鉄血紀オルガゲリオン シト新生   作:axois

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第七話 散華、第3新東京市

 

 

 

 冷たい病室の中で目を覚ます。眼前に映る無機質な壁は既視感があり、ここがNERVの病棟であることを伝えていた。

 

「目が覚めたようね、オルガ君。」

 

 身を起こすと、白衣のポケットに手を収めたリツコさんが、こちらを見下ろしていた。意識が明瞭になるとともに頭痛が走り、額に手を当てる。

 

「俺は確か、初号機で出撃して──」

 

「軽度の記憶喪失。無理もないわね。あなた、一度死んでいたもの。」

 

「何?」

 

 一度死んだ。確かに俺は、この世界に来る前に、ヒットマンの襲撃を受け一度死亡した──が、それを彼女に話した覚えはない。彼女の言いぶりでは、あたかも()()()()()()()()()()ようでないか。

 

「といっても、仮死状態のようなものだけどね。にわかには信じがたいけれど──あなた、かなり特殊な体質のようね?」

 

 ミサトさんとの初対面の時──金属片が身体を貫き、大量の血を流しながらも、五体満足の状態で動けていた己の姿を思い出す。まさか、こちらに来て不死身の体質になったとでもいうのか。しかし、そんな与太話としか思えない事柄も、馬鹿馬鹿しい、と一蹴する気にはなれなかった。そもそも、別の世界に転移してくるということ自体が異常なのだ。多少、他に妙なことが起こっても不思議ではない。

 それが重大な、衝撃の事実であることは認識していたが──今はそれをとにかく受け入れ、思考を切り替える。

 

「ところで、使徒はどうなったんだ?」

 

「現在、目標は地上、NERV本部の直上にいるわ。そこから掘削機(シールド)が本部に向けて穿孔中。到達まで、あと10時間といったところかしら。」

 

「なるほど。状況は芳しくなさそうだな。」

 

 どうやらベッドの上で悠長に寝ている暇はないようだ。そうして状況を整理していると、不意に病室のドアが開く。

 

「オルガ君! 無事だったのね!」

 

 ミサトさんが駆け寄ってくる。ミカも一緒だった。

 

「ああ。なんとかな。

 ──それよりも、あの使徒を何とかする目処は立ったのか?」

 

「ええ、それはもう。A.T.フィールドは以前の2体の数倍は堅牢、迂闊に身を晒せば高出力加粒子砲によるロングレンジの精密射撃──あの威力じゃ、三日月君のガンダムの特殊装甲でも保たないでしょうね。」

 

「なんだよ、打つ手なしってことじゃねぇか。」

 

「そこを何とかするのが私の仕事よ。」

 

 ミサトさんの提示した作戦──それは、目標のレンジ外、超長距離からの直接射撃であった。接近できない以上、エヴァによるA.T.フィールドの中和はできない。それゆえ、奴のA.T.フィールドの出力を超える大出力──日本全土の電力を結集して運動エネルギー弾を撃ち出し、その守りを一転突破するというのが、彼女の出した結論だった。

 

「しかし、無茶な作戦を立てたものね、作戦部長さん?」

 

 ミサトさんのこの大それた計画に感服したのか、はたまた呆れただけなのか。リツコさんが茶化すように言う。

 

「それに、ウチの電磁投射砲じゃ、そんな大出力に耐えられないわよ。どうするの?」

 

 日本電力の出力を集めるとなれば、砲に相応の負荷がかかることが想像に難くない。NERVはエヴァの携行武器として開発されたレールガンを保有しているものの、それほど威力を重視した設計ではないため、撃つ前に自壊しかねないとのことだ。そして、高出力に耐えるよう仕様変更するには、10時間というリミットはあまりにも短すぎた。

 しかし、ミサトさん曰く、裏技があるのだという。

 

「借りればいいのよ。アリアンロッド艦隊からね。」

 

「アリアンロッドだと?」

 

「そう。国連軍有数の大規模艦隊、アリアンロッドよ。」

 

