【完結】MUDDY GLORY 〜泥だらけの栄光 byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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22R 勝負服

 いよいよ秋のGⅠ戦線前半のクライマックス、天皇賞 (秋)が近付いてきた。出走のチャンスを掴んだアモ先輩には心の限りに激励を送りたく思う。

 

 もちろんその間に我らがチーム〈ポラリス〉メンバーのレースが幾つかあったので、簡単で申し訳無いが、ざっと一通りの結果報告をさせてもらう。

 

 まずコロの未勝利戦だが、終盤の直線までは良い感じで進められていたのだが、そこから急に失速して、またしても7着という結果に終わってしまった。

 

 「急に脚に痛みが出たから失速した」との事で検査したところ、足首の捻挫と判明。ウマ娘に脚の怪我は付き物だが、2戦続けて実力を出し切れずの敗北はあまりにも不憫だ。

 泣き腫らした目を真っ赤にしながら脚にギプスを巻いて松葉杖で帰ってきたコロに、無念な気持ちが痛い程に理解出来る分、余計に私は何も言ってあげられなかった……。

 

 幸いな事にコロの捻挫の度合いも軽度な物で済んでおり、ようやく通常練習を再開した私と、運動を軽めに抑える必要のあるコロとでリハビリも兼ねて、私達は最近よく一緒に練習をしている。

 

 アモ先輩がGⅠを控えているので、さすがに源逸さんもアモ先輩のトレーニングを『おまかせ』には出来ずに自ら出張ってアモ先輩の世話をしている。

 その分コロの指導が手隙になるので、アイリスに私とコロ2人分のお世話が任された形だ。

 

 私とコロはお互いに自分の苦手な距離が相手の得意な距離なので、併走してあぁだこうだとアイリスを巻き込んで議論やアドバイスをし合いながら、結構楽しくトレーニングさせてもらっていたと思う。

 

 コロの未勝利戦と同日に行われたメル先輩のレースは、逃げたメル先輩を追って後続が潰し合ってくれたおかげで、ほぼ理想的な形でメル先輩は無事に逃げ切り勝ちをおさめる事が出来た。

 

「コロちゃんに恥ずかしくないレースをしようと思ったしね…」

 

 とは後日のメル先輩の言葉だ。

 

 更には翌週のカメのレース。こちらはカメお得意の終盤の追い込みがギリギリ届かずに惜しくも2位に。

 だが化け物揃いの中央トレセン学園で、新戦や未勝利戦を1位で駆け抜けた娘ばかりを集めたレースで2位なのだ。十分に胸を張って良いと思う。

 

 とりあえず優勝こそ逃したが、今回好成績を修める事が出来たので、カメは12月の阪神ジュベナイルフィリーズには恐らく出走できそう、との見通しだ。私もとても嬉しい、自分の事の様に誇らしく思う。

 

 ☆

 

「いやぁ、何か久しぶり過ぎて人前で着るのは恥ずかしいね、こりゃ…」

 

 天皇賞直前にアモ先輩の勝負服についての話題が上がり、せっかくだからと事務所で着て見せて貰っている所だ。

 

 『勝負服』 GⅠレースを走る時にのみ着用が許される、ウマ娘にとってとても特別な意味を持つ服だ。

 これを着る事でウマ娘は自身の力を100%、いやそれ以上に引き出す事が出来るらしい。

 

 そのデザインはウマ娘ごとに千差万別であり、中にはとてもでは無いが「これから走るには邪魔にしかならないのでは?」と言ったデザインも散見される。

 しかし、当のウマ娘にとってはそれ(・・)こそが最も走りやすいデザインであり、魂の形なのだ。

 

 一般にウマ娘の勝負服は女の子らしい可愛いデザインや、「どういう順番で着るの?」と思う様な奇抜なデザインの物が多い。

 その中でアモ先輩の勝負服は、体の両サイドに白いラインの入った、全く装飾の無い真っ黒でとても渋い、革のライダースーツだった。

 

 前面の中心に沿って走るファスナーは胸元いっぱいまで下げられ、本来セクシーキャラでは無いはずのアモ先輩を、とても艷やかに魅せていた。

 そして首に巻かれた長く黄色いスカーフがアクセントとなって、全体の地味さが薄れているのもポイント高いと思う。

 

 『武器庫』と称されるアモ先輩の事だから、私はてっきり身体中にガンベルトを巻いて機関銃を持った女ソルジャーか、シルクハットを被った女マジシャンみたいなイメージだったのだが、見事に裏をかかれてしまった。まさかその辺もアモ先輩の策なのかな…?

 

「去年の春くらいに作ってもらったものの、着る機会が無いまま結局1年半近くタンスの肥やしになってたなぁ、反省反省」

 

 アモ先輩は笑いながら言ってたけど、それが本当なのか照れ隠しなのかは分からない。

 

 ☆

 

 学園生徒の勝負服は、トレセン学園入学時に各々が希望するデザイン草案を学園に提出し、デビュー後のオープンクラス昇格の際に、オーダーメイドされた勝負服が学園より授与される形となる。

 

 GⅠレースを走る為の衣装だから当然と言えば当然なのだが、オープンクラスと言う事はデビューしてから更に2〜3戦は勝たないと上がる事は出来ない。

 

 以前、トレセン学園2000人の生徒のうち最終的に学園に残れるのは3割程と書いた。その残った3割ですらGⅠレースに出られるのはほんの一握りであり、大半の者は勝負服を着て走る事を夢見ながら叶わずにいるのだ。

 勝負服その物が一流ウマ娘の証であり、勲章であると言えるだろう。

 

 当然ながら私の勝負服はまだ無い。私が次のレースに勝つ事が出来れば早急にお披露目できると思われる。

 デザインは本物が仕上がる時まで今少し秘密にさせてもらいたい。

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