ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

96 / 98
それではよろしくお願いします。


西帝国編第六話

sideキリト

 

優月とアリスの悩みが解決したところで、俺達も遂に本命に移った。

俺達の前では、落雷が降り続けている。

 

「…よし、行ってくる」

 

俺は銀紫蘭の槍を手に、雷の中に入っていく。

この槍…本当に大丈夫だよな?

 

「キリト!ビビるなよ!心意で負けるな!」

 

「んなニヤニヤ顔で言っても説得力ねぇよ!」

 

優月の無責任なからかいに、ついツッコミを入れるが、ここで俺の緊張が少し和らいだ。

 

「…よし!」

 

必ず成功させる…だから力を貸してくれ、銀紫蘭の槍!

 

「ハァァァァァア!」

 

俺が銀紫蘭の槍を掲げた直後、雷が槍に落ちてくる。

くぅ…重い!

だが止まれないんだ!

 

「…ゼァァァァァァァア!!!」

 

耐えきった俺は、そのまま雷を逆流させ、雷雲を消し飛ばしす事に成功させた。

 

「よ、よし…!」

 

死ぬかと思った…。

 

「キリト大丈夫かい!?」

 

「生きてるな、キリト」

 

「あ、あぁ…。正直死ぬかと思った…」

 

「待ってて。天命を回復させるね。システムコール…」

 

サチの神聖術で天命値を回復させた俺は、そのまま西の峡谷へと入る。

 

「あ、鉱石!?すごく大きいわね…!」

 

リズが地面から飛び出している岩に駆け寄る。

だが俺はその直前、モゾりと動いたのを見た。

 

「リズ!離れろ!」

 

「え?キャ!?」

 

俺は咄嗟にリズに飛び掛り、何とかその場を離れる。

その直後、鉱石の下からかにの爪が飛び出し、地面を抉った。

 

「大丈夫か、リズ!」

 

「え、ええ…///ありがとう…///」

 

リズの無事を確認して、辺りを見渡すと、鉱石を背負ったヤドカニと、虫型の魔獣が俺達を囲んでいた。

 

「ミト、リズ、アリスはカニを!私とシリカちゃんとシノノンは虫!残りは状況に応じて臨機応変に対応して!」

 

アスナの速い決断で、俺達はすぐに戦闘を開始した。

 

「リズ!カニを叩くぞ!」

 

「ええ!行くわよ!」

 

俺は接近してカニのタゲをとる。

攻撃を躱しつつ俺に意識がいった所で、リズとスイッチする。

 

「スイッチ!」

 

「ヤァァァァア!」

 

リズのハンマーが、鉱石を叩き割る。

ここで俺達は再びスイッチする。

 

「スイッチ!」

 

「ゼァァァァァア!」

 

むき出しになったカニを、俺は【ホリゾンタル·スクエア】で切り裂いた。

やはりコイツら、鉱石の下は脆いな。

 

「みんな!カニは鉱石を砕いた下は脆い!そこを狙ってくれ!」

 

「いいでしょう!ユージオ!トドメは任せましたよ!」

 

「うん!任せてアリス!」

 

「OK!優月!追いつきなさいよ!」

 

「そっちこそ!チンタラするなよ!」

 

どうやらアリスはユージオと。

ミトは優月と組んでるらしい。

他のみんなは、4人のフォローか…よし!

 

「リズ!俺達も行くぞ!」

 

「いっくわよー!」

 

俺達も直ぐに参戦して、何とかこの場を切り抜けたのだった。

 

side優月

 

何とか切り抜けた俺達はそのまま進み、ついに最奥の祭壇まで来た。

そしてそこで、ドラゴンの雄叫びを聞いた。

 

「今のって…」

 

「魔獣の比じゃない…!」

 

「全員警戒!気をつけろ!」

 

俺は声を張り上げ、警戒を促す。

空の向こうを睨んでいると、高速で迫る何かを見つけた。

 

「優月くん!来たよ!」

 

先輩の声が聞こえた直後、俺たちの頭上を飛んでいくドラゴンを見て、無意識に体が震えた。

圧倒的存在感…恐怖を通り越して畏怖すら抱かせる、自然の化身。

 

「西の守護竜…ヴァレントール」

 

『汝ら、如何なる理由があって、この地に足を踏み入れた』

 

喋れるのか…!?

