変身とメビウスの輪   作:スカルT

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交渉、もとい勧誘回です


第五層:何者(中)

『ん?どうした、声も出ないのか』

 

カフカは呆気に取られた7Eを見て思わずそう言うと

ハッとした7Eが捲し立てるように言った。

 

「貴方、機械生命体でしょう?どうしてわざわざアンドロイド達を攫う必要があるの!?そもそもどうしてアンドロイドの真似をしているのよ!」

『まぁまぁ、落ち着け。一つずつ説明するからよ』

「こんなところ、直ぐに抜け出してやるわ!」

『おいおい、そりゃ無理な相談だなぁ』

「どうしてよ!どうせ破壊するつもりなら一思いにしてくれた方がマシよ!」

『そもそもここ深海だから、潜水艦使わないと脱出出来ないぜ?』

「へっ…?深…海…?」

 

自分が居る機械生命体のアジトが思わぬ場所だったことで7Eの思考回路はショートしかけていた。カフカは更に驚きの事実を告げる。

 

『ここの空間はスタンドアローン…つまり圏外だ。だからもし御前さんがポッドを所持していたとしても、バンカーとの通信は出来まい』

「そんな…」

『ここの構造はファラデーケージを応用したものを組み込んでいてね。鉄と亜鉛とアルミで多層コーティングを施しているからE()M()P()()()()()も万全だ』

「それは聞いていないわよ」

『さて、御前さんには三つ選択肢がある。ここを脱出し部隊には戻らず脱走兵として逃げ続けるか、ここにおいての記憶を一切消して…遭難者として見つかり部隊に復帰するか、それとも』

 

一拍置いて、カフカは言う。第三の選択肢を。

 

『我等ロボレジスタンスの同志となるか』

「おい、その言い方は悪役っぽいぞ…もうちょっと何か無かったのか」

「あー…ついそれっぽくなってしまったな」

「ふざけないで…何が同志、何がレジスタンスよ!どうせ洗脳とかしているんでしょう!?」

『確かにアンドロイドを攫うというのは強引な手段だろうな…だが、あくまでも我等の同志になるかは各々の意志に委ねている。何名か拒否をする者が居たが、素直にここでの記憶を消して返していたとも。勿論洗脳等はするまい。多少、困難な任務を任せることはあるが』

「ふん!機械生命体の言うことなんて信用できないわ!」

「私たち姉妹が証拠だ」

「どうせ洗脳されているんでしょ、騙されるものか!」

「確かにヨルハの前に現れた機械生命体の多くは木偶だっただろうからそうかもしれないが…此奴程流暢に喋る奴はあまり見たことが無い。じゃあ聞くが、アンドロイドだから御前は信用するのか?」

「そ、それは…」

「違うだろ?機械生命体だから全部悪い奴、アンドロイドだから全部良い奴なんてそんな単純な問題じゃない筈だ」

『デボル、代弁ありがとう。悪いアンドロイドだって居るように、良い機械生命体だっているかもしれない。結局個人個人の問題だ。ヨルハ部隊は発足してまだ日が浅い方だろうから、機械生命体に対してのラーニング不足もあるだろうが』

 

何だかヨルハを貶されたように感じた7Eは言い返した。

 

「あなたは…ヨルハ部隊の何を知っているの!」

『全部とは言わん…だが其方が知らないことも知っている。彼処は危険だ』

「どうせハッタリでしょう!」

『一つ言うなら…アンドロイドの神は死んだ』

「ッ!?」

『人類は、エイリアンが飛来してくるとうの昔に絶滅している…そうだろう?』

「…どうして、それを」

『この身が造られてから何百年と経っているからな、大体想像は付く。そして』

 

カフカは7Eを見据えて、彼女の弱点を突き付けた。

 

『E型の御前さんは…恐らく脱走兵を始末するために、先の作戦に参加したのだろう?』

「なっ…」

『そして、恐らくその対象は俺たちによって匿われている脱走兵なんだろうな』

 

それを聞いた7Eはカフカを押しのけて直ぐさま部屋を出ようとしたが、カフカが手を翳すと彼女は軽く吹っ飛ばされた。

 

「ぐうっ…」

 

壁にぶつかり、苦悶の声を上げる7E。

 