 予想外の固有名詞の登場に、頭を抱える。アリアンロッド艦隊──この世界に転移してくる前に、俺たちが戦っていた宿敵ギャラルホルン。そのギャラルホルンの中でも、独自の地位を築いていた艦隊だ。鉄華団はアリアンロッドに煮湯を飲まされ、そして多くの仲間が死んでいった。団員たちを一人残らず指名手配し、粛清の対象としたのも彼らだった。それが、この世界にも来ている。NERVはギャラルホルンと関わりがないと知って気を抜いてしまっていたが、どうやら異世界転移で彼らから逃げ切れましたなどという上手い話にはならないらしい。国連軍がギャラルホルンのモビルスーツを運用していた時点で、察するべきだったのだろうか。

 ともかく、俺たちがこうして生き延びているとバレれば、またしてもタダでは済ましてくれないかもしれない。ミカも俺と同じようなことを考えているらしく、顔が険しくなる。

 ──アリアンロッドのこと、俺の特異体質のこと。気になることは数多あるが、しかし今俺たちの眼前には使徒が立ち塞がっている。今は、目の前の障害を排除することだけを考えねばならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

「敵シールド、第七装甲版を突破。」

 

 発令所では、作戦に関する報告が飛び交っていた。

 

「エネルギーシステムの見通しは?」

 

「予定より3.2%遅れていますが、作戦開始までには、何とかなります。」

 

「ダインスレイヴはどう?」

 

 ダインスレイヴ。アリアンロッド艦隊から拝借してきた、大型のレールガンだ。高出力を誇り堅牢な構造を持つため、法外な出力での運用が求められる本作戦において白羽の矢が立った。元来、条約で禁止されるほど高威力のそれを、日本全土からのエネルギーを利用した投射を行う仕様へと改造、さらにはエヴァによる運用に適する形とし、作戦の(かなめ)とする。かつて、俺たちを散々苦しめたそれが、モビルスーツ一機分のエイハブ・リアクターの出力を優に超える膨大なエネルギーによって発射されれば、その威力は計り知れない。()()()()()()()()()、使徒に致命傷を与えることも容易いだろう。

 

「では、敵の反撃に対する備えは?」

 

「それはもう、盾で防ぐしかないわね。」

 

 敵の放つ加粒子砲は、高い耐ビーム性を誇るはずのナノラミネートアーマーすら容易に貫き、エヴァの特殊装甲をも瞬時に融解する。その過剰な破壊力を持つ砲撃を耐えるには、大型シールドを使い捨てる形で凌ぐしかないというのがリツコさんの言だ。

 せっかくだからと、現物の見学に案内される。

 

「これが、盾?」

 

 ミカの呟きに、リツコさんがそうよ、と答える。

 

「SSTOのボディを流用した急造品だけど、複層式のナノラミネートアーマー──所謂ナノラミネートコートを施してあるし、更に特殊な構成素材を採用しているわ。」

 

「特殊な構成素材?」

 

「そう。実は以前からオルガ君、あなたの特殊体質についてこっそり調査させてもらっていたの。あなたの持つ驚異の再生能力──その生体組織を参考にした、自己修復能を持つ構成材よ。その実用化がギリギリ間に合ったから、それを使うことにしてね。あなたの言葉を借りるなら、決して散らない鉄の盾、と言ったところかしら。」

 

「アンタ……人のことをなんだと思っていやがる。」

 

 ともかく、万が一敵の反撃が飛んできても、この盾で防御すれば20秒程度は時間が稼げるらしい。気休め程度だが──何もないよりはマシだろう。リツコさんは、噂によれば理論上戦略兵器級のビームすら防ぎきってしまう鏡面装甲も存在するらしいのだけど、などと更なる性能向上案を口にしていたが、彼女の知識欲というのは、留まることを知らないのであろうか。

 

 発令所へ戻ると、ミサトさんとマコトさんが狙撃地点について意見を交わしていた。

 

「目標との距離、地形、手頃な変電設備も考慮すると、やはりここでしょうね。」

 

「フーン、確かに良さげだわね。──では、狙撃地点は二子山山頂、作戦開始時刻は明朝零時。以後、本作戦をヤシマ作戦と呼称します。」

 

