鉄血紀オルガゲリオン シト新生   作:axois

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第弐話 天使と悪魔と


 

「で、ここは何処なんだよ。」

 

 チャドやライドと別れた後、俺とNERVのオバさん──葛城ミサトと言うらしい──は、NERV本部に入った。ミサトさんに連れられるまま歩いていた俺だが、いつまで経っても目的地に着かないことに流石に違和感を覚え始めていた。

 

「おっかしいわねぇ…確かこの道のはずよねぇ~。」

 

 冷や汗を垂らしながらそうのたまう。どうやらミサトさんは道に迷ったらしかった。

 

「おい、アンタが付いてこいって言うから俺は着いてきてるんだぞ。この落とし前、アンタどうつけるつもりだ?」

 

「ごめんねー。私もまだ慣れてなくってぇ~。」

 

「なんかここさっきも通らなかったか?」

 

 残念ながら俺はこの施設に来たのは初めてなので、肝心のミサトさんが道を覚えていないとなると打つ手がない。どうしたものかと俺が考えあぐねていると、ミサトさんは心を決めたように顔を上げた。

 

「でも大丈夫! システムは利用するためにあるものね。」

 

 

 

 

 何やら呼び出しのアナウンスがあって暫く。エレベーターの扉が開くと、そこには白衣を着た金髪染めの女性が立っていた。

 

「あ、あらリツコ……」

 

「何やってたの葛城一尉。人手もなければ時間もないのよ。」

 

「ごめん!」

 

 リツコと呼ばれた女性の、静かに怒りを孕んだその様子にミサトさんは気圧されていたが、口ぶりを見るに二人は友人らしかった。

 リツコさんは呆れたようにため息を吐くと、こちらを一瞥した。

 

「例の男の子ね。」

 

「そう。モンターク機関の報告書による、サードチルドレン。」

 

 聞き覚えのある単語が耳に入り、俺が何故ここに呼び出されたのか合点が行く。モンターク──マクギリス・ファリドの裏の名。前の世界でのビジネスパートナーであり、アリアンロッド艦隊に喧嘩を売って鉄華団を壊滅に追いやった一因を作った男だ。確かに彼なら、俺の名前を知っている。

 奴もこの世界に転移してきていたのか──。俺は早くあいつに顔を合わせて、その顔面を一発ぶん殴ってやりたかった。彼には鉄華団本部からの脱出を手伝ってもらったという恩があるし、奴の口車にまんまと乗せられた俺にも責任はあるが、それでも一発殴っておかないと気が済みそうになかった。

 

 それはそうと──先ほど俺は『男の子』と呼ばれたが、こいつらはどうも俺のことをガキ扱いしているらしい。それが気に食わなかったので、リツコさんの挨拶に対し、俺は舐められないように出来るだけ堂々と挨拶を返した。

 

「俺は、鉄華団団長……オルガ・イツカだぞ……!」

 

 

 

 リツコさんの案内で、俺たちは、赤みがかった妙な液体が溜まっている貯水槽のような場所へ出た。

 

「あの……この赤い水みたいなのは何なんだ?」

 

「それについては追々説明するわ。今は時間がないの。」

 

 またはぐらかされてしまった。時間がないのは本当なのだろうが、それにしても妙な所が多い組織だ。マクギリスが関わっているのなら頷ける話でもあるが。

 

 

「ここよ。」

 

 連れられてたどり着いたのは、真っ暗で、だだっ広そうな部屋──と言うより空間だった。おい、真っ暗じゃねぇかと俺が言うやいなや、照明が点けられる。

 

「!?」

 

 目の前に、巨大な悪魔の顔のようなものが現れる。あまりにも突然のことだったため、心臓が止まりそうだった。いや、本当に止まっていたかもしれない。俺はこんなにビビリだっただろうか。俺の心臓止まるんじゃねぇぞ……

 冗談はさておき、目の前の顔のようなものを観察する。よく見ると、首から下は赤い水に浸かっており、それがヒト型を模していることが分かった。

 

「これは……モビルスーツ?」

 

「違うわ。」

 

 俺の言葉に、リツコさんが解説を始める。

 

「汎用ヒト型決戦兵器、人造人間エヴァンゲリオン。その初号機。建造は極秘裏に行われた。

 我々人類の、最後の切り札よ。」

 

