ソードアート・オンライン NEOプログレッシブ   作:ネコ耳パーカー

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西帝国はこれで終了です。
よろしくお願いします。


西帝国編第八話

sideアスナ

 

「ハァァァァ!!」

 

私の一撃は、何も言わずにあっさりと弾かれ、反撃される始末。

 

「くぅっ!?」

 

頬を掠める痛みに、呻きながらも、私も反撃にでる。

 

「ヤァァ!」

 

「スイッチ!」

 

キリトくんの声に従い、避けながら飛び退いた私は、一度息を整えることに。

私は神聖術で傷を癒しながら、キリトくんの戦いを見る。

優しい漆黒と冷たい漆黒がぶつかり合う。

そこへリーファちゃんとシリカちゃんも参戦し、3人でシェータさんと打ち合う。

私はそれを見ながら、整合騎士の強さを噛み締める。

 

「アスナ!大丈夫!?」

 

「うん。ありがとう、リズ」

 

とはいえ、シェータさんに隙がない。

桁違いの武器の性能と、それを十全に扱い技術。

間違いなく、私が戦ってきた敵の中で、五本の指に入る強さだ。

 

「ふぅ…キリトくん!スイッチ!」

 

「リーファ!代わってください!」

 

「シリカ!スイッチ!」

 

私は鋭い突きを放つ。

それは受け流され反撃が来る前に、アリスの力強い一撃がシェータさんに襲いかかる。

 

「っ!?」

 

慌てたように攻撃から防御に切り替えたシェータさんの神器と、アリスの神器が火花を散らす。

あの糸みたいに細い武器のどこに、そんな硬さがあるの…!?

 

「ヤァァァァ!」

 

その隙にリズがシェータさんの足元を壊す。

ナイス、リズ!

 

「アリス!スイッチ!セヤァァァァァア!!」

 

体勢を崩したシェータさんに、【リニアー】を放つ。

流石に避けきれなかったのか、私の攻撃はシェータさんに命中した。

だが、その直前合わせるような一撃に、私も慌てて体を捻っていたので、クリーンヒットはしなかった。

 

「くぅぅぅ…!?」

 

地面を削りながら吹き飛ぶシェータさんと、たたらを踏む私。

何とか踏みとどまったけど、リズが作ってくれたプレートが、見事に粉々に砕け散ってしまった。

 

「嘘…!?一撃しか受けてないのに!?」

 

「しかもあの崩れた体勢の一撃よ!?いくら言っても、私の作ったプレートが…!?」

 

「それがシェータ殿の神器、【黒百合の剣】。むしろ一撃とはいえあの剣の一撃を完全に防いだその鎧の方が、賞賛に値します」

 

愕然とする私たちに、アリスが冷静に答える。

その言葉を聞いたリズの顔は、なんとも表現のしようのない顔だった。

 

「なぁ、前にも一度やった時も、楽しかったよな?あんたやっぱ強いぜ!シェータ!」

 

「私はただ、自分を満たすものを探したいだけ。だから戦っている」

 

「そんなことあるものか。思い出せシェータ。シェータが本当に求めているものを!」

 

キリトくんの言葉を受けてもなお、シェータさんの殺気は消えない。

それどころか、体全体を一振りの剣に見立てるように構える。

それを見て、寒気が走った。

あれは…マズイ!

 

「全員警戒!あれを受けてはいけません!」

 

アリスも感じたのか、焦ったような声で警戒を促した。

私もすぐに逃げる体勢を整えようとして、動きを止める。

ここで逃げて…優月くんと並べるの?

優月くんなら、こういう時どうするの?

 

「…真正面からぶつかるよね」

 

私はバク転を何回かして、十分距離をとる。

 

「アスナ…!?まさか、真正面からぶつかる気か!?」

 

「なっ!?待ちなさい!ダメです!」

 

「邪魔しないで!」

 

慌てて止めようとする2人に、私は一喝する。

 

「シェータさん!あなたがすべてを斬るというなら、私はそのあなたを穿く!」

 

シェータさんの剣には、何故か躊躇いのようなものがあった。

それはきっと、シェータさんの望みが、斬りたくないものを見つけたい…そうなんだと思う。

だから私は迎え撃つ。

彼女のために…そして、優月くんに追いつくために。

 

「大丈夫。私は斬れないから」

 

柄でもないと思うけど、私は決して斬られない。

だから…全力で来て!

