鉄血紀オルガゲリオン シト新生   作:axois

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第壱話 MA、襲来


 

 

 

 

 

 

 都市まちを包む静寂を破るように、一台の車が奔っていた。

 その青い車を駆る黒髪の女性──葛城ミサトは、目的を果たせず時間を浪費するだけの状況に苛立ちを覚える。その運転席の傍には無造作にIDカードが置かれていた。そこには、銀髪の青年の顔写真と共に「オルガ・イツカ」という名が刻まれていた──。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なんか静かですねぇ。街の中には誰もいないし……」

 

「あぁ、どうにも静かすぎるな。」

 

 俺──鉄華団団長オルガ・イツカは、団員のライドを引き連れこの街を歩いていた。俺は何故こんなところに居るのか。けたたましく電線から飛び立つ鳥を尻目に、これまでの経緯を振り返る。

 

 俺は確かに、あの時死んだ。今思えば、アレは己の不用意が招いたことだ。不意を突くように放たれた銃弾の雨からライドを庇い、残された鉄華団の皆を想いながら俺は力尽きた。その筈だった。

 気が付けば、俺は見慣れぬ土地に居た。ここは天国か地獄か。そう思っていた矢先、ライド、チャド、昭弘の3人の団員と邂逅した。ライドは泣きじゃくって俺に飛びついてきたな──。3人に此処は何処だと聞くと、誰にも分からないようだった。特にライドとチャドはその辺りの記憶があやふやらしく、いつの間にかここに居たらしい。昭弘は、俺と同じだったそうだ。

 暫くして分かったことだが、どうやらここは天国でも地獄でもなく、俺たちのいた世界──ポスト・ディザスターとは別の世界らしかった。右も左も分からなかった俺たちは、それから、他の団員を思い返す暇もないほど、生き抜くために目の前にしがみ付いた。死んだ後に生き抜くってのも変な話ではあるが。

 やっとここ──この世界での生活が安定してきたとき、俺たちの元に一通の手紙が届いた。そして、その手紙の内容に俺たちは戦慄した。

 

 

 その手紙には──俺の名が書かれていた。

 

 

本来この世界に存在していなかった筈の俺の名が、どうして手紙に書かれているのか。それを確かめるため、俺らはその手紙の指示に従うほかなかった。そして俺たちは今、こうしてこの街──第3新東京市を訪れている。

 だが、この規模の都市であるのに、先ほどから人っ子一人の気配すらないのは一体どういうことだろうか。ここはゴーストタウンなのか、はたまた住人が皆避難せざるを得ない何かが起きているのか。嵐の中の静けさという言葉が脳裏に浮かび、嫌な汗が背中を伝う。

 そういや"あの時"も、こんな風に静かだったな──

 

「団長ー!」

 

 思考に耽っているところに、色黒の青年、チャドが走ってくる。

 

「チャドか! 連絡はついたか!?」

 

「ダメだ。どこの電話も繋がらない。」

 

「そうか。やっぱりこの状況は普通じゃねぇみたいだな……」

 

 手紙の送り主──NERVという組織らしい──とやらとは、第3新東京市にある駅の一つで待ち合わせることになっていた。しかし、迎えの者は定刻を過ぎても一向に来る気配がなく、こちらからコンタクトを取るために歩き回っていたのだ。チャドには公衆電話を探させ、NERVに繋がらないかと試みさせていたのだが、結果は先程の通りだった。

 公衆電話が繋がらない、というのは普通では起こり得ない状況だ。やはり何か異常な事態が起きているのだろう。とはいえ、見知らぬ土地では、この状況下で自分たちに出来る対処は限られている。

 

「そういえば、昭弘はどうしたんだ?」

 

「ああ、昭弘なら駅に置いてきた。もし迎えのやつが遅れて来て、俺らと入れ違いになっても困るからな。今頃は暇潰しに筋トレでもしてるんじゃねぇのか?」

 

