鉄血紀オルガゲリオン シト新生   作:axois

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第八話 アスカ立つ

 

 

 秘密結社SEELE(ゼーレ)。表向きには、多岐に渡るサービスを展開するワールドワイドな企業『アグニカの魂社』を名乗っているが──その実態はNERVの上位組織である。内部の活動は完全に秘匿され、本社が存在するメガフロートの位置はNERVの者でさえ知らされていない。

 その本社の執務室において──SEELEのトップである私、マクギリス・ファリドは、計画を進めるにあたっての執務作業を行っていた。束ねられた書類に目を通しながら、腹心の部下、石動からの報告を受ける。

 

「現在、米国を除く全ての理事国がEVA6〜8号機の建造を承認とのこと。米国についても、こちらの手の者が根回ししています。後は時間の問題でしょうね。」

 

「結構。では、新型モビルスーツの件は?」

 

「EVA支援・対使徒用MSの名目で予算を確保しています。搭載予定の新型核動力については、日本重化学工業共同体の協力の下、実証評価試験中です。パイロットの方も、直に。」

 

()()()()と共に、か。」

 

「はい。昨日佐世保を出発し、本日中には、NERV本部へ届く見込みであると。」

 

 現在、国連軍の某艦隊の手によって、新型MSのパイロット候補者を含む"追加戦力"が太平洋上を輸送されている。それはいい。問題は、艦隊の積荷の中に、密かに()()()()が含まれていることだった。我々の計画にとっても必要不可欠のそれが、SEELE(こちら)を通さずNERV(碇ゲンドウ)に掌握されている。

 奴に先手を打たれたことに顔を顰めるが、その動向はこちらでも完全に掴んでいる。運び屋を担っているのは──EVAの随伴として同行しているあの男か。

 

「まあ──今は泳がせておけ。碇ゲンドウには、まだやってもらわねばならないことも多い。それに、()も付けてあるからな。」

 

「鈴、ですか。では、その通りに。」

 

「頼む。」

 

「それと──モンターク機関から、先の戦闘における実戦データが届いています。」

 

 先の戦闘──オルガ団長らの手により第5使徒(ラミエル)が撃破された作戦。その一部始終についての、詳細な報告書である。現場で直接目に焼き付けた彼らの勇姿を思い出し、思わず頬を緩める。

 

「──やはり、素晴らしいな。彼らは。」

 

「は。」

 

 言葉の意味を捉えかねた部下を前に、私は続ける。

 

鉄華団(オルフェンズ)、そして、選ばれた子供達(チルドレン)。それぞれが魂を賭けて使徒と戦い、それを撃破する。身寄りもなく、かつて野に蹲るしかなかった彼らが、世界にその力を見せつける。

 ──全く彼らこそ、この世界において、世界を導く英雄となるに相応しい。心が踊ったよ。」

 

「何よりです。」

 

「だが──」

 

 彼らは、確かに素晴らしい。それは紛れもない事実だ。問題は、彼らの所属している機関そのものにある。

 

「──何か?」

 

「分かるか、石動。使徒を貫いた、あの兵器が何であるかを。」

 

「はい。確かアレは──」

 

「そう、ダインスレイヴ。その過剰な破壊力から、条約で使用を()()()()()電磁投射砲の一種だ。使用したのは専用弾頭のようだから、使徒を倒すためとはいえ完全に条約を踏み躙ったことになる。」

 

「我々の目指す理想にとっては、望ましくないと?」

 

「葛城ミサト──困った女だよ。そして、NERVも。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「Mi-55D輸送ヘリに乗れるなんて! 全く、持つべきものは友達だよなー!」

 

「あぁん? なんか言ったか!?」

 

 絶え間ないプロペラの回る音が耳を劈き、会話がかき消される。俺たちは青い空の下、ヘリコプターで海上を移動していた。

 NERV関係の用事と言われミサトさんに連れてこられたものであるが、俺とミカはまだしも、どういうわけか学校のクラスメイト、トウジとケンスケも同行していた。ケンスケは軍用機に夢中、トウジは憧れのミサトさんとの()()()に浮かれ楽しそうではあったが。しかし、行き先も伝えられていない状況では素直に空の旅を楽しめないというものだ。

 

「んで、結局俺たちはどこに向かってるんだ?」

 

「それはもう、豪華なお船で太平洋をクルージングよ。ほら、丁度見えてきたわ。」

 

