」

 

「き、キリト!?」

 

俺は直ぐにキリトの元へ走って、支えようとする。

その反対側では、ユージオが駆け出して来ていた。

 

「ユヅキ!合わせて!」

 

「…っ!おう!行くぞ!」

 

「「ハァァァァァァ!!」」

 

俺とユージオが同時に、カエルの顎をかち上げて、少し浮かせる。

その僅かの隙間を、シノンの矢と、サチの神聖術が狙撃する。

 

「シッ!」

 

「ディスチャージ!」

 

さらに浮かされたカエルの体に、今度はアスナ先輩とミトの追撃が入る。

 

「ミト!お願い!」

 

「行くわよ…そりゃぁぁぁぁぁ!」

 

「フゥッ!!」

 

顎を強く撃ち抜かれたカエルは、大きくのけぞり、ひっくり返りそうになる。

しかしあと少し留まられてしまい、ダメかと思った瞬間、2つの影が駆け抜けた。

 

「シリカちゃん!合わせて!」

 

「はい!行きましょう!リーファさん!」

 

体を支えていた2本の後ろ足を、リーファとシリカが斬り、ついにひっくり返るカエル。

よし、ここだ!

 

「全員、総攻撃!一気に畳みかけろ!」

 

こうして俺たちは、カエルの魔獣を袋叩きにして、何とか倒したのだった。

 

outside

 

カラントから出た魔獣を倒した彼らだが、その前には助けた冒険者たちが立ち塞がっていた。

 

「ったく、何してんだか…」

 

「今斬らないと、また同じことの繰り返しだからな」

 

優月とキリトが一歩前の出て、カラントを斬りにいこうとした時

 

「帰りが遅いと思えば…一体なぜその者たちといる」

 

後ろからメディナが現れた。

突然のメディナの登場に、全員が驚いていると、冒険者たちが説明を始める。

 

「わ、我々の相手をしていた魔獣が、想定外に強く…!」

 

「怪我をしたものに退却させ、助けを呼ばせたのですが、代わりに反逆者たちが…」

 

「助けてあげたのに、随分な言い草ね!」

 

「仕方ないよ。メディナ、怪我をした人なら治療したから、大丈夫だよ」

 

あまりの言い方にリズが起こるが、サチがそれを宥めつつ怪我人の治療は済んでいることを教えるが、メディナはそれを無視する。

 

「…」

 

「ちょっと、無視はないんじゃない?」

 

「…もう、あなたたちとは関係がない」

 

シノンの言葉にやっと、反応を示すメディナにキリトが近づいて話し出す。

 

「メディナ、このカラントを斬らないと、また魔獣が発生する」

 

「ああ、分かっている」

 

「メディナはオルティナノス家当主として、人々を導き、民を救うんじゃなかったのか?」

 

「今もそのつもりだ。カラントが魔獣を発生させる度に、冒険者に対応させている。カラントとは、最高司祭様を復活させるための触媒、そしてカラントがつける生命の実は、最高司祭様の命の源」

 

そしてそのためなら、どんな犠牲が出てもやむなしと、メディナが言う。

 

「…もういいだろう。そこをどいてくれ」

 

「メディナ…」

 

キリトが近づこうとした瞬間、メディナが剣を抜き、キリトを斬りつけた。

 

「ガハッ!?どう…して…!?」

 

「人ではなく、最高司祭様を殺した大罪人なら、禁忌目録に違反しない」

 

その言葉を受け、キリトは完全に認識を違えてしまったのだと悟った。

サチが慌てて手当する中、今度はアリスとメディナが言い争う。

 

「メディナ殿!一体どういうつもり…」

 

「私の盾となれ!」

 

あろう事か、メディナは冒険者たちを盾にした。

 

「アリス様。…そして、ユヅキ様。あなた方も早く目を覚ましてください。最高司祭様は、公理教会の頂点、この人界を救う、ただ1人のお方」

 

「それは違う!あの方はこの世界の人々を苦しめようとしている」

 

優月はメディナの言葉を無視して、成り行きを見守ることに。

 

「一体なんの証拠があるのです?私は閉ざされた最上階で、確かに真実を見たのです」

 

「…真実?本当に?」

 

ここで初めて、優月が口を開いた。

 