 この状況で団員が単独行動に出たことにいささかの不安を覚えるが、それが昭弘ならば大丈夫か、とすぐに思い直す。彼は──相棒の言葉を借りるならば──"ガチムチ"であり、ちょっとやそっとのことでは動じないだろう。

 そんなことを考えていると、先ほどから後ろをついてきていたライドが口を開く。

 

「それにしても、迎えの人ってどんな人なんですかねぇ? 変な写真貼り付けてたし……」

 

 手紙に添付されていた一枚の写真に目を向ける。やたら胸を強調したような、女性の写真だ。この女性が自分たちを迎えに来る人物なのだろうが、正直に言って、この写真のせいでNERVという組織の胡散臭さに拍車がかかっていた。しかし、やはり自分たちを知っているかもしれない存在を無視することはできなかった。

 

「さてと……一旦駅に戻るか。昭弘のやつをいつまでも一人で待たせておくのは悪い。」

 

「そうだな。」

 

 そうして一歩を踏み出そうとした刹那、横顔を突風が叩いた。電線は揺れ、街の各所にある電光表示は光を失っていく。

 

 風が吹いて来たであろう方向から、轟音が響いてくる。それは、まるで足音のように一定の間隔で鳴りながら、こちらに近づいて来ていた。

 

「なんだよ、アレ……」

 

「何だありゃ……」

 

 小山の向こうから、モビルスーツの数倍はあろうという人型をした化物が、徐に姿を現した。

 

 

 

 

 

 

 

 第3新東京市の地下、NERV本部では、国連軍の司令官らが対応に追われていた。

 

 

「正体不明の移動物体は、依然本部に対し進行中。」

 

「目標を映像で確認。主モニターに回します。」

 

 発令所の巨大なモニターに、化物──使徒の姿が映し出される。黒光りする、ビルほどの大きさの体躯。ヒト型に似ているがその肩部は不自然なほど広く、首から上が存在していなかった。代わりに胸部には頭部と思しき仮面が付き、その下には骨のような装甲に覆われた赤い球体がギラギラと光っている。

 その生物としても兵器としても規格外の姿に、発令所にどよめきが走った。

 

「構わん! 攻撃開始!」

 

 国連軍司令官の指示のもと、自走砲、戦車、VTOL、航空爆撃機といった国連軍の戦力が一斉に使徒に対して攻撃する。

 

「目標に全弾命中!」

 

「目標は依然健在。」

 

 爆煙の中から、傷一つついていない使徒が姿を現す。使徒は砲撃をものともせず、その歩みを進めていた。

 

「航空隊の戦力では足止めできません!」

 

「VTOLは全機後退! この非常事態だ。都市部だろうが構わん! モビルスーツも全て出撃させろ!」

 

「モビルスーツ隊、出撃!」

 

 

 

「フ……」

 

 忙しなく声が飛び交う発令所を俯瞰するように、金髪の男と黒髪の少年が並んでいた。金髪の男は、止まらない使徒の侵攻に慌てふためく国連軍とは対照的に──まるで初めから事態を予測していたかのように──笑みを浮かべていた。

 

「君は、アレをどう見た。三日月・オーガス。」

 

 金髪の男が問う。

 

「すごかったな──凄く綺麗だ。」

 

 三日月と呼ばれた黒髪の少年は、想いを馳せるように答える。このモニターに映る化物が、かつて自身が戦ったあの巨鳥と同じモノのように思えて──

 

「あの時の、鳥みたいだ」

 

 そう答えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 俺たちは、突如始まった戦闘に、巻き込まれては危険だと判断し、距離を取るべく疾走していた。

 爆音が走り、衝撃に足を取られる。

 

 

「団長!? 何やってんだよ、団長!」

 

「こんくれぇなんてことはねぇ。お前らの背中は俺が守る。今は走れ!」

 

 今は生き残ることだけを考えろと、団員たちに怒号を飛ばす。体勢を立て直しつつ化け物の方を振り返ると、人型機動兵器、モビルスーツの部隊が化物へと果敢に立ち向かっていた。

 