『おっと、彼女は破壊させないぞ?御前さんと同じ客人だからな』

「対象がいる以上、遂行しなきゃいけないんだ…御前には分かるまい!逃げたくても、命令からは逃れられないことを…!!!」

『だから逃げ出したものたちをこうして匿っている。自己満足…エゴなのは分かりきったことだ。だからこそ俺はここを立ち上げたんだ。勿論それだけじゃないけどな。もしこの状況が未来永劫ずっと続くということになってたらこんなことはしなかった』

「どういうことだ!」

『出来れば言うのは後にしたかったが…仕方あるまい』

「早く言いなさい!」

『後悔するぞ?…一つ目は、エイリアン達もとうの昔に死んでいる。だからこの戦争は最早意義を持たない』

「嘘だッ!!!」

『嘘ではない。何百年も前に、当時の機械生命体達が絶滅させた。俺がこのことを知ったのはだいぶ後だったがな』

「そんな…」

『これが事実だ。まだマシな方だがな』

「まだあるの…?」

 

威勢ある声は今や弱々しくなっていた。

 

『二つ目。いずれバンカーは陥落する運命にある泥船だ』

「こんな、こんなことって…」

『バンカーの脆弱性を突いたサイバー攻撃がそう遠くない未来に仕掛けられる。論理ウイルス汚染による同士討ちで誰も居なくなる。悪いことばかりだ。しかし視点を変えてみると案外そればかりではない』

「良いことなんてある訳が…」

『厳しい規律や命令からの解放だ。無論、部隊である以上必要なものであるが…裏切り者の始末や介錯と疲れただろう?』

「それは…」

 

7Eは否定出来なかった。()()()()()()()()()()()()()()よりはまだ良いのかもしれないが、それでも仲間だった者を殺すことは到底気が進むものではない。しかしそうであれと造られ命令される以上、それには逆らえなかった。例え組織にはそういった、誰もやりたがらないことを引き受ける日陰者が必要不可欠だったとしても。

 

『無論、生き残りが居ればの話だが…少なければ少ない程当人にとっての苦痛は増すだろう。かといって部隊全体を救うのは非常に困難なことだ。これまでの所業からトップと交渉が出来るかさえも怪しい。もし出来たとしても快く思わない者も出てくるだろうな』

 

無論それくらいで済むならまだ良い方だが、とカフカは思考する。

 

「じゃあどうすれば…」

『組織全体として難しいなら、個人レベルにするんだ。それでも難しいが』

「個人レベル…?」

『部隊から逃れた脱走兵と僻地で延々と雑務をしているもの等…切り離された個人ならば、匿うことで少なくとも泥船と運命を共にすることから逃れられる。まだ実際ここに居るのは最もほんの一握りだが』

「そういうこと。組織から切り離されて、追っ手とか以外からは気にされない者だからこそ…」

『ヨルハも全滅するのはいただけないと思っている。種の保存という目的だな』

「保存…ね。数…人手が欲しいというのはそういうこと…」

『多ければ多い程編成を分割して、多角的に展開出来るからな。とまぁ…今の時点で話せることはあらかた話したが、どうだね?』

「…私で良ければ、ここに加わらせて欲しい」

『ありがとう、7E。契約成立だ』

「ふっ…貴方の計算通りだったんじゃないかしら?」

『そんなことはない。真実とは残酷なものだ。耐えきれずに忘却を望むモノは少なくなかろうよ』

「もし私が耐えきれなかったらどうして居たの?」

『勿論御前さんが望めばやむを得ず忘却処理を施していたが…ここに連れてきた甲斐があったよ』

「怖いわね、セキュリティを易々と突破されそうで」

『ははっ、買い被り過ぎだ』

 

どうやら彼女は真実の一端を知って逆に吹っ切れたらしい。

賭けではあった。暴走しなかったことにカフカは内心ホッとした。

 

『それと…11Bの件だが』

「私は部隊と関係ないわ。ここの一員になるって決めたから…もう命令を守る必要なんてない」

『感謝する、11Bとも話を付けてくるよ。デボル、先に彼女を大広間へ案内しておいてくれ』

「あいよ」

 

勧誘に時間が掛かりそうな方が意外にもあっさりと纏まったため、肩の荷が下りたカフカは別室へと向かったのだった…

 

 

◆◆◆◇◇◇

 

 

「あら、帰ってきたみたいね」

 