 ミサトさんの一声に、発令所全体から了解の声が響く。

 

「さて、オルガ君たちも60分後に出発よ。遅れないようにね。」

 

 しかして、使徒殲滅作戦──ヤシマ作戦が始動した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二子山仮設基地。山頂までの道路には電送トラックが長蛇の列を成し、日本全土の電力を山頂まで繋いでいた。基地内には夥しい数のコードが連なり、山を埋め尽くさんばかりの大型機械が立ち並んでいる。先ほどから響いているアナウンスによれば、冷却システムのようだ。忙しなく往来するNERV職員の方々を躱しながら、ミサトさんのもとへと足を進める。時計は、午後8時11分を示していた。

 

 集合場所には、ミサトさんとリツコさん、それから、先に到着していたようで、既にミカとレイの姿もあった。俺は最後の一人だったが、時間に遅れたわけではないので特に気にすることもなく合流する。

 

「みんな揃ったわね。」

 

 横には、数時間前に見たばかりの巨大な盾と、橙と赤を基調とした、どこか禍々しさを醸し出す(おおゆみ)──ダインスレイヴが備えられていた。

 

「では、本作戦における、各担当を伝達します。──レイ。」

 

「はい。」

 

「零号機で、砲手を担当。」

 

「はい。」

 

「三日月君はバルバトスで装填の補助ね。」

 

「あー、うん。」

 

「そしてオルガ君。あなたは初号機で防御を担当して。」

 

「──その心は?」

 

 レイの乗る零号機はフィードバックに誤差が残っており、万全な状態ではないと聞いている。なればこそ、俺の初号機が砲手を担当すると思っていたのだが、当てが外れてしまった。その疑問に答えるように、リツコさんが説明を入れる。

 

「今回の作戦では、より精度の高い射撃のオペレーションが求められます。それゆえ、未調整ながらも、零号機の方が有利なの。」

 

「おい、そりゃ一体どういう意味だ。」

 

「言葉の通りよ。」

 

 射撃のスコアがよろしくない俺を砲手に充てるくらいなら、未調整な零号機の方がマシ、ということか。反論の余地のない口弁に閉口していると、これはフォローだけど、とリツコさんが続ける。

 

「守る、ということにかけては、オルガ君は得意なのではなくて?」

 

 団員を守るのは俺の仕事、か。不可思議な体質のせいで体の良い頑丈な弾除けとして扱われている風にも思えたが、確かにこれまでの使徒との戦闘では敵の攻撃を敢えて受け、戦いを勝利に導く場面が多かったように思える。それに、防御を担当するということは、あの強烈な攻撃の矢面に立つということだ。そのような危険を、俺を前にしてミカやレイに任せるというのは頂けない。なれば、この配置も妥協案ではなくて、適材適所であるのだろうと思えた。

 

「分かった。お前らはどんなことがあろうと絶対に死なせねぇ。団員の命は、俺が守ってやるよ!」

 

「頼もしいね、オルガ。」

 

 俺の意気込みに、ミカが信頼の瞳を向けてくる。レイは──少しだけキョトンとした表情が見て取れた。少なくとも、信用されてない、というわけではなさそうだ。

 

「その意気よ。では、三人とも着替えて。」

 

 

 

 

 

 

 

 冷たい山風が、色のない頬を撫でる。

 

 プラグスーツへの更衣を終えた後は、命令に従い、仮設の搭乗口で待機することになっていた。仮設ゆえ、武骨な鉄パイプと鉄板で構成された、簡易的な搭乗口。当然屋根など備え付けられておらず、天には数多の星たちが瞬いていた。

 ヤシマ作戦のため、全ての電力はここ二子山に集められている。俯瞰できる街は停電によって光を失い、闇と静寂が辺りを支配する。そんな中にいると、まるで、右も左もなく、ただ静かに水の中で漂っているようで──私には心地よく思えた。

 ただ一つ、遠方に見える敵、使徒だけが、蒼い光を放っていた。

 

「あれか。例の使徒(モビルアーマー)とやらは。」

 

