鉄血紀オルガゲリオン シト新生   作:axois

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第参話 見知らぬ、戦場


 

 NERV本部内、某所。

 暗然たる部屋に、8人の男が集っていた。否、そこに居るのは碇ゲンドウ──NERV本部総司令、人呼んでヒゲとサングラスのおっさん──ただ一人。他の7人は遠隔地から通信しており、ホログラムとして映し出されているに過ぎない。

 

 

「使徒再来か。あまりに唐突だな。」

 

 男の一人が発言する。

 

「300──15年前と同じだな。これが、人類を窮地に追いやった使徒の本性か。」

 

「心配は要らない。我々の先行投資が無駄にならなかった点に於いてはな。」

 

「左様。」

 

 その会議──と言うには少々論議性を欠いたものではあるが──は、淡々と進んでゆく。

 

「今や周知の事実となってしまった使徒の処置、情報操作、NERVの運用は迅速かつ適切に処理してもらわなければ困る。碇ゲンドウ。」

 

「その件については既に対処済みです。ご安心を。」

 

「しかし碇君。NERVとエヴァ、そしてガンダム・フレームはもう少し上手く使えないものか?」

 

「その件については、そちらのご要望にお答えしたまでですが。」

 

「しかし──」

 

「いい、石動。」

 

 問答を、議長席に座る金髪の男が止める。

 

「悪魔の如き姿をしたエヴァと、悪魔の名を冠するガンダム・フレーム。それが、天使の名を冠する人類の敵、使徒を葬る。素晴らしいと思わないか?」

 

 各々はうんうんと頷くが、対極に座するゲンドウだけは反応を示さなかった。それを特段気にすることなく、金髪の男は続ける。

 

「君の実力は評価しよう。だがNERVの運営に当たって、更なる効率を追求することは可能なはずだ。まあ頑張ってくれたまえ。」

 

 それ以降、取り立てることもなく会議は進んだ。

 そして、会議も終盤に差し掛かった頃。茶髪の男が忠告するように言い放つ。

 

「しかし碇ゲンドウ。君の仕事はこれだけではない。」

 

 その続きは、金髪の男に引き継がれる。

 

「『人類アグニカ計画』。バエルを手に入れ、人類の頂点に立つ!」

 

「私マクギリス・ファリド、そして諸君らの気高い理想は、決して絶やしてはならない!」

 

「世界の真理はここだ──皆、バエルのもとへ集え!!」

 

 

「バエルだ!」

 

「アグニカ・カイエルの魂ィ!」

 

「そうだ……正義は我々にあるーッ!」

 

 金髪の議長──マクギリス・ファリドの演説に、会議のメンバーらは盛り上がりを見せる。

 やはり、碇ゲンドウ一人を除いて。

 

「そうだ。それでいい……」

 

 マクギリスの言葉で、会議は締めくくられた。

 

 

 ホログラムが消え、部屋に唯一残されたゲンドウは、ただ一人呟いた。

 

「問題しかない……。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、見知らぬ壁が目に入った。冷たく光を反射する、白く無機質な壁。それが()()ではなく()であったのは、とある身体的事情から仰向けになれないためであった。

 

「オルガ、大丈夫?」

 

 背後から声がかけられ、身を捩り顔を向ける。そこには相棒――ミカの姿があった。

 

「おお、ミカ。」

 

 そう言いながら身体を起こす。見渡すと、ここは病室のようだった。未だ朧げな意識を奮い立たせ、記憶を手繰り寄せながらミカに問う。

 

「──お前もこの世界に来てたんだな。」

 

「うん。俺も一度死んじゃったからね。」

 

 死。つまりそれは、元居た世界にて、俺の後を追うように、彼もまた討たれたことを意味していた。

 

「……そうか。すまねぇミカ。俺が──」

 

「謝ったら許さないって言ったでしょ。」

 

「……そうだったな。」

 

 謝ったら許さない。それは、かつて交わした、ミカとの約束だった。それを失念するとは、この世界に来てから色々あったにせよ、俺は自分が思っている以上に参っているようだった。

