長らくお待たせしました、それではどうぞ
『さて、ここだな』
11Bの義体を載せた台車を運搬していたカフカはある場所に差し掛かると動きを止めた。廃墟都市にある隠されたヨルハ機体用の梯子穴。彼がわざわざ小型二足の姿で来た理由がまさにここにあった。中型は四肢が邪魔になって入れない。大型となっては尚更だ。しかし小型ならば……ギリギリ入ることが出来る。彼はそれを理解しており、茂みの中に隠したあるものを探していた。
『おお、あったあった』
細長く
そして不自然過ぎた。
それは、まさに
『これを、こうして……こうだ』
台車を近くへと持っていき、ゆっくりと11Bの義体をその黒き棺へと入れて蓋を閉じる。もしこの光景をアンドロイドが見ていれば、葬式を思い浮かべてしまうだろう(まずその前にヨルハ機体を機械生命体が連れ去ろうとしているというヤバい絵面にしか見えないのは当然だが)。しかし漆黒というそれを思い浮かべてしまう色に反して、この棺はハイテクな機能を持っていた。云うなれば一時的なコールドスリープである。スリープモードに移行しようとも、論理ウイルスの増殖・進化は完全に止められないが、物理的に凍らない程度に冷やすことで更にウイルスの進行を緩やかに出来るのだ。
『ここを越えればもう少しだからな』
そう言ってカフカは
『どっせェェェい!!!』
『ブーストォォォ!!!』
『ありがとな、プロトタイプ。御前の御蔭で降下出来た。バーニアはイカれちまったが、もう一働きしてもらうぞ』
一安心したがあくまでもここはヨルハが使う道。鉢合わせでもしたら大変だ。
◆◆◆
『漸く着いたね』
また所変わって海の中。
カフカの仲間たちもレスキューしたヨルハを同じく
『改めて見ると……何か……ぞわぞわするでござるな……』
『止めるンだべな、そんな屍に見えるだなんて不謹慎な』
『不謹慎なのは御前じゃい!!!』
『拙者は己の内に秘めていたのに酷いでござる!』
『縁起の悪いことを云うな……! 万一失敗してしまったらどうすんだッ!!!』
『……申し訳無い、言い過ぎたべ』
『……確かに、棺に人形が入っていると否が応でもそう見えてしまうのは仕方ないけどさ』
『この子を……
『収穫もあったでござるからな……』
忍者口調の機械生命体は端に置いた飛行ユニット……その残骸を見つめていた。
潜水艦が深海にある彼等の秘密基地に到着するまで、あと少し……
一方その頃、またまた所変わってヨルハ基地バンカー内部。ブラックボックス反応による暴走によって、超大型機械生命体・エンゲルスを殲滅したヨルハ機体2B及び9Sは、ヨルハ部隊司令官から情報収集の任務を任されていた。二体は準備を整えた後、再び飛行ユニットへ乗るために格納庫へ向かうのであった……
◆◆◆
「みんな……遅いなぁ」
口調とは裏腹にそう言った
「おい、御前も手伝えよ」
「いや……僕、手脚無いんで……」
「生やそうと思えば生やせるだろ!?」
「嫌ですよ、ただでさえ
その姿は
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。ちゃちゃっと終わらせましょう?」
「分かったよ……」
そんなボール……否、彼と話している赤髪の人形が二体。
「そういえば、お二人はどうしてここに? カフカさんとはどういう……?」
「そうだな……云うなれば腐れ縁だ」
「腐れ縁? ……ですか?」
「あの日、レジスタンスのキャンプを探している最中に傷付いた私たちを……助けてくれたの。彼は機械生命体なのに」
彼女はあの日を思い返していた。
「機械生命体でありながら……ですか」
「御前も見たことあるだろう。破壊の限りを尽くす奴等を」
「まぁ……薄らですけど、『数』が凄くヤバかったのは覚えています」
「御前、戦ったことあるのか?」
彼は摩耗した昔の記憶を思い返す。
「ただ……もう昔のことですから、機械生命体とは違うものたちだったかもしれません……」
「エイリアン、ってやつか?
「多分……そうだったと思います。名状しがたき姿をしていたかと」
「ホントなら凄ぇ話だな」
「ホントですよ! ……後方支援だったからあんまり見たことなかったんですけど」
「嘘だろ御前……前線に出てないのかよ……」
「前線に出てた僕はもっと大きいんですから!」
「いや何の話だよ」
「何の話って、僕以外にも僕が沢山居るってことですよ」
「何……だと……」
「つまり、あなたは端末……ってことかしら」
赤髪の温和しい方は勘付いた。
「まぁ、そういうことです。オリジナルの僕は、そのー……エイリアンに対抗するため自己を増殖し、多様性で対抗したんです」
「多様性ってどういう……?」
「ヨルハのクラス分けがそうですね。攻撃型・防御型等……色々創ったみたいです」
「一人工場かよ……」
「凄いことをしたのね……」
「でも結局、エイリアンは倒せたとしても……僕たちは負けてしまったんです。圧倒的物量に……」
「そう……」
「話が脱線し過ぎたな……んで、御前はどうだったんだ?」
話を戻そうと、赤髪の活発な方は彼に話しを促した。
「あ、いけない……そうでしたね。僕はまぁ……半ば捕獲されまして……」
「捕獲って……」
「砂漠をゴロゴロ転がってたら『ようやっと見つけたァァァ!』って声が聞こえたと思ったら……あれよあれよと……」
「私たちとだいぶ違わないか……ってなんで砂漠……」
「まぁ、違いがあった方が良いんじゃないんでしょうか……」
「えぇ……」
「……にしてもこうして僕等を引き入れて……カフカさん達は何をしたいんでしょう?」
「うーん……兎に角『数』が必要だとは云っていたけど……出来れば『質』も……兎に角最後まで付いてきてくれる人手……同志が欲しいって」
「あぁ……だからそれで僕たちが引き入れられて、今回はヨルハ部隊の脱走兵を引き入れようと出張ったんですね! って感心している場合じゃなかった、機械生命体とヨルハ!? 最悪の組み合わせじゃないですか……!」
焦る彼。しかし意外にも
「だからこそ、だと思うわ。例え敵同士だったとしても、もう戦う意味なんて……泥仕合にしかならない……共倒れしないために、手を取る必要があるのよ……」
「確かに……力を合わせれば、きっと……良いかもしれませんね」
「彼奴ら……まだ帰って来ないのか……」
海底の誰にも見つからない秘密基地の中。
仲間たちが集結するまで、間もなく。
出来れば集合して11Bともう一人に自己紹介、といきたかったところですが
まさか途中の描写で詰まるとは思いませんでした。
今度こそカフカ組は合流します
ではまた、お楽しみに