ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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それではよろしくお願いします。


西帝国編第五話

outside

 

魔獣を倒した4人は、すぐに先行組を追いかけた。追いついた先では、既にカラントが斬られていた。

 

「遅くなりました」

 

「おう、嬢ちゃんたち、坊主」

 

「おっさん、状況は?」

 

「キリトの坊主が神聖術で目眩しをして、リネルとフィゼルから預かったっつー眠り薬で市民を無力化して斬ったところだ」

 

「…無茶苦茶するな、キリト…」

 

優月は呆れながらため息をつき、アリスたちは唖然とした様子でそれを聞く。

 

「んで、やはり頭巾の男が種を植えてるみたいだぜ」

 

「頭巾の男…ハァシリアンか」

 

「ああ。奴のしっぽ掴むのに、お前さん方にも協力してもらいたい」

 

ベルクーリはそういった後、隊を二つに分けて、捜索に動いた。

メンバーはベルクーリ、優月、アリス、キリト、ユージオ。

残りはアスナをリーダーに探している。

そして廃城前で、ついに頭巾の男を捉えた。

 

side優月

 

「よぉ、やっと見つけたぜ」

 

「…ディスチャージ!」

 

頭巾の男は俺の声に振り向いて、神聖術を放ってきた。

そんなもの、効くかよ!

 

「そっちがその気なら、俺達も容赦しない!」

 

俺達はその攻撃を防ぎ、俺とキリトで斬り掛かる。

だがハァシリアンを斬る直前、何やら硬い感触があったが、とりあえずそれは強引に斬り裂いた。

今のは…!?

 

「っ!?」

 

慌てて避けた拍子に、頭巾が取れ、その下の顔が顕になった。

 

「もはや頭巾で、顔を隠す気すらないとは…。やはりお前だったのですね、ハァシリアン」

 

そんなアリスの確信めいていた言葉には全く反応せず、ハァシリアンは俺達を怒鳴りつけた。

 

「貴様らァァァァァァァア!!!この大罪人どもめがァァァァァァァァァァァア!!!」

 

「「っ!?」」

 

「その醜く浅ましい剣で、最高司祭様より賜った衣服に傷をつけるとは、許されざる所業!!…いや、しかし…そう悪くはないか。刀の方はともかく、その黒い剣は最高司祭様を貫いたもの。それが私の衣服に触れた…ああ…この汚れた私に、あの麗しき肢体と魂を貫いたものが触れたのだ…」

 

「…キモッ」

 

「何を言ってるんだ…?」

 

キリトは困惑気味に呟き、俺は本音が漏れ出た。

ハァシリアンが何故かトランスしており、あまりにも気持ち悪い。

生理的に無理。

 

「ハハハハハ!褒めて差し上げましょう!服だけとはいえ、私の心意技を斬るとは!流石は薄汚い大罪人ども!何と浅ましく、愚かで身の程知らずか。その蛮勇に答え、是非とも生まれたことを後悔するほどの痛みを味あわせてやりたいところですが…」

 

ペラペラと話し続けていたハァシリアンが突然、口を止めてバカにするように笑う。

 

「生憎、忙しいので相手は出来ません」

 

逃げる気か…!

 

「逃がすわけねぇだろ、変態野郎」

 

「お前、メディナに何を吹き込んだ!冒険者たちに何させる気だ!」

 

俺とキリトがそれぞれ剣を構えるが、それを下らなさそうに見るハァシリアン。

 

「質問に全て答えが返ってくると期待するなんて、やはり大罪人どもは傲慢だな。忙しいと言ったらはずです。それでは、失礼を」

 

だから逃がさねぇっつーの!

俺がすぐに踏み込もうとした瞬間

 

「まあまあそう言わず。お坊ちゃん、ゆっくりしてけよ…!」

 

おっさんが先に動いた。

あと距離を一歩で…!?

 

「シッ!フゥ!ハァ!」

 

だがおっさんの連撃は、ハァシリアンの心意技で防がれる。

だが、それでも無駄だぜ…!

 

「…もしや聞いていなかったのですか?無駄ですよ」

 

そう不敵に笑うハァシリアン。

何を根拠に…?

俺はそう思ったが、おっさんの【時穿剣】の武装完全支配術、【空斬】を防いだことで、その疑問を吹っ飛んだ。

 

「は、はぁ!?」

 

「そんな…!?」

 

あ、有り得ねぇ…おっさんの攻撃を弾くだと!?

しかもあれは未来を斬る空斬だぞ!

正確には斬撃が残るなのだが、それはなんでもいい。

あの心意技、どれだけ硬いんだ!

 

「私の未来を斬るなど、バカげたことを考えますねぇ。ハハハ!実に傑作だ!いいことを教えて差し上げましょう。私の心意の盾は、全ての未来に対しても有効なのです」

 

「心意の…盾だと!」

 

チィ!

どんな原理だ!?

 

「あぁ…親切に話しすぎましたね。まったく、古びた騎士人形との会話は疲れる。ディスチャージ!」

 

しまった!

また…!