「アレは──グレイズ! ギャラルホルンが此処にもいるのか!?」

 

 ギャラルホルン。自分たちの前に立ち塞がり、何度も戦って来た敵。その主力たるモビルスーツであるグレイズが化物と戦っている。

 

「まさか、俺たちを呼びつけたのってギャラルホルンなんじゃ……」

 

 チャドが走りながら問う。自分たちが呼ばれていた先に、かつての宿敵であった組織のモビルスーツ。確かに、あまりにも出来過ぎている。

 

「だがそんなことは関係ねぇ! 今は奴らがあの化物を足止めしてくれてるんだ!」

 

 それを利用して逃げ延びてやろうぜ──そう続けようとした時、鈍い金属音が鳴り響いた。音の方を見ると、不用意に近づいた一機のグレイズが、光の杭に貫かれていた。

 

「アレはビーム兵器!?」

 

 チャドが叫ぶ。後から知ったことだが、厳密にはあの光のパイルは実体を持ち、発光した杭がパイルバンカーのように射出されたものなのだという。しかし、必死に走っていた俺たちにはそんなことは分かる筈もない。俺たちの目には、それは確かにビーム兵器のように見えていた。

 

 ビーム兵器を持っているということは──あの化物の正体は──

 

「モビルアーマーじゃねぇか……」

 

 

 

 

 

 

 

「おのれ! 私の部下をよくも!」

 

 使徒と交戦していたモビルスーツ隊の隊長の男は、自身の部下を撃墜されて激しく憤っていた。過ちを繰り返し、自身の力量というものは嫌というほど痛感した筈だった。だが、あれからモビルスーツの操縦訓練も何度も繰り返した。今の自分ならやれる──そう思い、部下に対する攻撃で隙を晒していた使徒に対し突撃した。

 

「イオク様! お下がり下さい!」

 

「所詮は単騎! 恐るるに足らず!」

 

 部下の静止も聞かず、敵の背後に素早く回り込む。

 

「イオク・クジャンの裁きを受けよ!」

 

 彼が放ったブレードの一撃は、確かに相手に致命打を与えるものだった──相手がモビルスーツであれば。

 

「何だこれは……」

 

 敵の腹部目掛けて突かれたブレードは、光の壁に阻まれ、敵に届くことはなかった。A.T.フィールド──使徒が持つ、絶対不可侵領域。ただのモビルスーツに、これを突破する手段はなかった。

 使徒の腕がぐにゃりと曲がり、呆然とするイオクのレギンレイズを鷲掴む。そして、そのまま機体を中空へと投げ飛ばした。

 

 

「団長! こっちへ来る!」

 

「まずい! チャド、ライド、伏せろ!」

 

 投げ飛ばされたレギンレイズは、奇しくもオルガたちのいる方へと飛来した。32tの金属塊の衝撃は、近くで伏せていた彼らを吹き飛ばした。

 

 

 

 

 

 

「痛ってぇ……」

 

 衝撃で吹き飛ばされ、全身を打ちつけた痛みに思わず声を漏らす。脳がシェイクされる感覚から醒めると、投げ飛ばしたモビルスーツにトドメを刺すべく、化物が跳躍しているのが分かった。どうやら機体を踏み潰してしまうつもりらしい。モビルスーツより二回りほど巨大なあの化物が近くに着地すれば、その衝撃は先ほどの比ではないだろう。

 傍らには、吹き飛ばされた痛みで蹲るライドの姿があった。

 

 俺は咄嗟に──鉄華団団長の当然の責務として──ライドを庇った。

 

 

 

 

 

 

 俺が目を覚ますと、辺りには瓦礫が散らばり、ひどい有様だった。あの化物が自分たちのすぐ傍まで来ている。どうやらモビルスーツを完膚なきまでに踏み潰したらしく、爆発した痕跡もあった。俺は一人、たまたまビルの影に転がっていて、爆風からは助かったようだ。

化物は、他のモビルスーツの攻撃に反応して、自分たちの側から離れていった。安堵したのも束の間、俺は大事なことを思い出す。

 

