今日のイスの授業は、魔法、一般常識、剣術の3つである。
一般常識はレクサが言い始めたことだが、必要なことだろう。
まだ子供だしな、イスは。
教えることは山ほどあるだろう。
俺に関してはまあ、魔法だけ教えればいいだろう。
あんまり専門外なことを教えるのは逆に混乱させることになりかねない。
まあ俺が常識に疎いのもあるのだが。
そろそろ時間なのだが、イスはまだ来ない。
何か面倒事に巻き込まれたか……?
「すみませーん! 遅れましたー!」
噂をすれば、といったところか。
遅れていないので全然問題はない。
だから気にするなと伝えようとしたところで、違和感に気付いた。
「……なんでそんな恰好を?」
見れば、イスはまるで舞踏会に向かう少女のような恰好をしていた。
いやまあ、俺からすれば女装なのだが、似合うのがあれだな。
これが可愛らしい姿に生まれた代償か。
「ええとですね……メイドの皆さんがですね……」
「何となくわかった」
「あはは……」
「他の連中は衣服に拘らないからな……」
可愛らしい恰好を好まないともいう。
クレアはほぼインナーと普通の麻の服でいるし、レクサは飾り気のない簡素なドレスだ。
ぶっちゃけほぼワンピース。
そんな中に飾りがいのある小さい子が放り込まれると、こうなるのだな。
「ふええ……」
可愛らしいことで。
「というわけで、今日の授業です」
「わーパチパチ」
いい返事である。
着替えは面倒なのでそのまま。
コルセットまで着込んであると、俺ではどうしようもないのである。
「まずは魔法の元を感じることから始める」
「はーい」
魔法の元というのは、雑に言うと魔力である。
これを感じて、自由にできるようになれば魔法が使えるということである。
「というわけで、その魔力を見やすく色付けします」
「そんなことできるんだ!」
「余裕余裕」
とりあえず要素を適当に組み合わせて、色合いを決めていく。
今回は赤にしよう。
小さな赤い粒子状の魔力が、周囲に広がる。
幻想的な光景である。
「わぁー……」
「こうするだけで、なんとなく魔力がその辺にあるってわかるだろう?」
「はい!」
実際、この世界にはたくさんの魔力が漂っている。
ない場所なんて、それこそ特定の状況を除いて存在しない。
なので、それに気付くことが第一歩なのだ。
「これを……」
くるくると、丸い形に粒子を動かす。
これが初歩的な奴である。
「こうするのが、今日の課題だ」
「おおー……」
楽しそうなイス。
まあわかる。
俺も最初にできるようになった時は、もう楽しくてしょうがなかった。
とはいえこれを初心者が補助もなくこなすのは無理だと思うので。
とりあえず、器具を渡す。
「これは……魔法の杖!」
「正解」
小さい魔法の杖だ。
スティック型の簡素なものだが、効果は十分。
操作特化の奴なので、威力のあるものには向かないが。
「これを握って、イメージしよう」
「イメージ」
「今浮いてる赤い粒子をさっきみたいにグルグル動かすのだ」
「はい!」
開始5分。
「できたー!」
授業終了!