 ミサトさんの視線に倣い、目を海上に向ける。

 

「あれは……艦隊か?」

 

「おおーっ! すごーい! あれぞ国連軍最大最強を誇る大艦隊、アリアンロッド艦隊だ!」

 

「アリアンロッドだと!?」

 

 実物の艦隊を前にはしゃぐケンスケを尻目に、声を荒げる。ダインスレイヴの件でこの世界にアリアンロッド艦隊が存在することは知ったものの、こうしてそこに連れてこられるとは夢にも思っていなかった。

 しかし、アリアンロッド艦隊は本来月外縁軌道を持ち場としていた筈だ。この世界では人類が宇宙に進出していないようなので、持ち場を海上に移したということだろうか。

 

「まあ、それはともかく……腹を括るしかねぇか。」

 

「どうしたの? オルガ君。」

 

「いや、こっちの話だ。」

 

 不審がるミサトさんをはぐらかし、息を整える。前世での確執を、彼女に伝えたところで何にもならないからだ。俺たちを乗せた輸送ヘリはゆっくりと、旗艦の甲板へ向けて降下を開始していた。

 

 

 

 

「わぁーっ! すごいすごいすごいすごいすっごーい!」

 

「ケンスケのやつ、はしゃぎ過ぎとちゃうか?」

 

 甲板に着くや否や飛び回ってカメラを回すケンスケに、トウジが呆れの声を漏らす。俺は彼の年相応に楽しむ姿にむしろ暖かいものを感じたが、そもそもこのような軍の艦艇に彼らのような一般人を連れ込んで来ても良かったのだろうか。ルーズなミサトさんのことだから、不安にならざるを得ないというものだ。

 

「へぇ、これが奴らの──」

 

 ミカはミカで、かつて多くの仲間たちを殺した宿敵の本拠に殺意を撒き散らしていた。今回の彼らは一応NERVの協力者ということらしいから、変に事を起こさないか心配であるのだが、奴らからこちらに手を出してくる可能性も考えられる。警戒するに越したことはないだろう。

 そんなふうに周りに気を取られていると、当然突風が巻き起こり身体を煽られてしまう。横からのあぁっ、との声にそちらの方を見れば、トウジの帽子が風に飛ばされているところだった。

 

「あぁ〜〜! 待てぇーい!」

 

 甲板の上を軽快に転がってゆく帽子を、必死に追いかけるトウジ。それに釣られ、俺もその後を追う。けれども、帽子との距離は縮まらない。

 帽子が柵の下を潜り抜け、海に落ちそうになる。俺達が諦めかけた矢先、しかしながら帽子は落下を止めた。視界の外から現れた第三者の手が、それを掴み取っていたのだった。

 

「これ、君のか? 風強いんだから、気をつけろよ。」

 

「あ、あんがとうございます!」

 

 トウジの帽子を取ってくれたのは、黒髪の、赤服に身を包んだ少年だった。歳は、ちょうどミカと同じくらいだろうか。先ほどの動きの早さから、並外れた反射神経の持ち主であることが窺い知れる。──アリアンロッド艦隊に所属するパイロットだろうか。

 しかしその思考は、少年の言葉によって遮られることとなる。

 

「あー、もしかして君らがNERV本部の?」

 

「いや、ワシはただの付き添いです。NERVっちゅうのは、こっちの団長や。」

 

 少年がこちらに向き直る。彼の紅い眼からは、どこか俺たちに近しい雰囲気を感じ取れた。

 

「それを聞くってことは、アンタはNERVの関係者か?」

 

「ああ。俺、シン・アスカ三尉。

 向こうからNERV本部に出向することになってさ。宜しくな。」

 

「俺は……鉄華団団長……オルガ・イツカだぞ!」

 

 お決まりの自己紹介を済ませたところで、後ろからミカの呼ぶ声が耳に入る。何やら用事がある、といった様子だ。

 

「オルガ、ミサトさんが呼んでるよ。紹介したい人がいるんだって。」

 

「ヘゥン?」

 

「あのEVA弐号機のパイロットのことか? なら顔合わせといた方がいいんじゃ?」

 

「EVA弐号機──?」

 

 シンの言葉に、ミサトさんが俺たちをここまで連れてきた理由に合点が行く。どうやらこの艦は、弐号機──新しいEVAとそのパイロットをNERV本部へ移送している最中であるらしい。その間に、EVAパイロットである俺や共闘するミカが顔合わせのために連れられて来たということか。──わざわざこちらから出向かなくとも、到着まで本部で待てば良い気もしたが。

