ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ 作:ネコ耳パーカー
sideキリト
「メディナ!」
「キリト!」
俺はメディナと剣を混じえながら、彼女との出会いを振り返っていた。
俺たちの出会いは、ルーリッド村を出た直後だ。
魔獣に囲まれていたメディナを、俺とユージオは助けようとしたんだ。
「私の名はメディナ!意志を継ぎ、戦う者だ!」
俺達はそのままザッカリアまで進み、そこで別れた。
それからしばらく経ち、俺達は修剣学院で再開したんだ。
あれは…そう、リーナ先輩から、課外授業のお誘いを受けた時に、回復薬を買うことになって、店を目指していた時だ。
「久しぶりだな、メディナ」
「え?…ほんとだ!メディナだ!」
だが再会したメディナは、どこか暗く、旅の時に感じた鋭さは悪い意味で無くなっていた。
そしてそこで、初めてオルティナノスの不評の話を聞いたんだ。
それから…いや、もっと前から、メディナは一人で戦ってきたんだ。
でも、もう違う。
俺が…俺たちがいる。
「メディナァァァァア!!!」
「キリトォォォォォオ!!!」
俺は過去を思いながら、【夜空の剣】を振るう。
俺の縦切りを躱して、放たれる横切りに、俺は剣をあわせて力づくで弾く。
「「ハァァァァァァァア!」」
俺のソードスキルとメディナのソードスキルが、真正面からぶつかる。
そのまま鍔迫り合いながら、俺たちは言葉をもぶつけ合う。
「クッ!負けてたまるか!」
「メディナ!お前はなんのために戦ってるんだ!」
「最高司祭様を復活させ、オルティナノス家を再興させる。ただそれだけだ!それだけが、私の存在意義だ!」
「本当にそれだけなのか!冒険者も何もかもを犠牲にするのか!」
「そうだ!お前ですらどうなってもいいんだ!」
俺はメディナの攻撃を躱し、返す剣でメディナに斬り掛かる。
メディナは鍔迫り合うのを嫌ったのか、俺の腹を蹴って距離をとる。
「クソ!なんで届かない!?やはり私が欠陥品だからか…!」
「違う!それはメディナが、本当の目的を見失ってるからだ!」
「私は何も変わっていない!学院に入った時から…!父を失ったあの時から!」
そう言ってメディナが刀を構える。
この感じ…決めに来る気か!
俺も負けじと心意を込めてながら、こっそりと神聖術唱えて、全力の一撃で迎え撃つ。
だがその直前、メディナの友達が割って入った。
「なぜ…!?邪魔をするなと言ったはずだ!」
「その人は神聖術を唱えていました。攻撃ならば、メディナ様に当たっていたかもしれません」
この子…俺の詠唱に気付いてたのか!?
「そんなことは理由にならない!お前は私に刃向かうのか!なぜお前は、私の命令に逆らう!」
「私は…あなたの友達だからです!」
outside
「ッ!?友…達…」
彼女の言葉に、メディナが呆然と剣を下ろした。
(…そうだ。あの時は命令ではなくお願いだって。でも、いつしかそれが命令になり…そして…)
そんなメディナへ、キリトが声をかける。
「まだ間に合うぜ、メディナ。メディナが本当にしたいことはなんなんだ?こんな風に、人を利用して何かを掴み取る事なのか?」
「私が本当に望むこと…」
--望むように生きなさい、メディナ。私は家の事なんて、どうでもいいんだ。お前が望むように生きてくれたら、それでいい。
メディナの脳裏に、父の言葉が過ぎる。
メディナとて、自分の望みは分かってる。
だがその資格が、もう自分にはない。
「あ〜…メディナ」
そんなメディナに、優月が近付く。
髪をガシガシとかきながら、ゴモゴモする優月に、アスナがそっと背中を押す。
「…先輩…。すぅ…はぁ…。メディナ、ごめん!」
「ユ、ユヅキ様…!?」
優月の勢いよく降ろされた頭に、困惑気味な声を出すメディナ。
「メディナのことを全部否定して、俺の一方的な考えを押し付けてた。お前にも譲れないものがあったのに、それを侮辱した。本当にごめん!」
「ユヅキ様…」
そこへさらに、アリスも近付き、深く頭を下げた。
「私からも謝罪を。あなたの苦しみに寄り添えず、あなたを一方的に悪と断じてしまいました。申し訳ありません」
「アリス様…。いえ、あなた方から見たら、確かにその通りです。…私は自分が完全に正しいとは、今では思えない」
そんな2人の謝罪に、メディナは己を罰するように返す。
「人間は皆、己の正義に従っているだけで、完全には正しくない」
「…アリス様?」
アリスは他の整合騎士には内緒にするよう念を押してから、メディナに自分の過去を打ち明けた。
「…ルーリッド村に、あるお転婆な少女がいました。彼女は神聖術師見習いとして、勉強に励む日々を送っていた。毎日、親友の少年たちにお弁当をたっぷり作って持っていき、2人と食べる安息日を、何よりも楽しみにしていました。ですがある日、少女はある罪を犯し、セントラル·カセドラルへ連行された」