 ──いつまでも気を滅入らせたままでは良くない。気持ちを切り替え、再び問いを投げかける。話したい事柄は沢山あるのだ。

 

「ところで、昭弘達には会ったのか?」

 

「うん、元気そうだった。」

 

「そうか……。そういや、お前身体は――」

 

 

 不意に病室の扉が開いた。俺がこうして病室の床に臥せる大元の原因を作った人間――ミサトさんが病室に入ってくる。

 

「無事でよかったわ。オルガ君。」

 

「……お陰様でな。」

 

「誰?」

 

 ミカが訝しんだ様子を見せる。どうやらミサトさんとは初対面らしい。

 

「あなたがガンダムのパイロットね。NERV本部所属、作戦部長、葛城ミサト。呼ぶ時は下の名前でいいわ。よろしくね。」

 

「ああ、はい。」

 

 

 ミカとミサトさんの軽い挨拶の後、俺は幾つかの簡単な検査を受けた。検査の結果、特に異常は見られないとのことで、俺は病院を後にすることを許された。

 

 ミサトさんとミカとともにエレベーターに向かい廊下を歩いていると、正面からストレッチャーが運ばれてくるのが見えた。それに乗せられていたのは、全身に包帯を巻いた少女。病院の無機質な照明に当てられ、色のない髪と、紅い瞳が妙なまでに目に焼き付く。

ここはNERV関係者の病棟らしいのだが、彼女はNERVの職員にしては若すぎる。一体何者なのだろうか。それに、あの怪我は──

 

「あ、チョコの人」

 

 ミカの言葉で正面に目を戻す。そこには、前の世界で俺たちを振りまわし、この世界でもまた俺たちを手玉に取った男が立っていた。

 

「久しいな、オルガ団長。」

 

 俺はそれに答えず、その男──マクギリスに詰め寄る。そして、その顔面を全力で殴打した。

 

「お、オルガ君!?」

 

 ミサトさんがギョッとした様子で俺を止めにかかるが、それを無視する。

 マクギリスはふらふらと立ち直る。

 

「変わらないな、オルガ団長。」

 

「アンタもな。」

 

 マクギリスは肩をすくめた後、再び俺に顔を向けた。

 

「さて、私が君たちを呼び出したのは他でもない。このNERVで、君たちに、あの巨大生命体──使徒と戦って欲しいのだよ。」

 

「それは、俺たちにまた命を張れと。そう言ってんだよな?」

 

 図々しいまでの要求に、俺はマクギリスに凄む。が、やはり彼は怯む様子を見せなかった。

 

「立ち話もなんだ。着いて来てくれたまえ。……と、済まないが、葛城一尉、席を外してくれるかな。」

 

「ハッ。……じゃ、また後でね。」

 

 マクギリスが請うた通りに、ミサトさんは立ち去った。彼女の要するから察するに、マクギリスはそれなりに偉い立場の人間らしい。俺たちと同じで本来この世界にいなかったはずの彼が、何故それほどの地位に着いているのか不思議である。

 

 

 

 俺とミカはNERV本部にあるカフェテリアに連れられた。てっきり堅苦しい執務室にでも通されるのかと思っていたが、案外ルーズな場所に案内されたものだ。

 

「こうして紅茶を嗜んでいると、アルミリアの淹れてくれたものが恋しくなるな。」

 

「なに感傷に浸ってるんだよ。で、本題は?」

 

「先程も言った通りだ。このNERVで、君たちには使徒と戦ってもらいたい。」

 

「その使徒ってのだ。アレは一体何なんだよ。」

 

 俺は、ずっと頭の中でぐるぐる回っていた質問を投げつける。戦うべき敵の姿も分からないのでは、飲める要求も飲めないというものだ。

 

「人類の敵、としか言えないな。モビルアーマーのようなものだと思ってくれていい。」

 

 その濁すような言い方に、やはりこいつは何か隠している、と俺の直感が告げた。

 マクギリスは続ける。

 