俺は驚きつつも、ヴァレントールと向き合う。

 

「雷を止めるためにここまで来たんだ。あんたの原因なんだろ!雷を止めてくれ!」

 

『雷を止める?何故?』

 

何故って…決まってんだろう。

 

「多くの人々が被害にあってる!」

 

「人々だけではありません。獣や植物も…このままでは、この地は焼け野原になってしまいます!」

 

『だから何なのだと、我は問うている』

 

キリトやアリスの言葉も、無情に切り捨てるヴァレントール。

 

『この大地とそこ住まう生命は我、ヴァレントールの所有物に過ぎぬ。故に我が下す選択は、この土地における摂理に等しい。落雷もその一つ…。何者も異を唱えてはならぬ』

 

「そんな…!そ、それじゃあ僕たちはどうすれば…!?」

 

ユージオの戸惑う声に、ヴァレントールは残酷に告げた。

 

『決まっておろう…焼かれよ。それが我の選択に対する、汝らのすべきことだ』

 

ショックを受けたような顔をするユージオだが、直ぐにユージオも反論した。

 

「あなたは人々から崇められ、そして守る存在なのでしょう?だからあなたは銀紫蘭の槍を、人々に与えたんじゃないのですか!」

 

そうだ。

ヴァレントールは己の落雷から守るために、銀紫蘭の槍を用意させたはず。

 

『銀紫蘭の槍…そうか。それを使い峡谷へと入ったのだな。…あの選択が、我の最大の過ちだったか』

 

「過ちなんかじゃない!あんたは間違いなく、人々の守護者だったはずだ!」

 

『我を守護者などという、下らぬ役割で呼ぶな。守護ではない。所有物を維持していたにすぎぬ。だが…それも過去のこと。我は過ちを正す』

 

過ちを正す…か。

 

「ヴァレントール。あんたの目的はなんだ?」

 

『この地を…生命を再び、我の支配下に置き、正しい状態へと戻す。そのための雷だ。破壊により、畏怖と信奉を生み出す。…それこそ、我の選択なのだ』

 

…ここまでだな。

これ以上の言葉のやり取りは無意味か。

 

「そんなこと…させねぇよ。あんたがどんな存在であっても、支配欲だけで命を好き勝手しようとしてる奴を、許す訳にはいかない」

 

俺が刀を抜くと、皆も続いて武器を構える。

 

『その自意識こそが、汝らの種族の欠点なのだ。大いなる力による絶対的な支配…それこそが秩序を形成するのだ』

 

違う。

その先にあるのは秩序じゃない。

ディストピアだ。

 

『さあ、小さき者共よ。覚悟はよいな?…その下等な命を消し炭へと変えてやろう』

 

「来るぞ!戦闘開始!」

 

outside

 

「「ハァァァァァァア!」」

 

「「ゼァァァァァァア!」」

 

「「セリャァァァァア!」」

 

アリスとユージオ、優月とキリト、アスナとミトが一斉に斬り掛かる。

だがその手応えに、全員が顔を顰めた。

 

「かったぁ…!?」

 

「タフすぎる…!」

 

「ミトさん!アスナさん!スイッチ!」

 

「行くわよリーファ!」

 

ミトたちとリーファ、リズがスイッチし、さらにそこへ、シノンの矢とサチの神聖術が衝突する。

だがそれも、その硬い鱗に弾かれた。

 

「どのゲームでも龍鱗は固いって言われるけど、本当だったな」

 

「んな事言ってる場合か、キリト」

 

そんな2人の目の前で、ヴァレントールの前足に雷が溜められる。

 

「ヤバい…!」

 

「全員散開!電撃来るぞ!」

 

2人の指示で一気に散らばった直後、雷が周囲に落ちる。

辛うじて全員逃れたが、その衝撃で辺り一定が土煙に覆われた。

 

「キリト!合わせろ!」

 

「ああ!せーの!」

 

心意によって強化された、刀系ソードスキルの【旋風車】とセルルト流の【輪渦】によって、土煙が一気に払われる。

その先では、2人に向かって右前足を振り上げるヴァレントールの姿が。

 