 

「ミサトさんのやつ、どうせならレイも連れてくれば良かったのに。」

 

「まあ、本部を留守にするって訳にも行かないんだろう。行くぞお前ら。

 シンは──」

 

「ああ、俺はここにいるよ。ちょっと()()()()()()()からな。」

 

「? ──まあ、また後でな。」

 

 そんなこんなで、俺はミカの案内で、トウジと共にミサトさんのもとへと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ヘァロゥー、ミサト。元気してた?」

 

「まあねー。あなたも、背、伸びたんじゃないの?」

 

 オルガたちを案内しながらミサトさんのもとへ向かってゆくと、風の向こうから誰かとそういった会話をしているのが聞こえた。

 時折吹き付ける強風を体幹で跳ね返しつつ、ミサトさんと合流する。

 

「来たわね。オルガ君、三日月君。」

 

「ああ。で、EVA弐号機のパイロットってのは──」

 

「話が早いわね。」

 

 オルガの単刀直入な質問に、ミサトさんは説明する手間が省けたといった様子だ。彼女は、先ほどまで話していた目の前の少女に向き直った。俺たちもそれに倣う。

 歳は、綾波レイと同じくらい──ちょうど13か14といった容貌の、ベージュのワンピースを身に着けた少女だった。茶がかったブロンドの長髪が風になびき、容姿端麗という表現が似合いの顔からは強い自負の表情が見て取れる。

 

「紹介するわ。エヴァンゲリオン弐号機専属パイロット、セカンドチルドレン、惣流・アスカ・ラングレーよ。」

 

 ミサトさんの紹介を受け、胸を張る少女。彼女からこちらに対する宜しくの旨の言葉が出る気配はなく、EVAパイロットとしての絶対的なアイデンティティがそうさせているのだろうと悟るには充分であった。

 ──などと考えながら、こちらも名乗っておくべきだろうと口を開こうとした刹那、一層強い風が甲板を走った。突風である。単なる布など容易く吹き飛ばしてしまうであろうそれは、俺たちの目の前にいる少女の、スカートの裾を持ち上げるに足る威力があった。

 

 壮快な平手の音が3つ、甲板に響き渡る。オルガ、トウジ、そしてついでに近くでたまたまカメラを回していたケンスケは頬に赤々とした紅葉模様を作っていた。オルガは打ち所が悪かったらしく、やがて甲板に倒れ伏した。

 

「何すんのや!」

 

「見物料よ! 安いもんでしょ!」

 

 不可抗力な事故に対する理不尽な仕打ちに抗議するトウジ。しかし、それは少女──アスカに一蹴されてしまう。彼女はこちらに顔を向けると、今度はこちらへ抗議を返してきた。

 

「ちょっと! あんたも避けないでよ!」

 

 先ほどの事故の洗礼はもちろんこちらにも飛んできていたのだが、俺はそれを身体を軽く捻ることで躱していた。身に染みついた条件反射のようなものであったが、その行為が彼女には不服なようだ。高飛車な物言いであるが、俺が「あー、なんかごめんな。」とぼんやりした謝罪をすると、彼女は追撃を入れる気はないようで、顔を顰めながらミサトさんの方に向き直った。

 

「で、噂のサードチルドレンはどれ?」

 

「この子よ。」

 

 ミサトさんがオルガを顎で示す。甲板に倒れたままだったオルガは徐に身体を持ち上げつつ、いつものように自己紹介を行った。

 

「俺は鉄華団団長、オルガ・イツカだぞ!」

 

「フーン、冴えないわね。」

 

「なっ!?」

 

 年下に冴えないの一言で片付けられ、オルガはショックを受けているようだったが、彼女のその評は的外れと言わざるを得ない。オルガほどリーダーたるカリスマがあり、頼りになる人間は他にそう居ないだろう。それはさておき、俺も結局名乗らず仕舞いになっていたことを思い出し、軽く自己紹介を済ませた。

 

 挨拶が済んだのを見計らってか、やがてミサトさんが口を開く。曰く、これから皆でブリッジへ顔を出す予定であるらしい。不測の事態におけるEVA弐号機の海上での起動について、何やら手続きを行う必要があるとのことだった。しかし、ブリッジへ顔を出すということは、この艦隊の長と顔を合わせるということを意味していた。

