【完結】MUDDY GLORY 〜泥だらけの栄光 byウマ娘プリティーダービー 作:ちありや
初勝利の翌日、放課後のトレーニングに顔を出した私とカメに嬉しいサプライズがあった。
事務所に一抱え程の大きな荷物が2つ届いており、そのうちの1つには「チーム〈ポラリス〉内、スズシロナズナ様」と書かれている。ちなみにもう1つはカメ宛てだ。
「おう、お前らの『勝負服』が届いているぞ。早速デザインやサイズに間違いが無いか確認しておけよ」
「わぁ、やったぁ!」
「これ今着てきて良いですか?!」
源逸トレーナーの言葉にカメと私も大興奮だ。遂に待ちに待った自分専用のオーダーメイド勝負服が届いたのだから、本当は飛び回って喜びたいくらいだ。
「着るのは当たり前だけど、各種チェックが終わったらすぐにジャージに着替えるんだぞ。毎年『届いた勝負服で練習したい』って言い出すバカが居るけどな、万一すっ転んで破損でもしたら泣くのは自分だからな?」
おっと、言い出す前に釘を差されてしまった。でもさぁ、せっかくの勝負服なんだから「着て走ってみたい」し「皆に見せびらかしたい」よね。その辺の乙女心も汲んで欲しい所はあるんだけどな……。
☆
「あーっ! ナズナもカメも勝負服貰ったんだ? 良いなぁ〜。あたしもGⅠ出たいのに〜っ!」
更衣室でコロやアモ先輩らも合流してきた。
コロのレースについて遅ればせながら報告すると、遂にコロも初勝利を飾れたそうだ。同期組で同日に初勝利を飾れた事はとても喜ばしいし、同期3名が全員勝利を飾れた事に心の底から安堵している。
冗談抜きで新人3名、その全員が未勝利のまま失意に包まれて学園を去る可能性も十分にあり得たのだから……。
さて、これでコロも一緒にGⅠに… と思ったら、そう簡単な話でも無いらしい。
「GⅠのホープフルステークスで走るにはまだまだファンの数が足りないの! そんでもってファンを増やそうにも年内にあたしの走れるプレオープンがもうダートか短距離のレース2つしか残ってないんだよぉっ!」
…あー、確かにそれはキツいね。私だって新聞記事のブーストが無かったら同じ悩みに襲われていただろうし、ダートと短距離なら私も撃沈する展開しか見えなかっただろう。長距離が得意なコロなら尚更だ。
「もうこうなったら短距離でも走って少しでも…」
「コラコラ、今からそんな事しても焼け石に水だよ。それに脚に無理させて万が一怪我でもしたら意味無いからね?」
アモ先輩がコロを諌める。この2人は共に源逸トレーナーに学ぶ言わば兄弟弟子… いや姉妹弟子の関係であり、普段トラブルメーカーのコロもアモ先輩の言う事は比較的素直に聞き入れる。
事実コロも「ぶー」と一言不満を表明して、それ以降何も言わなくなった。コロの操縦はアモ先輩の方がトレーナーの源逸さんよりよほど上手い。
余談だが、アモ先輩も先日行われた有馬記念のファン投票の結果、見事ランキング9位となり無事出走を決めていた。
「それはそうとカメちゃんもナズナちゃんも勝負服可愛いわね。とっても良く似合ってるわよ」
コロの話が片付いたタイミングでメル先輩が私達の勝負服を褒めてくれた。
さてコロの件で脱線してしまったが、ようやく私達の勝負服の紹介である。
まずカメは真っ白いワンピース、両手首と両足首さらに腰にピンクのリボンを巻いた清楚なイメージ。前面は布地多めでカメの巨乳をしっかりガードしているのに、逆に背中は腰の辺りまで大きく空いていて同性の私でもちょっとドキッとさせるデザインになっている。
桜の花をモチーフにした耳飾りが左耳に光り、足には真っ赤なパンプスでコーディネート完成だ。
私はブルーグレーの袖を捲ったデニムのジャケットに、同色デニムの膝上20cmのミニスカート、インナーはオレンジ色のチューブトップでへそ周りは大公開。
前髪を黄色いカチューシャで抑えて、耳飾りは私のモチーフであるペンペン草を
ウマ娘の勝負服は『魂の具現化』だ。確かに走る為のパワーが満ち満ちてくる感じがあるし、外見的に走りの邪魔になりそうな部分もまるでシルクの肌着の様に体の動きに馴染んでくれる。
カメの勝負服も私の勝負服もとても『らしい』形にまとまっていると思う。お互いに「これ以上の形は無い」とはっきり分かる。
事務所で勝負服のお披露目となり、先輩たちやトレーナー陣も私達の勝負服を祝福してくれた。
ただ源逸トレーナーには「2人とも昭和のアイドルみたいだな」と言われたのだが、世代の違う私達にはよく分からなかった。昔のアイドルってこんな感じだったのかしら…?
☆
今日のトレーニングは軽く坂路を流しただけだけど、私とカメには別件で新曲のレッスンが待っていた。
ジュニア級のGⅠで使われる楽曲「ENDLESS DREAM!!」は本当に贅沢な曲で、例えレースに勝っても歌う事が出来るのは一生のうち1度、ごくごく稀に2度だけだ。
朝日杯や阪神杯を勝った後にホープフルステークスに出れば2度の歌唱は可能だが、普通はそんなローテーションは組まない。よって一生に1度と言う表現は大袈裟ではない。
曲そのものは何年も変わっていないので聞き覚えはあり歌を覚えるのは困難ではない。ただやはり振り付けを4パターン (センター、右サイド、左サイド、バック)、それも短期間で覚えるのはなかなか骨が折れる。
私の走るホープフルステークスは有馬記念より後の本当の年末開催なのでまだ余裕があるが、カメのレースは来週だ。にこやかな顔をしているが、カメの焦りは小さいものでは無いと思う。
そしてレッスンを終えて寮に戻り食事や入浴、明日の授業の準備を整える。そして…
「ねぇ、ナッちゃん、今夜一緒に寝ても良い?」
消灯時間になり、さて寝ようかとなった時にカメがいきなり変な事を言い出した。