 後方から不意に声が聞こえる。その主は、金髪の背の高い男性であった。

 彼の姿には何となく見覚えがあり、一体誰であったかと考えを巡らせる。しばしの思案の末、学校の担任の顔が彼と一致した。しかし、その先生が何故NERVの仮設基地を闊歩しているのか、という疑問については、思考に至るほどの価値を見出せなかった。

 

「なんでチョコの人がここに居るの。」

 

 ガンダムの彼──三日月君が問う。チョコの人、というのは、彼の男性の愛称であろうか。

 

「君たちの戦いを見届けに来たのさ。

 私は確信しているんだ。この戦いを見ることで、必ずやそこに、アグニカ・カイエルの姿を見ることができると。」

 

 300年前、厄祭戦において幾多のモビルアーマーを屠ったと言われる英雄、アグニカ・カイエル。彼に学校で教授された内容を思い返す。彼は、その英雄の歴史に使徒と戦う自分らの姿を重ね合わせ、何か幻想を抱いている──そのような感じがした。

 そんな()()()()()の言葉に、二人は何も答えない。彼らからは何か確執のようなものを汲み取れるが、自分の関するところではないだろう。

 

 初号機パイロット──イツカ君の、そろそろ時間だ、という言葉に、自身も零号機のエントリープラグへ歩みを進める。

 

 

 

 チョコの人の言葉に、僅かに顔を俯けてしまったことに──気が付いた者はいなかった。

 

 

 

 時報が、0時0分0秒を告げる。

 

『作戦、スタートです!』

 

『第一次、接続開始!」

 

 葛城一尉の指示とともに、作業が開始される。山腹にピラミッド図の様に並べられた大型の接続スイッチが、指示に合わせ、下方から順に通電を行っていく。第一次、第二次、第三次──。冷却器は轟音とともに限界まで稼働し、来たる電子の奔流の熱を受け止めるべく身構えていた。

 今、まさに──日本全土から集められたエネルギーが、ここに集結しようとしている。

 

『高硬度レアアロイ弾頭、装填!』

 

 装填の合図とともに、三日月君がダインスレイヴへ巨大な杭──弾頭を籠める。零号機にそれを握りしめさせ、鈍い金属音を伴って撃鉄を起こす。弧状のカウンターウェイトが展開し、ダインスレイヴは、豪壮たる鉄の弓へと姿を変えた。

 矢先が、遠方に佇む使徒に向けられる。

 

 発射態勢。モビルスーツ・グレイズの頭部を流用したスコープを通し、使徒の姿が視界に捉えられる。弾頭は、地球の自転、重力、地場の影響を受け、直進しない。その誤差が、機械の補助により修正されていく。

 後方では、全ての電力の接続が完了しつつあった。ダインスレイヴへエネルギーが流入し、発射までの秒読みが開始される。

 実験のそれとは違う、息の詰まる不思議な感覚。操縦桿を握りしめ、オペレーションの障害にならぬよう、早くなった鼓動を抑えつける。敵の感知範囲外からの狙撃──相手に感付かれる前に、先制の一手で完封するのが本作戦の趣旨だ。そのためには、一撃で仕留める必要がある。発射まで、残り5、4、3、2、1──

 

 ──ゼロ。

 

 刹那、腕が二重にブレるような感覚が襲う。それまで照準の中央に捉えていた使徒の姿が、僅かに逸れてしまう。しかし──トリガーは、既に引かれてしまっていた。

 ほんの僅かなズレも、対象から数キロ離れたこの距離では命取となる。放たれた巨大な杭は、使徒の側面を掠め、闇へと消えていった。

 

『外した!?』

 

『敵内部に、高エネルギー反応!』

 

 敵に勘付かれた。使徒から溢れる光は次第に大きくなり、やがて閃光が視界を焼く。

 対象からの報復。放たれた光──加粒子の光線は急速に大きくなり、既に眼前へと迫っていた。来たる炎熱の感覚に備え、目を瞑る。しかし──その痛覚が襲ってくることはなかった。

 

『団員を守るのは俺の仕事だ!』

 