 そういえば、団長とライドは──

 

 

「あぁ……あぁ……」

 

 ライドの声が聞こえた。鈍い痛みが走る身体に鞭打ちながら、声の方へ向かう。

 そこには、無事なライドの姿と──金属片で串刺しになった団長の姿があった。

 

 

「なんて声、出してやがる……ライドォ!」

 

「だってぇ……また俺なんかの為に!」

 

 ライドが泣き叫ぶ。

 俺、チャド・チャダーンにはこの状況には見覚えがあった。不意打ちを受けて何もできず、団長が死んだ"あの時"と同じだ。

 

「団員を守んのは俺の仕事だって言っただろ……」

 

「でも!」

 

ライドとの問答の末、団長はふらりと立ち上がる。

 

「俺は止まんねぇからよ……止まるんじゃねぇぞ……」

 

 団長はそう言い遺し、パタリと倒れて動かなくなった。団長の指は、流れる血は、"あの時"と同じで、前を指差していた。

 

 

 一言一句同じ臨終を迎えた団長に対して、俺は何故だが笑いが込み上げて来た。心では笑うような状況ではないと分かっていても、何故だか可笑しいという感情は止まらない。しかし、それをかき消すように、車のブレーキ音が響いた。

 

「ごめーん、お待たせ!」

 

 現れた青い車から、手紙の写真に写っていた女性が顔を覗かせた。

 

 

 

 

 

 

 良かった。目的の人物が見つかった。これで自らの任務を達成できたと安堵を覚える。自分の目の前にいる青年──自分からしてみれば少年と言ってもいい──の特徴を観察する。色黒で、ガタイの良い19歳程度の少年。間違いない。彼がサードチルドレン、オルガ・イツカだ。

 

「あなたがオルガ・イツカ君ね。さあ、乗って!」

 

 そう促しながら、瓦礫の飛散した道を突っ走ったせいで傷だらけになった愛車の心配をしていた──が、少年は困惑した顔のまま、車に乗ろうとする気配がない。訝しんだ顔を向けると、少年は答えるように言った。

 

「あの……俺はチャド・チャダーンです。オルガ団長なら、そこに──」

 

 言われた方を見れば、泣き腫らしている赤毛の少年と、血を流してピクリとも動かない、色黒で、ガタイの良い19歳程度の少年が倒れていた。

 

「まさか……」

 

 チャドと名乗った少年は何も答えない。

 やってしまった。サードチルドレン、オルガ・イツカは死亡し、自分葛城ミサトに課された仕事は果たすことが出来なくなってしまった。己の遅刻のせいで子供を死なせてしまったという重責より先に、このまま作戦部長という使徒殲滅を指揮する立場に居させてもらえるのか、などと自分本位な考えが出てしまう自分に嫌悪を覚える。

 

「──とりあえず、二人とも乗って。ここは危険だわ。」

 

「その危険な状況に俺らが放りこまれたのはどこの誰のせいだろうな。」

 

「それはこちらの不手際としか言いようがないわね。とにかく、今は安全なところへ──」

 

 言いかけて、自分を責めた声に違和感を覚えた。チャドという少年の声ではない。泣いていた赤毛の少年の声とも思えない。

 声の主は、死んでいたはずの少年、オルガ・イツカだった。

 

 

 

 

 

 

 

 俺は困惑していた。咄嗟にライドを庇った後、異物が身体に何本も刺さっていることを自覚した時は流石に死を覚悟した。否、一度だけ味わったことのあるあの感覚──死に至る時の感覚に襲われ、自らの死をはっきりと認識した。可笑しな話で、死ぬのは2回目だなあなどと、どこか他人事のように考えていたのだが。

 

 しかし、俺はこうしてまだ生きている。いつの間にか出血もすっかり止まっていた。チャドもライドも、約束の時間に遅れた目の前のオバさんも、信じられないような表情で俺を見ている。だがそんな顔で見ないで欲しい。一番驚いているのは俺自身なのだ。