 確かに、モビルスーツにしては妙に大きい。あの使徒とかいう化物と戦うにはおあつらえ向きだろう。

 

「なるほど、これがアンタらの仕事って訳か。」

 

 

「そうだ。」

 

 上の方から声がかけられる。声の主は、ヒゲを生やしたサングラスのおっさんだった。どうやらかなり偉い立場の人間らしい。すっかりマクギリスが現れるものだと考えていた俺は拍子抜けしてしまい、誰なんだよと思わず声を漏らす。

そんな俺を気にも止めず、おっさんは俺たちを見下ろしたまま呟く。

 

「フッ……出撃。」

 

「出撃!? 零号機は凍結中でしょ? パイロットが居ないわよ!」

 

 何やらミサトさんが騒ぎ始め、リツコさんに問い詰め出した。リツコさんは、他に道はないわ、と冷たく言い放つ。俺には何の話をしているのか正直ピンと来なかったので、そのまま二人が言い合っているのを黙って聞いていた。だが、そんな俺に不意に言葉がかけられる。

 

「オルガ君、あなたが乗るのよ。」

 

「は?」

 

 リツコさんの言葉に耳を疑った。確かに俺はモビルワーカーでの実戦経験はあるが、モビルスーツの操縦経験はゼロだ。その俺に、このよく分からない機体に乗って、アレと戦えというのか。

 

「待ってくれ。俺はモビルスーツで戦った経験はねぇ。あの化物に確実に殺されるぞ。」

 

「そうよリツコ。あの綾波レイでさえ、EVAとのシンクロに7ヶ月かかったのよ。今来たばかりの彼には、とても無理よ。」

 

 ミサトさんも俺をいきなり実戦に投入することは理解していなかったのか、リツコさんに反論する。しかし、リツコさんは依然として毅然に言い放つ。

 

「今は使徒撃退が最優先事項です。そのためには誰であれ、エヴァと僅かでもシンクロ可能と思われる人物を乗せるしかないのよ。」

 

「分かっている筈よ、葛城一尉。」

 

「……。」

 

 

 誰であれ、動かせる可能性があるなら乗せるしかない。つまり、俺にこのエヴァンゲリオンとやらに乗って、あの化物に殺されてこいと、そう言っているということだ。冗談ではない。もう都合の良い道具として使い潰されるのは御免だ。こいつらはまるで、CGSのあいつらと同じではないか。

 

 にわかに足下が揺れる。使徒の攻撃の衝撃がここまで届いてきたらしい。

 

「オルガ君、時間がないわ。」

 

「乗りなさい。」

 

 いつの間にか、先程まで俺の出撃に反対していたミサトさんも、俺に乗れと促してきた。何とも調子の良い人だ。

 

 

「乗るなら早くしろ。でなければ帰れ!」

 

 サングラスのおっさんも痺れを切らしたのか、俺に向かって言い放つ。だが、俺はそれを都合よく受け取ることにした。

 

「さてと……帰るか。」

 

 そう言って立ち去ろうとした刹那、ピギュ、と思わず声が漏れた。気が付くと、ミサトさんが俺の襟首を掴んでいた。

 

「あんたまだ生きてるんでしょ!?だったら──」

 

 死んで来なさい。暗にそう続けている気がした。彼女には俺が殺されても死なないようにでも見えているのだろうか。いや、先ほど何故かそれを実演してしまったのだが──随分と舐められたものだ。

 

 

 だが──このまま舐められっぱなしというのは面白くない、と考えている自分がいた。そうだ。俺は何時だって粋がって、最高にカッコいいオルガ・イツカでなければいけないのだ。なら──

 

「ああ分かったよ! やるよ! 乗りゃあいいんだろ!」

 

 この先にどんな地獄が待っていようと──

 

「どうせ何処にも逃げ場なんてねぇんだ。俺が、コイツに、乗ってやるよ!!」

 

 ここで死ぬようなら、所詮それまでだったということ。俺は、死んでたまるかという意地と、自分は死なないという根拠の足りない(・・・・)自信とともに、この機体──エヴァンゲリオン初号機に乗ることを決意した。

 

 

 

 

 

 

 

『冷却完了。』

 

『了解。エントリープラグ、挿入。』

 

