ホロライブオルタナティブ@upside down   作:風木守人

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プロローグ

 落ちる。

 

「ええっ!!?」

 

 重力の与える速度は、眠っていた少女の顔を叩いた。

 風圧を感じるほどにその速度は速く、目が覚めると同時に混乱を呼び込む。

 

「ちょ、落ちてる! どこだよココ!?」

 

 錯乱する少女の背中には小さな羽が生えていた。

 腕には黄色の腕章、頭には中央がくり抜かれた手裏剣のような輪っかがきらりと光り、白銀の短髪には底抜けに青いひと房のメッシュが入っている。少し陰のあるような表情と色白な肌は、どこかはかなげな印象を見るものに与えていた。……少なくとも、見た目は。

 しかし、彼女は先ほどまで、ファンのみんなに見守られながら動画配信サイトでゲーム配信をしていたはずだった。

 

 それが、どうして。

 

 彼女の名前は天音かなた。キャッチコピーは

 

「ぎゅっ、ぎゅっ、ってつかむものないじゃん!?」

 

 さておき、絶賛命の危機にさらされていた。

 恐怖からあふれる涙の隙間から見える視界には、流れ星のように輝く何かが、自分と同じように落ちていく様子がチラチラと見えている。

 地面は遠く、空が近く感じる。

 

 スカイダイビングに近い状況だった。

 

「かなたーーん!?」

 

 驚愕と悲壮感がにじんでいるが、母性すら感じる柔らかな声が聞こえて振り返ると、そこには黒髪に獣耳と尻尾が生えた女の子がいた。

 

「え、ミオ先輩!?」

 

 彼女は大神ミオ。

 かなたと同じ事務所に所属する先輩アイドルだ。

 

「どういう状況なのこれ!?」

「知りませんよ!」

「それって、絶体絶命……ってコト!?」

「ミオ先輩意外と余裕ありません!?」

「いやぁ、だってかなたん飛べるでしょ?」

「……あっ」

 

 パニックになり飛べる事を忘れていた天使を、ミオはジト目で見つめた。

 

「……まあ、最悪ウチは狼の身体能力で着地するから平気だよ!」

「ミオ先輩筋力と見た目のバランス狂ってません?」

「かなたんは自分の握力自覚しようね?」

「あ、ハイ……」

 

 かなたのキャッチコピーは「握力50kg、ぎゅっ、ぎゅっ、握りつぶしちゃうぞ☆」である。ちなみに、本当に握力が50kg近くある。

 良くものを握り潰すので、すごくやさぐれた顔で「この世は脆すぎる」と語ったこともあったが、本人は特に気にしていない。むしろ誇りを感じているほどだ。

 先日、握力52kgという新記録を打ち立てた時には、むしろご機嫌だった。

 

「可愛いは潰せる! とか新しいキャッチコピーとしてどうですかね?」

「……ウチのこと握りつぶす気なのかな?」

 

 非常識な状況でも楽しそうに話す二人であったが、突然、ミオに異常が起きた。

 なぜか、かなたから離れるように不自然に斜めに落ち始めたのだ。

 

「あれぇ!? なんか引っ張られるよ!!?」

「先輩!」

「なんだこれ……みおぉぉーーん!!!」

 

 手を伸ばし合うかなたとミオだったが、離れる速度があまりに早く、数秒後にはミオは既に表情が分からないほどに離れて行ってしまっていた。

 そして、その姿が遠のき、小さく、小さく、それこそ流れ星のようになった時にかなたは気が付いた。

 

「これ、落ちてるのもしかしてみんなホロライブのメンバーなの?」

 

 ふわり、とかなたは未知の大地に足を下ろす。

 そして、

 

「いたたた……」

 

 その横に同じように、頭からピンク色の何かが墜落していた。

 

 

 

「痛ぇのら~」

 

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