「だが、使徒はあの1体だけではない。これからも使徒の襲来は続く。そこで、アレと戦う人間が必要だ。」

 

「だが何故俺たちを?」

 

「あのモビルスーツとも異なる機動兵器、人造人間エヴァンゲリオン。それを操るには、適性が必要なようでね。」

 

「そのエヴァとやらの適性が俺にあるのは分かったが、話が出来過ぎちゃいねぇか?」

 

「いや、君に適性はないよ。だが、君にはあるはずだ。モビルスーツを動かすための、阿頼耶識が──。」

 

 阿頼耶識システム。それは、モビルスーツの能力を最大限発揮するために厄祭戦期に開発された、神経と機体を直結する有機デバイスシステムだ。しかし、システムの運用のためには脊椎にナノマシンやプラグを埋め込む危険な手術が必要である。俺たち鉄華団に昔から所属していた身寄りのない子供は、かつて大人たちによって強制的にその手術を受けさせられていた。

 ──背中の突起は、その手術を受けた証だ。

 

「適性はなくとも、阿頼耶識があれば動かせると?」

 

「そうだ。こちらの世界には阿頼耶識システムそのものはなかったが、それに近いものはあった。それが、あのエヴァを動かすシンクロシステムだ。」

 

 シンクロシステム──聞き慣れない言葉だ。俺は黙って、マクギリスの次ぐ言葉に耳を傾ける。

 

「多少の差異はあるが、どちらも脊椎を介した神経接続システム。そこに着目した私は、蓄積していた研究データを応用し、阿頼耶識を介してエヴァと強引にシンクロさせるシステムを構築した。」

 

「で、阿頼耶識の手術を受けている俺たちに白羽の矢が立ったってことか。」

 

「私は君たちがこの世界に来ていることを確信していた。あらゆる手段を用いて捜索を行い、そして君たちを発見したというわけだ。」

 

「ふうん。……で、何で俺なんだ?昭弘やライドやチャド、それこそミカでも良かったはずだ。」

 

「まあ……俺にはバルバトスがあるし。」

 

 ミカに突っ込まれた。それを補足するように、マクギリスは言う。

 

「三日月・オーガスは、大破したガンダム・バルバトスと共にこの世界に転移してきたそうだ。それを我々が改修し、実戦に使用させた。」

 

 つまり、ミカはこの世界に来てから早期の段階でマクギリスとの接触に成功したということか。先ほどは聞きそびれてしまったが、転移してきた際に、阿頼耶識システムを高負荷で動かした代償――身体の麻痺もすっかりなくなっていたらしい。

 しかし、バルバトスごと転移してくるとは。ミカとバルバトスは、それほどまでに強く惹き合っているのか。

 

「この世界にもモビルスーツが存在するようでね。あの尻尾のような武器は失われてしまったが、それ以外は以前の機体を完全に再現している。」

 

 というわけで、三日月君をエヴァに乗せるのは効率が良くない、とマクギリスは続けた。

 

「他の鉄華団の諸君に関しては、だが……。エヴァのシステムは阿頼耶識とは違って、機体へのダメージがパイロットの神経にフィードバックされる、と言ったら理解してもらえるかな。」

 

 機体へのダメージのフィードバック。つまり、阿頼耶識以上にパイロットへの負担が大きいということだ。

 

「つまり、団員を危険に晒すくらいなら俺が乗るだろうと、そういうことか。」

 

「フィードバックを改善する方法も模索していたが……どうやらそのような方法ではA.T.フィールドを発生できないようでね。」

 

 A.T.フィールド……おそらく、あの使徒やエヴァが発していた光の壁のことだろう。俺が使徒の光の壁を相殺していなければ、ミカですらあの化け物に対して打つ手がなかったに違いない。

 

「A.T.フィールドの存在が、エヴァを使徒に対する決戦兵器たらしめている。どうやら、甘んじて受け入れるしかないらしい。」

 

 この世界でも、物事はそう都合よく動いてくれないらしい。と、ここで、俺はある事実を思い出す。

 

