【完結】MUDDY GLORY 〜泥だらけの栄光 byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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12R ナズナとカメ

 カメの初勝利に加えて、メル先輩も3着と無事に入賞を果たしたと連絡が来た。

 メル先輩が優勝出来なかったのは口惜しいが、オープンレベルのウマ娘がうだる様な真夏の太陽の下、十数人走ってその順位なのだ。十分に凄い事だと思う。

 

 その日の夕方に行われた壮行会も大いに盛り上がった。

 そしてその場で源逸さんより来月に中山レース場でコロのデビュー戦(2000m)とアモ先輩のオールカマー(GⅡ)挑戦、そして同日に中京レース場で私の未勝利戦(1600m)が一度に行われる事が発表された。

 

 確かに以前アイリスに言われた様に、最近の私は記録の伸びが顕著になってきている。これが世に言う『本格化』なのかは自分では分からない。

 もっとこう、グワーん!と世界が変わる様な劇的な変化が起きるのかと期待していたが、どうやらドラマやゲームの様な『いきなり覚醒!』みたいな物では無いらしい。

 

 とにかく今の私はデビューの時の私よりも明らかに確実に速く、力強くなっている。今の私ならばあのブラックリリィにも引けを取らないだろう。

 尤もこの2ヶ月でリリィも更なる進化を遂げているだろうが……。

 

 開催時間的に私のレース、コロのレース、アモ先輩のレースの順で行われるので、私の頑張り次第で他の2人のメンタルにも影響する、責任重大な立場になってしまった。

 

 メル先輩チームはアモ先輩の応援に、カメチームは私の応援に来てくれる事に決まった。

 今日の勝利者であるカメに見られるとなると、そのプレッシャーは半端ないのだけれど、プレッシャーを力に換えてこそのウマ娘だもんね、頑張るしかない。

 

 その日の晩、就寝直前にカメから話しかけられた。

 

「ナッちゃん、今日は見に来てくれてありがとうね。『せっかく来てくれたナッちゃんに恥ずかしい所を見せられない』って気持ちで思いっきり走れたよ。もし今日1人だったら、怖くてあの大きな人(ドキュウセンカン)を躱す事は出来なかったと思う…」

 

 あぁ、やっぱりカメも怖かったんだなぁ。まぁ遠目で見てても威圧感凄かったから、あの人の真横を走り抜けるなんて根性あると思う。

 そういう勝負どころのセンスをカメはしっかりと持っている。正直私はドキュウセンカンよりもカメの方が、ライバルとしては恐ろしいと思っている。

 

「私は何もしてないよ。勝ったのはカメの実力。でももし私の応援がカメの力になったのなら、それはとても光栄に思うよ」

 

 答えると同時に正面からカメが抱き着いてきた。カメの大きなバストと私の大きくないバストが衝突し、その圧迫感で一瞬息が詰まる。

 

「ナッちゃんならそう言うと思ってた。でも本気でナッちゃんが居てくれたから私は今日勝てたと思ってるよ。次のナッちゃんのレースは私も超本気で応援するからね。絶対勝ってね!」

 

 カメの圧が凄い。そりゃもちろん勝つ気はあるけど、何事も『絶対』はありえない。

 本番直前で体調を崩したり、何かしらメンタルを損なってモチベーションを落とす事はよくある事だ。

 

「う、うん。とにかく全力で走るよ。カメに『先行』されてるから、ここから『差し』返さないとね」

 

 そう、カメは『1勝』で私は『未勝利』だ。

 既に大きな差がついている。でもここからならまだ巻き返すのは難しくない。

 

「あははは、『先行』得意のナッちゃんに追われるなんて滅多にある事じゃないから、私も必死で『逃げ』ないとね」

 

 そんな感じのウマ娘大喜利をしばらく続けて私達は床についた。

 

 

 

 あっという間に時は流れレースの3日前、URAから当日の中京レース場の出走表が確定したとメールが送られてきた。

 事務所で源逸さんやアイリスと一緒に内容を確認する。

 

 それに添付されていた出走表によると、私のレースは10時55分開始、ちなみにコロのレースは12時30分、アモ先輩のレースは15時45分開始だ。

 先陣を切るプレッシャーは強いが、それ以上に早く走りたい。ズバッと勝ちを決めて『未勝利』という看板を外したいものだ。

 

「中京の11レース、やっぱり出てきたな…」

「ええ、ナズナの良い勉強になると思います」

 

 源逸さんと目黒さんで何やら話をしている。この2人の会話で私の名前が出てくるのは珍しいけど……。

 

「第11レースの神戸新聞杯(GⅡ)にツキバミが出るみたいよ」

 

 まさかここで最強の誉れ高いツキバミの名前を聞くとは思わなかった。

 神戸新聞杯はよく菊花賞のトライアルとして利用されるレースだ。恐らく夏合宿明けの腕試しとしてエントリーしてきたのだろう。

 

 私とツキバミは直接は関係無いが、その走りを生で見られるのは大きな経験となるだろう。出走開始時間は15時35分、アモ先輩の10分前だ。こりゃ目が離せない数十分間になりそうだ。

 

「ちょっとナズナ、これ見て…」

 

 アイリスの慌てた声に我に返る。アイリスの指差す先、私のレースの出走表にある1人のウマ娘の名前。

 

「ドキュウセンカン…」

 

 カメのデビュー戦で猛威を振るったあのヘビー級の名前がそこにあった……。

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