 

「「ハァァァァァァァァァァァァァァァア!!!」」

 

そして私の全力の【フラッシング·ペネトレイター】と、シェータさんの全力の一撃が、真正面からぶつかった。

激しい衝突音を響かせて、火花と衝撃波を撒き散らす。

 

「ぐぅぅ…!」

 

だがしばらくして、武器からひび割れる音が聞こえてきた。

く…武器の性能の差が、ここで出るなんて…!

 

ーーこの世界では、イメージ力がものをいうんです。出来ないと思えば出来ませんし、出来ると思えばどんなことでも出来ます。それこそ心意…心からいずる意志。

 

「私は…負けない!負けられない!」

 

優月くんの言葉を思い出し、私は自分の心を奮い立たせる。

そうだ…武器の差なんて関係ない!

私は…整合騎士に勝つ!

勝って、優月くんとちゃんと肩を並べられるようになるの!

 

「ァァァァァァァァァァァア!!!」

 

そして私の一撃はシェータさんの攻撃を弾き、そのままシェータさんを洞窟の壁にまで吹き飛ばしたのだった。

 

side優月

 

「アスナ先輩!」

 

戦闘が終わり、俺は真っ先にアスナ先輩に駆け寄った。

 

「大丈夫!?怪我は!?」

 

「うん。ちゃんと治ってるよ。ほら」

 

その場でくるりと回る先輩を見て、俺は心からホッとする。

良かった…!

 

「良かった…!」

 

俺は思わず、先輩を抱きしめる。

そんな俺に驚いたような反応をする先輩だが、先輩も俺を抱きしめ返してくれる。

 

「先輩!シェータと真正面からぶつかるなんて、無茶しすぎです!」

 

「アハハ…ごめんね?」

 

先輩も大概他人のこと言えないじゃん。

 

「キリト!」

 

「うぉ!?サチ!」

 

「アリス!無事かい!?」

 

「ええ。ありがとうごさいます、ユージオ」

 

「リーファ。大丈夫?」

 

「うん!大丈夫だよ、ミトさん!」

 

「リズ、シリカ。無事ね?」

 

「ええ。何とかね」

 

「死ぬかと思いました…」

 

それぞれの安否を確認していると、もぞりとシェータが動き出す。

 

「んん…私は…?」

 

「シェータ!」

 

キリトがシェータに駆け寄る。

それを見ていると、アスナ先輩がリズに近づいた。

 

「リズ…ごめんなさい。武器と鎧が…」

 

「ああ、いいのよ!もっと強い武具を鍛えてみせるわ!」

 

「え、ええ…。お願いね?」

 

どこか使命感に燃えるリズに、アスナ先輩が引き気味になる。

暑い…暑すぎるぞ…リズ。

俺はそんなリズを苦笑い気味に見ていると

 

「ァァァァァァア!」

 

メディナの絶叫が響く。

一体何が…!?

俺たちが慌てて駆けつけると、何故かハァシリアンが戻ってきており、冒険者たちが軒並み死んでいた。

 

「な、何が…!?」

 

「ハァシリアン!てめぇ、なんのために戻ってきた!」

 

俺はハァシリアンに怒鳴りつけるが、そんなハァシリアンは、俺の声を鬱陶しそうな顔をするだけ。

 

「吠えないでください。うるさいですね…。ですがお答えしましょう。私はこの救世主様に、引導を渡すために戻ってきたのですよ」

 

「…引導を渡す?」

 

「もう用無しなのですよ、メディナ様は」

 

用無し…必要分は揃ったってことか。

キリトが前に出て、ハァシリアンを睨みつける。

 

「お前の目的は冒険者たちを利用し、各地の魔獣を倒させ、カラントの実を集める…そうだな?」

 

「小賢しいまでの知恵ですね。ご名答です。最高司祭様を甦らせるには、より多くの神聖力が必要。あの笠はその命を吸い上げるためにあるのだ」

 

笠…カセドラル·シダーの上に現れた、赤いあれの事か!

 

「その神聖力がほぼ集まったってことか」

 

「ええ。残りはとある一欠片のみ」

 

とある一欠片…?

一体なんの事だ?