その言葉を聞いたメディナが、有り得ないものを見たかのように呆然と呟く。
「そんな…!?禁忌目録を破ったというのですか!?」
「ええ。…そして少女は大切な記憶を最高司祭様に奪われ、新たな人間に生まれ変わることを余儀なくされました。それが…アリス·シンセシス·サーティ。最高司祭様に作られた、甚大な力を持った、整合騎士という名の兵器」
「…」
あまりにも衝撃的な事実に、メディナは何も言えず、ただ息だけが漏れた。
「だからこそ私はあなたの接触を見た時、彼らと自分がどうしても重ねてしまった。故に、あなたの行動を咎めてしまったのかもしれません」
「…私こそ。そんなことも知らず、あなたに酷い言葉をかけてしまった」
申し訳なさそうなメディナの言葉に、アリスは小さく首を振り、穏やかに声をかける。
「いいえ。それにあなたと関わったことで、私はより自分のことを見つめることが出来た」
偽りの人格と行動理念を植え付けられ、大切な記憶を抹消する…そんなアドミニストレータの所業の残酷さは、計り知れない。
「整合騎士の身分にならなければ、出会えなかった人達や、得られた絆、失った代わりに手に入れたものもある」
そう言いながら、アリスは優月の肩を叩く。
驚いた顔をした優月だが、直ぐに小さく笑い、アリスの肩を叩く。
「私はたとえ、この人格が偽りであったとしても、今の人格を否定したくない。そんなことは小さいことなのです」
「あなたは…最高司祭様を許すのというのですか?大切な思い出も、自分という存在も奪われたのに」
「ええ。私が過ごした時間、記憶、築いた絆は、作られた偽りなどではない」
それを否定することは、整合騎士そのもの否定だと、アリスは告げる。
そして、メディナの望む道を進めばいい…そう告げる。
それは突き放すのではなく、優しく背中を押し出すような言葉だ。
「私の…望む道…」
「メディナ。俺はまた、メディナと一緒に歩きたいよ」
迷うメディナに、キリトが声をかける。
「キリト…」
「メディナがそれを望まないなら強要はできない。でも諦めたくないんだ。メディナは大切な仲間だ!今でも信じてる!」
「…本当に…バカな奴」
(…なぜお前は、私の望みを理解しているんだ?)
メディナの望みは家名を取り戻すことでも、偽りの軍勢を率いて賞賛されることでもなかった。
(お前からの信頼を受けて、共に戦うことだたっんだ)
side優月
その時、突然地震が起きる。
「キャ!?」
「先輩!」
俺は慌てて先輩を支えて、周りを見渡す。
かなり激しい戦いだったから、祭壇自体が脆くなっている。
一体何が起きて!?
「最高司祭様の生命の源に揃ったのだろう」
メディナたちはカラントの実を、カセドラルの秘匿領域へと隠し、その神聖力を元に、最高司祭を甦らせようとしていたらしい。
「…キリト。まずはシェータが先だ」
何がともあれ、まずはシェータが優先だ。
今更ジタバタしてもどうしようもない。
「だな…。メディナ、通してくれないか?」
「負けた以上、従わざるを得ない。みんな、通してやってくれ」
冒険者たちに道を開けさせたメディナに礼を言い、俺達は奥の洞窟に急いだ。
そこではやはり、カラントに縛られたシェータがいた。
「さて…戦闘が予想されます。シェータ殿は【無音】と呼ばれるほどの使い手。それに黒百合の剣は、整合騎士の持つ神器の中で、最高優先度を誇ります。激戦は必至でしょう」
「俺がいく」
俺が剣を抜き一歩前に出ると、その肩をキリトに掴まれる。
「俺がいく。優月はまだ休んでろ」
は?
こいつ何言って…!?
「おい!お前は連戦だろ!」
「優月の手はまだ治ってないだろ。それに刀の天命もかなり消耗してる。そんな状況でシェータと打ち合えば、神器が壊れちまう」
それは…そうだが…。
だがそれでも、キリトだけに任せる訳には…!
「私もいくわ、キリトくん」
「私もだからね!お兄ちゃん!」
「私もいきましょう」
さらにアスナ先輩、リーファ、アリスが名乗りを上げる。
「当然!」
「私達もです!」
リズにシリカまで!?
困惑する俺の肩を、ミトが叩いて勝手に決める。
「これで確定ね。整合騎士は本当に強いわ。気をつけて」
その言葉は主に、リズたちに向けられた言葉。
その言葉に頷いたのを確認して、アリスはディープフリースを解く。
「…私は…斬って斬って斬り続ける、殺人人形…それが私の存在意義。どんな硬いものでも、必ず斬ってみせる」
「そうか…。上等だ。来いよ、シェータ。必ず正気に戻してみせる!」
そしてシェータとキリト達の、戦闘が始まった。
それでは失礼します。
ありがとうございました。