 俺はエントリープラグとかいうコックピットのシートに座り、発進のシークエンスが完了するのを待っていた。

 このエヴァンゲリオンとやらは、モビルスーツとは違って起動に少々面倒な手順を踏む必要があるらしい。パイロットが限定されている話といい、こんなものが人類最後の切り札であるとは不安になる話だとつくづく思う。

 そういえば、結局ここまでマクギリスと会うことはなかった。モンタークという名は偶々一致していただけで、実はマクギリスとは全く関係ありませんでした、などというオチではないかと不安になっていると、エントリープラグ注水、というアナウンスとともに、足元から生温い感覚が伝ってくる。下の方から、橙色の水が上がってきていた。

「は?待ってく──」

 

 言い終わらないうちに水はエントリープラグ内を充す。俺は咄嗟に息を止めた。が、それもすぐに持たなくなり、俺は意識を手放した。

 

『大丈夫。肺がL.C.L.で満たされれば、直接血液に酸素を取り込んでくれます。すぐに慣れるわ。』

 

 朧げながらそんな声が聞こえ、水が肺に入る感覚とともに意識を取り戻す。言われてみれば、確かにその水の中で呼吸ができた。だがリツコさん、そういうことはもう少し早く言ってくれ。先程決めたはずの志が早速折れそうになる。

それにしてもこの水は何なのだろうか。どの道ただの水でないことは間違いない。考えても仕方ないと思考を放棄し、再びアナウンスに耳を傾ける。

 

『第2次コンタクト入ります。』

 

『阿頼耶識シンクロシステム、神経接続開始。』

 

 一瞬の脊椎が疼く感覚。なるほど、操縦系は阿頼耶識らしい。阿頼耶識システムは脊椎に注入したナノマシンを介した神経接続システムのことだが、その手術を受けている俺なら確かに動かせそうだ。阿頼耶識システムを使っているあたり、ミサトさんの言う通り、人体改造を忌避しているはずのギャラルホルンとこの組織は関係がないらしい。

 

『EVA初号機、射出口へ。』

 

『進路クリアー、オールグリーン。』

 

『発進準備完了。』

 

 やっと発進できるようだ。もしこの先で再びコレに乗ることになったら、もう一度この過程を挟まねばならないのか。そう思うと辟易とした気分になりそうだったが、今は目の前に集中しなければならない。ここでふと、モビルスーツが出る時は口上を述べるのがお約束だったことを思い出した。ならば──

 

 

「オルガ・イツカ、エヴァンゲリオン初号機、出──」

 

『発進!』

 

 ミサトさんの掛け声と共にずんと身体が沈み、深々と舌を噛んでしまった。発進の合図は彼女が行うらしい。

 激しく揺られながら、全く締まらない初陣の出撃になってしまったものだなどと考えていると、今度は急激に身体が浮き上がる感覚が襲ってくる。2m近い長身のせいか、頭を天井に派手にぶつけた。首が変な方向に曲がった気がするが、安全設計はどうなっているのだろうか。

 

『最終安全装置解除! エヴァンゲリオン初号機、リフト・オフ!』

 

 肩部のロックが外され、俺を乗せたエヴァ初号機はぐらりと前傾姿勢をとる。正面を見ると、既に使徒の姿がそこにあった。

 いきなり敵前に放り出されたことに悪態を吐きながら、舌と首の痛みを忘れて戦闘に備える。

 

『オルガ君、今は歩くことだけを考えて。』

 

 歩く──阿頼耶識でヒト型のものを動かすのは初めてだ。全く未知の感覚だが、阿頼耶識システムはそもそもモビルスーツを自分の手足のように操るためのシステムである。俺に出来ないはずはない。

 そっと、足を進めることをイメージする。エヴァ初号機の長身の体躯が、俺の体格と妙に一致する感覚。気が付けば、エヴァ初号機は足を一歩前に出していた。

 

 思わず口角が上がる。間違いない。この初号機は、自分の身体と同じように動いてくれる。なるほど、これほどまでにしっくりくるとは、阿頼耶識で動かすモビルスーツが強い訳だ。

 調子に乗った俺は、丸腰のままなのも気にせず使徒に向かって駆け出していた。足を止めるな!