11Bとポポルが居る部屋の扉をコンコンコンと軽く叩く音が聞こえた。

 

『入るぞ』

 

11Bが目にしたのは勿論アンドロイドの姿をした男だった。

 

「貴方は?」

『俺はカフカ。ここの長をしている』

「私を…助けてくれたのは…」

『ああ、()()()()

「貴方が…???」

 

とんでもないことをさらっと言ってのけた目の前の男と刹那に見た奇妙な小型個体が結び付かず、彼女の思考回路は一瞬ショートしかけた。

 

『訳あってこの姿…というより()()()()は当分ここでしか使わないようにしていてね。外に出る時は自我データを別の義体に移動している』

「凄い…でもだったら尚更、どうして私なんかを助けてくれたの?」

『何故、そう思ったのかい?』

「だって、アンドロイドの姿を真似て…ここまで流暢に喋る機械生命体なんて今まで見たこと無かったし…普通の機械生命体より賢いんだなって。そんな貴方が何故本来ならきっと死んでいた私を気に掛けてくれたのか…」

『それには、御前さん達ヨルハにとって辛い事実が関係しているんだ』

「人類なんてもう…存在しないのは、知ってる」

『そうか…それが御前さんの脱走した理由だったんだな』

「うん…それを知って全てが馬鹿馬鹿しく思えてきちゃったから…彼処に居続けてしまったら危ないんじゃないかって」

『その所感は正しい』

「そっか…もうどんなことでも受け止めるから、聞かせて」

 

カフカはエイリアンも居ないこと、そしてそう遠くない未来にバンカーが墜落することを話した。

 

「そ…っか…皆、死んじゃうんだ」

『ああ。ここから話の肝だ』

「どうせ滅ぶなら、何故」

『全体としては無理でも、一人一人なら助けられると思ってな』

「そっか…だからはぐれ者を」

『俺としても数が必要なんでな』

「…私は何をすれば良いの?」

 

あまりにも話がトントン拍子で進むのでカフカは驚く。

 

『我等ロボレジスタンスの同志に…なってくれるのか?』

「私を助けてくれた以上、恩返ししたいの。行くあても無いし…それに、貴方は他の襲ってくる機械生命体と違いそうだから…。同志…か、良いね」

『ありがとう11B。一つ、確認したいことがあるんだが』

「ん?なぁに?」

 

それはそれと切り替え、一つの懸念事項を11Bに伝える。

 

『7Eのことだ。御前さんを破壊しようとした()()()()()なんだが』

「やっぱり、そうだったんだ。もしかして…ここに居るの?」

『先に交渉して同志に入ってくれた。だからもう御前さんが狙われることは一先ず無いと思うが…大丈夫かね?』

「そっか、なら安心だね。大丈夫、いざとなれば戦うよ…腐ってもB型だから」

『その心意気や良し。さて両方纏まったところだし、そろそろ行こう…ポポルも』

「ちょっと待って、一体何処へ連れて行くの?」

「大広間よ、折角だから貴女たちの歓迎会を…ね?皆待っているわ♪」

 

ポポルは11Bの腕を軽く引っ張って行くのであった。

 

 

◇◇◇

 

 

大広間にて

 

『組み合わせが最悪ってそういうことだったのか…』

「ああ、破壊する側とされる側ってことだったんですねー…って流血沙汰になったりとかしませんよね?」

『言い方それで良いのか…?』

『その為にリーダーが直に話付けてんだ、俺たちは信じて待つだけさ』

「デボルさんとポポルさんが戻るのを待つしかないですねぇ」

 

()()()()()が11Bと7Eの関係に納得していた一方

 

『いやぁもう片方はどんな子なんでござるんでしょうねぇ、拙者楽しみでござるなぁ』

『全く…あの剣豪?の名前からは全く考えられんことを発するだべなぁ』

『前から思っていたが…Ms.の喋り方、剣豪というより忍者では?』

『失礼な!拙者はジャキジャキでござるよ!ニンニン等しないでござる!』

 

明らかに忍者の口調で話す()()のたわいもないことで盛り上がっていた…

 




まだまだ拙いので長くなってしまいました。
如何せん長引いてしまうので4000~5000字程度と長めに書いていきたいと思います
次回、漸くカフカの仲間達の名前が明らかになります
次々回はマテリアル諸々の予定です


聞いたことある表現があるのは御了承下さい
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