 現状もよく考えずにオバさんに皮肉を言ってしまったが、自分のことは取り敢えず後で考えることに決めた。まずは筋を通させなければならない。

 

「アンタがなかなか来なかったせいで、ウチの団員が死にかけたんだ。この落とし前……アンタどうつけるつもりだ?」

 

 オバさんは『落とし前』という言葉に、まるでヤクザねと小声で呟いた後、埋め合わせは後でするから早く車に乗れと言ってきた。これ以上ここで問答しても仕方ないので、俺たちは素直に従うことにした。

 

 

 

 

「なぁ、アンタらは一体何者なんだ。なんで俺を知ってる?」

 

 戦闘が起こっている区域から離れ、比較的安全になったところで俺は疑問をぶつけた。聞きたいことは沢山あるが、先ずは一番大事なことだ。

 

「私たちは特務機関NERVネルフ、国連直属の組織よ。」

 

「特務機関? 聞いたこともねぇな。」

 

「今は詳しいことは話せないけれど……あの巨大生命体、私たちは使徒と呼んでいるわ。それを殲滅するための組織よ。最高機密だから、一般人にはほとんど情報が開示されてないけどね。」

 

「胡散臭すぎて呆れるな。……で、アンタらはギャラルホルンとはどういう関わりなんだ?」

 

 ギャラルホルンのモビルスーツがいたことから、NERVとやらとギャラルホルンは無関係ではない。そう踏んで質問を飛ばすが、返って来たのは素っ頓狂な答えだった。

 

「ギャラルホルン? それこそ聞いたこともないわね。」

 

「聞いたこともないって……アレはギャラルホルンのモビルスーツじゃないんですか?」

 

 思わずライドも会話に加わる。

 

「あれはEB-06 グレイズ。国連軍が正式採用しているモビルスーツよ。」

 

 一体どういうことだろうか。ここは俺たちが元いた世界とは違う世界で、だが見覚えのあるモビルスーツが存在して、しかしギャラルホルンではなく国連とかいう組織のモビルスーツだと言う。正直頭がこんがらがりそうだったが、どうやらこの世界は、自分たちが元いた世界と全く無縁というわけではないらしい。

 

「さて、これからジオフロントへ向かうけど、二人にはシェルターで降りてもらうわ。残念ながら、部外者をNERV本部内に立ち入らせることは出来ないの。」

 

 そう言いながら、オバさんはチャドとライドを一瞥した。

 

「部外者って……」

 

「おい、そりゃあ筋が通らねぇだろ。アンタらNERVが俺らを呼びつけたんじゃねぇか。」

 

 NERVとやらに呼びつけられ、命の危険を冒してまでやって来たというのに、部外者呼ばわりされるのは舐められているとしか思えなかった。だが俺の抗議は、何か勘違いしてるようだけど、とオバさんに一蹴された。

 

「私たちNERVが呼び出したのはオルガ・イツカ君、あなた一人だけよ。この先はあなた一人に来てもらうことになるわ。」

 

「なんで俺だけなんだ。アンタらは俺の何を知ってる?」

 

「それについて……今は私の口から言うことはできないわね。」

 

 また最高機密とかいう奴なのだろうか。埒が開かない。だが、"今は"ということは、この先で話してくれる機会があるということだろう。

 

「団員たちの安全は保証してくれるんだろうな?」

 

「それについては心配ないわ。ジオフロントのシェルターは、この世で一番安全なところよ。」

 

 この世で一番などとまたしても疑わしい言葉が聞こえたが、そこまで言うのなら、それなりに頑丈なシェルターなのだろう。団員と一生の別れになる、という訳では無さそうなので、俺たちは仕方なくオバさんの言葉に従うことにした。

 

 そう言えば、何か大事なこと忘れてるような──

 

 

 

 

 

 

 

「ふんっ……ふんっ……ふんっ……」

 

 駅には、一心不乱に筋トレする一人の男がいた。

 


 

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