 

「では、近いうちに再会を楽しみにしていますよ。騎士人形に薄汚れた大罪人ども」

 

こうして俺たちは、ハァシリアンに逃げられてしまった。

 

「…クソ!」

 

「まさか俺の攻撃すら弾くとはな。未来が斬れねぇとなると、面白ぇじゃねぇか」

 

…おい、おっさん。

何楽しそうに話してんだよ。

 

「…小父様、まさか少し楽しんでいらっしゃいます?」

 

「やっぱりそう思うか?」

 

「そうじゃねぇよ。対策を練らねぇとな、って思っただけだ」

 

俺とアリスの視線に、おっさんはそれでも楽しそうに笑う。

やれやれ…。

 

「あいつの目的は一体…?」

 

「種を集める事じゃないの?」

 

「だとしたら、わざわざ自分が現れる必要は無いはずだ」

 

キリトとユージオの考察を聞いていると、魔獣の鳴き声が聞こえる。

 

「またか…!」

 

「急ごう!」

 

outside

 

「よし。これで片付いたな」

 

一息ついた優月達だが、近衛兵からの通達で、まだ被害が出ていることを知る。

 

「な、なに!?そこは私の領地だぞ!き、貴様!必ずや守り抜くのだぞ!」

 

だがあまりにも傲慢な貴族の物言いに、優月とアリスが怒り出す。

 

「テメェ!誰に向かって言ってやがる!」

 

「騎士長閣下へのその言葉!今すぐ訂正しなさい!」

 

「やめろお前ら!…へーへー、言われなくてもちゃんと守ったやるよ。それが俺の仕事ってやつだ」

 

そんな2人を静止させつつ、ベルクーリは貴族の言葉に、軽いノリで答える。

それが余計に2人を苛立たせた。

 

「小父様!どうしてあの様な者達に、そのような言葉を!」

 

「嬢ちゃん。坊主。それじゃいっちょ行ってくる。また後で合流しよう」

 

ベルクーリはアリス達を、無視するように立ち去る。

そんな姿を困惑気味に見つめるアリスだが、そのアリスにキリトが声をかける。

 

「アリス。俺達も魔獣を倒そう」

 

「…分かりました」

 

「ユヅキ。いけるかい?」

 

「ああ。…さっさと片付けるぞ」

 

優月もユージオに説得され、今は魔獣討伐を優先することに。

それから少しして、やっと片付けた一行は、もう一度合流した。

 

「よし。これでやっと終わったな」

 

「…小父様、先程はなぜ、あの貴族たちにあんな態度とったのです?」

 

合流してすぐ、早速アリスが切り出した。

 

「ああ。ちくいち反応するのも面倒だろ。言わせときゃいいのよ」

 

「だからって言って、あんな態度を許す必要も無い!あんたはそんな軽んじられていい男じゃない」

 

ベルクーリの軽い言葉に、優月はすぐに反論する。

 

「んな事言われてもよぉ。俺はそんなご大層な身分じゃねぇからな」

 

「あんな連中、助けてやる義務がどこにある!」

 

「最高司祭様は、人命を犠牲にする残酷な支配者であり、この世界に神はいないことはわかりました。小父様は一体、この世界で何を信じ、なんの為に戦っているのですか?」

 

優月の叫びと、アリスの迷いに満ちた疑問を受け、ベルクーリは優しく笑う。

 

「まずは…嬢ちゃん。俺はな、この世界を救うことに、なんの疑問も抱いちゃいねぇんだ」

 

「ですがそれは、最高司祭様がお命じになったこと。それではまるで…」

 

「大事な記憶をぶっこ抜かれて、人形であることを強制されていた時と、なんも変わらない…ってか?そう思って、嬢ちゃんは戸惑って分からなくなっている…そうだよな?」

 

アリスの言葉を予測するように話すベルクーリの言葉に、アリスは黙って頷く。

次に優月を見て、ベルクーリは続きを話す。

 

「確かに坊主の意見は正論だ。平民を苦しめて、なんの罰も受けずに生きている貴族たちがいる。そんなことより、真に救うべき人がいるんじゃねぇのか…。俺も、坊主達とほとんど同じ意見だ」

 

「…ほとんど?」

 

ベルクーリのほとんど、という言葉に、優月は首を傾げる。

 

「おっさん…いや、ベルクーリ。あなたの正義はどこにある?」

 

優月のその目は、肩書きを抜きにした、1人の男としての問いかけだった。

故にベルクーリも、その視線をしっかりと受け止める。

 

「俺の正義ねぇ…そう言われると難しんだけどよ。『人界を守れ』。そう最高司祭殿に命じられて、俺はずっとその責務を果たそうとしてきた。だが、最高司祭殿のやり方には、何度も疑問を抱いた。我慢出来ねぇほど苛立ったこともあった」

 

「だったら…!」

 

「だが俺は、あのワガママなお姫さんの願いを叶えてやろうとするのは、嫌いじゃなかった」

 

遮るような優月の言葉を、さらに上から被せて遮るように、ベルクーリが優しくそう呟いた。

 

「今でも憎んじゃいねぇよ。あの人を完全悪とは、捉えきれねぇ。そこは坊主もそうなんじゃねぇか?」

 