「お前が見た真実とやらは、一体なんだった?」

 

「なんだっただと…?キリトが最高司祭様を貫いたところだ!」

 

「…ああ、確かにそこは真実だな。…そこだけを見ていればの話だが」

 

どこか呆れたような口調で、たんたんと話す優月に、メディナは少し圧され出す。

 

「そこだけ…?」

 

「その前までを見てないだろ?例えば…300人の人間を武器に変えて作った、剣の自動人形とか」

 

「…え?」

 

「…お前が見た真実…一体誰がそれが全てだと言った?ハァシリアンか。一部始終全てを見た訳でもないのに、真実を見たなんて口にするな。お前が見たのは…ただの一部分に過ぎない」

 

それだけ言うと、また優月は黙り込む。

次に話し出したのは、アリスだ。

 

「…あなたが何を見たにせよ、人界に魔獣が解き放たれ、それを野放しにする行為は間違っています!あなたはそれほどにまで、武功を立てたいのですか!」

 

「アリス様。あなたは今、何を信じ、なんのために戦っているのですか?」

 

「それは…!?」

 

その言葉はアリスの…いや、ほとんどの整合騎士にとって突き刺さる言葉だった。

今まで最高司祭を信じて戦ってきた彼らにとって、今の状況は心の支えを奪われた状態だ。

 

「あなたに分かるはずがない…。完璧で強く美しいアリス様に、地を這いつくばってきた私のことなんて、分かるはずがない!何より…最高司祭様に愛されてきたあなたたちに、愛されなかったものの痛みなんて、分かるはずがない」

 

「それは違います。あの方は私たちを、ただの道具として利用してきました。今、あなたが冒険者たちを利用しているように」

 

その言葉が意外だったのか、メディナは驚いたような顔で、反芻した。

 

「私が…利用している…?」

 

「あなたは目的を果たすために、仲間の怪我すら気にとめず、盾にするのも厭わない。最高司祭様も、私たちを手駒として利用してきました。今のあなたは…まるで、最高司祭様みたいです」

 

「…なんと言われようとも、私はオルティナノス家の名誉を取り戻す。それだけです」

 

その時、2人のほんのわずかの隙をついて

 

「システムコール…」

 

サチが詠唱を終わらせようとしていた。

だがそれより早く、メディナが一手早く動いた。

 

「皆の者!武器を捨て、花を守れ!死んでも離れるな!」

 

メディナは冒険者に花のすぐ側に行かせて、花を守るように命令した。

 

「こうすれば、あなたたちは攻撃出来ないでしょう」

 

「うっ…!?」

 

「サチ、やめて。…大丈夫よ」

 

サチは詠唱を止めて、一歩下がった。

その時、一際激しい落雷が落ちた。

 

「…どんどん落雷が酷くなってきたわね」

 

「シェータさん…」

 

「…キリト、これ以上は…」

 

「…今は見逃してやる。立ち去れ。さもなくば…今から冒険者たちに、自分を傷つけるように命令する」

 

「その必要はねぇよ」

 

その時、優月が再び口を開いた。

その事に、背を向けていたメディナは、不思議そうに振り返る。

 

「どういう事ですか?」

 

「もう終わった」

 

「はぁ?何を言って…」

 

メディナが言い終わるより早く、突如カラントの下から太い何かが飛び出して、カラントを貫いた。

 

「なっ!?これは…!?」

 

「魅せろ、【舞姫】」

 

その太い何かは形を変え、花びら状になったかと思えば、カラントの内側から一気に飛び出して、カラントを破壊した。

その様子を見て、メディナはやっとその正体に気がついた。

 

「まさかこれは…あなたの神器!」

 

その正体は優月の神器【桜刀:舞姫】だった。

メディナと話している間に、地面を貫き下からカラントを破壊したのだ。

 

「さてと…ここは斬ったが、メディナ。お前に頼みがある」

 

「…なんですか?」

 

「カラントを斬らないが故に発生した魔獣、全部お前たちが責任もって片づけろ。いいな?」

 

「…承知した」

 

「メディナさん。…無茶しないでね」

 

「…余計な世話だ」

 

こうして彼らはこの場を離れて、西の峡谷を目指すことになったのだった。




それでは失礼します。
ありがとうございました。
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