 初号機──イツカ君が正面に割って入っていた。構えられた盾が、エネルギーの奔流を受け止める。それに弾かれ拡散した粒子が辺りを焼き、エネルギーの余波が鼓膜を震わせる。

 その隙に、三日月君が冷静に次弾を装填する。私は、その杭がダインスレイヴにしかと込められたことを確認してから、光の向こうに辛うじて見える使徒をスコープの中央に捉える。否、捉えようとしているが、捉えられない。零号機の腕が、思うように動かなかった。

 震える腕を押さえつけ、機体の制御に集中する。機械による外的要因の誤差修正は完璧である。要因は、零号機と自分のシンクロにあった。未調整ゆえに、機体とのリンクに誤差が生じていたのだ。

 

『死なねぇ! 死んでたまるか!』

 

 ノイズと共に、初号機から聞こえるパイロットの音声。盾は既に融解を始め、凄まじい熱量が彼を襲っているはずだ。しかし、彼はその場を動こうとしない。

 

『ぐあああああああッ!!』

 

『オルガ君が保たない!』

 

 仮設発令所から、赤木博士の焦る声が聞こえてくる。盾はもはや完全に蒸発し、初号機は、その砲撃の威力に対してはあまりに脆弱なA.T.フィールドと、機体そのものを以ってエネルギーを受け止めていた。使徒の攻撃はなおも勢いを弱めず、足下の地形を抉り、初号機を吹き飛ばさんとする。

 視界の端で三日月君の機体──バルバトスが動く。彼もまた零号機の正面に入り、初号機が吹き飛ばされないよう、その背中を支える。

 

 二人が、身体を張って砲手たる零号機を守っている。早く使徒を沈黙させ、砲撃を止めなければならない。全神経を費やし、揺れる照準を御しにかかる。早く、早く。言葉が口から溢れるが、機体の腕は、全く言うことを聞いてくれそうにない。

 弱気──というのだろうか。そのような()()が、脳を埋めていく。

 

『──レイ。』

 

 轟音を掻い潜り、声が聞こえる。三日月君からの通信だった。

 

『さっきの感覚──身体に残ってるだろ。それに合わせて撃てば良いんだよ。』

 

 誤差があるなら、それを覚えて補正してやれば良い。神経接続の操縦系で、幾多もの戦場をくぐり抜けてきた(らしい)彼からの助言。それを素直に受け止め、先程の感覚を身体に呼び起こす。

 

『前は俺たちが──オルガが守ってる。レイは狙撃に集中して。』

 

「──やってみるわ。」

 

 目の前には、加粒子砲を身体で受け止める初号機と、それを支えるバルバトス。彼らの動じない姿勢は──背中は、とても大きく見えた。未だかつて、背を向けて自分を守ってくれた人はいただろうか。

 意識を機体の制御に戻す。先ほどズレた腕の感覚を、照準のズレに統合していく。矢の軌道を使徒の中央へと合わせていく。そして、完全に他の思考を排除し──機械的に、かつ力強く、トリガーを引いた。

 

 視界を覆っていた粒子の光が霧散する。放たれた運動エネルギーの塊は、使徒のコアを、真っ直ぐに貫いていた。

 

 

『いい仕事だぜ、レイ。

 ──俺は止まんねぇからよ……お前も止まるんじゃねぇぞ……』

 

 初号機から通信が入る。彼はそう言い残すと、指を掲げたまま倒れてしまった。しかし、力尽きてしまったわけではないようだった。彼の、このようなところでは立ち止まらないという意志が、人の感情を解するのが不得手な私にも、感じ取れたからだ。

 しかし、それを前にして、どのような立ち振る舞いをすれば良いのか分からなかった。だから、私は三日月君に問うた。

 

「ごめんなさい。こんな時、どうすればいいのか、分からない。」

 

『──そのまんまで良いんじゃないかな。』

 

 思ったままに振る舞えば良い。私は、心の中に燻っていたものに身を任せ、相好を崩した。

 

 

 

 

 チョコの人の笑い声だけが、夜空に響いていた。

 

 

 

 




青葉ストライクは蒸発しました。動画ならではのネタを小説に落とし込むって難しい。
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