 ──ここは俺たちの宿敵の艦である。いつでも引き金を引けるようにポケットの銃を確認し、ミサトさんの後に続いた。

 

 

 

 

「私がアリアンロッドの司令、ラスタル・エリオンだ。」

 

「ご理解、ご協力頂けて幸いですわ。艦長。」

 

 ブリッジにて相対したのは、金と緑を基調としたコートに身を包んだ、大柄な老年の男であった。宿敵の首魁を目の前に、緊張を高める。

 

「こたびはEVA弐号機の輸送援助、ありがとうございます。」

 

「礼には及ばんよ。こちらもイオクの隊がそちらで世話になったようだ。」

 

 淡々と社交辞令を交わす二人の様子を、じっと睨みつける。すると、その視線に気がついたのか、ラスタルはこちら──オルガと俺に顔を向けた。

 

「ふむ──話には聞いていたが。久しぶりだな、オルガ・イツカ。」

 

「どの口が──と言いたいところだがな。」

 

 どうやら相手方は、既に俺たちの存在を承知していたらしい。その悠々とした口ぶりに対し、オルガがドスを聞かせた声で応じる。ミサトさんは彼がオルガと既知であることを知らなかったらしく、異様な雰囲気に慌てふためいていた。アスカの方は、血の気の多さに少々引き気味のようであったが。

 

「君に直接言った通り、あの時はこちらにもそうすべき事情というものがあったのでな。しかし今はこの状況だ。君達と事を構えるつもりはないさ。」

 

「ああ、そうかよ。」

 

「フ──ところで君が、バルバトスのパイロットだな。」

 

 ラスタルは、オルガから隣にいた俺へと視線を移し、そう尋ねてきた。それに睨み返しつつ、首を縦に振る。すると、彼はそれを意に介さぬようにして、こちらに手を差し出してきた。

 

「今や人類の敵たる使徒。それをほぼモビルスーツ単機で2体も撃破している者とあれば、それに対する相応しい作法だと思うがね。」

 

 彼の言う2体とは、最初に倒した肩幅の広いやつと、2番目の鞭使いのことだろう。人類を脅かすそれらを実質的に撃破した俺に対して、礼儀を果たすべく握手を求めているらしかった。しかし、彼の物言いは気に食わない。

 

「何か勘違いしてるようだけど──アレを倒したのは俺一人の力じゃないよ。オルガが居たから勝てたんだ。」

 

 ほう、とラスタルが口にする。彼が俺の言わんとするところを正確に捉えたかは不明瞭であるが、俺の反論を意外に思ったようだった。彼は非礼を謝罪すると、再び手をこちらに向ける。どうやら意地でも握手をやり遂げるつもりらしい。これ以上の問答は面倒だと考えた俺は、その握手に応じることにした。

 

「人類の命運は君たちに掛かっていると言ってもいい。これからも頼んだぞ。

 ──では、葛城一尉。」

 

「はい。では、この書類にサインを。」

 

 

「お、やってるねぇ。」

 

 気を取り直したミサトさんが手続きを進めようとした矢先、ブリッジの出入り口から声が掛けられる。その方を見れば、無精髭を生やし、伸びた髪を後ろで纏めた男性の姿があった。

 

「加持先輩!」

 

 アスカが黄色い声を上げる。彼女にとっての憧れの人、であるのだろうか。ところで、ミサトさんにとっても彼は既知の仲らしく、彼女はへぁ、と素っ頓狂に動揺していた。

 

「なんであんたがここに居るのよ~っ!」

 

「弐号機と彼女の随伴でね。ドイツからさ。」

 

 ミサトさんと、加持と呼ばれた男がそんなやりとりをしているのを、蚊帳の外にされたラスタルは咳払いで制止するのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 手続きも終わり、現在俺達は艦内の食堂で雑談を行っている。否、雑談と言ってもそこに会話はなく、気まずさのようなものがこの場を支配していた。その発生源は、ミサトさんと加持である。

 

「今、付き合ってるやつ、居るの?」

 

 沈黙を破るように、加持がゆっくりと口を開く。

 

「それがあなたに関係あるわけ。」

 

「あるぇ? つれないなぁ。」

 