「それは…」

 

(確かにそうだ。確かに俺も、最高司祭を巨悪とは認めていても、あの理念、思想だけは否定出来ない)

 

アドミニストレータが大切なのは、己の欲を叶えるためのこの世界。

優月が大切なのは、この世界に生きる人々の自由と尊厳。

己の掲げるもののために戦った…極端な話、そういうことなのだ。

肯定しないけど、完全に否定も出来ない。

それが優月の率直な意見だ。

 

「俺もそうさ。掲げるものが変わった以上、戦わないといけない。それだけさ。それは敬神…何とかが決めたことじゃねぇ。俺自身が決めたことだ」

 

「小父様までシェータ殿と同じことを…何故です?あの人は残酷なシンセサイズの秘儀を、あなたに何度も行った。小父様にとって最高司祭様とは一体何なのですか?私たち整合騎士とは、一体何なのですか?」

 

アリスの苦しみにもがく様な叫びに、ベルクーリは優しく声をかける。

 

「俺は作られた意識か、元々あった意識かなんて、大した問題じゃねぇと思ってる」

 

アリスはベルクーリの言葉に、シェータと話した後、優月と話した時の言葉を思い出した。

 

(小父様も優月と同じことを…。どんな私も私…か)

 

「今あるものが全てだ。俺は何度記憶を消されても、今までベルクーリ·シンセシス·ワンとして生きてきた。たとえこれまで信じてきたものが嘘だったとしても、なんも変わらねぇよ」

 

「それが…あなたの正義…」

 

「だから俺はこれからも守るのさ。か弱い人々や、つくづく愚かな奴らが、それぞれ生きる、この人界をな。そして…今度こそ、あのお姫さまを眠らせてやるのさ」

 

優月はベルクーリの言葉を、しっかりと噛み締めて、大きく息を吐く。

 

(俺はまだ、整合騎士という立場に縛られてるのか…)

 

根付いた意識が中々抜けない…そう改めて認識する優月だった。

 

sideアリス

 

…小父様は全てを受け入れるのですね。

これまでのなにもかもを受め止め、それを是としてこれからも戦い続けるのですね。

 

「坊主は踏ん切りがついたみてぇだな。嬢ちゃんはどうなんだい?嬢ちゃんの意思はどこにある?」

 

「私の意思…」

 

私の意思はどこにあるのでしょうか?

いくら私が思っても、それは私じゃない。

私はただの作られた人形。

 

「私は…アリス·ツーベルクじゃない。作られた人格です。その事実は変えようがない」

 

「そうかよ。でもよ?嬢ちゃんはこの6年を何も無かったと否定できるのかい?」

 

それは…出来ない。

整合騎士見習いとなり、多くの稽古を重ね、この金木犀の剣と出会い、イーディス殿や小父様達と出会い、エルドリエという弟子に出会い…そして、この無鉄砲で自由気ままな男と出会えた。

この6年は、決して無意味では無い。

 

「ただのお人形が、そんなに悩んだり苦しんだりするのか?」

 

その言葉が、私に突き刺さり、つい涙がこぼれる。

そんな私の頬に、優月が手巾をあてた。

 

「…手巾、持ってるのですね」

 

「お前にこっぴどく怒られたからな」

 

そうですね…それもまた、私の6年の一コマですね。

ニヤリと笑うユヅキから、手巾を受け取り、そのまま涙を拭う。

 

「…洗って返します」

 

「はいよ。…なぁ、アリス。俺はお前しか知らない。だから、俺にとってのアリスはお前しかいないんだ。そんなお前を、お前自身が否定するのは、ちょっと悲しいぜ」

 

そう言って笑いかけるユヅキを見て、私はつい嬉しく思う。

私という存在だけを見てくれる、ユヅキの視線が。

 

「…ったく。坊主も大概罪作りだな」

 

「はぁ?何の話さ?」

 

小父様の言葉に、不思議そうにするユヅキを見て小さく笑う。

確かにこの男は、そういう節がある。

なのに公然とアスナ一筋なのは、何故か腹が立つ。

 

「…私はシンセサイズの秘儀により、幼少期の記憶と、大切な友人どの記憶を奪われた。そして騎士となり、そのうえで色んなものを見てきた」

 

醜いものも見てきたし、残酷なことも知ってきた。

自分が作られた存在だと知ったあとでも、私は様々な人と出会い、自分の生き方を考えさせられた。

 

「私は確かに、アリス·シンセシス·サーティとして存在する。人々と関わり、戸惑いながら生きている」

 

私は…とても小さいことに囚われていたのかもしれませんね。

確かに小父様の言う通り、私には私の意思がある。

 

「私はセルカや、この世界の道理によって苦しめられてる人々を救いたい。そして、この世界そのものが最高司祭様や外の者達に揺るがされるのなら、私はその残酷な行為に叛逆したい」

 

それこそが、本当の私が望むことです。

その正義は作られたものでも、命じられたものでも無い。

 

「…嬢ちゃんらしい言葉だな。誰よりも優しく強い」

 

そんな小父様の顔は、とても穏やかなものだった。




それでは失礼します。
ありがとうございました。
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