【完結】MUDDY GLORY 〜泥だらけの栄光 byウマ娘プリティーダービー   作:ちありや

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5R チーム〈ポラリス〉

 翌日、授業を早々に切り上げて私の所属するチームの事務所へと向かう。

 ここで少し私のチームについて説明しておきたい。

 

 チーム名は〈北極星(ポラリス)〉。「一等星の様に強く輝かずとも芯のブレないアスリートとなれ」の想いを込めて名付けられた、それなりに歴史のあるチームだ。

 

 チーフトレーナーは矛田(ほこた) 源逸(げんいつ)さんというアラフィフの熊みたいな体格をした強面のおじさんだ。優しくて豪快な性格で、普段は細かい事に拘らない人なのだが、一旦怒ると手がつけられなくなる。

 私とカメは選考会で源逸さんの目に止まって、共にスカウトされた。

 

 副チーフは目黒(めぐろ) 宗太郎(そうたろう)と言う若い男性。源逸さんとは対称的な細身のクールガイで、切れ長の目と銀縁メガネが特徴。

 言いたい事をズケズケ言うタイプで、源逸さんとは育成方針の違いでよくケンカしている。

 

 他には新人のトレーナーが2人。1人は私の専属トレーナーであるシルバーアイリス。前述の通り元競走ウマ娘で、引退後にトレーナーへの道を進んだ変わり種の人だ。

 真面目を絵に描いた様な人で、分刻みでトレーニング予定を組み上げてくる、ちょっと息が詰まるタイプの人。

 

 もう1人のトレーナーが矛田 きり。源逸さんの娘さんで、こちらはカメ(オカメハチモク)の専属トレーナーだ。ウマ娘にはのびのびとやらせる方針の様で、カメとも姉妹の様に仲良くやっているらしい。

 ちなみにアイリスとは幼馴染だそうで、今でもとても仲が良い。事務所の内外を問わず、よく2人で楽しそうに談笑しているのを見かける事がある。

 

 所属するウマ娘は私を含めて5人、これはチームとしては最小限レベルに少ない数だが、「多過ぎても面倒見切れねぇだろ」と言う源逸さんの方針で『少数精鋭(?)』と言うポリシーで運営されている。

 

 まずは自己紹介から。

 私の名前は『スズシロナズナ』。皆からは『ナズナ』と呼ばれている。最強を自負して臨んだ初レースで4着に沈んだボンクラです、はい、今更ですね。

 

 正月の七草粥に言われる通り『スズシロ』は大根、『ナズナ』はぺんぺん草だ。雑草の名前を付けられた泥臭い娘だけど、雑草の様にしぶとく生きてやろうと思っている。私に関してはこんな所。

 

 次に『オカメハチモク』。愛称は『カメ』 私のルームメイトでいつも穏やかで優しい子。まだデビューはしていない。

 よく一緒に練習したりするが、本番の為に力を溜めて、練習では本気を出さないタイプ。でもその瞬発力は恐らく私より上だろう。

 以前模擬レースをした時には、おっとりした性格からは信じられないような猛ダッシュで私を置き去りにした事があった。

 

 次は『スターコロボックル』。愛称は『コロ』 この娘も私やカメと同期の未デビューの新人ウマ娘。

 「小人の妖精(コロボックル)」の名前の通り身長が142cmと小柄で小回りが利く。そのくせ筋トレが趣味らしく、高いパワーで抜群のスタミナを誇る。

 イタズラ好きで落ち着きが無いのが難点で、よく担当トレーナーである源逸さんにイタズラしては、見つかって説教、お仕置きされている。

 

 そして『メルヘンランド』先輩。愛称は『メル(先輩)』 担当は目黒トレーナー、カメを更に柔らかくした様なチームのお袋さん的な存在。オープンクラスに上がったは良いが、そこからなかなか勝ちに結びつかずにファン数が伸び悩んでいる。

 一応重賞レースにも出走経験はあるものの、未だ重賞の勝ち数はゼロ。

 

 最後が『アーモリーフォース』先輩。愛称は『アモ(先輩)』 メル先輩だけは『アモちゃん』という呼び方をする。『武器庫(アーモリー)』の名に相応しく、沢山の武器(テクニック)を持っている技巧派のウマ娘。やはりオープンクラスで重賞GⅢレースを2勝しているチームのエースでリーダーだ。

 

 担当は源逸さんだが、自分のコンディションを常に把握しており、自分の練習メニューも自作して『トレーナー要らず』な状態らしい。

 本気かどうか分からないが「私もアイリス先輩みたいに将来トレーナーを目指そうかな?」などと普段から言っている。

 

 アモ先輩とメル先輩は同学年だが、レースのクラスは1年違う。本格化の早かったアモ先輩はシニア級、メル先輩はクラッシック級だ。

 ウマ娘は本格化の時期(個人差が大きい)でデビューが決まるので、この様なパターンは少なくない。

 

 ☆

 

「オハヨーごさいまーす…」

 

 すでに時刻は午後なのだが、なんとなく事務所(ここ)に来る時は「おはよう」と言ってしまうクセがついている。

 

「おーっす! 昨日は残念だったな。よく眠れたか?」

 

 チーフの源逸さんの明るい声で迎えられる。小さな悩みや失敗事なんかは、大体この人の明るい声で邪気払い的に吹き飛ばして貰える、小さい事でクヨクヨしがちな私にとっては、とても有難くて父親よりも頼りになる人だ。

 

「まぁ、ボチボチです。早いトコ頭を切り替えて行かないとね…」

 苦笑しながら言葉を返す。

 

 …ボチボチなんて嘘だ。カメに甘えて泣かせてもらった後で、私は自らの炎で焼かれそうなくらいに怒りの感情に支配され、ほとんど寝付けていなかった。

 

 狙い通りのレース運びが出来なかった自分への怒り、余裕綽々の涼しい顔で私を置き去りにしていったブラックリリィの走り、ゴール直前で私を抜いていった2着と3着の娘たち……。

 まぁ後半は八つ当たりなんだけど、人は一旦心の上辺に浮き上がった感情はそう簡単には下がってくれない。女なんて特にそうだ。

 

「親父さん、人が悪いですよ。ナズナの顔を見れば眠れたかどうかなんて一目瞭然じゃないですか」

 

 目黒さんが眼鏡の位置を直しながら源逸さんにツッコミを入れる。う… 私そんなにすぐ分かるほど腫れぼったい目をしていたのかしら…?

 

「『勝った』『負けた』はウマ娘の常ですからね。デビューから引退するまで10戦以上ずっと1位だったウマ娘なんて、日本の歴史上でも十指に余る数しか居ないんだから、昨日の事はもう忘れましょうナズナ…」

 

 そこで声を上げたのは、私のトレーナーのアイリスだった。




 ここで各メンバーのビジュアルイメージとして、『外見のイメージが近い』原作キャラを列挙しておきます。今後の読書の助けになれば幸いです。
 なお、「顔のイメージが近い」というだけで、性格等はまるで関係ありませんので悪しからず。

スズシロナズナ ≫ シリウスシンボリ
プラチナアイリス ≫ ファインモーション
オカメハチモク ≫ エイシンフラッシュ
スターコロボックル ≫ シンコウウインディ
メルヘンランド ≫ メイショウドトウ
アーモリーフォース ≫ メジロパーマー
ブラックリリィ ≫ マンハッタンカフェ
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