 

『オルガ君!一旦足を止めて!』

 

「俺は止まんねぇからよ……」

 

 ここで足を止めてしまっては、使徒にただ隙を晒すだけになる。俺はそのまま使徒に突撃した。しかし先程までのほほんとしていた使徒は、ゆらりとした動きで俺のタックルを躱す。

 だが避けられることは想定済みだ。俺は体勢を立て直すべく、強く踏み込んでブレーキをかける。だがその時、足元からグシャリという感覚が伝わってきた。

 ──どうやら車を踏み潰したらしい。バランスを崩した俺と初号機は、そのまま体勢を崩して倒れた。

 

 

 

 

 

 

 

『ぐっ!』

 

 発令所には、オルガの呻き声とともに警報が鳴り響いていた。

 

「頭部破損、損害不明!」

 

「活動維持に問題発生!」

 

 勢い余って転倒したために、初号機は頭部を強打してしまったらしい。ミサトは急ぎ状況を確認させる。

 

「状況は!?」

 

「シンクログラフ反転、パルスが逆流しています!」

 

「回路遮断、堰き止めて!」

 

「ダメです!信号拒絶、受信しません!」

 

 リツコがすかさず指示を出したものの、シンクロシステムの異常は収まらない。

 

「オルガ君は!?」

 

「モニター反応なし、生死不明!」

 

「初号機、完全に沈黙!」

 

 主モニターには、前を指さしたままうつ伏せになるという、妙なポーズを取った初号機が映し出されている。初号機は完全に停止しており、再起動する気配はなかった。

 ミサトは苦渋の決断を下す。

 

「ここまでね……。作戦中止!パイロット保護を最優先!プラグを強制射出して!」

 

 

「ダメです!完全に制御不能です!」

 

「何ですって……!?」

 

 エントリープラグが射出できない。その報告にミサトは青ざめた。それは、貴重なエヴァパイロットを、オルガ・イツカという一人の少年を救出できないことを意味していた。

 使徒が、ある意味自滅した初号機に対し、引導を渡すべくゆっくりと歩みを進める。

 

 

 

 

 

 

 俺は自分の軽率な判断を酷く後悔した。機体を自分の身体のように動かせるといっても、その感覚に完全に慣れたわけではなかったのだ。

 痛む頭の中に、言葉のような何かが流れ込んでくる。強い拒絶。それはまるで、ここはお前の場所じゃない、ここから出て行けと言っているようだった。俺は、これに乗る資格がないということなのか──。

 

 使徒が腕を伸ばし、こちらを掴もうとしていた。あれだけ啖呵を切っておいてこのザマか。すまねぇ、チャド、ライド、昭弘……。俺はここまでみたいだ──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

    連れて行ってくれるんだろ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ!」

 

 

 あの声が聞こえる。あの目が俺に訴えてくる。

 そうだ──まだ終われない。このままじゃ、こんなところじゃ終われねぇ! だろ──?

 

 俺は、思わず叫んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ミカァッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 相棒の名を──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 刹那、轟音が響き渡り、土煙が辺りを包む。

 

 

「一体何が!?」

 

 主モニターの映像が回復すると、その轟音の主が姿を現した。

 

 

「アレは──」

 

 

 地の底から現れたそれは、黒鉄の戦棍を構え、反応が遅れた使徒の顔面を叩き潰した。

 

 

「ガンダム──」

 

 

 

 

 

「劇的な舞台に似つかわしい、劇的な演出だな。三日月・オーガス。」

 

 モニターに映る悪魔──ガンダムの登場を、全て想定通りだと言わんばかりの笑みと共に眺める男。しかしその眼は、まるで英雄を前にした時のように、無邪気に輝いていた。

 

「さあ、見せてくれ。君たちの、全てを手にすることのできる輝かしい力を──」

 

 

 

 

 

 不意打ちを喰らい体勢を崩している使徒に、悪魔の名を冠したガンダム──バルバトスが迫る。

 しかし、使徒もただ黙ってやられる訳ではない。突如現れた光の壁が、バルバトスの攻撃を弾いた。

 

 

「A.T.フィールド…!」

 

 絶対不可侵の壁の出現に狼狽するミサトとリツコ。

 

「ダメだわ……! A.T.フィールドがある限り──」

 

「使徒には接触できない……!」

 