「「…うっそぉ…」」

 

「2人とも!危ない!」

 

シノンが弓系ソードスキルの【シングル·ショット】で目を射抜く。

 

『ぬぐぅ!』

 

目までは硬くなく、痛みにもがいて体勢を崩したヴァレントール。

そして残された足を目掛けて、アリス達は一気に畳み掛けた。

 

「皆さん!合わせてください!」

 

「「「「「「「はぁぁぁぁぁあ!」」」」」」」

 

全員のソードスキルが、左前足に叩き込まれ、転倒するヴァレントール。

 

「チャンス!畳み掛けて!」

 

「「「「エンハンス·アーマメント!!」」」」

 

「咲け!青薔薇!!!」

 

ユージオの青薔薇の剣が、ヴァレントールの体を氷で拘束する。

 

「乱れ咲け!花たち!!!」

 

「吹き荒れろ!花たち!!!」

 

さらに優月とアリスの桜と金木犀が、ヴァレントールに襲いかかる。

そして

 

「ゼリャァァァァァア!!!」

 

キリトの武装完全支配術が、ヴァレントールを飲み込む。

 

(すごい…これが神器の力。これなら流石に…!)

 

神器四振り分の武装完全支配術を受け、流石のヴァレントールも倒れたと思っていたアスナだが、煙の向こうで動く影に、警戒を強める。

 

「まだ終わってないわ!警戒して!」

 

『小さき者共よ…覚悟せよ!』

 

ヴァレントールは電撃を溜め、ブレスの用意をしていた。

 

「マズイよ!逃げないと…!」

 

「いや、ここは逃げ場はないわ!」

 

リーファの声をリズが否定するが、その声は焦っている。

迎撃以外の選択肢は無いが、ドラゴンのブレスに対して、守りきる自信が無い。

 

(…やるしかない)

 

「リリース·リコレクション!」

 

優月は大きく息を吐き、鞘の中で花びら状にした刃を乱回転させる。

 

「うっ…ぐぅ…!」

 

肉が焼ける匂いと音に、アスナとミトが驚いたように反応する。

 

「優月くん!?何してるの!?」

 

「優月!?あなた手が!?」

 

「キリト…!」

 

「っ!?…手段は何でもいい!全員、優月を守れ!!」

 

キリトの鋭い声に、それぞれの手段で防衛手段に入る。

 

「優月。私の剣に乗りなさい。ヴァレントールの元まで道を作ります」

 

「頼むぞ…!」

 

『滅びよ!』

 

そうしてついに、ヴァレントールのブレスが放たれる。

極太の雷光に、全員が力を振り絞る。

 

「「「「「「ディスチャージ!!」」」」」」

 

「「「エンハンス·アーマメント!!」」」

 

真正面からぶつかり合う衝撃で、峡谷の祭壇が崩壊しそうになる。

そしてその衝撃の中、優月が金木犀の剣の上を駆け抜け、ヴァレントールの眼前に現れる。

 

『何っ!?』

 

「終わりだ…!絶技!【百火桜乱】!!!」

 

バックドラフト現象により爆発的に燃え上がる炎が、ヴァレントールに襲いかかる。

 

『グォォォォォオ!?』

 

そしてヴァレントールは悲鳴を上げ、その炎に焼かれるのだった。

 

side優月

 

「はぁ…はぁ…」

 

俺は倒れ伏すヴァレントールを見ながら、自分の腕の火傷の痛みに、もがき苦しむ。

クッソ…マジでキツイな…この技…!