 

「なぜ…?最高司祭様を甦らせれば、人界を救えると言ったのに…」

 

呆然と呟くメディナを見て、本当に楽しそうに笑うハァシリアン。

 

「自分に都合のいい理由をつけて、誤魔化すのはやめたらどうです?救世主様。あなたは一度たりとも、世界のことなど考えたことは無いでしょう。あなたの目的はただ一つ…オルティナノス家の再興だけだ。あなたが行動を起こしたのは、私がその報酬を提示したからですよ」

 

「だとしても、こんなことをしていい理由にはならないわ!」

 

アスナ先輩の声を、ハァシリアンはまるで無視して、メディナを見下ろす。

 

「さて、死ぬ前に真実を教えて差し上げましょう。その方が楽しめそうですし。…あなたのやってきたことは、無駄なのですよ。メディナ·オルティナノス」

 

「私を…騙していたのか…!?」

 

「ええ。最高司祭様復活のために、あなたの力を存分に利用させて頂きました。お前の手で仲間だと思い込んでいる、お人形さんたちの安い絆を破壊する。人界人を囮に使う作戦を吹き込んだのも私。全てはお前に、罪の意識を植え付け、苦しませるために」

 

囮作戦を教えた…!?

外の知識ではなく、ハァシリアンが吹き込んだ!?

バカな…この世界の人間が禁忌目録に違反することは、右目の封印を破壊したユージオやアリスにしか出来ないはず!

 

「そしてお友達ごっこを続けたそこの大罪人と争わせ、万が一この男をその手で殺したら、その時全ての真実を教える…その時あなたがどんな顔をするのか、興味があったのですよ!」

 

イカレてる…!

一体何が、こいつをここまでイカレさせた?

 

「ああ、それとメディナ様。最高司祭様は復活しても人界をお救いになることはありませんよ?いえ、正確にはソード·ゴーレムという何百もの人間を素材にした武具を作り、人界をお救いになるつもりです」

 

「ソード·ゴーレム…!?まさかそれは…ユヅキ様が言っていた…!?」

 

俺とメディナの視線がぶつかる。

俺は何も言わず、黙って頷く。

 

「どうして…!?あの時最高司祭様は!?」

 

「約束されし救世主よ。私を助けてください。人界の人々を救うために」

 

今の声…アドミニストレータの!?

上手いな、こいつ!

 

「もしお友達を殺した時は、さんざんその功績を褒めたたえた上で、全ての真実を告げるつもりでしたが…あなたはもう用無しです。さあ、息絶えるといい!メディナ·オルティナノス!」

 

そして振り下ろされる杖を、俺とキリトは防ぐ。

 

「「はァァァ!」」

 

「つぅ!?…ふっ、小賢しい。お前たちの攻撃は届かないと言っているのに、何故足掻くのです?」

 

「知るか。んな事、てめぇが決めんな」

 

「決まってるだろう。…俺たちは、メディナの友達だからだ!」

 

「虫唾が走る…ディスチャージ!」

 

「させるか!」

 

俺はハァシリアンが放つ神聖術を、切り裂いて無力化する。

 

「ハァシリアン!」

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

俺の突きとキリトの斬撃が、ハァシリアンの心意の盾とぶつかる。

その拮抗は一瞬で、俺たちの攻撃は、ハァシリアンの盾を破壊した。

 

「メディナを利用し、傷つけたお前を、許すわけにはいかない!」

 

俺とキリトは剣を構えて、ハァシリアンと睨み合う。

 

「…クハハ。面白い。だがここは引くとしよう」

 

そう言い残して消えるハァシリアンだが、俺たちには追いかける余力はなく、そのまま見逃すしかなかった。

 

「…ぐぅっ!」

 

「おっと…おつかれさん、キリト」

 

流石の連戦で疲れたのだろう。

膝をつくキリトを支えて、サチとユージオに預ける。

そのままみんなにキリトを任せて、俺とアリスは簡易的ではあるが、冒険者たちの墓を立て、追悼するメディナをただ、黙って見つめた。

そして、人界を今度こそ正しく救うと誓いを立てるメディナの肩を、俺は叩いた。

 

「さあ、行くぞ。これからキリキリ働いてもらうぜ?メディナ」




それでは失礼します。
ありがとうございました。
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