「なぁマクギリス。アンタも阿頼耶識の手術を受けてるだろ。アンタが乗れば良いんじゃねぇのか?」

 

 マクギリスはかつて、錦の御旗たるガンダム・バエルを起動するために阿頼耶識システムの研究を進め、ロストテクノロジーと化していた成人への阿頼耶識の手術を確立し自らに施していた。ならば、彼もまたエヴァを動かすことが可能であるはずだ。

 しかしその考えは、否、の一言で否定された。──話によれば、この世界に転移してきたときには彼の背中のデバイスは綺麗になくなっていたらしい。前の世界の研究データも完全に残っているわけではなく、新たに手術し直すのも難しいとのことだった。極めつけに、とマクギリスは言った。

 

「エヴァの真の適性を持つ者は、今のところ全て子供のようだ。仮に私に阿頼耶識の施術をしたところで、大の大人である私はシンクロできない可能性が高い。」

 

「理屈は分かった。だがよ、それでも俺らが戦う理由にはならねぇだろ。」

 

「理由ならあるはずだ。」

 

 マクギリスがこちらを見据える。

 

「使徒が人類を滅ぼせば、どちらにしろ君たちも死ぬことになる。ならば、君たちは戦いを選ぶものと、そう思っているのだが。」

 

「あの時とは状況が違うと?」

 

「そうだ。それに、これは君たちにとっても悪い話ではない。NERVに加われば、君たちの生活は保証されることになる。今まで、この世界での生活には苦労していたはずだ。」

 

 マクギリスの言うことは正しかった。今までの俺たちは、右も左も分からないこの世界で、生きることに必死だった。

 

「……今度妙な真似しやがったら、ひでぇやり方でぶっ殺してやるからな。」

 

「善処しよう。」

 

 正直まだ聞きたいことは山ほどあったが、今は彼の口車に乗ってやることにした。

 

 

 

 

 カフェテリアを後にし、マクギリスと別れると、ミサトさんから呼び出しを受けた。

 

「さあ、オルガ君、三日月君、帰りましょうか。」

 

「帰る?」

 

 NERV本部内の個室で生活できるようにと、マクギリスからの手配は受けている。今の俺たちにとって帰る場所というのはこのNERV本部であり、ミサトさんの表現は些か不自然だ。これまで部外者扱いだった昭弘達も、既にマクギリスの采配でそこへの入居の準備が完了しているらしい。

 だが、俺はミサトさんの言葉に驚愕することになる。

 

「オルガ君とミカ君は、私と一緒に暮らすことになったから。」

 

「……は?」

「……は?」

 

 

 2つの素っ頓狂な声が、広い部屋に響き渡った。

 

 

 

 

 

 

 どうやらミサトさんは、俺たちがマクギリスと話し込んでいる間に、同居の手続きを済ませてしまったらしい。既に決定事項とのことで、いくら騒いでもそれが覆ることはなかった。

 そして今、俺とミカは仕方なくミサトさんの車の中で揺られている。

 

「さーて、今夜はパーっとやらなきゃ!」

 

「何を?」

 

「もちろん、新たなる同居人の歓迎会よ。」

 

 そういうとミサトさんは、コンビニエンスストアに車を止めた。

 

 ミサトさんは、買い物カゴに酒やらつまみやらを嬉々として放り込んでいる。正直に言うと俺は昭弘とチャドとライドの方が心配で、歓迎会だとかそんな気分ではまるでなかった。ミカも顔に出してはいないが、どこか面倒くさそうな様子でカゴにチョコレートを入れていた。

 

「会計をお願いします。」

 

「アグニカポイントカードをお持ちでしょうか?」

 

 会計を頼んだところ、聞き覚えのある声が耳に入る。顔を上げると、そこには先程見たばかりの顔があった。

 

「マクギリスじゃねぇか……」

 

「本日は、アグニカの魂社が経営する世界的チェーン、セブンスターをご利用いただきありがとうございます。」

 

 店員らしく、あくまで他人行儀を通すつもりらしい。俺は馬鹿らしくなってさっさと店を出ることにした。──本当に何の真似だろうか、アレは。

 