 初めの一撃は、不意打ちであったために使徒がA.T.フィールドを展開する間もなく攻撃を当てることができた。だが、同じ手は2度も通用しない。使徒に敵として認識されてしまった以上、いくら2基のエイハブ・リアクターにより高出力を誇るガンダム・フレームとて、絶対不可侵のA.T.フィールドを破る手段はなかった。

 

「チッ……邪魔だな……!」

 

 バルバトスを操るパイロット、三日月・オーガスが苛立つように声を上げた。

 

 

 

 

 

 

 

 ああ──やっぱりお前だよな、ミカ。お前がこんな所で俺を終わらせてくれる筈がねぇ。

 見るのは2度目の、使徒の放つ光の防護壁。アレがある限り、モビルスーツには使徒は倒せないらしい。だが俺が乗っているのは、使徒に対する人類最後の切り札。なら、俺にできることは──

 

「ああ、分かってるよ。ミカ……!」

 

 

『エヴァ、再起動!』

 

『そんな……動けるはずはありません!』

 

『頭部、復元!』

 

『すごい……』

 

 

 予期せぬ初号機の再起動にどよめく発令所の声を尻目に、俺は止まんねぇからよ──と、気合いで立ち上がると、俺はあの光を壁を破るイメージを浮かべた。これが対使徒の最終決戦兵器なら、何かあの壁を破る手段があるはずだ。

 だが、一向に壁が消える気配はない。

 

『オルガ、壁をイメージして。』

 

「ミカ!?」

 

 三日月から通信が入る。こっちの世界に来てから彼と話すのは初めてだ──それ以前に、彼と会えるとも思っていなかった──が、邂逅に耽っている暇はなさそうだと通信に耳を傾ける。

 

『アレと同じ、光の壁をイメージするんだ。誰にも邪魔させない、拒絶の壁。……ってチョコの人が言ってた。』

 

 チョコの人、か。やっぱりマクギリスじゃねぇか……これを仕組んだのは、と呆れる。だが、今は彼の助言が有り難かった。──後で殴ってやることに変わりはないが。

 アドバイスのとおりに、俺は強い拒絶をイメージする。俺たちの前に立ち塞がる奴は全部ぶっ潰す、誰にも邪魔させない。

 

 

「……ちょっとばかしコツは要るな。」

 

 だが、俺の思いに応えてか、初号機は使徒と同じ光を展開した。その光は壁となり、使徒の放つ壁と混ざりあうようにそれを蝕んでいった。

 

「今だ。やっちまえ、ミカァ!」

 

『ああ……!』

 

 ミカ──バルバトスがメイスを振るう。初号機の放った光のおかげで微弱になっていた使徒の壁は、その一振りで容易く破壊された。

 使徒にもう、勝ち目は残されていない。

 

 絶対の防護壁を剥がされた使徒は焦るように瞳から閃光を放った。だが、バルバトスはそれを巧みに受け止め弾き返す。ビームを完全に凌ぎ、使徒に接近したバルバトスが蹴りを放った。使徒は抵抗虚しく吹き飛ばされ、ビルの壁面に叩きつけられた。

 バルバトスはすかさず追撃の蹴りを入れ、使徒を踏みつけて拘束する。そのまま2本目のメイスを手に取り、その双棍を以って使徒を蹂躙した。

 

『まさに、太鼓の殺人ね。』

 

 リツコさんがそう呟いたのは聞かなかったことにした。

 

 

『……ッ!』

 

 ミカの声で、意識を戦いに戻す。バルバトスに嬲られ、そのまま息絶えるかに見えた使徒が急に起き上がったのだ。

 使徒は最後の力を振り絞り、バルバトスに組みつこうとしていた。

 

「団員を守んのは俺の仕事だ!」

 

『オルガ?』

 

 躊躇なくバルバトスと使徒の間に飛び込む。俺がそんなことをせずともミカは回避できていたようだったが、使徒はそのまま初号機に組みつく形になった。使徒の腹部の赤い球が発光を始める。

 

『自爆する気!?』

 

 なるほど、そういうことか。だが悪い気はしない。このまま使徒が自爆すれば、俺と奴は相打ちという形になる。

 

 

 だからよ……止まるんじゃねぇぞ……!

 

 

 俺は閃光に包まれた。

 

 

 

 

 

 

 


 

「……ねぇオルガ。俺が避けてそのままトドメを刺せば良かったんじゃないの?」

 

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