 目を合わせず、つっけんどんとした調子で答えるミサトさん。暖簾に腕押しと判断したのか、加持はコーヒーを手にし、背もたれに寄りかかる。かと思えば、次の手を打ちに掛かったのか、彼は肘を着き、こちらに顔を向けてきた。

 

「君たちは葛城と同居してるんだって?」

 

「ん、ああ。」

 

 俺が素っ気なく答えると、彼はじっくりと言葉を選りすぐるようにしてから、言った。

 

「彼女の寝相の悪さ──直ってる?」

 

 刹那、部外者の三人から驚愕の叫びが上がる。ミサトさんの寝相が悪いことに驚いているのか、はたまた加持が彼女のそういう面を知るような関係であったことに驚いているのか。それはそれとして、普段の彼女のズボラさに辟易していたオルガが、ここぞとばかりに追撃を入れる。

 

「それだけじゃねぇ。部屋はゴミだらけだし、毎日飲む酒の量も並じゃねぇ。炊事に関しては俺も素人だが、オバサンはそれ以下だ。食ったら()()()()()ばたけが見えるぞ。」

 

 当のミサトさんは、突然の暴露に脳の処理が追い付いていないのか、顔を林檎のようにしながら、口をパクパクと動かすだけだった。

 

「──葛城は相変わらずみたいだな。三日月・オーガス君。」

 

 加持はミサトさんの反応に満足げな様子で、さらに話を振ってきた。しかし、ふと彼の言葉に対し違和感が生じる。彼とは今日が初対面であり、彼に名乗った覚えはなかった。だというのに、彼は俺に対して名で呼びかけてきたのである。つまり彼は、何故か俺の顔と名前を予め知っていたことになる。

 

「なんで俺のことを?」

 

「そりゃあ、この世界じゃ君は有名だからね。

 ガンダムを実戦で動かし、使徒と互角以上の戦いを演じた少年。」

 

「ああ。すげぇよ、ミカは。」

 

 加持の言葉に賛同するようにオルガが口を挟む。俺は別に、ただ自分や仲間が生きるために必死に戦っているだけなので、それを特別だと思ったことはなかった。それは今も変わらず、加持が続けるどこかチョコの人にも似た賞賛を聞き流していたが、ただ一つ、そんな俺を妬まし気に見つめる少女の視線だけが気に掛かっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 波の音が、鼓膜を刺激する。先ほどまで吹き荒れていた風はある程度の収まりを見せ、今は心地よい程度の風が、船体を吹き付けていた。その甲板の端で、私、惣流・アスカ・ラングレーは、思案に明け暮れていた。

 両の腕を柵に立てて体を持ち上げ、宙に浮いた脚を風とともに揺らす。その反復の動作の中で、私はあのモビルスーツのパイロット──三日月・オーガスについて思考を巡らせる。

 

 私はEVAのパイロットだ。幼少の頃から訓練を重ね、特別な存在として名を馳せていた。間もなく使徒との実戦を迎え、名実ともにエースパイロットになる。あの情けない初号機のパイロットなど私の足元にも及ばないだろう。

 ──しかし、あの三日月という少年だ。彼は単なるEVAの支援兵器(モビルスーツ)のパイロットに過ぎず、本来ならば私と肩を並べるに値する存在ではない。にもかかわらず、この艦隊の司令から一身に期待を受け、加持さんにすら一目置かれている。どこの馬の骨とも分からないあの少年が、だ。目の上のたんこぶ──私の地位を脅かす存在に面白くないと感じつつも、彼に対し興味を持っている自分がいた。

 

「どうだ、三日月・オーガス君は。」

 

「加持さん。」

 

 いつの間にか背後に現れた加持さんに、顔を綻ばせる。彼は私の煩慮するところを察するがごとく、返答を待っていた。

 

「──訳分かんない子って感じね。どうしてたかだかモビルスーツのパイロットが。」

 

「しかし、彼のアグニカポイントは40を軽く超えてるぞ。」

 

 加持さんは時々訳の分からないことを言う。彼は憧れの大人の男性であるが、これがなければ更に理想的なヒトなのにと思う。──それはさておくとして、かの少年について()()()()をしておく必要があるだろう。私はその場を後にして、彼を探しに向かった。

 

 

 

 

 

 

「バルバトスのパイロット!」

 

「え、俺?」

 

「ちょっと付き合って。」

 

 

 

 

 

 




ノベライズ名乗っておきながら動画の原型が半分くらいしか残ってないんだが?
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