 

「優月くん!大丈夫!?」

 

「あんた何よあの技…!?酷い…!アスナ!」

 

俺はアスナ先輩から治療をしてもらいつつ、刀を拾い腰に差し直す。

…よし、もう大丈夫だな。

刀の天命は、自然回復させるしかないから、しばらく使えない。

 

「ありがとう、先輩。もう大丈夫です」

 

「…もう!もう!あんな危険な技、使うなら先に言って!」

 

「本当に、無茶苦茶なんだから…!」

 

泣きそうなアスナ先輩と怒るミトにタジタジになっていると、キリトたちの方は、ヴァレントールと話をしているらしい。

俺もそこに行き、ヴァレントールにあることを尋ねた。

 

「…なぁ、ヴァレントール。あんたが本当に恐怖による支配を望むなら、どうして街や村を襲わなかった?」

 

確かにヴァレントールの落とす雷には、誰もが恐怖していた。

だから実際に街に落とし、人々を殺したろうが、ヴァレントールとしても示しがついただろう。

 

『…無論、それも考えた。だが試みる段階になる度に、我の中にかつてはあった何かが、それを拒否した』

 

かつてはあった何か…?

一体なんのことを…?

 

『我に後悔はない。あるのは、不思議なほどの安堵のみ…』

 

ヴァレントールがそれでいいやら、それでもいいが…。

そんな油断がいけなかった。

突然ヴァレントールに向けて、強力な神聖術が放たれ、トドメを刺した。

 

「っ!?なんだ!?」

 

「キリト!上!」

 

サチの指さした先にいたのは、ハァシリアンだった。

あの野郎…どうして!

 

「ハァシリアン!」

 

「あなた、なぜ!」

 

「竜とはこうも脆弱な存在だったのでしょうか?舞台装置としては派手なのに、随分と失望させてくれます。期待外れだがまあいい。僅かながら時間を稼いでくれましたし」

 

時間稼ぎ…だと?

こいつ、何をしていた?

 

「ヴァレントールは敗北を認めていた!なぜトドメを刺した!」

 

「では逆に聞きますが、なぜ生かす必要があるのです?全ての生き物には等しく、幕引きの瞬間が存在する。それに…浅ましい動物風情が人語を話すなど、最高司祭様への冒涜だとは思いませんか?」

 

「冒涜?一体何を言ってるんだ?」

 

「聞くところによると、この守護竜とやらは妙な知識を持ったが故に、最高司祭様を罵ったそうです。この卑しく無価値な肉の塊が、これ以上人界の留まり続けていても意味がない」

 

ダメだ。

こいつの理屈は聞いても意味が無い。

理解できる要素が一つもない。

だから俺は、そうそうに話を切り上げ、本題に踏み込むことにした。

 

「お前、何が目的でここに来た?」

 

「…はて?なんのことでしょう?」

 

「これまでお前は、整合騎士をカラントで縛り拘束してきた。何が目的だ?」

 

「お前たち如き大罪人に、答える必要はありませんね」

 

そうかよ。

だったら…

 

「無理やり聞き出すか」

 

そう言って俺は、刀を抜き構える。

 

「おや?やめた方がいいですよ。今のあなたでは、消耗しきってますから、どう足掻い他も私には勝てませんよ」

 

言ってくれるじゃねぇか…!

俺はハァシリアンの挑発に、わざと乗る形で斬りかかるが、それをキリトに止められた。

 

「優月。…ここは俺に任せろ」

 

そう言ってキリトは、真っ直ぐハァシリアンに斬りかかった。

 

「おや?選手交代ですか?まあどちらでも構いませんよ。どうせ私の心意の盾は破れない」

 

ハァシリアンの言葉通り、キリトは心意の盾を破れなかった。

 

「ほら、言ったでしょう?…とはいえ、邪魔されても困ります。真なる盾に、あなたのお相手を務めてもらいましょう」

 

そう言ってハァシリアンの背後に現れたのは、メディナと冒険者達だ。

 

「それでは、旧友との再会を楽しまれるといい。救世主様。そして…許されざる大罪人よ」

 

本気の殺意と侮蔑を込めた視線で、キリトを睨み立ち去るハァシリアン。

それを追いかけようとするキリトを阻むメディナ。

 

「我が最初で最後の友よ。ここで決着としよう」

 

そう言ってメディナは、冒険者たちに手出し無用と、俺達の侵攻を命懸けで阻むよう指示を出す。

 

「…分かった。メディナがその気なら、俺も本気でやる」

 

そう宣言したキリトは、しっかり夜空の剣を構え、メディナと睨み合う。

全ては、この決闘に委ねられたって訳だ。

そしてついに、2人が戦い出したのだった。




それでは失礼します。
ありがとうございました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。