 

 

 

「さ、上がってー。」

 

 ミサトさんは、NERV本部から幾許か離れたこのマンションに住んでいるらしい。部屋へ上がるように言われ、腹を決めて、邪魔するぜと足を踏み出す。

 しかし、それはかなわなかった。ミサトさんに止められてしまったからだ。

 

「オルガ君、ここは貴方の家なのよ。」

 

 他所の家に上がり込むわけではない、と言っているらしい。俺らを家族から引き離しておいて、もう自分たちを家族だと思っているのだろうか。――しかし、新たな家族ができるというのは、不思議と悪い気はしなかった。

 俺は肩をすくめると、ただいま、と家に上がった。

 

 ミカは何も言わずに上がってきたが。

 

 

 

「かぁーッ! 人生やっぱり、この時のために生きてるようなもんよねぇ!」

 

 ミサトさんが缶ビールを煽り、その喉越しを噛み締める。俺も酒の味くらいは分かるので、少しだけ頂くことにした。

 しかし、この3人だけの歓迎会が、盛り上がりを見せることはなかった。ミサトさんが騒ぎ、それに対して俺が適当に相槌を打つ、というのを繰り返しているだけだ。俺もこの歓迎会とやらは正直乗り気ではない、というのは先程から述べていることだが、ミカはどうやら、俺が思っているよりもこの状況が面白くないらしい。ミカは一人で、溜息すらつかず、黙々とチョコレートを貪っていた。

 

 空気に耐えかねた俺は、ミカを元気づけようと立ち上がった。出来るだけ明るい声でミカに絡む。

 

「ほらほら何やってんだ。今日はとことんまで行くぞー!」

 

 ミカとの付き合いは長い。彼がこういった()()を好まないことは承知していたが、それを無視して手近にあった酒瓶を掴む。そして、瓶の口を一気に口に突っ込んだ。

 

「オルガ君!? やめなさい!」

 

「オルガ? オルガ!?」

 

 ミサトさんが叫び、ミカも初めて顔色を変える(もちろん良い意味ではない)。自分でも何故このような馬鹿げた行動に出たのかは分からないが、恐らく既に回っていた酒のせいだろう。

 俺は胃の内容物を全て吐き出して気絶した。

 

 

 

 

 目が覚めると、時計の針は11時を回っていた。寝かされていたソファーから起き上がると、ミサトさんが未だ一人で酒を煽っているのが見えた。

 風呂に入るよう促されたので、素直に従うことにした。風呂は命の洗濯、か。

 

 シャワーを浴びながら、これまでのこと、これからのことについて考える。

 正直色々なことが一挙に頭に詰め込まれたせいで、脳が悲鳴を上げていた。シャワーを浴びている時間は、そんな思考を整理するのに有り難かった。

 とにかく俺たちは、これからあのエヴァ、そしてバルバトスを駆って、あの使徒とかいうのと戦わなければならないらしい。使徒がどれほどの頻度で現れるのかは分からないが、それは、また命懸けの日々が始まるということを意味しているのだろう。

 しかしマクギリスは同時に、NERVのもとで生活が保証されると言っていた。それが事実なら有難い提案であることも違いない。暮らしに余裕が生まれれば、それだけ先について考えるための時間が増えるからだ。昭弘たちについても、悪いようにはならないだろう。

 ここで俺はふと、この世界でまだ邂逅していない団員たち(あいつら)のことに思いを馳せる。今のところこの世界に来ているのは、俺や昭弘、ミカのように一度死んでしまった者と、チャドやライドのように転移してきた時の記憶が曖昧な者とがいる。昭弘とミカの話じゃ、皆は無事に鉄華団本部から脱出できたらしいが──。

 

「死んじまったら、死んじまった奴らに会える、と思ってたんだがな……。」

 

 だが、確かに一度は死んだとしても、今俺が生きているのは事実だ。俺は感傷を振り払い、風呂場を後にした。

 

 

 

 今は、今出来ることを精一杯やってやろう。

 

 


 

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